6.婚約解消の申し出
王宮へ到着したシャーロット達…
ボブが王宮の騎士団へとオマーン公爵と男二人を引き渡した。
その後、シャーロット達は国王…王妃…王太子が待つ部屋へと向かった。
「これは…これは…話は聞いだぞ。グランバート公爵…よくやってくれた。」
シャーロット達が国王達が待つ部屋へと到着すると国王であるキーランドがボブへと声をかけた。
「国王陛下、王妃殿下、王太子殿下…ボブ・グランバートがご挨拶申し上げます。」
ボブが片膝をつきキーランド達へと挨拶をした。
「「ご挨拶申し上げます。」」
ボブに続いてエマ、アミル、エイル、シャーロットもキーランド達へと挨拶をした。
「皆…楽にしてくれ。この度はオマーン公爵の悪事を暴き…そして…その更なる悪事を阻止してくれて感謝する。」
キーランドはボブへと感謝の気持ちを伝えた。
そして、シャーロット達へグランバート公爵家の皆は椅子へと腰を下ろした。
「ありがたいお言葉感謝致します…。この国で行われている悪事を阻止するのはこの国の者としては当たり前の事にございます。」
ボブはキーランドへと伝えた。
「いや…我が国で起きていた事に気づかずにいた私の失態でもある。グランバート公爵が気づいて対応してくれなければどうなっていた事かと思うと…。」
キーランドは悔しそうな表情を浮かべながら言った。
「いえ…今回のオマーン公爵の悪事にいち早く気づいたのは私ではなく…娘のシャーロットなのです。」
ボブはキーランドにシャーロットの事を伝えた。
「何?シャーロットが気づいたと?!本当なのか?シャーロット嬢…。」
キーランドはボブの言葉に驚きシャーロットへと尋ねた。
「……。はい…。その通りです。陛下…。」
シャーロットは真っ直ぐにキーランドの目を見て頷きながら応えた。
「ほぅ…。シャーロットが…。これは驚いたな…。実に興味深いな…。シャーロット嬢は何故…オマーン公爵が悪事を働いていると分かったのだ?」
キーランドは驚いた表情の中にどこかシャーロットを疑っている様なそんな表情を浮かべながらシャーロットへと尋ねた。
(陛下…私を疑っている顔をしているわね…。まぁ無理もないけれどね。陛下は私が我儘で自分勝手な令嬢だって知ってるんだしね…。それを急にこんな人の悪事を暴いたなんて言われてもそういう反応になるのは仕方ないし…想定内でもあるわ。でも…ここで引き下がってたまるもんですか!)
シャーロットはキーランドの表情を見てすぐにキーランドがシャーロットに対してどの様に思ったかを察しながら考えていた。
「はい。以前、王都へ訪れた際にオマーン公爵が孤児院の子供達を商品として奴隷売買を行っているという事を風の噂で耳にしたので気になりオマーン公爵が不在な事を確認した上でこっそり孤児院を訪れたのです。訪れた孤児院は外観も内観も酷いものでした…。たまたま孤児院に住み込みで働いている女性に話を聞くことが出来ました。孤児院にいる子供達やその女性はオマーン公爵から食べ物はおろか水すらもろくに与えていなかった様でした。私が持参した飲食類を必死に食べていましたのでよほど飢えていたのだと思いました。この事態は一刻を争う事だと理解しましたので父に協力を願い出て無事にオマーン公爵の悪事を公にする事が出来たのです。」
シャーロットはキーランドの目をしっかりとそらすことなく見ながら説明をした。
「噂を耳にしただけでその様な行動に出たというのか…?」
キーランドは想像以上の話をするシャーロットを見て驚いた表情だけを浮かべて尋ねた。
「はい。」
シャーロットは頷きながら応えた。
「ははは…これは本当に驚いたな…。なぁ?王妃にローランドや…。」
キーランドは驚いた表情を浮かべたまま王妃であるルチアとローランドへと話を振った。
「えぇ…。本当に驚いていますわ…。」
ルチアはとても驚いた表情を浮かべながら言った。
「……。父上、どうせシャーロットの事です。他の者に孤児院に遣いをやらせてその話だけ聞きそれをそのままさも自分が見て聞いたかの様にグランバート公爵へと話たのでしょう…。父上と母上や私に手柄を見せつけたかったのでしょう。安易に想像出来る事です。まぁ…結果としてオマーン公爵の悪事がわかった事は良かったですが。」
ローランドは冷たい表情を浮かべながら淡々とキーランドへと言った。
「ローランド!言葉を慎め!さすがに言い過ぎだ!」
キーランドがローランドの物言いを注意した。
しかし…ローランドはキーランドにその様に言われても表情一つ変えなかった。
ローランドの物言いにはさすがのボブ達家族も表情を強張らせた。
(あえて殿下を視界に入れない様にしていたけれど…。相変わらず無表情の人よね。無表情というより冷たい表情よね。前世の私は一体殿下のどこに一目惚れしたのかしら…。前世でも殿下はあんな風にいつも私に冷たい態度をとっていたわね…。それでもいつか私の事を好きになってくれると信じていたけどミレイ様が現れた事で一生その思いが叶う事はないと知って絶望した末にミレイ様にあんな事をしてしまったんだもんね…。でも…不思議と処刑された事もあるからか時が経ったからか今はこうして殿下が目の前にいても何とも思わないわ。むしろ…私に対してそんな態度を取ってもらった方がありがたいほどだもんね。それに…今私が欲しい言葉は…。)
