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公爵様と私  作者: ユタニ
1/6

1.意地悪な王子は要らない

よろしくお願いします。

今晩か、明日にはさくっと完結予定です。


小公爵様、クロード・リステア様と対面したのは、私が12才の時で、小公爵様は17才だった。

小公爵様は、寄宿学校の夏休みを利用して、3年ぶりに領地のお屋敷に戻られていたのだ。


初めて見た小公爵様は、さらさらの金髪にすっと通った鼻筋、榛色の涼しげな目元で、お顔は彫刻のように綺麗だった。背は高く、足はびっくりするくらいに長くて、品の良いスリーピースを一分の隙なく着こなしたお姿は、絵本の中の王子様みたいで、私はぼーっとしてしまう。


「ツイスティです」

ジョンおじさんが私を紹介すると、小公爵様はちらりと私を見た。

榛色の瞳には全く温かさは感じられなかったけど、王子様に見られて私はドキドキした。


この王子様のような方がゆくゆくは爵位を継がれて公爵となり、その公爵様に私はお仕えするのだと思うと胸が高鳴った。粗相のないようにしっかりお仕えするぞ、と決意したのだ。


したのだが、、、


その決意は翌日には瓦解する。

この王子様、私に対してはとても性格が悪かったのだ。




小公爵様にお目通りをした次の日、私が庭で作業していると、小公爵様がお通りになったので、私は緊張しながら挨拶をした。


「し、小公爵様、おはようございます」


無視された。



、、、、、、は?



かなり驚いたけれど、(公爵家の使用人達は皆、厳しくしつけられているので、無視をする方などいない)この初回はまだ、私が土まみれで汚かったから、挨拶するのに気が引けられたのだろう、と思った。


でも、小公爵様は引き続き、私を無視した。

私がジョンおじさんと居る時は、ジョンおじさんだけに挨拶をして、私の事は、冷たい榛色の瞳で見るだけだ。


ジョンおじさんとは、にこやかに今年の薔薇の様子なんかをお話しされているが、私の事はいないものとして扱っているのが、私には分かった。


屋敷の使用人みんなに、小公爵様は節度と礼儀を持って接せられた。馴れ馴れしくは決してしなかったが、にこやかな態度は一貫していて、皆、小公爵様を若いのに立派な方だと言った。私以外は。


小公爵様は私には、常に冷たく臨まれた。冷たく見つめられ、私の存在を消してきた。

そして、小公爵様は、そういう意地悪を私にだけ分かるようにして、された。


私はすぐに小公爵様を嫌いになる。

まあ、私が嫌った所で、小公爵様は痛くも痒くもないのだが、私にだってプライドはある。

だから、嫌いになった。


私はその事を、執事の息子のサムエルにだけ話した。サムエルは私の1つ年上で、歳が近かったので、10才で私が公爵家に来てからの仲良しだ。


「えー、小公爵様は、俺にもご挨拶してくださるよ。勉強頑張っているようですね、とも言ってくださる、何かの間違いじゃないか?」

サムエルは目を見開いて驚いて、疑っていたけど、本当の事だ。


「本当の本当よ。だから、私、小公爵様、大嫌いなの」

私はサムエルにそう宣言して、少しだけ、清々した。


私には、サムエルもジョンおじさんも、お菓子をくれるコック長さんも、リボンをくれる侍女さんも、私の絵を、なかなか上手ね、と誉めてくれる奥様もいる。

私の世界に王子様はいらないのだ。あんな意地悪な王子様なら尚更だ。


そして、小公爵様は夏の帰省の間中、私を時折冷たい榛色の瞳で見られては、無視を続けられた。




夏が終わり、小公爵様は寄宿学校に戻られた。そして、卒業と同時に軍隊に入られたので、領地には帰って来なくなった。


私の平穏な日々が戻ってくる。

15才になった私を、ジョンおじさんは少し無理をして女学校に通わせてくれた。作文や歴史、算術を少々学び、放課後は美術部で絵を描く事に勤しんだ。

私の絵は、少し評価されてコンクールで入賞したりもした。


学校の教師から、有名な工房で働く事を勧められたりもして、ほんの少し、ほんのすこーしだけ、絵を描く事で、食べていけないかな、と思ったりもしたけれど、私にはそこまでの才能は無かった。

それは、自分が一番良く分かっていた。


ふん、別にいいのよ。

絵は趣味でいつまでも描けるもの。

おばあちゃんになっても描いてればいいのよ。


私は割り切って、勉強に励んだ。

孤児の私を引き取って育ててくれたジョンおじさんには、何が何でも恩返ししなくてはいけない。

私は教師か、会計士になるつもりだった。





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