第7話 村人B、封鋼刃ミュリアを鍛え直す
「そういや、クラウス。おまえミュリアは知ってるだろ?」
クラウスが目を見開く。
「まさか、“封鋼刃ミュリア”か? お前が三代前の勇者に作った、あの……?」
ロウはうなずく。
「今じゃ見る影もないがな。……だけど」
彼は静かに、鍛冶台にそれを置く。
「直せる。いや、鍛え直してやるさ。そして……俺はな、クラウス。そろそろ“あれ”を回収しに行くつもりだ。」
その言葉に、クラウスが表情を引き締める。
「……本気か?」
「ああ。やっぱり“神滅装”を、このままにしておくわけにはいかない。そして封印場所を思い出したんだよ。」
「本当か?」
「あぁ。間違いない。"あの場所だ"」
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鍛冶場に、再び火が入った。
ロウの動きは一分の無駄もない。溶けた金属、走る魔力、刻まれる精密な魔紋。すべてが過去の神技を思わせる所作だった。
夜が明ける頃、火床の炎が一際大きくうねる。
そして——。
「できた。」
ロウが手渡した剣は、以前のミュリアとはまったく違っていた。
透き通るような蒼銀の刃に、封印術式を象るルーンが細やかに浮かび上がる。柄には新たな刻印。魔力が自然と集まり、持つ者に馴染むように反応する。
「これが……」
「封鋼刃ミュリア・リビルド。お前専用に最適化してある。」
エリナがそっと握ると、刃が微かに共鳴した。
「……ありがとうございます、ロウさん。」
「礼は、こいつで誰かを守ってからにしな。」
クラウスが口笛を吹く。
「やっぱりお前の鍛冶は異常だな。勇者の時代が一人歩きしてた理由、今さら納得したよ。」
ロウは鍛冶道具を片付けながら、ふと口を開いた。
「それじゃあ、クラウス。行くぞ、"あの場所"へ」
「ロウ……やっぱり行くんだな?」
ロウの眼差しは真っ直ぐだった。その雰囲気が伝播した。
そして——。
「私も行きます。」
エリナがミュリア・リビルドを携え、はっきりと言った。
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こうして三人の旅路が始まる。
目指すは、かつてロウが最も恐れた“自身の最高傑作”が眠る場所——《終焉ノ坩堝{エンド・クルーシブル}》へ。