41. 前を向いて…
「グスっ…。フーパーありがとう…。手紙と絵を持って来てくれて…。」
シャーロットは涙を拭きながらフーパーへ言った。
「お陰で…こんなところでいつまでも悲しんだりせず私のやるべき事をやらなければならないと…思うことができたわ…。」
シャーロットは泣き止みフーパーへ言った。
「そっか…。それなら良かったよ。」
フーパーは安心した表情で言った。
「……ごめんね…。フーパーだってたった一人の家族をなくしてとても悲しいというのに…わざわざ訪れてくれて…。」
シャーロットは申し訳なさそうに言った。
「いいんだよ…。ロッティが少しでもこの状況から抜け出せたみたいで良かったよ。兄さんからの手紙と絵を持ってきて良かったよ。」
フーパーがフッと微笑みながら言った。
「ありがとう…。」
シャーロットは安心した様な表情フッと微笑みながら言った。
「僕も兄さんからの手紙やミーシャさん…他の子供達…それにミレイがいなかったらロッティより酷い有様になってたと思うんだよ…。」
フーパーは苦笑いを浮かべて言った。
「フーパーもジョナスから手紙を?」
シャーロットがフーパーへ尋ねた。
「うん…。兄さんからの手紙を読んだらいつまでも悲しんでばかりじゃ兄さんに怒られてしまうなって…それにミーシャさんやあの子達も悲しいだろうに僕を元気づけ様としてくれたりしたんだよ。ミレイも兄さんを亡くして家族がいなくなった僕に家族になろうと言ってくれたんだよ…。周りの皆がそこまで色々と考えてくれているんだから前に進もうと思ったんだ。」
フーパーがどこか決心した様な表情で言った。
「そう…。そんな事があったのね…。」
シャーロットが言った。
「ミレイや孤児院の皆もロッティを凄く心配してるよ。」
フーパーが言った。
「そう…。皆に心配かけてしまってるわね…。孤児院の責任者がこんな事ではいけないわね。こんな事ではジョナスにもきっと叱られるわね…。」
シャーロットは困った様な笑みを浮かべて言った。
「あぁ。そうだね。きっと僕たちがいつまでもメソメソしてたら兄さんに叱られるね。」
フーパーも困った表情で笑みを浮かべて言った。
「よし…!明日にでも孤児院へ顔を出して皆に心配かけた事を謝っていつも通り孤児院で思い切り働くわ!」
シャーロットは気合いを入れる様に微笑みながら言った。
「うん!そうしてくれると皆も安心するし喜ぶよ。」
フーパーは笑顔で言った。
「前を向いてきちんと進んでジョナスへ胸を張って報告できる様になったらジョナスのお墓へ行って来るわ。そして…お墓にお花をそえてジョナスに話したいことを話してくるわ。埋葬の時は感情がおかしくなっててお墓へまともに花もそえることすらできなかったから…。」
シャーロットは少し寂しそうな表情を浮かべながらも笑みを浮かべて言った。
「うん。きっとロッティがお墓参りにきてくれたら兄さん喜ぶから。」
フーパーも寂しさの表情を浮かべながらも笑みを浮かべて言った。
「うん。」
シャーロットが頷きながら言った。
「よし…それじゃあ僕はそろそろ孤児院へ戻るよ。」
フーパーが言った。
「えぇ。わかったわ。フーパー本当にどうもありがとう。」
シャーロットはフーパーへ頭を下げながらお礼を言った。
「…うん。」
フーパーは優しく微笑みながら言った。
そして…フーパーはロッティへ「また孤児院で!」と手を振りながら帰って行ったのだった。
(ありがとう…。)
シャーロットはフーパーが帰った後にそんな事を考えていたのだった。
その後…シャーロットは顔を洗って着替えを済ませてから家族がいる応接間へと向かった。
そして…シャーロットは家族の皆へ心配をかけた事を謝った。
「お父様…お母様…お兄様…ご心配をおかけして申し訳ありませんでした…。」
シャーロットは申し訳なさそうに言った。
「シャーロット…そんな事気にしなくともいいんだ。あまりにも突然の出来事だったからシャーロットが塞ぎ込んでしまうのもわからなくはないからな。」
