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Meta Hack Flow  作者: hiroumi


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網の中の魚

酒場をあとにしたノアはマルチバースの拠点『エルディオスの街』にある中央公園(セントラルスクエア)を抜けてV-HUB(ブイハブ)に向かった。


落ち込んだ気分を変えるために持っているアイテムを一覧表示にして服装を変更する。胸に大きなNのロゴが入った紺色のスタジアムジャンパーにジーパンとブーツを選び決定ボタンを押す。瞬時にノアが着ている服装が変わった。


V-HUBに入るといつものように1階のショーケースに入ったアイテムを見て回る。ここではe-sportsで使える電子機器が販売されていて仮想現実の中にある仮想店舗(バーチャルストア)でハード機器が買えるのがこの店の強みである。もちろんV-HUBを運営する企業はエルディオスの街に土地を借りているので毎月、巨額の賃貸料を払っている。例え10万ドルの賃貸料を払ったとしても世界大戦後に16億人になった人類の約80%以上が仮想現実を利用しているので、その賃貸料は安いものである。世界中に店舗を展開するよりもマルチバースの拠点となる街に1つ店を構えたほうがコストパフォーマンスが良かった。


ノアはショーケースの前で足を止めると妖美な紫のライトに照らされた『ハプティックスーツ』が展示されているのを見て、我を忘れた。


電気筋肉刺激(EMS)電気神経刺激(TENS)を利用した感覚フィードバックが可能となったスーツはプレイヤーに絶大な人気を誇る。


この最新モデルは、モーショントラッキングの誤差が起きない優れものだ。V-HUBで購入すれば2週間以内に自宅に商品が届けられる。


ノアはまだ安価なゲーミングウェアと手につけたリストバンドを使ってモーションキャプチャを行っていた。実は、この展示されている最新のハプティックスーツが欲しくて堪らなかった。しばらくショーケースの前で展示品を眺めているとだんだん辺りが騒がしくなって来ていたが、それにはまったく気づかなかった。


ざわついている方から人混みをかき分けて走って来た男がノアとぶつかる。


その衝撃でふたりとも床に倒れ込んだ。


ノア「なんだ?何が起きたんだ・・・」


男は急いで立ち上がり、焦っているのかエスカレータを走りながら2階へ昇って行った。

倒れたノアのことなど気にも止めていない様子だ。


あまりの咄嗟(とっさ)の出来事に文句のひとつも言えなかった。振り返ると、今度はさっきの男を追いかけて複数の男が走って来る。


さっきの男と同様に複数の男がそのままエスカレータを走りながら2階へと昇って行った。


ノア「どういうこと?何かあったのか・・・」


不穏な空気の中、胸騒ぎがする。よほど何かをやらかさないと仮想現実でそこまで人に追われることはないだろう。


(さっきの男は逃亡しているようだったが・・・・?)


ノアは、さっきぶつかってきた男が床に何かのアイテムを落としていることに気がついた。手に収まるほどの大きさの丸い球だ。


「なんだ、これ?」


その球は中央からプラズマを発生させ不気味な輝きを放っていた。


ノアはその球を拾うとこっそりポケットに仕舞った。周りにいる人々は逃亡している男と追っている複数の男に気を取られ、誰も球のことなど見ていない。気づいたのはノアだけだった。


一方、ビルの屋上には特殊部隊を乗せたヘリが到着していた。隊員たちはヘリを降りると駆け足でビルの中へ入って行く。地上から追いかけてきた複数の男たちと上空から降り立った特殊部隊に挟み撃ちにされ逃亡者はまるで()()()()()である。


この包囲網から()(おお)せる(すべ)はない。


複数で追いかけていた男たちは刑事だった。そして、上空から降り立った特殊部隊と合わせてどちらもAIである。ひとりひとりが状況を判断して物事の合理性と法律を理解している。


その姿は生身の人間と大して変わらない。ただ仮想現実の中に存在しているだけで普通に生活しているし結婚したり退職もする。死は存在しないが国を統括するAIに時間が来たら削除される。それを死と呼ぶかどうかは別として・・・。


その周期は10年に設定されている。学習を重ねて個性を持ったAIを軌道修正してアップデートするよりも新たにAIをスタートさせたほうがパソコンの負荷は軽いらしい。それに軌道修正したAIにバグが起きると後々面倒なので周期的に()()()()を替えたほうがリスクが少ないようだ。


国を統括するAIが警察官や特殊部隊に扮したAIを10年周期で削除するといっても()()()()()はクラウドコンピュータに保存されている。


データだけが残り、仮想現実からは姿を消す。


仮想現実のアップデートに合わせて、警察官や特殊部隊がリフレッシュされるのだ。それは時代の移り変わりと似ている。ずっとそのままで不変なものなど存在しない。


ビルの4階付近で逃亡していた男は拘束された。


複数の刑事と特殊部隊が男を取り押さえている。仮想現実の街にある店の中でド派手な逮捕劇が披露され、周りにいたプレイヤーたちは呆気にとられた。国を統括するAIによる絶対的な権力をまざまざと見せつけられたような気分だ。”自由”であると同時に”支配”されている感覚を味わった。


ネオグライドで最強のbot『クラッシュマスター』を投入したり最近のアップデート後からの街の様子はどこかおかしい。e-sportsもエルディオスの街も不穏な空気が漂っている。


一番おかしいのは、『()()()()()』逃亡者だ。


スマートグラスを外してログアウトすれば、わざわざ仮想現実の中で逃げる必要はなかったのではないか?


誰もがそう思う。きっとそれができない理由があったに違いない。


今日の出来事は、謎に満ちていた。


https://note.com/hiroumimetavarse/n/n2a314414d47c?app_launch=false


画像生成AIで作った画像が見たい方はnoteをご覧ください。

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