シャーロットはローランドも話の場にいると気づいてからあえてローランドを見ない様にしていたがローランドの発言があまりにもその場の空気を悪くした事によってシャーロットは思わずローランドを見ながらそんな事を考えていた。
「陛下…。私は構いませんのでお気になさらずに…。」
シャーロットが口を開きキーランドへと言った。
「しかし…シャーロット…。」
思わずボブが少し表情を歪めながらシャーロットへと言った。
「お父様…本当に私は大丈夫よ。気にしてないわ。」
シャーロットはふっと笑みを浮かべながらボブを鎮める様に言った。
「ゴホン…。シャーロット、ローランドの代わりに私が謝る…。嫌な思いをさせてしまいすまなかった。」
キーランドはさすがにローランドの物言いは良くないと思い申し訳なさそうにシャーロットへと言った。
「シャーロット…私からも謝るわ…。」
ルチアも申し訳なさそうな表情を浮かべながらシャーロットへと言った。
「陛下…王妃殿下…!本当に私は気にしていませんのでその様に謝られないで下さい。」
シャーロットは二人の態度に慌てて言った。
「しかし…。あぁ…そうだ!謝罪の意味も込めてこの度のシャーロットの功績を称えて何か褒美を与えよう!もちろんグランバート公爵家にもだが。」
キーランドがシャーロットの言葉に戸惑うも何か名案が浮かんだ様な表情でシャーロットやボブ達へと言った。
(待ってました!私が欲しかった言葉よ!きっと陛下は今回の事でグランバート公爵家に褒美をくれると思っていたのよ。)
シャーロットはキーランドの言葉を聞いて内心喜びながらそんな事を思っていた。
「陛下…ありがたいお言葉ありがとうございます。」
ボブがキーランドへと頭を下げながら言った。
「「ありがとうございます。」」
シャーロット達四人も頭を下げながらキーランドへとお礼を言った。
「グランバート公爵家には褒美として王族が持っている土地の一つを譲渡する事する。」
キーランドがボブへと言った。
「陛下…ありがとうございます。感謝致します。」
ボブが頭を下げてキーランドへとお礼を言った。
横にいた四人も感謝の意を評して頭を下げた。
「シャーロットへの褒美としては…何が良いだようか…。宝石か…?それとも…ん〜……何か望むものはあるか?」
キーランドはシャーロットへの褒美は何がいいかと悩みながら言ったが更に悩んだようで逆にシャーロットへ何がいいかを尋ねた。
(よし…この言葉がきたわ…シャーロット!ここが正念場よ!気後れする事なく陛下に言うのよ!)
シャーロットはキーランドに問われると自分で自分に気合いを入れたのだった。
「私が望む事は……殿下との婚約を解消して頂きたいのです!!」
シャーロットは意を決してキーランドの目をしっかりと見つめながら言った。
「何だと?!ローランドとの婚約を解消したいだと?!」
キーランドはシャーロットの言葉に驚き思わず声を大きくして言った。
横にいたルチアも目を大きく見開いて驚いた表情をしていた。
もちろんボブ達シャーロットの家族も驚きのあまり口が開いていた。
だが、ただ一人ローランドだけは表情を変えること事はなかった。
「シャーロット!!」
ボブは思わずシャーロットの方を見て表情を強張らせながら言った。
「お父様…ごめんなさい…。」
シャーロットは申し訳なさそうに言った。
「シャーロット…ローランドと婚約を解消したいなど…。ローランドとの婚約はシャーロット自身が強く望んだ事でもあったはずだぞ?!悩んだがグランバート公爵家の家門は申し分ない訳だから婚約を許可したばかりだというのに…。それなのに解消したいとはどういう事なのだ?」
キーランドは驚きが隠せない表情を浮かべながらシャーロットへと尋ねた。
「はい…。殿下との婚約は私の我儘で半ば強制的に決まった婚約でもあります。しかし…改めて考えると私は王太子妃が務まる器ではない事に改めて気づいたのです。それに…殿下にとっても生涯を共にするのであれば…やはり…その相手はお互いに想い合える相手がいいと思ったのです。私の我儘で決まった婚約だということは重々承知しています。ですがこの婚約はまだ国民にお披露目した訳ではありません。ですので無理は百も承知なのですがどうか…どうか…殿下との婚約を解消して頂きたいのです。それに…。」
シャーロットは必死な表情を浮かべながら必死に自分の思いをキーランドへと伝えた。
「それに…何だ?まだ何かあるのか?!」
キーランドは話に続きがありそうな事に気づくと驚いた表情でシャーロットへと言った。
「……。はい…。殿下との婚約を解消したのち…オマーン公爵の後任者として孤児院の責任者として孤児院で働きたいと思っているのです。」
シャーロットは思い切ってキーランドへと言った。
