救出戦
「くっ!」
フェルナは守護者の攻撃を紙一重でよけていた。
先程までは攻撃も加えていたが今は防戦一方である。
というのも
「なんで魔法が喰らわないんだよ!?」
時は少し遡る。
フェルナは炎陽球、双雷、水刃の魔法陣を展開していた。
「喰らいやがれ!!」
フェルナはそれらの魔法陣を同時に発動した。
魔法は全て守護者に直撃した。
が・・・
「な・・・」
全く傷がついていないのだ。
というかくらっている様子も無かった。
守護者は持っていた斧を振り下ろした。
フェルナは咄嗟によけられず、直撃を受けてしまった。
「グハッ!!」
フェルナは次の攻撃を恐れ、その場から飛び退いた。
腹部からは血が流れていた。
「くそっ!」
フェルナは紅月を抜き、守護者に斬りかかった。
だが、守護者の装甲は固く、傷を付けることもできなかった。
「グオーーーーーー」
初めて守護者が喋ったかと思うと頭上に魔法陣が浮かんでいた。
その色は、黒。
「まずっ!」
その場から再び飛び退いたフェルナは戦慄した。
なんと今まで立っていたところが無くなっていたのだ。
そう、跡形もなく。
「無への帰還・・・!」
無への帰還。
闇属性の上級魔法であると同時に禁忌魔法にも指定されている。
魔法陣も複雑でそう簡単に展開できるようなものじゃないのだが。
(魔法石にでも魔法陣を記憶させて高速展開を可能にしてるのか・・・?)
そうならばかなりまずい。
魔法陣を書く手間がいらないぶん魔力と時間もはぼ必要ない。
結果、アイツは半永久的に無への帰還を使えることになる。
考えを巡らしていると守護神がまたしても無への帰還を展開し始めた。
それで今に至る。
だが何も防戦だけでもなかった。
その右手には魔法陣が浮かんでいた。
その色は真紅。
「一か八かだ!!」
――――――炎の擬似神魔・煉獄、発動
瞬間、魔法陣から灼熱の炎の渦が現れた。
炎は守護者を包み、灰にしようとする。
だが、守護神はうろたえながらも全く傷がつかない。
フェルナは左手であと二つ、魔法陣を描いた。
その色はどちらも緑。
フェルナは後ろにいるであろうセイレーンに声をかけた。
「セイレーン、少し空気が薄くなるから気をつけろよ!」
「りょうかい!」
同意が聞けるとフェルナはまず一つ、魔法を発動した。
無風地帯。
効果は空気を薄くする。
それにより守護者を包んでいた煉獄の炎が勢いを失った。
好機と見たのか、守護者はフェルナめがけて突進してきた。
そこにもう一つ、魔法を発動した。
暴風域。
効果は、空気を大量に作り出す。
瞬間、
ドガーーーーーン!!
と、大きな音と共に炎が爆発した。
「バックドラフト現象!!」
セイレーンは驚いた。
空気の少ないところにいきなり空気ができたら、炎は一気に燃え盛る。
それを知っていたフェルナは賭けに出た。
結果は・・・
「ガ・・・ガガガガ・・・」
効果は十分、守護者の体にはヒビが出来ていた。
フェルナは紅月を抜き、そして
「これで終わりだ!!」
守護者の頭の上に思いっきり振り下ろした。
「・・・・・・!!」
守護者の体のヒビは一気に広がり、最後には崩れ落ちた。
フェルナはそれでも気を抜かなかった。
だが、それも杞憂に終わった。
「ふー・・・」
体全体の力を抜き、フェルナはその場に座り込んだ。
「お疲れ様」
そこにセイレーンが来て労いの声をかけた。
「準備は出来たのか?」
「ええ、あとはロックを外すだけ」
「そうか、じゃあ今すぐにでも・・・」
「させないわよ」
神殿内に第三者の声が響いた。
声のする方を見ると少女が立っていた。
「だれ!!」
「横の人に聞けば?」
「え・・・」
見るとフェルナはその場に立ち尽くしていた。
そして口元を少し上げた。
「なんでここに居るのかだけ教えろ」
「もちろん、あなたを殺すためよ」
その言葉を聞き、フェルナは少し苦い顔をした。
少女は右手を上にあげた。
「さて、始めましょうよ」
「・・・その前に」
フェルナは素早く右手で魔法陣を描いた。
すると、セイレーンと水晶が光り、そして消えた。
「・・・何をしたの?」
少女は顔をしかめながら聞いた。
「闇属性の魔法に相手の魔法の制御を奪う魔法があるんだよ」
「それで転移魔法を起動したの?」
「そうだ」
その言葉に少女は少し笑った。
「あの頃とあまり変わらないのね」
「人間はそう変わるもんじゃねえよ」
フェルナはそう言って紅月を抜いた。
「さあ、ここからは本気の殺し合いだ
覚悟はいいよな、イラ?」
「もちろん、私はそのために来たのだから」
イラと呼ばれた少女は足元に魔法陣を展開した。
「七海の海を統べる王よ、我が名のもとに顕現せよ」
そう言って召喚されたのは体長5m程の魚人だった。
「海神・ポセイドンよ
あなたに倒せるかしら?」
「わからないが・・・」
フェルナは一旦言葉を区切り、紅月に魔力を込めた。
少し体が軋んだが、特に問題はない。
そして、
「倒せる気しかしないね!!」
と叫び、ポセイドンに突進していった。
「いいもんを見せてやるよ、村雨剣技の奥義をな!!」
そう言ってフェルナは紅月をもう一度さやに収め、そして・・・
「村雨奥義・神閃7連撃!!」
おかげさまで10話も投稿することができました
これからも温かい声援をお願いします!