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10話.[不満があります]

「私はね、新にひとつだけ不満があります」

「ど、どうぞ」


 母から急に言われて意識を向けた。

 床ではお姫様が寝てしまっているわけだけど、母はなにを言いたいのか。


「ちょっと優莉奈ちゃんを優先しすぎじゃない?」

「え? 家事とかしっかりしているよね?」

「それは確かにそうだね、すっごく助かってるよ。だけどね、私は食事も入浴も済ませた後に新とゆっくり話す時間が好きだったんだよ」


 ああ、優莉奈がこうして夜まで残ることが多いからか。

 家に送ってそこからご飯を作って食べ終えるまで待つから時間がないと言いたいんだろう。


「ん……」

「週に一度ぐらいは空けててほしいな」

「分かった、優莉奈に言っておくよ」


 起こして家に送ることにする。

 お腹だって空くだろうから家に帰ればいいのにそうしないのだ。

 あ、ちなみにいきなりキスをするという件は無理だった。

 それよりも早く彼女が先手を打ってきたからだ。


「……申し訳ないことをしてしまったわ」

「あんまり気にしなくていいよ、だけどたまには母さんともゆっくり過ごしたいからさ」

「ええ……分かったわ」

「でも、僕は優莉奈のことが好きだから、優莉奈といたいと思っているから誤解しないでね」


 キスが無理なら抱きしめておく。

 ちゃんとある程度の力を込めておけば気持ちも伝わるはずだ。


「……したくなるからやめて、それにいまはお腹が空いているから」

「そうだね、早く行こう」


 ちなみにご飯作りは一緒にやることになっている。

 そこから先は食べているところを見ているぐらいしかしない。

 洗い物を済ませている間にお風呂に行ってもらって、お風呂から出たら帰るという形だ。

 ……正直ここまでするなら夏休みのときのように住んだ方が楽だ。

 ただ、それをすると学校が始まっているいま、朝が大変になるからできないと。


「……少し寝られたからすっきりしたわ」

「今年の暑さには駄目みたいだね」

「ええ、駄目ね……」


 今日のところは僕がご飯を作らせてもらうことにしよう。

 彼女のために動けるというのは嬉しいから別に構わない。


「休んでて」

「ありがとう、あなたがいてくれてよかったわ」

「僕はこれまで散々優莉奈にお世話になってきたわけだからね、これぐらいは当然だよ」


 できたら食べてもらって、その間にお風呂を溜めたりしていた。


「……もうあなたとずっと一緒にいたいわ」

「僕もそうだよ、いまさっきだってこっちに住めればって思ったから」

「なら……」

「だけどやっぱりあっちも守らなきゃ、僕が元気に過ごせているのは母さんと都のおかげでもあるんだからね」


 お風呂に行かせようとしたんだけど……行ってくれない。


「……あなたからして」

「分かった、じゃあ目を閉じてて」


 もう経験済みなんだから緊張する必要はない。

 これは愛を深める行為だ、しかもちゃんと付き合っているから問題もない。

 したらしたらで固まる彼女だけど、満足そうな顔をしてくれて嬉しかった。


「……やっぱり今日はこのままいてちょうだい」

「分かった、じゃあ連絡をしておくからお風呂に入ってきなよ」

「ええ、好きよ」

「ありがとう、僕も優莉奈が好きだよ」


 連絡をしてから洗い物を始めた。

 幸せな日々を過ごすことができて最高だった。

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