合成ドラッグ『Neon Dust』
スマートグラスを外してノアは服を脱ぎ、浴室でシャワーを浴びて体をキレイに洗うと浴槽でお湯に浸かって今日あったことをいろいろ思い出していく。
V-HUBでレナータとばったり会って一緒に映画を見たこと。
抱きつかれてドキドキした。
公園で金色のドレスに身を包んだ美しい女性に話しかけられたこと。
前かがみになったときに胸がすごかった。紫色のドラッグを取る手が震えた。
紫色のドラッグを買ったから後でベランダに届けられる予定の小包を確認すること。
それもとっておきの楽しみだ。なんせ初めて体験するからな、合成ドラッグってやつを。
いろいろあったなぁと頭の中の回想を楽しむ。
ホラー映画の怖かった場面でレナータは僕の手を握り締めて抱きついてきた。そのときが一番印象に残っている。ゲーミングウェアでもゾクゾクするほど肌が触れ合うような感触があった。
そういえばV-HUBでぶつかって来た男が落した球を持ったままだったことを急に思い出した。
ニュース番組で報道され、男が爆死したことは知っていたがその男が落した球を拾ったことをすっかり忘れていた。どうせ大したものじゃないだろうけどアレは一体何に使うものなのだろうか?
ノアが浴槽に浸かって、あれこれ考えているとき、V-HUBの屋上ではレナータがレイヴパーティに参加していた。
DJが流すダンスミュージックに合わせてレナータは踊っている。
ゲストはテクノ系の有名なアーティストだ。
それがレナータの目当てだった。
好きな曲が多く、同じ趣味の仲間と集まって踊りたかったからイベントに参加した。
イベントの中盤で踊り疲れてきたころレナータが椅子に座っているとバイヤーが近づいて来た。
「お嬢ちゃん可愛いね♪リアルでもそんなに可愛いの?
ちょっと激しく踊りすぎて疲れてるみたいだけどイベント最後まで楽しみたいんだったらNeon Dustキメない?」
レナータは気分がノッていたのでドラッグを買うことにした。
「いいよ、買ってあげる。いくら?」
男が指を2本立てて「20ドル」と言った。
レナータは目の前の空間に決済画面を表示させてQRコードを生成した。
「ほら、Neon Dustは?」
レナータが手を出してせがむ。
彼女が感情を出して素直に欲望を見せるのは珍しかった。
「おお♪いいね、キミ。そうじゃないとこのイベントは楽しめないよね♪」
男はレナータの手にNeon Dustを手渡すと次のターゲットを求めて去って行った。
手渡されたNeon Dustをアイテム欄に入れて「使う」を押す。
これで10分後に現実世界のマンションにドローンがNeon Dustを送り届けてくれる。
オートパイロットのドローンがどこからともなく現れて小包をそっと置いて去っていく。
レナータはスマートグラスを外して浴室でシャワーを浴びるとバスタオルに身を包んで冷蔵庫を開け、ペットボトルのお水を取り出した。
ベランダを確認すると小包が置いてあった。
ドローンが届けてくれたようだ。
箱を開けて中に入っているNeon Dustを確認すると袋には3錠入っていた。
袋に入っている1粒のNeon Dustをテーブルに置いて、気合を入れる。
レナータ「さっそくはじめるか!」
ドラッグと水を口に含むと一気に体内に流し込んだ。
即効性のあるNeon Dustの効果で体が熱を帯びてくるとスマートグラスを付け、さっきのV-HUBの屋上で開催されていたレイブパーティへもう一度、参加する。
手元にあるお酒を飲みながらみんなが踊っているほうに近づいて曲のリズムに合わせて体を弾ませる。序盤よりも中盤からの曲のほうがアップテンポになってDJのパフォーマンスと共に盛り上がりを見せていた。
みんなが体を振り乱して踊る。
さっき摂取したNeon Dustの効果はじわじわと大きくなり、レナータの視界は歪んだ。
一瞬だが体にノイズが走った。
レナータのアバターに縦の平行な線模様が駆け抜けていった。
周りにいる人からはアバターが消えかけたように見えたが、それは一瞬の錯覚だったのだろうか・・・・?