「なんだと?孤児院で働きたいだと?!」
キーランドは更に驚いた表情を浮かべながら言った。
「シャーロット!もう…いい加減にしないか!陛下…シャーロットが出過ぎたことを言ってしまい申し訳ありません…。王妃殿下ならびに王太子殿下も申し訳ありません…。」
さすがにシャーロットが暴走しすぎだとボブがシャーロットへ言った。
そして、キーランドとルチアとローランドに謝った。
「グランバート公爵落ち着きなさい。私は…構わないから…。」
キーランドは今にも怒りが爆発しそうなボブを見て笑みを浮かべながらボブへと言った。
「しかし…陛下…。」
ボブは困った表情で言った。
「何とも突拍子もない願い事をしてきたもんだな…。ただ…シャーロットの真剣な態度を見ていると本気な事は伝わる。婚約解消の件は解消という形で動く様にしよう。王太子の婚約は国に関わる事だから慎重に動かねばならない。一先ずは解消の方向で動くとするからまた詳しい事が決まれば追って連絡をするとしよう。ローランドもそれでよいな?」
キーランドは先程よりも穏やかな表情を浮かべながらシャーロットやボブ達へと説明した。
そして、ローランドにも尋ねた。
「はい。私は構いません。父上が決めた事に私は従うまでですから。」
ローランドは頷きながら表情を変えることなく応えた。
(まったく…いつもいつも自分勝手な令嬢だな。今回もおおかた婚約解消したいと申し出て私の反応を見て私に婚約解消を引き止めて欲しいなのどという魂胆だろうがそうはいかないさ。これを期にシャーロットと婚約を解消出来るのであればむしろ助かるからな。この先あの我儘がついて回ると思うとまったく嫌気がさしていただろうかな。どうせ今だって私が婚約解消の話をされてどんな反応してるか見ているのだろうな…。くだらない。)
ローランドはシャーロットの行動や
発言はいつもの我儘演技の一部だと思いながらそんな事を考えていた。
そして…
ローランドは何気なしにチラリとシャーロットを見た。
だが…
ローランドはシャーロットを見た瞬間いつも表情をあまり変えることなどないというのにこの時はローランド自身も気づかないうちにローランドはとても驚いた表情を浮かべていた。
ローランドの目の入ったシャーロットの表情は心から安堵している表情だったのだ。
本当に婚約解消になる事を心から安堵している顔だった。
それに加えてシャーロットは一切ローランドの表情など見ていなかったのだ。
この日…この瞬間…
ローランドは今まで見た事もないシャーロットの安堵した表情が何故だか目に焼き付いたのだった。
「ローランドも了承したという事で婚約解消の話についてはグランバート公爵夫婦とも話をしなければならないからまた後日時間を作り王宮へと足を運んでくれ。」
キーランドがローランドの返答を聞くとボブへと言った。
「畏まりました陛下…。」
ボブが応えた。
「それと…孤児院の話だが…。褒美をやると言ったのは私だ…。シャーロットがそこまで言うのであれば一度やってみるがいい。オマーン公爵の悪事を見抜けなかったのは私の落ち度でもあるから孤児院の修復費用や食事費用などは私が責任をもって援助しよう。ただし…報告を受けて少しでもシャーロットには無理だと思った時点で孤児院の管理は王宮の者に任す事にする。それでよいか?」
キーランドはシャーロットの顔を真っ直ぐ見て説明して尋ねた。
「はい!陛下…ありがとうございます。必ずどの国よりも一番だと言える孤児院にしてみせます!!」
シャーロットはキーランドの言葉に嬉しくなり嬉しそうな満面の笑みを浮かべながら言った。
(やったわ!やったー!!上手くいったわ!婚約解消の話も上手いこと進みそうだし孤児院の仕事もできそうだわ。陛下の表情からみてもきっと小娘の私には何も出来ないだろうと予測しているのでしょうけど…とんでもないわ!絶対にあの孤児院は私がどの国よりも一番の幸せに満ちた孤児院にしてやるわ!)
シャーロットはキーランドにお礼を言いながらそんな事を思っていたのだった。
その後…
シャーロットはキーランドに頼みオマーン公爵が今まで奴隷売買の商品として差し出した子供達の救出をお願いしたのちグランバート公爵一家は王宮を後にしたのだった。
自邸に帰宅したのちシャーロットはボブだけではなく家族皆からもこっ酷くお叱りを受けたが無事に人生を生き抜く為の婚約解消という関門を突破したのであった………。
ご覧頂きありがとうございます★
他にも連載中の小説がありますのでよろしければご一緒にご覧下さい★
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この度、男装令嬢・キャサリンは探偵助手をする事になりました!!
〜探偵様は王子様?!事件も恋も解決お任せ下さい〜
普通の幸せを願う伯爵令嬢は、追放後記憶喪失になりました!!
〜あなたは何者ですか?!〜
今日から2月ですね…
まだまだ寒い日が続きうなので皆様体調にはお気をつけ下さい…