ナリスナ平原の戦い1
久しぶりの投稿です。。
近々、1~28話の文章校正を行おうと思っています。
表現などが変わるかもしれませんが、内容は変わりません。
「悪いわね、本当に」
「気にすんな、オレから言い出したことでもあるからな」
城の中の会議室。
そこでフェルナとセイレーンはテーブルを挟んで向かい合って座っていた。
テーブルの上には水の国周辺の地図が広げられていた。
セイレーンはその地図で『ナリスナ平原』と書かれている場所を指でさした。
「現在はここで止まってるって観測所からの報告よ」
「ここまで100キロといったところか」
そこでフェルナは顎に手をあて悩んだ。
なぜ会議室でこんな会話をしているか。
それは現在この水の国が謎の生命物体に襲われているからだ。
そいつをセイレーンは水の国の中で処理しようとしてたところを何故かフェルナに知られ、
「手伝おうか?」
と有無を言わせない声と表情で言われ、今に至るわけだ。
「・・・何にも情報がないんだよな?」
とフェルナは確かめるように聞いた。
「ええ、なにしろ本当に正体不明だから」
と申し訳無さそうにセイレーンは言った。
ただ、とセイレーンは言葉を続けた。
「形状はゴーレムに酷似していてると報告は受けているわ」
「ふむ・・・」
ゴーレムについても簡単に説明しておくと、
材質は土で核に魔法石と呼ばれる魔力を溜め込める半永久機関を使っている。
大きさは5mほどで、戦闘能力は普通の魔法使い10人分に相当する。
動きはとてものろいのだが、魔法を使える上に物理攻撃(パンチなど)の威力も半端じゃない。
以前戦った遺跡の守護者もゴーレムの一種である。
「ま、ここで話してても仕方ないか」
そういってフェルナは席を立ち、片手で転移魔法陣を描いた。
セイレーンはその姿を見守るしかできない。
セイレーンの今回の役割。
それはフェルナがもし失敗し、水の国の中心部まで攻められた場合の最後の防波堤。
ゆえにここから動くことはできない。
応援を呼ぶことも難しい。
変に部隊を組んで行って目立ってしまうと混乱が生じる。
結局、フェルナが一人で行くしかないのだ。
何もできない自分に腹が立つ。
そんなセイレーンの気持ちを察してなのか、フェルナは
「すぐ終わらせてくるから、宴の準備でもしといてくれよ」
と笑ってそう言った。
セイレーンは驚いたが、次の瞬間には笑って
「食べきれない用意しておくから覚悟しときなさい」
と言えた。
フェルナは「そりゃ楽しみだ」と転移魔方陣を発動させてその場から消えた。
次の瞬間にはフェルナはナリスナ平原の中心部にいた。
その100m先にそいつはいた。
その姿を見てフェルナは驚いた。
形状はゴーレムに確かに酷似している。
しかし、体長は2倍以上違った。
それに、纏っている魔力の質も。
セイレーンは正体不明と言っていたがフェルナは長い旅の間に見たことがあった。
そしてそれは最悪の代物だった。
「こんなところでお目にかかるとは思わなかったがな」
フェルナの言うとおり、普通はこんなところにいるはずがない。
こいつは神殿や神域を守っているはずなのだから。
侵入者を排除する、神の近衛騎士。
それがこいつの正体だ。
だが、
「正体がわかったところでどうということは無いんだがな」
そういってフェルナは右手の親指、中指、小指で3つの魔方陣を描いた。
色は赤、黒、緑。
それらの魔方陣は一点に収束し、1つの魔方陣となった。
これこそフェルナの得意とする複合魔法だ。
本来は2つの魔法でするところをフェルナは3つでして見せた。
複合魔法の威力は2つの魔法の乗算である。
すなわち、3つの魔法の複合となるとその威力は計り知れない。
フェルナは魔方陣を近衛騎士のほうに向け、
「宣戦布告だ、受け取れ!!」
そう言って魔方陣から出たのは黒き炎の弾丸。
三属性複合魔法『黒陽球』。
圧倒的な熱量を持ったその魔法は、
「敵勢力からの攻撃を確認、対魔結界を高速展開」
近衛騎士に当たる前に消滅した。
対魔結界。
その文字通り、魔法から身を守る結界のことだ。
その結界は完全にフェルナの魔法を防いだ。
すなわち、フェルナの魔法は完全に封じられたのだ。
最大の攻撃手段を封じられたフェルナはしかし、
「へえ、ガラクタのくせにやるじゃないか」
笑っていた。
紅月もナギサもカエデもいない、圧倒的な不利な状況なのに。
フェルナは楽しんでいた。
「敵勢力確認、これより攻撃態勢に移行します」
近衛騎士は完全にフェルナを敵と認識した。
その体からは魔力があふれ、手には大きな剣が握られていた。
フェルナも自分の魔力を解放し、『気刃・豪炎』を発動させた。
お互いの準備が完了し、そして
「戦闘を開始します」
「さて、始めようか!!」
ともに戦闘開始の合図を言ったのだった。