紐づけされた世界
ここは仮想警察庁の取調室。
V-HUBで複数の刑事と特殊部隊によって取り押さえられた男が手錠をかけられたままパイプ椅子に座らされていた。男はこれから尋問を受ける。
スーツ姿の刑事、ディムとアキムが男の身元を調査する。
ディム「このアカウントIDは誰のものだ?」
男は答える
「オレのだよ」
それは明らかにウソだった。
すかさずアキムが声を荒げる
「ウソをつくな!そんなわけがないだろ!」
手に持っていた黒い台帳を机に叩きつけた。
男は、AIの刑事を相手にシラを切ろうとしているがその言動と行動にはまったく整合性が取れていなかった。呆れた男だと言わんばかりの顔でディムがため息をつく。
ディム「そのアカウントが仮にお前のものだとして、どうしてスマートグラスを外さないんだ?ログアウトすればこんなところから一瞬でおさらばできるだろ?」
できるだけ嫌味たらしく男に言葉を投げかけた。
精神的な屈辱を与えることでここにはいたくないと思わせるのが狙いだ。
アキム「何時間でも何年でもオレたちはお前に付き合うぞ。アカウント名はエリーサ・ホンコネンになっているが、これは女性の名前だよな?」
そういうと両手を広げて(なぜ?)のポーズを取った。
続けていう
「お前がトランスジェンダーだったとして生身は女性なのか?それでアバターを男にするにしても、そんなダサい恰好にはしないよな?」
この刑事ふたりの口調は非常に皮肉が効いていた。相手の盲点をチクチクと攻撃する。
男は黙ってふたりの刑事の話を聞き流している。
そこにディムが楽しげに話しはじめる。
「実は、お前の身元は既に特定しているんだ。お前の性別も名前もこの際、関係ない。この意味がわかるか?」
「いや、わからない」男が答えた。
「じゃあ重要なことを教えよう。エリーサ・ホンコネンのマンションは今、包囲されている」
男が感情を露わにして大きな声を出した。
「クソ野郎!」
そういうと男はバタバタと動き回った。
ディムとアキムが男を押さえつけ、動きを制止しようとするが・・・男はその場から姿を消してしまった。ふたりは顔を見合わせて何が起きたのか頭の中を整理して考えている。
一瞬の間があいた後、ディムはスマートフォンを取り出して急いで電話をかける。
現実世界の刑事に男に動きがあったことを伝えた。
エリーサ・ホンコネンのマンションのドアの前と裏手の窓際で待機している警察官たちが無線で連絡を取り合い、周囲に異常がないかを確認する。ここは現実世界だ。ドアの前にいる刑事に「異常なし」と伝えると刑事がタイミングを見計って合図を送り、エリーサ・ホンコネンが借りていたマンションに一斉に突入していく。
刑事「今だ!行くぞ」
その声と共にドアと窓のふた手から同時に部屋の中に警察官たちが突入した。
VRゴーグルが頭から外れた状態で横たわっているひとりの男が目に入った。
体にはゲーミングウェアを装着している。間違いなく、この男だ!
「もうおしまいだ。オレは助からねぇ!」
男が喚いている。
よく見ると頭部から血が垂れ流れていた。ポタポタと血が床に垂れている。
刑事は不審に思いVRゴーグルを手に取るとピコッピコッピコッっと秒針を刻む電子音が聴こえた。
(これはヤバイ!!!)
「爆弾だ!逃げろ!」刑事が叫んだ。
それと同時にエリーサ・ホンコネンが住んでいたマンションは爆発で吹き飛び、凄まじい爆発音とその衝撃波で窓ガラスがすべて割れて飛び散り、部屋に入った者は誰も助からなかった。
マンションの一室が焼け焦げ、辺り一面が真っ黒な消し炭と化した。
それらの事柄は大々的にニュースで取り上げられ、報道番組でアナウンサーが事件を時系列ごとに説明してゆく、各国のメディアがこぞって何度も報道した。
ーー数日後ーー
少しずつ情報が開示され、謎に包まれていた部分がやっと形を成してきた。
数年間、一度も変わることのなかった女性アバターだったが、それが突然、男の姿に変わった。
それをエルディオスを運営するAIが不審に思い見逃さなかった。念のためマーキングをしてアバターの様子をモニタリングしていたら彼女のアカウントが物理的にハッキングされていると後に発覚した。
数週間、ログインした記録がなかった彼女が突然アバターを男性に切り替えるのは不自然すぎた。
デジタル修了証の性別も女性である。
意味を伴わない不自然な行動があった場合は、秩序を守るために作られた『仮想警察庁』に委託される。
そのあとは仮想警察庁と現実世界の警察がお互いに連携しながら事件性がないかを調査する。
調査の結果、エリーサ・ホンコネンは数週間前に行方不明になっていることがわかった。
彼女が借りていたマンションの賃貸料が未払いとなった記録がある。しかし、その部屋には男が出入りしていたという目撃情報が入り、事件性は《《黒》》と判断されて案件は刑事の手に渡された。
一方、エルディオスの街ではエリーサ・ホンコネンのアバターが中央公園でバイヤーと接触していることがわかっている。
次の出来事が大きな手掛かりとなった。
仮想警察庁の刑事の出番が来た。すでに容疑者はマークされていたのだ。
バイヤーとの接触は大きな手掛かりである。
中央公園で容疑者を追跡していた刑事たちが公園のあちこちに散らばって一般人を装って待機している。そこへ容疑者がやってきてバイヤーとコンタクトを取り始めた。
男「早く頼む。この仕事が終わらないと大変なことになるんだ」
バイヤー「そう焦んなって、ちゃんと上の人から話は聞いてるよ。アレ、先に寄こしな」
(ん?オレの立っている位置から見えるスーツのヤツが動いたぞ・・・なんか変だ)
バイヤーがさりげなく体をストレッチするフリをして辺りを見渡した。
(間違いない!刑事に囲まれてやがる!)
バイヤー「おい!お前つけられてるじゃねーか!話が違うぞ」
バイヤーは、すぐさまログアウトして消えた。
その後、容疑者はログアウトせずに逃走を始めた・・・というわけだ。
全貌が明らかになってきたが容疑者とバイヤーが何を取引しようとしていたのかまではわからなかった。
これが一連の事件の真相である。
報道番組では殉職された刑事たちを弔い、容疑者のバックにいる組織も必ず突き止めると意気込んでいた。葬儀は仮想現実と現実世界の両方で行われた。
https://note.com/hiroumimetavarse/n/n8ac16e6bebc0?app_launch=false
noteにAIで生成した画像を置いています。よかったら見てください。




