見えない敵
『Lv.BEYONDER』と『UNIT-8』の応戦合戦の結果、狙撃手同士の争いではファンがやられてしまった。
そして、『The Blind Lamb』のミサイル攻撃とハンドガンの連携攻撃によって『UNIT-8』のピムはやられ、4人全員が生き残っているのは『The Blind Lamb』のチームだけである。
仲間がやられて減ったときほど連携をしっかり取らなければそれぞれがバラけて単独行動になったときに一気に数が削られることを中堅ランク以上のチームはよく理解していた。
それ故に『The Blind Lamb』は敵を追わない。
敵を追う代わりに拠点とする場所をずらして相手の感覚を鈍らせるという作戦である。女帝エルナを最後方に構え、3人の兵が前を行く。
『Lv.BEYONDER』の生き残りは3人、『UNIT-8』は3人、『The Blind Lamb』は4人。
このまま3分の時間が経過すれば女帝エルナたちの勝ちである。
酒場の観客たちは大いに盛り上がっていた。
中堅ランクと上位ランクの実力差も然ることながら同じ中堅同士のぶつかり合いが白熱しているのが期待以上だったようだ。
――― 一方、その頃 ―――
『Strategic Systems & Black Research』
通称SSBRの本拠地の近くで大きなRV車が路上駐車しているのが見つかった。
外門の警備をしていた1人が不審な車に気づき、もうひとりの警備員に話しかける。
「おい、さっきあそこに止まった車怪しいぞ」
ふたりの警備員は恐る恐る不審なRV車に近づき、運転席に誰が乗っているのかを確認しに行った。
「あれ?誰もいない・・・。さっき車が止まって、まだ誰も降りてきていないのに・・・」
警備員ふたりは不思議そうに門のほうへ戻って行った。
SSBRの建物3階のトイレの窓が僅かに開いていた。
そこから小型ドローンが侵入すると抱えていたミニカーを床に落としドローンは天井に同化したように飛んでいる。
ミニカーは床に着地すると走り出してドアの前でピタッと動きを止めた。
SSBRの職員がトイレに入って来るとドアの隙間から廊下へ一気に駆け抜けていった。
トイレに入って来たSSBRの職員はそのことに気づいていない。
3階の会議室にぞろぞろと人が集まって来るとミニカーはその人ごみに紛れて会議室に侵入した。
火災警報器の形をしたドローンが天井付近でホバリングしながらゆっくりと廊下を進んでゆく。
役員と顧客が集まる会合が始まり机の上には資料が配られ、登壇した男が会合を進行する。
ミニカーのフロントガラスの右下に小さな赤いドットのような丸が点灯し録画を開始した。
「私がCEO代役のケネス・ブルックです。どうぞ、よろしくお願いします。
まずはお手元の資料をご覧ください。『Angel Descent計画』について話を進めていきたいと思います。
初期段階の構想から大きく飛躍したことは前回、お話した通りです」
会合の指揮を取っている男は、SSBR最高責任者の右腕と呼ばれる男ケネス・ブルックだ。
SSBRで専務を務めている。容赦のないその眼差しには狂気さえ感じるほどだ。
資料を見ていた女性はタブレットPCを開き、何かの信号を拾ったことに気づいた。
彼女は手を挙げ、ブルック専務に告げる。
「この部屋は何者かに盗聴されています。説明を中断してください!」
周りにいる参加者たちはざわつき辺りを見渡す。
ブルック専務はすぐさま小型マイクで警備員を呼び出した。
「皆さん、落ち着いてください。まず皆さんは安全です。大丈夫ですよ」
警備員が駆け付け会議室の中へ入って来ると盗聴器を自動追跡する小型ドローンを会議室の中へ数機、解き放った。机の下に隠れていたミニカーを発見し追跡を開始する。
ミニカーは会議室の中を走り回っていたが徐々にそのスピードは失速していき、最後は警備員が踏みつけて、その動きを止めた。
警備員はミニカーを拾い上げ、ブルック専務に盗聴器を回収したことを報告し会議室を出て行った。
その後、ドアはしっかりと施錠され、会合は仕切り直しで再開されるのだった。
ブルック専務「皆さん、静粛に。では、今から『Angel Descent計画』の次の構想についてお話していきたいと思います。お手元の資料の3ページ目をご覧ください。」
その後、1時間に渡る会合が終了した。
「お忘れ物がないようにお気をつけください。では、入り口側の方から順にご退席ください」
ブルック専務は参加者の退出を誘導したが盗聴器を発見してくれた女性を引き留めた。
「あっ!ちょっとキミ、あとで話したいことがある。いいかな?」
「はい、なんでしょう?私は今からメーカーと打ち合わせがあります。名刺をお渡ししますね」
ブルック専務は彼女から名刺を受け取った。
彼女の名前はゲレーテ・ヘンライン。
名刺には名前と電話番号、メールアドレスが記載されていた。
「わかった。ありがとう、連絡するよ」
そういうと彼女に手を振った。
彼女はそっと微笑んで会議室をあとにした。
その美貌と引き締まった体のライン、胸の大きさに目を奪われた。
男なら知り合うきっかけがあれば彼女をほっておくわけがないだろう。
SSBR建物の5階まで火災報知器の形をしたドローンは移動していた。
照明器具の近くで爪を立てて天井に穴を開け、ピッタリとくついて動きを止めた。
SSBRの外門の傍に路上駐車していた大きなRV車のエンジンが突然かかり、走り去って行く。
https://note.com/hiroumimetavarse/n/n1338781ce3e2?app_launch=false
画像はnoteに置いています。




