40.生涯たった一人の…
ポタ…
ポタ…
ポタ…………
暗闇から現れた男の持っていた短剣がグッと相手に刺さりそこから血がポタポタと地面に滴れ落ちていた…
「ゔゔっ………。」
男が持っていた短剣が刺さり痛みに思わずに鈍い声がその場に響いた……
「ジョ…ジョナス!!」
男の短剣によって刺されたのはローランドを庇うために咄嗟にローランドの前に飛び出したジョナスだった。
ローランドが目の前の光景に声を張り上げた。
「チッ…。仕留め損ねたか…。」
ジョナスへ短剣を刺した男が舌打ちしながら呟いた。
「……オマーン…元公爵…?!」
ローランドがジョナスへ短剣を刺している相手の男を見て驚いた表情で言った。
なんと…暗闇からローランド達へ襲いかかってきたのはオマーン元公爵だった。
「ハハハ…久しぶりですね…王太子殿下…。」
オマーン元公爵はニヤニヤと不気味な笑みを浮かべてローランドへ言った。
「貴様……!」
ローランドは怒りで表情を歪ませてオマーン元公爵を睨みつけ言った。
そして、剣を思い切り振りかざしオマーン元公爵の腕と足を斬りつけた。
「ウギャャャァァーー!」
オマーン元公爵は鈍い声で叫んだ。
「クソっ!ウギャャャァァ!!」
オマーン元公爵はその場に倒れ込みのたうち回った。
オマーン元公爵が倒れ込んだと同時にジョナスに刺さった短剣も抜けた。
「グハッ……。」
ジョナスは短剣が抜けた同時に吐血しながら声を漏らしその場に倒れた。
「ジョナス!!しっかりしろ!」
ローランドはそんなジョナスの体を起き上がらせ言った。
そこへ…
「殿下!!」
店の反対側から見張っていたアミルが駆けつけた。
「アミル!ジョナスが…!!」
ローランドは血相を変えてアミルへ言った。
「ジョナス!!」
アミルはローランドの腕の中で血を流すジョナスを見て驚き言ってローランドとジョナスの元へ駆け寄った。
「殿下…これは…一体…。この男はオマーン元公爵……?」
アミルは目の前の血だらけのジョナスとのたうち回るオマーン元公爵を見て戸惑いながら言った。
「事情は後で説明する。一先ずオマーン元公爵を縛りあげろ!舌を噛まない様に猿轡もしておけ。そして…ジョナスを早く運ばなけれは…。」
ローランドは表情を歪めてアミルへ言った。
「…。承知しました。」
アミルは応えると未だのたうち回るオマーン元公爵の元へと駆け寄り体を抑え込みあえてローランドに斬られた場所をつたいロープでオマーン元公爵の体を拘束して口には布を丸め詰め込みその上からロープを顔へ縛りつけた。
「んんんゔゔん……。」
オマーン元公爵は必死で抵抗しながら声を漏らしてアミルとローランドを睨みつけた。
そんなオマーン元公爵をローランドとアミルはとんでもなく冷たい目で見返した。
そしてアミルはローランドの元へと駆け寄った。
「店の中の者はすでに我々で生け捕りにして拘束しております。」
アミルは冷静さを保ちながらローランドへ報告した。
「そうか…。」
ローランドは頷きながら言った。
「殿下!!」
そこへロナがラスカルを含めた騎士たちを連れてローランドの元へとやって来た。
「殿下!報告致します!行方不明者の居場所を掴み全員保護致しました!…っ?!ジョナス?!」
ロナはローランドに報告している途中でローランドの腕の中にいるジョナスに気づき驚き言った。
「行方不明者の件は承知した。見ての通りジョナスが刺されて負傷した。ジョナスを刺したのはそこにいるオマーン元公爵だ…。」
ローランドは表情を歪ませロナ達騎士に言った。
「なっ…!」
ロナは驚きのあまり声を漏らした。
ラスカルや他の騎士達も驚きを隠せないようだった。
「団長と副団長はオマーン元公爵および事件に加担した者たちを王宮へ連行し行方不明者達は王宮の客間へ連れていき保護しておいてくれ。私はジョナスを王宮へ運ぶからアミルはすぐに医者の手配を頼む。」
ローランドは素早く皆へ指示を出した。
