表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神々の黄昏  作者: 天魔の担い手
邂逅編
2/36

紅月

「暑いなー。」


フェルナはある砂漠を歩いていた。

目指す場所はある遺跡、伝説の剣が眠る遺跡。

しかし・・・


「本当にあんのか?無かったらアイツをぶっ飛ばす」


実はその遺跡の情報は前に立ち寄った町にいたチンピラ達から聞いたのだ。

だから信憑性はあまり無い。

が、今現在行く当ての無いフェルナは興味本位で行ってみることにしたのだ。

こんな暑い砂漠の中を・・・。


数時間後、フェルナは遺跡にたどり着いた。


「ここが遺跡か」


その遺跡は地下に続いていた。

階段があり、一寸先は闇だった。

それでもフェルナはどんどん降りていった。

ある程度降りると、何も無い大きな広間に出た。

普通の人が見たらそう思うだろう。

だが、フェルナには見えた。

そこにいる、巨像が。


「なんだ、これは?」


フェルナはその巨像に近づくと、どこからか声がした。


「あなたは誰?」


それは女の子の声だった。

しかし女の子特有のか弱い声ではなかった。


「俺はここに剣があると聞いて来たんだ。」


そうフェルなが言うと、彼女(?)は


「そうあなたも私を求めてきたのね」


と答えた。

「なら、私の所有者となりうるか、ここで証明してみなさい」

「どうやってだ?」


すると近くで物音が聞こえた。


「簡単よ。前にあるゴーレムを倒して、それが第一段階よ」

「ゴーレム?」


そう言ってからフェルナは危険を感じてそこから飛び退いた。


「なんだ、今のは?」


土埃が晴れるのを待ってから見ると、さっきまでフェルナが立っていた場所は陥没していた。

よく目を凝らして見てみると、さっきまでただの巨像だったのが動いていた。


「どういうことだ、なぜ動く?」

「そのゴーレムはわたしの『血』が入っているのよ。だから私の言うとおりに動くの」

「血だと?」


フェルナはゴーレムが攻撃してきたので、それをよけながらさっき彼女が言っていた言葉の意味を考えていた。


(『血』ということは液体・・・・・・ならば!!)


フェルナは右手を前に突き出し、呪文の詠唱を始めた。


「水の精霊・セイレーンよ、敵を狂わす呪いの歌を歌いたまえ!」


詠唱が終わると、右手に魔法陣が浮かんでおり、そこから呪詛のようなものが出ていた。

その呪詛はゴーレムに取り付くと、光を放ち、代わりにゴーレムがきしみだした。

謎の少女(?)は驚いたような口振りでフェルナに問うた。


「あなた今何をしたの?」

「な~に、精霊の力を使って液体を操ったのさ」

「私の『血』を操った?そんなことが・・・」


ゴーレムは盛大な音とともに崩れ去った。


「さあ、次はなんだ?」


フェルナは不敵な笑みを浮かべながらそう言った。


「・・・この奥にある階段を下りて」


フェルナは指示に従い、奥にあった階段を下りた。


そこはさっきの広間よりも広いところに出た。


「来たが、どうするんだ?」


フェルナが聞くと地面が揺れた。


「次は耐えてみなさい、この聖槍を!!」


その声とともにフェルナの正面100m先に光が集まりだした。


「ルールは簡単。あなたの後ろにある石像を壊さなれなかったらクリアよ」


フェルナは歯ぎしりした。

なぜならフェルナは防御の魔法を一つしか知らないのだ。

しかもそれも成功率は50%と明らかに賭けなのだ。


(まぁ、やらないよりはマシか)