ボブが優しくシャーロットへ言った。
「私達も悲しかったけれど…シャーロットは私達以上に辛くて悲しかったでしょうに…。」
エラもシャーロットへ優しく言うとシャーロットを優しく抱きしめた。
シャーロットはボブとエラの優しさに涙がこみ上げてきたがグッと堪えた。
「ロッティ…無理して大丈夫だと装う必要はないんだぞ?」
「兄さんの言うとおりだよ。」
アミルとエイルが心配そうにシャーロットへ言った。
「お父様…お母様…アミルお兄様、エイルお兄様…心配してくれてありがとうございます。ですが…本当に私はもう大丈夫です。いつまでも塞ぎ込んでいられないとジョナスが教えてくれましたから。」
シャーロットは四人を安心させる様に大丈夫という笑みを浮かべながら言った。
「ジョナスに笑われない様に自分のやるべきことを全うしようと思います。」
シャーロットは真剣な表情で言った。
「そうか…。シャーロットがそう決めたのであればそれでよい。」
ボブはシャーロットの表情を見てホッとした様にフッと笑みを浮かべて言った。
「あまり力みすぎて無理はない様にね?私達に力になれる事があればいつでも言ってちょうだい。」
エラは優しく微笑みながら言った。
「ロッティは頑張りすぎるところがあるから本当に無理は禁物だぞ?」
「ロッティが倒れたら元も子もないだからね?」
アミルとエイルが念を押すように言った。
「ありがとうございます。今後も家族に頼ることがあると思いますが宜しくお願いします。」
シャーロットは嬉しそうに笑みを浮かべながら言った。
ジョナスの事がありグランバード公爵家も悲しみで空気がどんよりとしていたがシャーロットの前向きな姿勢もありこの日空気が変わったのだった。
その後…
シャーロットは部屋に戻りローランドへと手紙を書いた。
ジョナスの死後、ローランドも事件の事でバタついたのもありシャーロットと会うことはおろか手紙のやり取りすらも出来ていなかったのだ。
シャーロットはローランド宛の手紙を書くとその手紙をローランドへ渡して欲しいとアミルへお願いしたのだった。
この日の夜…
シャーロットはジョナスの死後毎晩現実を受け止めきれないのと悲しみに襲われあまり眠る事ができずにいた。
しかし…ジョナスの手紙を読み前向きな姿勢になった事でその日は久しぶりにぐっすりと眠る事ができたのだった……
※
翌日…
シャーロットは朝から孤児院へ訪れていた。
久しぶりのシャーロットの訪問にミーシャを始め孤児院の子供達も孤児院へ足を運んでいたミレイも安堵した表情を浮かべていたのだった。
シャーロットは皆に心配をかけた事を謝りこれからはこれまで通り孤児院での仕事を全うする事を話したのだった。
皆、ジョナスの死を悲しんでいたがシャーロットの前向きな姿勢を見て笑顔を浮かべたのだった。
シャーロットが孤児院へ来ない間ミーシャの手伝いをミレイがやっていてれたと聞いたシャーロットはミレイへ感謝の気持ちを伝えた。
久しぶりのシャーロットの料理を食べた子供達は嬉しそうに満足そうにしていたのだった。
そんな子供達を見たシャーロットは心が温かくなったのだった。
(この子達の為にもミーシャさんの為にも私がしっかりしないといけないわね。)
シャーロットは改めてそんな事を考えていたのだった。
シャーロットが孤児院で過ごしている同じ頃…
王宮ではアミルがシャーロットから預かった手紙をローランドへ手渡した。
シャーロットからの手紙だと聞きローランドは慌てて封を開けて手紙を取り出し読んだ。
"ローランド様へ…
ローランド様
毎日多忙な日々だとは思いますがいかがお過ごしですか?
無理をして体調を崩したりはしていませんか?
アミルお兄様からローランド様が私を心配していると聞きました。
連絡も出来ずご心配をおかけして申し訳ありませんでした。
ご心配をおかけしましたが…私は大丈夫です。
ローランド様がお疲れでなく時間がありましたら会いに行こうと思っているのですが…どうでしょうか?