「「承知しました。」」
皆は頷きながら言った。
その時…
「で…殿下…お願いがあ…り…ます……。」
ジョナスが痛みに耐えながらもローランドへ言った。
「なんだ?!」
ローランドが言った。
「俺を…王宮ではなく……孤児院…へ運んで下さい……。」
ジョナスが表情を歪ませながら言った。
「何だと?!」
ローランドはジョナスの予想外の言葉に驚き言った。
「俺は…もう…助からない……でしょう…。だから…どうせ…死ぬのなら…孤児院で…が…いいのです……。」
ジョナスは苦しそうにしながらも言った。
「ジョナス!死ぬなどと言うな!医者に処置してもらってもないのに勝手に決めつけるな!」
ローランドが怒り口調で言った。
「そうたぞ…ジョナス!縁起でもない事を言うな!そんな事言っていたらロッティに怒られるぞ!」
二人の会話を聞いていたアミルも思わずジョナスへ言った。
「ゴフッ……。」
ジョナスは口から血を吐きながら声を漏らした。
「「ジョナス!!」」
そんなジョナスを見てその場の皆が血相を変えて言った。
「とにかく…急ぎジョナスを王宮へ運ぼう。」
ローランドが焦りながら言った。
「ゴホッ……で…殿下…お願いです…。俺を……孤児院へ…運んで…下さい……今…孤児院には…ロッティが…いるはずです……最後に……ロッティや…フーパーや…ミーシャさん…それにチビ達に…会いたいのです……お願いです…殿下……。」
ジョナスはローランドの服をギュッと掴みながら目に涙を浮かべて懇願した。
「くっ…。……わかった…。孤児院へ運んでやる…。アミル…そなたは馬を走らせ医者を孤児院へ連れてきてくれ!私は馬を取りに行っている時間がないからそこにある荷台にジョナスを乗せて孤児院まで連れて行く。団長と副団長は犯人達と保護した者たちの事をよろしく頼むだ。」
ローランドは懇願するジョナスを見て涙を堪える様に頷きながらジョナスへ言った。
そして他の者たちへ指示を出した。
「「承知しました…。」」
アミル達は一斉に応えた。
ローランド同様…アミル達も涙を必死で堪える様な表情を浮かべていたのだった。
そして…
その後…ローランドは側にあった荷台にジョナスを乗せて急ぎ孤児院へと走り向かった。
(ジョナス…心配するな。すぐに孤児院へ連れてってやるからな…。だから…絶対に…絶対に…死ぬなよ。)
ローランドは走り急ぎながらそんな事を考えていた。
そして…
ローランドが孤児院へ到着した。
ドンドンッ…
ドンドンッ…
「シャーロットいるか?私だ!ローランドだ!扉を開けてくれないか?!」
ローランドが孤児院の扉を叩きながら言った。
「え…?ローランド様?!」
中にいたシャーロットが扉を叩く音とローランドの声を聞き驚き言った。
「殿下がどうして…?何かあったのかな…?」
すぐ側にいたフーパーが心配そうに言った。
「わからないわ…。とりあえず中に入れて差し上げなければ…。」
シャーロットが慌てて言った。
そしてシャーロットとフーパー玄関の扉まで向かった。
ガチャ……
シャーロットが扉を開けた。
「ローランド様…一体どうされた……?!ジョナス?!」
「兄さん?!」
扉を開けたシャーロットは目の前の光景に思わずに驚き言った。
シャーロットの横にいたフーパーも目の前のローランドが抱えた血だらけのジョナスを見て驚き言った。
「すまないが…話は後にしてすぐにジョナスを横にたわらせたい…。」
ローランドは一刻を争う事態だったので急ぎシャーロットへ言った。
「わ…分かりました。」
シャーロットは頷きながら言うと急ぎローランドをジョナスの部屋へと案内した。
案内されたジョナスの部屋に着くとジョナスをベッドへそっとおろした。
「これは…一体…どういうことですか…?何故…ジョナスが…?」
シャーロットは目の前の血だらけのジョナスを見て混乱気味にローランドへ尋ねた。
