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神々の黄昏  作者: 天魔の担い手
水の国編
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回想~教会に居た日々~ その4

「今回受けた任務はフェルナ様、あなたを連れ戻しに参りました」


グレイバルはそう言った。


「連れ戻す?オレをか?」

「はい、そうです」


どういうことかとフェルナは考えた。

国から追い出したのは父だというのに、今更なぜ?


「お前らに命令を出したのは国王か?」

「いえ、宰相様です」


イラがそこで口を挟んだ。


「宰相ってロイさんのことですか?」

「そうですよ」


ロイ宰相。

2代前の国王から仕えている高齢の宰相だ。

影というものがない、とても良い人だ。


「お前らは国王の命だけでしか動けないんじゃないのか?」

「ええそうですよ。

 なので今は盾を持っていません」

「そうか。

 なら勝てる可能性があるな」


フェルナは剣に手を添え、魔力を込めた。

イラも魔法陣を密かに展開し、臨戦態勢に入った。

それを見たグレイバルは哄笑した。


「ふふ、勝てる?

 それはこれを見てから言ってください」


そう言った瞬間、結界が破れ、数十人の騎士が姿を現した。


「1番隊全員がお揃いか」

「ええ。

 あなたの力を知っていますので、こちらも全力で連れ戻します」


騎士はそれぞれ武器を構えた。


(これは分が悪いな、どうする?)


こちらは2、対して相手はエリート集団数十人。

どう考えても勝ち目はない。

逃げようにも、囲まれている。

空にも浮遊魔法を使って騎士が構えていた。

確かに勝ち目がない。


「どうしますか?

 私たちも手荒な真似はしたくないのですが」

「どうするもこうするも、これは一択だな」

「ちなみにその一択とは?」

「もちろん・・・」


フェルナは右手を天に挙げ、


「逃げるに決まってるだろ!」


魔法陣を展開した。

色は赤色。

魔法陣からは大量の赤い鳥が出てきた。


「火羅摩ですか・・・。

 目くらましにもなりませんよ?」

「ああ、そうだな。

 だが、狙いはこっちだ」


フェルナはイラの手を握り、疾風の魔法を発動、その場から風のごとく走り去った。


「フェルナ!?」

「ちょっと口を閉じとけ、舌かむぞ」


それを見ていたグレイバルも追いかけようとした時だった。


「・・・・・・・・・・・・・・・!!」


聞き取ることのできない叫びが聞こえた。

その声のする方を向くと、そこにいたのは


「亜龍だ!!!」


そう、亜龍だった。

普通ならこんなところにいるわけがないのだが、今回は違った。

まず、亜龍の好物は炎。

しかも魔力を含んだ炎を大好物とする。

それを知っていたフェルナは、いつもより魔力を込めた火羅摩を放った。

そしてフェルナはもう1つ、あることを知っていた。

ここが、亜龍の領域(テリトリー)であることを。

いろいろな因果によって、今の状況になったのだ。

騎士たちは放っておくわけにもいかず、全員がかりで亜龍を抑え始めた。

グレイバルもそれに参戦しようと思ったが、


「隊長はフェルナ様を追ってください!」

「ここは我々にお任せあれ!」


という騎士たちの声を聞き、一瞬迷ったがすぐに迷いを断ち切り、疾風の魔法を展開し、フェルナたちを追い始めた。


その頃フェルナたちも森の中を駆け抜けていた。

正確には駆けているのはフェルナだけで、イラはいつの間にかお姫様抱っこされていた。


「あの、フェルナ?」

「いいからちょっと黙ってろ」

「・・・はい」


有無も言わせぬ剣幕でフェルナに言われた。

・・・まあ、かなり心地がいいのだが。


「ちっ、もう追いついてきやがったか」

「え、早すぎない?」

「これでも遅いぐらいだ。

 せめて森を抜けたいが・・・」


それは無理だろう。

先ほどいたのは森のかなり奥だったし、私を抱っこしている状態であればなおさらだ。

そこせフェルナは何か思い立ったように、私に行ってきた。


「イラ、今よりも強くしがみついとけよ」

「・・・ちなみに何をするの?」

「ちょっとな」


とフェルナは膝を曲げ、そして跳躍した。

ただの跳躍ではなく、


「ちょっと!?」


数キロはあったであろう森への出口に一気にたどり着いた。

その速さは、それはもう異常なほどだった。


「ここまで来れば大丈夫か」


フェルナは私を降ろし、剣を抜いた。

それから程なくして、騎士団長さんは現れた。


「さすが、風魔法のスペシャリストだな」

「あなたも上手くなりましたね」


グレイバルは槍を構えた。


「逃げないということは、戦うということですね?」

「ああ、あんたを倒してゆっくり逃げさせてもらうよ」

「それが出来ればね!!」


一瞬、私は騎士団長の姿を見失った。

けどフェルナは


「・・・!」


剣を胸の所まで上げた。

ちょうどそこに

ガキーーーーン!!

と音と共に、騎士団長の槍が刺さっていた。

やったと思っていた騎士団長は少し驚いていた。


「今のを受けますか、さすがですね。 

 剣の一点に魔力を集中させたのですか?」

「ご名答、その通りだ。 

 槍は店の攻撃だからな、防御方法はいくらでもあるんだよ」

「そうですか。

 ですが、これはどうですか!」


グレイバルは間合いを取り直すため、後ろに10mほどバックジャンプした。

地面に着地し、もう1度、槍を構え直した。


「魔槍・グングニル、解放!!」


その声にグングニルと呼ばれた槍は反応し、紫色の輝きを放ち始めた。

輝きはだんだん強くなり、槍にヒビが入り始めた。


「な、何が起きてるの?」

「魔槍の解放、グングニルとグレイバルの本気が見られるぞ」


槍に入っていたヒビが最高潮に達し、輝きがはじけた。

輝きはグレイバルを包んだ。


「さて、もう私は止まりませんよ?」


輝きがだんだんと消え、グレイバルの姿も見えるようになってきた。

だが、その姿は先程と違っているように見えた。

先程までの騎士鎧と違い、禍々しい形とオーラを放っていた。

顔面はこちらも禍々しい兜で全体を覆っていた。

槍は紫の輝きを放つ、本当の魔槍となっていた。

見るものが見ればその姿は悪魔のように見えるだろう。

その悪魔のような騎士団長は槍をフェルナに向け、こう宣言した。


「さあ、今からは本当の死闘ですよ、フェルナ様」

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