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神々の黄昏  作者: 天魔の担い手
水の国編
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回想~教会に居た日々~ その3

「ん~~・・・」


大きく背伸びをすると、オレはすっと起き上がった。

どうやら戦いのあとに倒れてしまったらしい。

まあこの頃ろくに寝ていなかったから当然かもしれないが。


「あ、起きた?」


とそこにはイラがいた。

どうやら彼女は料理をしているらしい。


「迷惑かけたな」

「そんなことないよ、助けてくれてありがとう」


ありがとう、か。

そんなこと言われたのは久しぶりだな。

そう思いつつ、どんなものを作っているのか覗いてみると、センチェル王国の地元スープだった。


「へえ~、美味しそうだな」

「ほんと?」

「ああ」


そういえばこのスープ、ミミも好きだったな。

そんなことも考えながら、ふと腰に剣がないことに気づく。


「・・・オレの剣は?」

「そこの木に立てかけてあるよ」


と言ってイラが指差すほうを見ると、確かにそこにあった。

オレはそれを腰に装着し、手に魔力を集中させた。


「どこに行くの?」


当然、イラに聞かれた。

まあ出て行く気ではないので、オレは正直に答えることにした。


「ここでの野宿は危険だからな。

 獣よけの結界を張りに行くんだよ」


と行ってからオレは広場の周りの木に向けて、魔力を照射した。

魔力は木に当たり、互いに不可視の糸でつながった。


「これでいいか」


完成具合を自分で確認し、イラの元に戻った。


「張れた、結界は?」

「ああ」


イラはそう、と答えると、カバンから食器を取り出した。

それにスープを注ぎ、オレに渡してくれた。

その次に自分のにも注ぎ、オレたちは都合良くあった丸太に腰掛け、


「「いただきます」」


と声を揃えて、食べ始めた。

一口食べてみると、その美味しいスープが口に広がった。


「美味しいな」

「よかった」


イラは美味しいと言ってもらって嬉しかったのか、笑顔だった。

しばらく黙って食べていると、イラが質問してきた。


「ねえ、なんでフェルナはみんなと仲良くしないの?」

「仲良くしていないわけじゃない」


というか今気づいたが、さん付けじゃなくなってるな。

まあ別にいいが。


「でもみんなを避けてるじゃない」

「まあな」

「それはどうして?」

「・・・」


遠慮のないやつだな。

ま、いいか教えても。

いつかは誰かが言うだろうし、早いか遅いかの違いだ。


「1年ほど前に、オレたちは集団任務で亜龍を狩りに行ったんだ」


亜龍とは龍の亜種のことで、龍より力が劣るとされているが、その強さは並みの魔獣より桁違いに強い。


「そこでオレたちは亜龍を倒した。

 けど、その代償が大きかった」

「代償?」

「ああ。

 幸い死者は出なかったが、オレ以外のメンバー全員が瀕死状態に陥った」

「・・・!」

「その時、オレは自分のせいだと責めて、みんなから遠ざかった」

「それは・・・」

「まあ、そういうことがあったんだよ」


これで終わりだ、というふうにオレは丸太から立った。

だがそこでイラが


「フェルナは馬鹿だね」


とオレを罵った。


「なに?」

「何が自分のせいだよ。

 自分が強いのにみんなを危ない目に合わせてしまった、とでも思ったの?

 それは大間違いだよ。

 いくらフェルナが強くても、たかが一人の力なんてたいしたことないんだよ」

「・・・」


言い返す言葉が無かった。


「みんなはフェルナのせいだと思ってると思う?

 もしそうならライドウはフェルナにあんなにしつこく話しかけていなかったと思うよ」

「・・・なんでそこまで知ってる?

 お前はここに来て間もないはずだ」

「みんなから聞いたんだよ。 

 みんながフェルナのことをどう思ってるのかも」

「・・・!」

「みんな、昔みたいに楽しくしたいって思ってるんだよ?」


オレが教会に入ってからの半年間。

その間はとても楽しかった。

毎日毎日、訓練が終わったらお祭り騒ぎだった。

――すごく、嬉しかった。


「オレは・・・」

「帰ったらさ、みんなと話そうよ。

 きっと、また楽しく過ごせるよ」

「・・・そっか」


オレは何か吹っ切れるような感じがした。

いつの間にか出ていた涙を拭い、イラに向き直った。


「それならさっさと帰るか」

「野宿するんじゃなかったの?」

「気が変わった。

 早くあいつらに会いたい」

「じゃあ、帰りましょうか」


と、イラは立ち上がり、食器などを片付け始めた。

その時だった。

先ほど張った結界が何かが引っかかった。


「・・・誰か来た」

「え?」


オレは剣を抜き、その方向を向いた。


「お久しぶりですね、フェルナ()


そこには騎士の鎧を身にまとった、20歳前後の男がいた。

イラはその男に見覚えがあった。


王国騎士団(ロイヤルナイツ)の1番隊隊長!!」

「へえ、私のことを知っているのですか?

 1番隊のことを知っている人は少ないはずなんですがね」


男はいつの間にか持っていた槍を地面に立て、


「一応名乗っておきましょう。

 私は王国騎士団1番隊隊長、グレイバル」


そこで1度言葉を区切り、


「今回受けた任務はフェルナ様、あなたを連れ戻しに参りました」

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