「………。ジョナスは…犯人達を捕らえる際に…事件の主犯格の男に刺されてしまったのだ……。襲われそうになった私を守るために……。」
ローランドはグッと拳を握り声を震わせながら言った。
「今…アミルが急ぎ医者を呼びに行っているからすぐにこちらへ来るだろう…。」
ローランドは更に言った。
「そ…そんな…ジョナス…。」
「に…兄さん……。」
ローランドの話を聞いたシャーロットとフーパーは表情を歪ませて涙を浮かべながら言った。
「すまない……。私のせいで…ジョナスがこの様な目に……。」
ローランドは唇を強く噛み締めながら悔しそうな表情で言った。
「……で…殿下…殿下のせいでは…ありません…俺は…王室騎士団の…騎士として…殿下をお守り…しただけですから……。」
その時…ジョナスがふっと目を開きローランドに向けて言った。
「ジョナス!」
「ジョナス…。」
「兄さん!」
ジョナスが目を開けたのを見て三人が同時に言った。
「ジョナス…大丈夫なの?!こんな…こんな…事になって…。」
シャーロットが直様ジョナスに駆け寄り涙を浮かべながらジョナスへ言った。
「ロッティ……あぁ…俺は…大丈夫だ…だから…心配するな……。それに…ちゃんと…殿下を…守ったぞ…。」
ジョナスは表情を歪ませながらもフッと口角を上げてシャーロットへ言った。
「ジョナス……。」
シャーロットはとても心配そうに目に涙を浮かべたまま言った。
「兄さん……。」
フーパーもそっとジョナスへ近寄り泣きそうな顔で言った。
「フーパー…心配かけて…すまない…。お前には…あれだけ…心配するな…と啖呵を切った…のにな…。」
ジョナスは口角を上げたままフーパーへ言った。
「本当だよ…。あんなに啖呵を切ってたのに…こんな姿見せるなんて…。」
フーパーは思わず涙をこぼしながら言った。
「ハハ…すまないな…。」
ジョナスは表情を歪めながらも笑みを溢してフーパーへ言った。
そこへ…
「シャーロット様!アミル様が来られました!」
慌てた様子でミーシャがアミルと医者を連れてジョナスの部屋へとやって来た。
「え…?ジョナス?!一体…。」
ミーシャはアミルが孤児院へ来たことに気づきアミルを中へ入れてジョナスの部屋と案内してきたが部屋にいたジョナスの姿を見て驚き言った。
「急いでジョナスを診てやってくれ!」
ローランドがアミルの連れてきた医者へ指示をした。
「は…はい。」
医者は応えるとジョナスの元へと行きジョナスの診察を始めた。
しばらくして…
「ジョナスの容態はどうなのだ?!」
ローランドが医者へ険しい表情で尋ねた。
その場にいた…シャーロット、フーバー、アミル、ミーシャも医者の返答に耳を傾けた。
すると…
医者は…首を横へ振った…
「刺された傷は…肝臓にまで達している様で出血の量がかなり多いです。止血の処置はしましたが…恐らくは……。」
そして医者は気まずい表情を浮かべて言いにくそうに言った。
「そ…そんな……。」
医者の話を聞きシャーロットが呆然と言った。
「これ以上の処置は出来ないというのか?!」
ローランドが思わず声を張り上げて医者へ言った。
「……はい…。残念ですが……。」
医者は険しい表情で言った。
「クソっ…!」
ローランドは険しい表情で言った。
「そんな…兄さん……。」
フーパーも呆然と言った。
「そんな…どうして……。」
ミーシャは涙を流しながら言った。
「ジョナス……。」
アミルは悔しそうな表情で言った。
「ジョナス……嘘よね…。」
シャーロットはぼそりと言いながらジョナスの元へと近づきジョナスの手を握った。
「ハァ…ハァ…ロッティ…。どうやら…ロッティの専属…騎士に…なるのは…無理そうだ…。ごめんな……。」
ジョナスは苦しそうにシャーロットへ言った。
「許さないわ…。ジョナスが…私の専属騎士に…なるって…言ってきたのよ…。だったら…約束をちゃんと……守ってよ……。」
シャーロットは目から涙をポロポロと流しながらジョナスへ言った。