もしも予定が合う日がありそうでしたらご連絡頂けると幸いです。
シャーロットより"
ローランドはシャーロットの手紙を読み終わると安堵した表情を浮かべた。
(そうか…シャーロット…良かった…。)
ローランドは安堵しながらそんな事を考えていた。
「シャーロットは…本当に大丈夫なのか?」
ローランドは念の為アミルへ尋ねた。
「はい。私達家族もロッティの塞ぎ込みぶりを見て悲しみの深さを目の当たりにして本当に心配していましたが昨日私達に話をするロッティを見る限り本当に大丈夫な様でした。」
アミルはローランドを安心させるかの様に笑みを浮かべて言った。
「そうか…。本当に良かった…。公務中もシャーロットの事が気がかりで仕方なかったがは事件後の処理などもありシャーロットを気にかけてやる事も出来なかった…。本当はシャーロットが辛く悲しい思いをしている時に側にいてやりたかったが…。」
ローランドはホッとした表情を浮かべて言うもすぐに悔しそうな歯がゆそうな表情を浮かべて言った。
「それについてはロッティも理解しているでしょう。」
アミルがローランドへ言った。
「そうか…。」
ローランドが言った。
「ロッティへ手紙の返事を書かれますか?」
落ち込む様な表情のローランドへアミルが言った。
「ん?あ…あぁ。書く!すぐに書くからシャーロットへ渡してくれ。」
ローランドはハッとなり慌てて言った。
「承知しました。」
アミルはクスっと笑みを浮かべて言った。
ローランドはその後すぐにシャーロットへ手紙を書きアミルへ預けたのだった。
(シャーロットと会うのは久しぶりだな…。早く会いたいな…。)
ローランドはアミルに手紙を渡すとそんな事を考えていたのだった……
その日の夜にシャーロットはアミルから手紙を手渡された。
ローランドからの返事の手紙だった。
手紙には三日後に時間を作れる為王宮へくる様にと書いてあった。
(ローランド様と会うのは久しぶりだわ…。早く会いたいわ…。)
シャーロットは手紙を読み終えると嬉しそうな笑みを浮かべてそんな事を考えていたのだった……
※
三日後…
シャーロットは朝からローランドの為にクッキーを焼いた。
そしてクッキーを持って王宮へと訪れていた。
シャーロットはアミルに案内されてローランドの執務室へと入っていった。
「やぁ…。おはよう。シャーロットよく来てくれた。」
ローランドが優しく微笑みながらシャーロットへ言った。
「ローランド様…おはようございます。お招き頂きありがとうございます。」
シャーロットも微笑みながらローランドへ言った。
「さぁ…こちらへ。」
ローランドはソファーを手差しながら言った。
「はい。」
シャーロットは返事をするとソファーへと向かい腰を下ろした。
「シャーロット…久しぶりだな…。」
ローランドはシャーロットの横へ腰を下すと言った。
「はい。」
シャーロットは頷きながら言った。
「ローランド様…お疲れのようですがきちんと休んでおられますか?」
シャーロットがローランドを見て心配そうに言った。
(ローランド様の顔を見る限り想像以上に公務が忙しいようだわ…。目の下にくまもできているわ…。)
シャーロットはローランドの顔を見てそんな事を考えていた。
「あぁ…。心配しなくとも休める時には休んでいるから…。」
ローランドはシャーロットが心配してくれている事に胸がキューっとなるのを感じながら優しく微笑みながら言った。
「それならばいいのですが…。」
シャーロットは心配そうな表情のまま言った。
「…私のことよりも…シャーロットは…大丈夫なのか?手紙には大丈夫と書いていたが…。会わない間に痩せたようだが…。」
ローランドが心配そうな表情を浮かべてそっとシャーロットの頬に触れながら言った。
「はい…。本当にもう…大丈夫です。今はきちんと食事もとっていますから。ご心配おかけしました…。」
シャーロットはそっと自分の頬に触れるローランドの手に自分の手を重ねながら言った。
「それならばいいのだが…。」
ローランドが言った。
「……シャーロットが悲しく辛い思いをしている時に何の力にもなれず側にいてやれなくて…すまなかった…。」
ローランドは少し考え込む様な仕草をした後に申し訳なさそうにシャーロットへ言った。
「ローランド様…!そんな…。謝らないで下さい。ローランド様にはローランド様のやるべき事があるのは私も理解している事です。」
シャーロットは慌てて言った。
「……それに…シャーロットは私を恨んでいないのか…?」
ローランドはどこか気まずそうに言った。
「恨む…ですか?何故…私がローランド様を恨むのですか?」
シャーロットはローランドの言葉に驚き戸惑いながら言った。
(一体何故急にそんなことを?)
