Quick Draw
中堅上位の『戦術研究所』のメンバーをあっさり倒してしまったノアは『Lv.BEYONDER』と合流するためにフィールドの中央に向かった。到着するとそこには誰もいなかった。
「あれ?誰もいないぞ」
辺りを見渡したが敵がいる様子がなかった。
「おかしいな・・・静かすぎる。まだ1分はあるぞ」
こっちでも何か異変があったのかもしれない。フィールド中央に敵がいないということは敵のどこかのスタート地点付近まで攻めていることを意味する。
ノアは通信をライブに切り替えた。
レナータに連絡を取る。
「聴こえるか?レナータ。みんなはどこにいるんだ?」
2秒ほど間隔を開けてから応答があった。
「ええ、聴こえるわ。今、『Iron Rain』のスタート地点よ」
そういうと通信が切れた。
「どういうこと?中堅上位の『Iron Rain』を追い詰めたのか?」
とりあえず行ってみるか、ノアは『Iron Rain』のスタート地点に向かった。
その頃『Iron Rain』の生き残りはひとりだけになっていた。スタート地点まで後退しリーダーのペールは既にやられていた。生き残ったのはキリルひとりだけである。
キリル「クソ!あの女、なんなんだ・・・。動きが普通じゃねー!オレたちは『Iron Rain』だぞ!バカヤロー!」
中堅上位のプライドもクソもない。追い詰められてヘイトの言葉を吐いた。
気づけばキリルの目の前にある煙幕弾が煙を噴き出した。
「うわぁっ!煙・・・」
キリルは考える。どうせ煙から抜け出してもそこを集中砲火されるだけだ。
それなら持っているアイテムで何かできないか・・・。
最後の悪あがきだった。そうこう考えているうちにみるみるキリルの体は煙に包まれていく。
アイテム欄には信号弾と閃光弾が残っている。
キリルは煙の中から信号弾を真上に打ち上げた。
一瞬だがファンとアントンが信号弾に気を取られ標準を合わせていたスコープから顔を離して目視で確認する。
ファンとアントンが別々の場所で異口同音に声を発する。
「味方が誰もいないのに信号弾?」
次にライフルのスコープを覗き込むと今度は閃光弾が打ち上げられた。
ふたりは別々の場所で狙撃する姿勢に構えたがキリルの策にまんまと引っかかる。
閃光をスコープで覗いてしまったふたり・・・。
ファン「クソ!やられたぜ」
アントン「あー!見えない」
それぞれ目がやられて狙撃する姿勢から体勢を起こした。
キリルの策は敵を倒すためではない。
ただの時間稼ぎだ。
ファンとアントンが狙撃できない隙に一目散に逃げ出すキリル。
中堅ランクの意地を見せた。
(全滅は避けたい!)
残り時間30秒との闘いだ。
「オレたち『Iron Rain』が敵に弾丸を浴びせられたなんて笑えねー!ひとりでも生き残ってやるぜ」
キリルが巨大なドミノの影に隠れる。するとそこに声をかける人物がいた。
「そんなところに隠れてもムダだよ」
声がしたほうに目をやると前方に立っていたのは”あの女”だ。
両手にハンドガンを持って近づいて来る。
キリルは少しずつ巨大なドミノの物陰に隠れるように体をズラしていった。
(クソ!なんなんだ。あの女!3つのチームをひとりで蹴散らせやがった。下位ランクにこんな奴がいたか!?聞いたこともないぞ)
逃げ場をなくし追い詰められたのは事実だ。しかし、あの女は正面から歩いて来ている。
身を隠せるドミノは近くにない。キリルの中で勝てる勝算が沸いた。
「死ね!クソ女!」
レナータが十分に近づいてきたところを巨大なドミノの物陰から飛び出してサブマシンガンをぶっ放す!
(至近距離から中距離をカバーできる《《コイツ》》ならハンドガンよりも有利だ。いける!勝てる!)
キリルの期待は甘かった。
キリルがサブマシンガンを撃った方向にいたレナータに弾は当たらず彼女の体をすり抜けていく。
キリルの背後から声がする。
「こっちだよ、バーカ!」
振り返るとレナータが銃を構えてそこに立っていた。
「幻影ライトか・・・」
振り向いた瞬間、ハンドガンの連射がキリルの体を貫いた。
キリルはあっけなく倒されて消えた。
ゲームの残り時間は10秒。
余った時間は勝利したチームにボーナスポイントとして加算される。
『Lv.BEYONDER』はノアとレナータの最悪の調子からスタートしたが他のチームを全滅させて勝利した。格上相手にこのチームが勝ったのを見て酒場の大型モニターで観戦する客たちは盛り上がりを見せていた。
観客「おい!見ろよ。まさかの大逆転だぜ!『Lv.BEYONDER』に賭けてよかったぜ!オッズ10倍だからな。今年の家のローン全部払えちまうな。ハハハッ♪」
観戦しているのはネオグライドを楽しんでいる客だけはなかった。もちろん闇賭博も横行している。
見事、初勝利した『Lv.BEYONDER』には特別ボーナスが付与された。制限時間10秒もボーナスとして加算され、倒した人数のポイントも大きかった。
4人はお互いに抱き合って勝利を称えあった。しばらくしてノアとレナータが見つめ合う。
レナータ「ノア・・・。一緒に買い物に行かない?」
彼女から誘ってきたのは今回が初めてだ。
「いいよ」
ノアは快く承諾した。
(きっと特別ボーナスと他のポイントと合わせてお金がに余裕ができたから武器か最新のスーツが欲しいんだろうな、僕も買うつもりだ。)
ふたりはV-HUBに出かけ1階のショーケースに行くと最新のハプティックスーツの前で立ち止まり、同じ物を買うことに決めた。
https://note.com/hiroumimetavarse/n/n4c894e19c11a?app_launch=false
イメージ画像はnoteに置いています。