「そうだよ…。兄さん…。僕とも…僕とミレイの結婚式には…必ず出席するって言ったじゃないか……。僕たちの子供の名前も…兄さんが…つけてくれるって言った…じゃないか……。約束を守らない…なんて…許さない…よ…。」
フーパーも目からポロポロと涙を溢しながらジョナスの元へと行きジョナスへ言った。
「ハハハ…すまないな…。二人ともの…約束守れそうに…なくて……。でも…騎士として…立派に…仕事したんだから…許してくれよな……。」
ジョナスは苦しいながらも笑いながらシャーロットとフーパーへ言った。
「グハッ……ゴホッ………。」
ジョナスが口が血を吐いた。
「ジョナス!」
「兄さん!」
そんなジョナスを見て血相を変えてシャーロットとフーパーが言った。
「先生!ジョ…ジョナスが苦しんでいます…どうにかして下さい…おねがい…します…。」
シャーロットは泣きながら医者へと懇願した。
「……申し訳ありませんが……。」
医者はグッと表情を歪めて言った。
「そんな……。」
シャーロットはガックリとなり言った。
そこへ…
「うるさくて…眠れないよ…。」
「どうしたの…?」
と下の子達がシャーロット達の話し声を聞き起きてきて話し声のするジョナスの部屋へとやって来た。
「あなた達……。」
ミーシャが下の子たちを見て慌てて言った。
「え…?ジョナス…?」
「ジョナス…どうしたの?」
「怪我…したの?」
下の子達がベッドへ横たわるジョナスの姿を見て驚き言った。
そして…ジョナスの元へと駆け寄った。
「ジョナス…。血が…いっぱい出てるよ…。」
「どうしたんだよ…ジョナス。」
シーマとサナが混乱気味にジョナスへ言った。
トム、マーヤ、サボは状況が分からずただただ混乱していた。
「ゲホッ…お前達…もう…寝る時間だろってのに……。………いいか?これからはフーパーの次に…歳が大きいのは…シーマ…お前だ…。だから…今よりもっとしっかりして…フーパーや…ミーシャさんの…手助けをしたり…下の子達の…面倒を…よく見るんだぞ?それから…チビ達も…ちゃんと…ミーシャさんや…フーパーや…シーマ…それに…ロッティの言うことも…聞くんだぞ…?お前たち…わかったか……?」
ジョナスは下の子達へ言った。
下の子達です血だらけのジョナスを見てあまりいい状況ではないと察したのか皆泣きそうになりながらジョナスの言われた事に頷いた。
「ミーシャさん…俺…あんまりいい子供じゃなかった…けど…それでも…見捨てないで…くれて…ありがとう……。」
ジョナスはミーシャの方をちらりと見て言った。
「そんな…ジョナス…そんな事気にしなくて…いいのよ…。ジョナスは私にとって…大切な子供達の一人なのだから…。」
ミーシャは涙を流しながら言った。
「アミル様…こんな俺に…丁寧に…剣術を教えて…頂いて…ありがとうございました……。アミル様に…教えてもらえなければ…きっと…騎士団の騎士に…なるんて…夢の…また夢でしたから…。本当に…感謝しています…。」
ジョナスはアミルへ言った。
「ジョナス……そんな事…これからも何度だって教えてやるさ…。」
アミルは泣くのをグッと堪えながら言った。
そんなアミルにジョナスはふっと笑みを浮かべた。
「…殿下…俺との約束…必ず…守って下さいね……。もしも…守って…もらえなければ…化けて…出てやりますからね…。」
ジョナスは冗談混じりにローランドへ言った。
「わかっている…。必ず…約束は守る…。」
ローランドはとても悔しそうに辛そうな表情を浮かべて言った。
そんなローランドにジョナスは頷いた。
「フーパー…たった…二人の家族なのに…お前を…一人にしてしまう事を…許してくれ…。お前は…俺には勿体ない程の出来た弟だ…フーパーが弟で良かったし…誇りに思うよ…。これからはミレイが…きっとお前に新しい家族を…作ってくれる…だろうから…寂しくは…ないだろう…?俺の分まで…幸せになってくれ…。結婚式に…出られなくて…ごめんな…。」