とフェルナは禁忌防御魔方陣を展開した。


「発動・ミストルティンの槍!!」


収束した光は一直線にフェルナへと放たれた。


天盾(イージス)展開!!」


フェルナの前に大きな魔法陣が展開された。

ミストルティンの槍はイージスにあたり、一瞬で消え去った。


「そんな・・・なぜ建世の魔法を使えるの!!」


謎の少女は声を荒げて叫んだ。


「建世?なんだそれは」

「!・・・知らないで使ったの。神の魔法を・・・」

「神の魔法!?これが?そんなわけない。これは・・・」


そこでフェルナは少し口をつぐみ、


「・・・あいつが教えた魔法だ」


と口から出まかせを言った。


「もちろん、そいつは人間だ」

「・・・・・・」


謎の少女は少し黙り、そして


「まあいいわ、第二段階クリアよ。次が最後よ」


そう言うと真ん中に光が集まり、人が現れた。

紅い輝きを放つ剣を持って。


「彼は私の最初の保有者よ」


その声は剣から放たれた。


「そうか、こいつを倒せと?」

「そうよ。で、武器はどうする?剣を貸しましょうか?」

「心配いらない。ちゃんと持っている」


そう言うとフェルナは手に魔力を集中させ、呪文を詠唱した。


「全てを燃やす炎よ、その形を敵を薙ぐ剣に変えよ」


フェルナの手に炎が灯り、それは


「気刃・豪炎」


という言葉とともに剣となった。

まるで神が持つ断罪の剣のようだった。


「魔剣か、面白いわね」


紅い剣はくっくっくと笑い声をあげた。


「じゃあ準備も整ったようだし、始めましょうか」

「ああ、そうだな」


そう言って二人は構えて、そして駆け出した。

剣を交えた瞬間、特有のキィイーーンという金属音は無く、その代わりに凄まじい衝撃波が生まれ、広間が崩れかけた。

そこから紅き剣を持つ剣士は一度剣を引き、身をかがめると紅い剣は姿を変え、剣士を加速させた。

フェルナは突然のことに驚いたが、すぐに状況を判断し、剣を地面に突き立てた。

すると突き立てた地面を中心にフェルナの周りに炎が守るように生まれた。

これにはさすがに近づけず、間合いをとった。

もう一度間合いを詰めようと、フェルナは突き立てていた剣を引き抜き、駆け出した。

その瞬間だった。

突如として床が崩れ、その崩れたところから全ての者を震え上がらせる獣の雄叫びが聞こえた。


「なんだ今のは?」

「そんな・・・アイツが目覚めてしまった」


紅い剣も剣士も震えていた。


「アイツってなんだ?」

「下にいるのは、100年前に私達が封印した化け物、罪罰龍。

 アイツが目覚めたらこの辺周辺は焼け野原と化すわ」

「そんなに強いのか?その罪罰龍っていうのは」

「強いってレベルじゃないわあれは・・・ってどこいくの!?」


フェルナは紅い剣の言葉を最後まで聞かず、床が崩れてできた穴から下に落ちていった。


「敵うわけないのに」


そう言いながらも剣と剣士は下に行こうとしていた。

というか


「私達がいかないと封印できないでしょっ!」


そして彼らは下に落ちていった。


フェルナが下についた瞬間、罪罰龍と目があった。

その目は弱者を見下す王者の目だった。

フェルナは先制攻撃を仕掛けるため、気刃・豪炎を大きく振りかぶり、罪罰龍目掛けて斬撃を飛ばした。

しかしそれは罪罰龍に届く前に消失した。

体勢を崩したフェルナは罪罰龍の反撃のブレスをくらいそうになったが、フェルナはイージスを展開し体勢を立て直した。

そこに上から落ちてきた剣士と剣がやってきた。


「アイツには魔法が効かないわ。剣で斬るしか方法がないの」


そう言って剣士は大きく跳躍し、罪罰龍に斬りかかった。

罪罰龍はそれを見て大きく息を吸い、さっきとは違うブレスを吐き出した。

それを剣士は斬り裂き、剣を目に刺そうとしたが罪罰龍は羽を広げ、それをよけた。

そこで剣士は剣を持ち直し、もう一度跳躍して腹を斬った。

しかし傷は思ったより浅く、ただ罪罰龍を怒らせただけだった。


「全然駄目じゃないか。剣まで効いてねえぞ」

「昔より硬くなってる・・・これじゃもう・・・」

「なあ魔法が効かないっていうのは、魔力が効かないってことだよな?」


フェルナな意味不明なことを聞いた。


「そうだけど何を今更?」


それを確認してからフェルナは魔力を解放した。

いや正確には自分の中に流れる『血』を解放した。


「あなた何をしているの?魔力は効かないって」

「魔力じゃなきゃいいんだろ、じゃあ本物の炎を使うまでだ!!」


解放していた『血』は体の中で炎と化し、フェルナの体を燃やした。

炎はどんどん勢力を増し、しまいには直径10mほどの炎球となった。


「何、これ?魔力じゃない・・・もしかして」

「その予想は合ってると思うぞ。」


剣士がそちらを見ると、炎球にひびが入っていた。

そして炎球は破裂した。

その中には紅蓮の双翼と鎧を纏ったフェルナが出てきた。


「俺の血には不死鳥の血が流れている。そしてこの力は・・・」


そこでフェルナは姿勢を低くし、羽に魔法陣を展開しそして


「何ものにも消せぬ神の炎だ!!」


と掛け声とともに罪罰龍に向かって行った。

罪罰龍はそれに気づいたがすでに遅く、フェルナは罪罰龍の腹に炎を灯した拳で殴った。

罪罰龍は呻いたがそれは一瞬のことですぐに自らの頭上に2つの魔法陣を展開した。


「水と炎の複合魔法か!!」


複合魔法とは、2つ以上の魔法陣を重ね、より強力にする魔法である。

それを見破ったフェルナは虚空に円を書いた。

