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公爵様と私  作者: ユタニ
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4.美しい女、潔い女、芯の強い女


「こういう経験は無いので、やり方が分かりません。最初は殿方に全てお任せすると聞いております」


ツイスティがそのように言って、俺は心底驚いた。てっきり執事の息子とそういう仲だと思っていたからだ。

でないと、17才にもなって、服が透けるほど水を掛け合って遊ぶだろうか。




ツイスティと初めて会ったのは、彼女が12才の時だった。艶やかな明るい茶色の髪に、理知的なコバルトブルーの瞳の娘。

庭師のジョンが、後継となる男の子を探しに行ったはずの孤児院で、目が合って連れて帰ってきてしまった娘。

「驚いたわよ。でも確かに可愛い子なの」と母も言っていた。


彼女はコバルトブルーの瞳をキラキラさせて俺を見てきた。その顔は完全に俺を王子様だと思っている顔で、これは危険だと思った。

これは、俺を堕落させる女だと直感した。


だから彼女を無視した。




軍隊に入り、己を律する事を学び、完璧な公爵として領地に戻ると、ツイスティは美しい17才の女になっていた。

瑞々しい絵を描き、健やかで、少し気の強い女。

隣にはきちんと似合いの恋人もいた。執事の息子だ。


おままごとのような2人の様子に嫌気が差して、少し遊んでみると、「クロード、あの子に本気になってはいけませんよ」と母から注意された。

母も、あの娘の美しさは危険だと思っているようだ。


注意されるまでもなく、本気になるつもりはない。婚約者となるマレーネにも不満はない。賢い貴族の女だ。

俺はまた、ツイスティに無関心を通した。





そしてその冬のある日、会員制のクラブで、ぴったりとした黒のドレスに身を包んだツイスティを見つけた。

体の線が丸わかりのそんな彼女を、このままここに置いておく訳にはいかなかった。


すぐに連れ出して事情を聞く。

よくある話で、しょうもない金額だ。


馬鹿らしくなって、からかうつもりで愛人を提案すると、狼狽えもせずに断られた。


おまけに、人生を決める、とは大袈裟だ。

俺の愛人なんて、俺が飽きるまでの間だけだと言うのに。


腹が立って、一晩と言う。

愛人に飽きるまでの、1週間か1ヶ月も、一晩もそんなに変わりはしない。


ツイスティは、諾と答えた。


部屋に入り、服を脱ぐように言うと、堂々とドレスを脱ぐ。潔い女だ。

潔い所は、なかなかいい。


金で買われたというのに、卑屈さも全く無い。

芯が強い女なのだろう。


誘惑するように言うと、それは無理だと言い、


そして、初めてだと言われた。


俺は心底びっくりした。

初めてだと?


初めての夜を、金で売るなよ。

そう思ったが、ここからただ添い寝する訳にもいかない。


シミーズ1枚のツイスティの手足はすらりと長く、均整の採れた体つきで、日に焼けてない部分の肌はとても白く、ほどかれた明るい茶色の髪の毛が流れる胸の膨らみは思ったよりも柔らかそうで、俺の体は昂っていた。

あの執事の息子が、指一本も触れずに大切にしている女、というのも体の昂りに一役買っていただろう。


ゆっくり彼女に近付いて、髪の毛を後ろへと流す。


初めての女なんて、面倒だと思いながらも、腕の中のツイスティは今まで俺が目にした事のない彼女で、必死さと可愛さがあって、出来るだけ優しくした。








***


予想に反して、公爵様は優しかった。

てっきり手荒く扱われるかと思っていたのに、どこまでも優しく、それに気のせいか少し切羽詰まってもいて、愛されていると誤解しそうになるくらいだった。


でも、私は金で買われた女だ。

公爵様はきっと、いつも仏頂面の私と寝てみる事に興がそそられただけに違いない。


そうだ、そうに違いない。

明け方、私は隣で眠る公爵様の顔を見る。とても長い睫毛が少し震えている。

寝顔は完璧に王子様だ。


私はそっとドレスを着ると、小切手を持って離れを出た。




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