ジョナスは目に涙を浮かべながらフーパーへ言った。
「兄さん…そんな事…言わないでよ…。兄さんは…僕にとって最高の兄さんだ…。だから…僕の方こそ兄さんの弟な事を誇りに思ってるよ…だから…だから…僕を一人にしないでよ…兄さん…兄さん…お願いだから…。」
フーパーは泣きながらジョナスの足を掴みながら声を震わせながら言った。
「ごめんな…フーパー…。」
ジョナスはそう言いながら力を振り絞りフーパーの頭を撫でながら言った。
「兄さん…。」
フーパーは涙を流しながら言った。
「ロッティ…殿下は…俺が…守ったんだから…必ず…殿下と幸せになるん…だぞ…?そして…立派な…王太子妃に…王妃になって…国の人達を…幸せにしてくれよな……。」
ジョナスはフッと笑みを浮かべてシャーロットへ言った。
「それなら…近くでそれを見届けてよ…。」
シャーロットは大粒の涙を流しながらジョナスの手を握り言った。
「……どうやら…そうもいかなそうだ…。」
ジョナスは表情を歪めて言った。
「ジョナス……。」
シャーロットは更にジョナスの手を強く握りしめて言った。
「……ロッティ…もう泣かないでくれ…。俺はロッティの涙より笑顔の方が…好きだからな…。だから…な?俺の最後の頼みだ…ロッティ…笑ってくれ…。」
ジョナスが最後の力を振り絞るかの様に言った。
そして…
シャーロットは涙を拭いてジョナスへ満面の笑みを浮かべたのだった。
「ハハ…ありがとう…ロッティ…。やっぱり…ロッティは…笑顔が…一番…似合うな……。」
ジョナスは嬉しそうに笑いながら言った。
そして…
それと同時にシャーロットが握っていたジョナスの手がシャーロットの手からずり落ちたのだった…。
そして…
ジョナスは笑みを浮かべたまま目を閉じ息を引き取ったのだった…
「ジョナス……?ねぇ…ジョナス…目を開けてよ…ねぇ…だめよ…だめ…。お願い目を開けて…ジョナス…。」
シャーロットは声を震わせながらジョナスの頬を触りながら言った。
シャーロットの目からは涙がポロポロと流れていた。
「兄さん……。」
フーパーはジョナスの体に触れながら大粒の涙を流しながら言った。
「そんな…ジョナス…。」
ミーシャは口元を手で覆い涙を流しながら言った。
「「ジョナスーー!わぁーーん!」」
下の子達もジョナスが息を引き取ったのを察してワンワンと泣きながらジョナスの名を言っていた。
「ジョナス…。」
アミルは我慢していた涙をながらしながら言った。
ローランドはただ呆然と立ち尽くしながら涙を流していたのだった。
孤児院には明け方まで泣き声が響いていたのだった…
こうして…
ジョナスは十八歳という若さでこの世を去ったのだった………
※
ジョナスが息を引き取ってから二日後にジョナスの葬儀が行われた。
ジョナスの葬儀はローランドの意向で丁重に行われたのだった。
シャーロットやフーパー、孤児院の者達はもちろん…ローランドやグランバード公爵家や騎士団の騎士たちも葬儀には参加したのだった。
王室騎士団の騎士として王太子であるローランドを守ったとして国王からもジョナスへ餞の花が贈られたのだった。
ジョナスとの最後の別れにシャーロットやフーパー…孤児院のミーシャや子供達はただ呆然と涙を流していたのだった。
そんな姿を見ていたローランドを含めた周りの者たちは心を痛めていたのだった。
ジョナスの死は王都の町の人々達にも衝撃を与えた。
王都の町で育ってきたジョナスを知る者は多い分町の人々もとてもジョナスの死を悲しんでいたのだった。
ジョナスのお墓には町の人々から沢山の花が供えられていたのだった。
※
ジョナスの葬儀が終わり一週間が経った…
王宮では事件の件で慌ただしかった。
ローランドはシャーロットの事が気がかりだったがその前に片付けなければならない事が山積みだったので仕方なく目の前の事を済ます事が先だった。
王宮では事件の処理が行われていた。