レナータはそのまま終盤まで踊り続け、パーティー会場で仰向けになって倒れ込んだ。
記憶にないがどうやら私は笑っていたらしい。さぞかし不気味だっただろう・・・。
レイヴパーティで仲良くなった人が私の不気味な写真をスマートフォンに送ってきてくれた。
(まぁ面白いからヨシとしよう。下からのアングルのパンツの画像はいらなかったけどね)
翌朝、頭痛と吐き気にうなされた。
「イテテ・・・、ちょっとやりすぎちゃった。でも、最高に気持ちよかった♪」
コップのお水を飲んでから二度寝した。
ーーーレナータがV-HUBの屋上でレイヴパーティに参加して踊っているころーーーー
ノアはお風呂から上がりバスローブを着てベランダに小包が届いているかを確認した。
小包がそこに置かれていてるのを見て、それを手に取って部屋の中へ入った。
箱のフタを開けると中には紫色のNeon Dustが袋の中に1粒だけ入っている。
ノア「これレイヴパーティで使うNeon Dustじゃん。あの金色のドレスを着たお姉さんってバイヤーだったの・・・?」
(たしかNeon Dustって青と白だった気がするが・・・)
「中央公園の噴水の前の石段に座っていたキレイなお姉さんがまさかバイヤーだったとは考えにくいが、かといって実際に家に届いたのはコレだからな、疑う余地はない。さてどうするか?」
悩んだ末にNeon Dustを試すことにした。
まだ16才だからレイヴパーティに参加はできないが、もし今後レナータと一緒にレイヴパーティに参加することがあったらNeon Dustにビビるところは見せたくない。
そのときは「ああ、僕もそれぐらい使ったことあるよと言ってカッコつけていたい!」
ダサいと思われるのはイヤだ。
「よし!使おう。一回ヤッてみよう」
興味本位でNeon Dustを試すことにした。コップに水を注ぎ、紫色のNeon Dustを左手に置いて、右手に水が入ったコップを持った。
ノアは、生唾を飲み込んで躊躇った。
完全にビビッている!
「いや、やるんだ!チャンスは今なんだ!」
そう自分に言い聞かせて、紫色のNeon Dustを口の中に放り込んで水で一気に体内に流し込んだ。
どんな作用があるかわからないNeon Dustを飲んだので気分が落ち着かなくなりベッドで横になった。
しばらくして体がだんだん熱くなってくると気分が高揚して頭の中が真っ白になっていく。
とんでもなくハイになる。
高揚感、幸福感、万能感、ただベッドで横になっているだけなのに心の中ですべてが満たされていく。
そりゃ病みつきになるわけだ。
レイヴパーティに参加する若者の多くはNeon Dustと仮想SEXを楽しんでいるといわれている。
現実世界が空虚になり、仮想現実の中で心を満たそうとする若者の流行りだそうだ。
時々、その現象はニュースで取り上げられている。
ノアはハイになってレナータとそんなことになったらどうしよう・・・と頭の中で妄想を膨らませた。
それと同時に今、誰かとヤッてるかも・・・というイヤな想像も浮かんだ。
しかし、気持ちは沈まず心はどんどん高揚してゆく。本当は叫び出したい気持ちでいっぱいだった。
視界が歪み、部屋がぐるぐると回っているように見えはじめた・・・。
翌朝、昨日のことはよく覚えていない。体がひどく疲れて頭痛と吐き気に襲われてきつい。
ノアはコップの水を飲んだ。
よし、二度寝しよう。
https://note.com/hiroumimetavarse/n/n91396891e32d
画像はnoteに置いています。今回ちょっとエロいです。