円はフェルナを守る炎の盾となった。


「グアアアアアァァァァーーーーーーーーー」


という咆哮で魔法は放たれた。

しかしそれはフェルナによって展開された炎の盾によって消滅した。

次にフェルナは大きな炎球をつくり罪罰龍に撃った。

炎球は当たったが罪罰龍には傷一つつかなかった。

罪罰龍な大きくいきを吸い、フェルナにブレスを撃ってくるのかと思ったらフェルナではなく、剣士たちに向かってうった。

剣士はけんを構えていなかった。

このままでは直撃するのは必須。

それをフェルナは見ていられなかった。

フェルナは自分に加速魔法をかけ、一瞬で剣士の前に立ち、ブレスを右手に溜めた炎で消滅させた。


「なぜ助けたの?」


そう聞いてきたのは紅い剣だった。

それにフェルナは目を細め、そして


「オレはな、人を信じられない。だから剣を手に入れるのはやめにしてあんたたちを助ける」


と言った。


それに紅い剣はなぜか怒ったような口調で言ってきた。


「じゃあなんで人を信じられないあなたが私達を救うわけ?」

「おれはもう一度人がおれを信じさせてくれるその日まで、かくさんの人を助けようと決めたんだよ。

 だってたくさん助けたほうが確率が高いだろ?」


フェルナはそう言った。それに紅い剣は


「なら私を信じて」


と言ってきた。

それにフェルナは言い返した。


「は?だからおれは人を信じない。人はすぐ裏切り、そして捨てる。

 それもついさっき会ったばっかのやつを信じられるか」

「だから私があなたに人は信じられるのだということを教えてあげる。私は絶対裏切らない。」

「・・・・・・」

「それでも信じられないのならこれを使って私を破壊しなさい」


と剣士がフェルナに小さな水晶玉を差し出した。


「・・・本当にお前は裏切らないんだな?」

「ええ、絶対に」


紅い剣が力強く首肯するとフェルナはついに折れた。


「わかった、信じよう。お前に希望をかけてみるよ」


とフェルナは剣士から剣を貰い受けた。

剣士は手から剣が離れたとたん砂になって崩れ去った。

フェルナは一礼し、罪罰龍に向かい合った。


「さて、やるか。でどうすれば封印できるんだ?」

「あいつの額に封印の剣をさして」


と言って、紅い剣は姿を変えた。


「額で合ってんのか?」

「わからない。昔は額にさして封印したけど今は・・・」

「そうか」


フェルナは剣を構え、剣に炎を宿した。

そして双翼に加速魔法を付与した。


「じゃあ行くぜ!!」


フェルナは一瞬で最高速度(マックススピード)になって、ただ一点罪罰龍の額を目指した。

罪罰龍は羽をはためかせ、乱気流を作り出した。

フェルナはそれを剣で斬り裂き、罪罰龍の顔の前までたどり着いた。

そこで罪罰龍は自らの周りに小さな光球を出し、それはフェルナを襲った。

反応が遅れたフェルナは、直撃を食らったようにみえた。

しかしフェルナは双翼を盾に使い光球から身を守った。

そこで罪罰龍に一瞬のスキが生まれた。

そのスキを見逃すフェルナではなかった。

その一瞬で罪罰龍の額に剣をさした。

剣は光を放ち、罪罰龍を封印しようとしたが、額に傷が付いただけで封印はされなかった。


「おい、無理だったぞ」

「どうしよう・・・・・・もう打つ手が・・・」


フェルナは自分の全ての魔力を剣に集中させた。


「あなた一体何をしているの!?」

「すこし黙っててくれ」


剣が炎を纏って紅き剣はさらに紅くしていった。

罪罰龍はフェルナに光球をフェルナに撃った。

しかしフェルナはよけず、ただじっと剣に魔力を溜めた。

その身体からは大量の血が溢れていた。


「あなたこのままじゃ死んじゃうわよ!?」


紅い剣は焦った声で言ったがフェルナはただじっと魔力を溜め続けた。

そこで紅い剣に異変が起きた。

紅い剣が自ら炎を出していた。

その炎はフェルナの魔力(ほのお)と交じり合い、より強大な炎になった。


(なにこれ・・・何か懐かしい感じだ)


そこで紅い剣は思い出した。

自分がまだ人間であった頃に封印した剣の名を・・・。


火炎の剣(インフェルノソード)発動」


名を思い出したことで紅い剣は完全に炎を宿す剣となった。


「よしいける!!」


フェルナは強大な炎を纏った剣を罪罰龍に振り下ろした。

罪罰龍はその『断罪』ともよべる攻撃を受け、燃えながら苦しみ、そして倒れた。

フェルナは罪罰龍が倒れたのを確認するとその場に倒れた。


「ちょっと大丈夫!?」

「全魔力を解放したからな・・・もう・・・死ぬかもな」


フェルナはそう言い、目を閉じようとしたとき


「そうだ・・・お前の名前を聞いてなかったな・・・・」


と言った。


「私の名前は、紅月よ」

「そうか・・良い・・・・名前だ・・な・・・」


そこでフェルナは目を閉じた。


紅月は100年ぶりに人間に戻った。


「あなたの魔力を回復させる。代わりにここ数日の記憶を貰うわよ」


そういって紅月は魔法陣を展開し、フェルナの魔力を回復させた。

魔法陣が消えた瞬間、フェルナは身じろぎした。

紅月は慌てて剣に戻った。


数秒後、フェルナは目を覚ました。

が、フェルナはなぜかここ数日の記憶を失っていることに気いた。

自分が見知らぬ剣を持っているにも気づき、ここでの用事は終わったのだと分かった。

彼はこの破壊された遺跡のような場所から出て、また復讐の旅を始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