シャーロットはローランドの言葉の意味が分からずそんな事を考えていた。
「……ジョナスは私を庇ったせいで…命を落としてしまった…。私が油断しなければ今もジョナスは元気に生きていたかもしれないというのに…。シャーロットにとってジョナスは大切な友達だっただろう…。その大切な友を私のせいで失ったのだから…私を恨んでもおかしくないだろう…?」
ローランドは表情を歪めてとても切ない表情を浮かべて言った。
(ジョナスの葬儀の時のシャーロットを見た時…胸が針で刺されているかの様に痛かった…。本当はあの日から私のせいでジョナスが命を落とした事でシャーロットに恨まれるのだろうかと不安で仕方なかった…。)
ローランドはそんな事を考えていた。
その時…
フワッ……
シャーロットがローランドを包み込む様に抱きしめた。
「え…?」
ローランドは突然の事に驚き言った。
「ローランド様のせいではありません!悪いのはオマーン元公爵です。ローランド様が自分で自分を責める必要などありません!」
シャーロットはローランドを抱きしめながら必死に言った。
「しかし…。」
ローランドは戸惑いながら言った。
「しかしも何もありません…。私はジョナスがこんな事になったのはローランド様のせいなどとこれっぽっみも思っていません…。ですから…これ以上ご自分を責めるのはやめてください…。お願いします…。」
シャーロットは声を震わせながら言った。
「…………。」
ローランドはシャーロットの言葉に胸が熱くなり思わず涙が出そうなのを堪えながらシャーロットを強く抱きしめた。
(あぁ…。私は怖かったのだ。今回の事でシャーロットに恨まれた上に…シャーロットとの関係が崩れてしまうことを…。そして…また心のどこかでシャーロットの優しさを感じたいと
も思っていたのだな…。シャーロットの言葉を一つでここまで心が軽くなったのだから…。)
ローランドはシャーロットを抱きしめながらそんな事を考えていた。
「シャーロット…ありがとう…。」
ローランドはシャーロットへ言った。
「今日はローランド様の為にクッキーを焼いてきたので良かったら食べしょう。」
シャーロットはローランドを優しく抱きしめたまま笑みを浮かべて言った。
「あぁ…。」
ローランドは優しく微笑みながら言った。
そして…
シャーロットとローランドはクッキーをお茶菓子にお茶を飲み始めた。
「実は…先日塞ぎ込んでる間にフーパーから私宛のジョナスからの手紙をもらったのです。」
シャーロットがお茶を一口飲み言った。
「ジョナスから?」
ローランドが言った。
「はい。どうやらジョナスが事件現場に向かう事が決まった際にフーパーに渡していたそうです。」
シャーロットは頷きながら言った。
「そうか…。」
ローランドが言った。
「はい。その手紙を読んでこのままではいけないと思ったのです。いっでも悲しみに浸って塞ぎ込んでいたらジョナスに顔向けできないと思いました。なのでジョナスに顔向けできる様に…ジョナスが空から私を見て安心してくれる様に前に進もうと思うことができたのです。」
シャーロットは微笑みながら言った。
「きっとジョナスらしい手紙だったのだろうな。」
ローランドはフッと笑みを浮かべて言った。
「そうですね。ジョナスらしい手紙でした。」
シャーロットは微笑みながら言った。
「だから…胸を張ってジョナスに報告できる時がきたらジョナスのお墓参りに改めて行きたいと思ってるのでその時はローランド様も一緒に行って頂けませんか?」
シャーロットがローランドへ言った。
「私も一緒に?」
ローランドは不思議そうに言った。
「はい。その方がジョナスも喜ぶと思いますので。」
シャーロットが笑顔で言った。
「そうか…。では…その時は一緒にジョナスの墓参りに行くとしよう。」
ローランドはにこりと微笑みながら言った。
「はい!」
シャーロットが笑顔で言った。
「話は変わるが…我々の婚約に件についてだが今回のオマーン元公爵の件が片付いたら父上と母上…グランバード公爵と公爵夫人へ話をしようと思うのだがいいか?」
