計画の要
ドミンゴ博士「よし、テスト稼働を始めよう。1ヵ月も準備に時間がかかってしまって、すまない」
「いや気にしてないよ。さっそく始めてくれ」
フロランは疑似現実でAIのラチエ博士と話したり自宅にいる女3人とイチャイチャしていた。まるで1ヵ月間の旅行に行っていたような気分を味わい、リフレッシュして現実世界に戻ってきた。
SSBRの地下1階の研究所の一番奥の施設にある巨大な装甲ロボットがテスト稼働を開始して自動音声アナウンスが場内に流れる。
『SERAPH-07デバッグモードに入ります。安全配慮のため緊急停止することがあることをご了承ください』
SERAPH-07に補助電源ユニットのスイッチが入ると起動音が轟き、モーターの回転する音が速くなっていく。
「SERAPH-07の視界はどうだい?フロランくん」
モニターでSERAPH-07のカメラ映像を共有する。
「ほう、これは見晴らしがいいな。高さは2.5mほどありそうだ。この研究所全体が見える」
快適な視界にフロランが興奮した。戦闘機や戦車に乗っているときと同じ感覚を懐かしんだ。
「じゃあ車輪を回してみてもらってもいいかな?」
ドミンゴ博士がフロランに指示を出した。
SERAPH-07の車輪が回ると床に設置されたローラーが車輪と一緒に回転する。
「もう少しスピードを出せるかい?」
時速20キロぐらいのスピードから一気に50キロまで加速させた。
「はい、もういいよ。ストップ、ストップ」
博士は記録用紙の加速テストに☑を入れて満足気な表情を浮かべた。
それから次々とSERAPH-07の機能性、稼働力がテストされ合格となった。
「いいね!AIを搭載したアンドロイドは不具合が続いて、ここまで辿り着けなかった。キミだからこそ、ここまでこの装甲ロボットを動かせた可能性がある」
ドミンゴ博士は、テスト稼働の結果に大満足だった。
「なぁ博士、ひとつお願いがあるんだ」
フロランがドミンゴ博士に頼みごとを申し出る。
それは小型の装甲ロボットを作ってほしいというものだった。車輪が2つの脚にアンドロイドの形をしたボディを持つ150cmぐらいの装甲ロボットをフロランは欲しがった。
「いいだろう、キミのために作ろう」
ドミンゴ博士はフロランの注文を引き受けることにした。彼なしでは、この計画は成し得ないとさえ思っているのだ。
「その小型のロボットはBluetoothでオレとリンクするようにしてくれ、遠隔操作で動かしたい」
フロランが具体的な提案をする。
「わかった、いいだろう」ドミンゴ博士は了承した。
それが危険なロボットであることはドミンゴ博士もわかっているが、しかし、どんなに危害が及んでも『ANGEL DESCENT計画』を止めるわけにはいかなかった。
SSBRは政府が支配する世界の国家転覆を狙い、これは全世界でほぼ同時に行われる予定となっている。世界人口が16億人であれば『ANGEL DESCENT計画』を実行すれば世界がひっくり返ると本気で彼らは信じているのだ。そして、彼らが目指すのは戦争がある世界、混沌、無秩序である。
NEXA MILITECHがやっていたことはSSBRと似ている。
Neon Dustにハマった若者たちが快楽に溺れたSEXで子供を作り、政府の指示に従わず社会の風紀を乱す。無計画にどんどん子供を作って、やがて資源がなくなり国レベルで争いが始まると我々が謳歌する時代が再びやって来ると妄信していた。
仮想現実に溶け込んだ人類に働きかけるためのNeon Dustと現実世界で行われるクーデター『ANGEL DESCENT計画』は、どちらも衰退した軍事産業メーカーが引き起こす人類にとっての悲劇だった。
時代に合わせて変化した軍事産業メーカーの在り方のように見えるが外部からの疑いを晴らすためのカモフラージュに過ぎない。実際はまだ諦めていない自分たちの世界を持った過去の栄光に縋る卑しい人間の集まりなのだ。
『ANGEL DESCENT計画』の要、SERAPH-07はフロランを乗せることで完成した。
フロランの脳のデータはすべてスキャンされアンドロイドに搭載されたAIに移植済みである。
ドミンゴ博士はフロランの脳を完全にトレースした人工脳までも作り出していた。
https://note.com/hiroumimetavarse/n/n2136822a7e58?app_launch=false
画像はnoteに置いています。




