ネオグライド
このゲームはオンライン対戦型のサバイバルゲーム。銃、ナイフ、煙幕弾や罠を使って相手を倒せばポイントが得られる。3分の制限時間内にできるだけ多くのポイントを取ったチームが勝ちとなる。複数のチームが同時に広大なフィールドへ転送され、足にはローラーブレードが装着されたスポーティーなイメージが”売り”のサバイバルゲームとなっている。近年のe-sportsで絶大な人気を誇る。
世界大戦後に世界の人口は16億人まで減少し多くの国は消滅した。世界中が焼け野原となりどこの国も自国の復興だけで手いっぱいとなっていた。残ったのは瓦礫の山と動かなくなった機械と車。それも長い年月が過ぎれば植物がどんどん根を伸ばして草木が生え野生の動物たちの棲み処へと変わってしまった。
多くの国が消滅したことによってテクノロジーは後退したが復興を遂げた国はAIを活用してロボットを動かし第一次産業の底上げを行った。今まで人が担っていた仕事をAIとロボットがするようになり1次産業から3次産業までAIが携わっている。
貿易、流通、食品加工など、それらを包括的にAIが行うようになってから人が参入する余地など微塵もない。ネットで注文すればすぐに自宅に届けられ、スーパーやコンビニなどもほぼなくなった。あるのは自宅以外の場所で商品を受け取ることができるサービスステーションだけである。トイレと休憩できるスペースが用意された簡易施設。そこに商品を届けてくれるのは小型ドローンだ。缶ジュース1本でも時間通りに届けてくれる。
設計者とプログラマー、数少ないエンジニアが生き残り、それ以外の分野はAIがほぼ独占している。いつの頃からか政治もAIが行うようになり、国同士の交渉であったり契約もAI任せになっていた。世界から政治家は消え、AIが国を統括する。24時間、365日、いつでもどんな状況でもAIは最適解を導き出して対処する。
生身の人間のように欲望にまみれ汚職に手を染めて国民を蔑ろにすることはなくなった。前の戦争は政治家の小さな間違いの積み重ねと人間のエゴから、やがて世界大戦へと向かわせたのだ。これを教訓としてAIに政治を任せたのは生き残った人類の英断である。
政治から第一次産業から他のすべての産業までAIとロボットが活躍する時代になり、人類に残されたのは仮想現実の体験である。これもAIの”政治的判断”だとしたら信じられるだろうか?
16億人まで減少した人類がまた増えはじめて100年後には100億人に到達する。そうなれば食料だけではなく地球上にある貴重な資源が枯渇してしまうと予測した。するとまた戦争を引き起こすのは目に見えている。ならば人類の活動拠点を仮想現実の中に移行させれば問題は解決するとAIが算段したのだ。その最適解が導き出されるのに1日もかからなかったという。
仮想現実の構想は深く練り込まれ、はじまりの街エルディオスは誕生した。
ネオグライドで勝率を上げてランキングの上位を目指すのが生き残った人類のステータスである。勝者には物資と賞金が与えられ、それは裏を返せば”国力”となっている。
ゲームに勝って報酬が多く与えられた国はどんどん富が増し、ゲームに負けた国はどんどん富を失ってゆく。ゲームに勝つ以外に富を増やす方法はない。この単純なシステムは思ったよりも残酷である。
ファン・ロイ「さぁ武器は持ったか?まぁ初期装備だし気楽にいこうぜ」チームメイトに声をかけながらローラーブレードを履き、控室のベンチに座る。「今回は恐らく勝てないでしょうね、我々は。武器の相性を確かめ、エイムを合わせる訓練だと思って臨みましょう」アントン・ケイがボトルアクションライフルのスコープを覗き込み、自身のロッカーに貼った的のステッカーに標準を合わせてオートフォーカスボタンを押して光学標準器のズームを確かめる。
ノアは両手に持ったピストルをクルクルと回しながら右へ左へ体を動かして射撃のポーズを決める。ネオグライドのゲームに初参加するので浮足だっているようだ。その後ろにはロッカーに持たれたまま両手を組んでパーカーで顔を隠したレナータ・ライが立っていた。(瞑想しているのか・・・?)
ノアたちのチームはネオグライドに初参加して結果は惨敗だった。成す術なくあっけなくヤラれてしまった。ドロップアイテムは大したものが得られず予想通りの終わりとなった。