ローランドがシャーロットへ言った。
「はい。構いません。」
シャーロットは頷きながら優しく微笑み言った。
「以前、シャーロットが言っていた孤児院の件については既に父上には話をしておいたから婚約の話をした際に父上から話があるだろう。」
ローランドが言った。
「そうですか。分かりました。陛下にお話くださってありがとうございます。」
シャーロットはホッとした表情で言った。
「やはり…シャーロットの作ったクッキーは美味しいな…。」
ローランドはクッキーを食べながら嬉しそうに言った。
「本当ですか?ローランド様に喜んで貰えると嬉しいです。」
シャーロットは嬉しそうに微笑みながら言った。
「こうして…シャーロットと過ごす時間が一番心が休まるな…。」
ローランドは微笑みながらシャーロットへ言った。
「そんな事を言われると何だか照れてしまいます…。」
シャーロットは頬を赤くして恥しそうに言った。
(赤くなって…可愛いな…。)
ローランドはそんなシャーロットを見てクスっと笑みを浮かべて考えていた。
「私もこうしてローランド様と過ごす時間は嬉しくて…心地がいいです…。」
シャーロットは頬を少し赤らめたまま言った。
「そうか…。そう思ってれている事が嬉しいな。」
ローランドは優しく微笑みながら言った。
そんなローランドにシャーロットも優しく微笑みかけたのだった。
二人は二人の時間を幸せを感じながら過ごした。
そして…
お皿にあるクッキーがなくなった頃だった。
「……この話をするかは迷っていたのだが…どの道グランバード公爵やアミルから聞くことになるだろうから言っておくことにするよ。」
ローランドが急に真剣な表情になり言った。
「はい。」
シャーロットが頷きながら言った。
「オマーン元公爵の件だ…。」
ローランドが表情を歪ませて言った。
「……はい…。」
シャーロットはオマーン元公爵と聞き表情を曇らせながら言った。
「…やはり…やめておくか?」
ローランドは一気にシャーロットの表情が曇ったことに戸惑い言った。
「…いえ…。続けて下さい。」
シャーロットが言った。
「……。わかった。オマーン元公爵以外の事件に加担した者の処刑はすでに執行された。しかし…オマーン元公爵は公開処刑の刑が下された為に四日後に刑が執行されることとなった…。」
ローランドが真剣な表情で言った。
「四日後ですか…。」
シャーロットが呟いた。
「あぁ…。この度の公開処刑は王都の街の人々も処刑を見届けらる場所で刑が執行される予定だ。この事は二日後に王都の街に張り紙が張り出されることになっている。恐らく…今回の悲惨な事件に加えて…人身売買の件もあるからオマーン元公爵の最期を見届けにくる者たちも少なくないだろう…。もちろん私もその場に出向くが…シャーロット…君はどうする?」
ローランドが真剣な表情で続けて言うとシャーロットへ尋ねた。
「……。私も…その場へ足を運びます…。」
シャーロットは表情を歪ませて言った。
「……それで…大丈夫なのか…?」
ローランドは心配そうにシャーロットへ言った。
「…はい…。ジョナスをあんな目に遇わせた人です…。絶対に許すことはできないのでこの目でしっかりと最期を見届けます…。」
シャーロットは真剣な表情で言った。
「そうか…。では…当日はグランバード公爵達と同行するといい…。」
ローランドが言った。
「はい…。分かりました。」
シャーロットは頷きながら言った。
その後…
シャーロットとローランドは再度お茶を飲み直しながら有意義な時間を過ごしたのだった。
それほど長い時間ではなかったもののシャーロットもローランドも久しぶりに会えた事に喜びを噛み締めた時間になったのだった……
※
それから四日後…
オマーン元公爵の処刑が執行される日が訪れた…
シャーロットは家族と共に刑の執行場所へと足を運んだ。
処刑場に既に王都の街の人々が集まっていた。
その中にはミーシャとフーパーの姿もあった。
シャーロットは処刑場に二人が足を運ぶ事を事前に聞いていた。
