狂人
『UNIT-8』の活躍が目まぐるしく、リーダーのフロラン率いるチームはネオグライドでも一目置かれる存在へと変わっていた。
ランクは中堅上位だが複数の上位チームと戦っても引けを取らない戦いぶりを見せている。前の戦いでネオグライドのAIが投入したbotである『クラッシュマスター』を2体、撃破した実績を持つ。
あいにく時間切れで残りの『クラッシュマスター』2体は倒し切ることができなかったが、それでも『The Living Corpse』のリーダーであるエドメが不正プログラムを使ってチーターになっていたことや他のチームも強かったことを鑑みると紛れもなく『UNIT-8』のメンバーは猛者だった。
酒場で闇賭博をやっている奴らから『UNIT-8』は特に人気があり、中堅クラスで上位チームに勝つのでオッズが高かった。『UNIT-8』が神格化されるのも時間の問題だ。
今日は月1回の研究所で問診を受ける日だ。世界大戦のときに上半身しか残らなかった体を元に戻してくれたのはイシドール・ラチエ博士だった。
オレは博士に感謝している。あのとき博士が体を治してくれていなかったら
「こうして捕虜にした女3人と一緒に暮らせていなかったはずだからな」
今、思い返しても最後の戦場は散々だった。
目を閉じればあのシーンが蘇る。
仲間の兵士がフロランのほうに向かって叫んでいる
「危ない!避けろ!」
あのときの
『兵士が叫ぶ声』 『戦闘機が近づいてくる音』 『マシンガンの連射』
『地面の土が跳ね上がりながら迫って来る恐怖』 『ミサイルの着弾』
すべてがスローモーションで何度も頭の中で再生されている。
突然、視界が真っ暗になり気づいたときには医務室のベッドの上だった。
そのとき確かにオレの体は上半身しか残っていなかったのだ。
フロランは自分の手を不思議そうに見つめていた。
昔、手の甲にキズがあったはずだがそれが今はキレイに治っている。
下半身だけの手術じゃなく、もっと大掛かりな手術だったのかもしれないな・・・。
そんな過去のことはどうでもいい。今はこうしてベッドの上で3人の女を抱き枕にオレは生きている。
薄暗い部屋の中、裸の女3人がぐったりと朽ち果てている。
汗にまみれた体をそのままにベッドに横たわって・・・興奮冷めやらぬ中、呼吸が荒い。
フロランはベッドから起き上がった。
「オレは今から研究所に行く。オレが帰宅するまでにベッドをキレイにしろ」
男らしく強い口調で命令した。
ひとりの女が返事をする「わかったわ」
そういうと女はまた布団に顔を埋めた。
研究所に着き、いつものようにラチエ博士にスマートフォンから連絡する。
「博士、ドアの前に着いたぜ」
「おお、来たかフロラン。ドアのロックを解除したよ」
博士が返事をしてすぐにドアのロックが解除された『カチッ』という音が聴こえる。
研究所の奥の研究室にはラチエ博士が常駐していた。
書類整理やパソコン操作、実験サンプルの回収で慌ただしく動き回っている。
それが一段落するのをフロランは椅子に座って待っている。
いつもの光景、普段の何気ない一場面だったはずだ。
しかし、何か違和感を感じる・・・。
壁一面にセキュリティ用のモニターが並んでいるが、そのモニターの1つに研究室が映し出されている。
そこに映っているのは博士のはずだが円筒形のガラス越しに脳を眺めているのだ・・・。
(ここにいる博士と動作が違う。なぜ?)
フロラン「なぁ博士、博士って双子だったのか?
あっちのモニターに映っている博士は瓶に入った脳を見ているのに、こっちにいる博士はパソコンを叩いてる。変じゃねーか?」
フロランからすれば何気ない言葉と疑問だった。しかし、イシドール・ラチエ博士は目を見開いて驚き、青ざめた・・・。
「AIに入力した実行命令が間違っていたのか・・・?」
ラチエ博士は独り言を呟き、考え込んだ。
フロラン「おいおい・・・マジなのかよ。深刻すぎねーか」
その言葉をよそに、目の前にいるラチエ博士は考え込んだまま動かない。
しかし、モニター越しのラチエ博士の目線がこちらに向いて、フロランに向かって話しかけてきた。
ラチエ博士「AIに『私以外を映せ』と実行命令を入力したはずなのに、こんなことになるなんて・・・本当はキミに話さなければいけないことがあるんだ」
博士は真剣な表情でモニター越しのフロランに眼差しを向けて真摯に訴えかけてくる。
フロラン「話さなければいけないこと?
なんだよ、博士。水臭せーな、命の恩人の言葉はちゃんとオレも話を聞くぜ」
世界大戦の大惨事から命を救ってくれた博士に敬意を示した。
しかし、博士が打ち明けたことは余りにも衝撃的だった。
ラチエ博士「今から言うことをよく聞いてほしい。君は今、疑似現実の中にいる。
政府の目を欺き、私が君のために作った世界で君は生きている。
つまり本当の現実の世界にキミは存在していないんだ」
フロラン「ラチエ博士、何を言っているかよくわからないぜ!
確かにオレはここに存在している。冗談はよしてくれよ」
耳を疑うような話に拒否反応を示した。
ラチエ博士「ムリもない。そんな現実は受け入れ難いだろう。
しかし、私の目の前にある脳は一体誰のものだと思う?」
博士の問いかけにフロランはギョッとした。
思ってもみなかったことが現実かもしれないのだ。
「まさかオレの脳だなんて言わないよな・・・?」
フロランが恐る恐る事実を確かめる。
ラチエ博士「残酷な現実を突きつけて申し訳ないんだが、この脳はキミのだよ」
その言葉を聞いてフロランが叫ぶ
「クソー!何が博士だ!この野郎!オレを騙しやがったな!」
一気に心拍数が上がり、脳波に異常をきたす、博士は測定器に映し出された脳波の異常を見てフロランを諭した。
「落ち着け!落ち着くんだ!感情を抑えろ!自我が崩壊するぞ!」
それでもフロランの怒りは収まらず、脳波は今まで見たことがない異常値を示していた。
パソコンの制御ソフトの画面に『Danger』の赤い文字が点灯した。
ラチエ博士「仕方ない。もう制御できない。キミは優秀な兵士だったよ、フロラン・・・・
だが、まだ死なせるわけにはいかない!」
博士は急いで机の引き出しの中から透明なケースを取り出した。
その中には色とりどりのNeon Dustが入っている。
博士は黒いNeon Dustを取り出すとフロランの脳が入った瓶の中に黒いNeon Dustを投入した。
ラチエ博士「私が軍事開発したNeon Dustの中でも、この黒いNeon Dustは最高傑作だ。
まだ人の脳に試したことはないがキミは私の実験に付き合ってくれるね?」
そういうと机の一番下の引き出しから兵士のパペット人形を取り出し左手に付けてあたかも兵士がしゃべっているように左手で人形を動かした。
パペット人形の兵士「もちろんですよぉ!ラチエ博士!あなたは天才です。オレの体は博士のもの!
体は実験でなくなって、もう脳しか残っていないけど存分に使ってぇ~!」
博士が自分以外に誰もいない研究室で腹話術をやっている。とてつもなく不気味だった。
博士が見つめる先には、さっき瓶に投入した黒いNeon Dustが溶液の中で泡を立てていた。
ブクブクブクッ・・・・・。
博士の目は狂気に満ちていた。
https://note.com/hiroumimetavarse/n/n523629d682ce?app_launch=false
画像はnoteにあります。
エロと衝撃のある画像ですので閲覧はご注意ください。




