第1話・少年は走る
体が疲れてきた。筋肉に力が入らない。ゴールが見えない。
「やめるのか?」そう耳元でささやかれた。
あのときとはもう違う。やめない。やめるわけにはいかない。
なんのために走る?自分のためにだ。
そう、崩れそうな体にムチを打って走る。
「限界はある。そう思ったらお前はもう負けだ。」
コーチの言葉だ。
だから俺は走る。体力に限界は、ない。
何も取り柄のない俺、なら作る。
負けるわけにはいかない。次が俺の最後だ。
「はい、終了。30キロ完走したよ。
わかってるの?冬樹?」
「分かってるって。記録は?縮んでたらいいけど。」
「うーん、昨日とほぼ同じ。
ってか、30キロでタイム計るってどういう神経?」
それは、誰にも言わない。
言えば、必ず止める。
なんてたって、30キロを全力で走りきるのだから。
マラソン選手だって、走るというより歩く。
サッカーだって4~5キロそれも全力は瞬間的。
でも、バスケは違う。
常に全力でサッカーと同じ量ぐらいを走る。
そのため、控えが多いのだが、俺は変えられたくない。
コートで40分間、戦っていたいのだ。
だから俺は、コートで走る何倍もの距離を走って
どんなことでも全力でいけるようにしている。
「ふう、私そろそろ行くからね。
冬樹も遅れたらだめね。」
「分かってるって。
渚、あとで宿題写させて。」
「ヤダ。」
即答!!
いやね、わかってましたよ。
仕方ない、教室でやるか。