孤児院の子供たちはミレイが面倒を見てくれているようだった。
そして…
処刑場に国王と王太子がやって来た。
「罪人を連れてくるよう命ずる!」
国王であるキーランドが騎士団の騎士へと言った。
「承知しました!」
騎士団長のロナが言った。
そしてロナと副団長であるラスカルが罪人であるオマーン元公爵を処刑場へ連れてきて処刑台にある太い頑丈な丸太へとオマーン元公爵を縛りつけた。
「ゔゔゔんんんーー!」
オマーン元公爵は口元を塞がれながらも必死に抵抗しようと声を漏らした。
しかし…その様な事などお構いなしに縛りつけられた元オマーン公爵の足元に火を付ける為の細木が大量に敷きつめられた。
オマーン元公爵がいる場所から騎士たちが去った途端に街の人々がオマーン元公爵へ向かって一斉に石を投げ始めた。
「大悪党め!」
「地獄に落ちろ!」
「お前の犯した罪は死んでも償えものだ!」
「人間の形をした悪魔め!」
「ジョナスを返せ!」
「早く死んでしまえ!」
人々は怒りと悲しみに満ちた表情でオマーン元公爵を罵倒した。
ミーシャとフーパーはそんな光景をじっと黙って見ていた。
シャーロットも同じ様に黙ってその光景を見ていたが…
急に頭の中に前世の自分が処刑された時の記憶がフラッシュバックした…
思わずフラつきそうになったがアミルがすぐにそれに気づきシャーロットの体を支えた。
「ロッティ…大丈夫か?気分でも悪いのか?気分が優れないなら無理してこの場に居合わせる必要はないぞ?」
アミルは心配そうな表情でシャーロットへ言った。
他の家族もシャーロットの異変に気づき慌てた。
「い…いえ…大丈夫です。少しバランスを崩しただけですので…。」
シャーロットは慌てて言った。
「本当に?大丈夫なの?」
エラが心配そうに言った。
「はい。本当に大丈夫です。」
シャーロットは皆を心配させない様に作り笑いを浮かべて言った。
「それならいいけれど…。辛くなったらすぐに言うのよ?」
エラが心配そうに言った。
「はい…。」
シャーロットは頷きながら言った。
(シャーロット…大丈夫よ…。これはあの時の私じゃないんだから…。それに…もう同じ過ちは繰り返さないんだから怯える事はないのよ…。)
シャーロットは自分自身に言い聞かせるかの様に考えていた。
(これまで沢山の子供達を腹の肥やしにしてきた挙げ句今回の事件を起こして…更にはジョナスの命までも奪った張本人…だから…しっかりと最期を見届けてやるわ…。)
シャーロットは強くそんな事を考えていたのだった。
そして…
「これより…罪人であるトム・オマーンの刑を執行する…!火をつけよ!」
キーランドが宣言した。
「「承知しました!」」
ロナとラスカルが返事をした。
そして二人はオマーン元公爵の所へ火を持ち近寄ると細木へ火をつけた。
「ぅゔゔゔゔんんんんーー!」
オマーン元公爵は自分の足元の火が自分の足へと移り火するのを確認して必死にもがき声を漏らした。
しかし…それも虚しく火はオマーン元公爵の足から体までみるみるうちに燃やされて言った。
生きたまま体を燃やされ尚且その様を人々に晒されるという残酷で屈辱的な刑が執行されたオマーン元公爵に対してその場にいた者たちは同情することなくただ目を離すことなく見届けたのだった……
シャーロット、ミーシャ、フーパーも…
そして…
ローランド、キーランド、ボブ、エラ、アミル、エイルも…
ロナ、ラスカル、その他の騎士たちも…
しっかりと各自の思いを胸に見届けたのだった……
(ジョナス…あなたの命を奪った人はもう…しっかりと罰を受けたわ…。あなたも空から見てたかしら…。)
シャーロットは空を見上げながらそんな事を考えていたのだった…
こうして…
王都の街を恐怖へ陥れた恐ろしい事件は幕を下ろしたのだった……
そして…
事件が解決し…
あっという間にシャーロットとローランドが再び婚約するという話を両家族にする日が訪れたのだった………
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