この事件の首謀者はオマーン元公爵だった。
オマーン元公爵は人身売買やその他の悪事が判明した事でカリブ王国から遥か遠くの地獄の孤島と呼ばれる猛獣が生息する小さな無人島へと流刑を言い渡されていた。
処刑にするよりも遥かに過酷な刑だった。
猛獣にいつ殺されかわからない日々を送る生活なのだから…
たが…オマーン元公爵はあるゆる手を使い死にもの狂いで島から抜け出し異国の地の悪党と共に今回の事件を起こしたのだった。
ケシの実を使い麻薬を作り恨みのあるカリブ王国の人々を薬漬けにして国を崩壊させていく計画だった様だ。
町の人々を誘拐して監禁して麻薬漬けにする予定だった様だがそうなる前に行方不明者を救出する事ができたのだった。
オマーン元公爵が薬漬けにした者達は異国から連れてきた奴隷達だったと事件解決後に判明したのだった。
オマーン元公爵及び事件に加担したした者達には刑罰として公開処刑が言い渡された。
それも…手足の指を切り落とされ舌を抜かれた上での火炙りの刑だった。
カリブ王国の中で最も厳しい刑だった。
過去にこの刑を言い渡された者は存在しないほどだった。
だが…この刑が言い渡されたという事はそれほどまでに国の存亡を揺るがす程の重罪を犯した事を意味していたのだった。
それに加えて王室騎士団であるジョナスが命を落とした事も更なる追い風となったのだった。
※
王室が事件に解決案件で慌ただしい中…
シャーロットは葬儀から一週間経ってもずっと自室へ籠もりっぱなしだった。
食事もほとんどせずただ自室に籠もっていたのだった。
ボブ達家族はそんなシャーロットをとても心配していた。
シャーロットが孤児院へも足を運んでいなかったので代わりにエラが孤児院へと通っていた。
そして…この日エラはグランバード公爵邸にある人物を連れて帰ってきたのだった。
それは…フーパーだった。
フーパーがシャーロットに会って渡したい物があるからシャーロットに会わせて欲しいとエラへお願いしたのだった。
(あの時…何がなんでもジョナスを止めていたら…こんな事にならなかったかもしれいのに…ジョナス…ジョナス…。)
シャーロットは自室に籠もり毎日そんな事を自問自答しながら考えて悲しみから抜け出せずにいたのだった。
コンコンッ…
「シャーロット…?起きているかしら?フーパーがあなたに会いたいとここへ来ているのだけど…中へ入れてあげてくれないかしら…?」
シャーロットの部屋へフーパーを連れてやってきたエラが部屋の中のシャーロットに向かって言った。
「え…?フーパー…?」
シャーロットは驚き呟いた。
(フーパーが…何故…?)
シャーロットはそんな事を考えていた。
「……どうぞ…。」
シャーロットはか細い声で言った。
ガチャ…
「ロッティ…失礼するね…。」
部屋の扉が開くとフーパーが部屋の中のシャーロットへ言った。
「えぇ…。」
シャーロットは力なく応えた。
「フーパー…話が終わったら教えてちょうだいね。」
エラがフーパーへ言った。
「はい。分かりました。」
フーパーは頷きながらエラへ言った。
そして…フーパーはシャーロットの元へと近づいた。
「……フーパー……。」
シャーロットは近づいてきたフーパーへ言った。
「ロッティ…少し痩せたみたいだけどごはん食べてないの…?」
フーパーはシャーロットの姿を見て心配そうに言った。
「…………。」
シャーロットはそんなフーパーの言葉に黙り込んだ。
「突然…訪ねてきてごめんね…。今日は…ロッティに渡したい物があったんだ…。」
フーパーはそう言うと一通の手紙をシャーロットへ差し出した。
シャーロットは??という表情を浮かべていた。
「生前…兄さんから預かってたロッティへの手紙だよ…。」
フーパーが言った。
「え…?ジョナスが…私に…?」
シャーロットは驚き言った。
「うん。」
フーパーは頷きながら言った。
そしてシャーロットは手紙を受け取りそっと封を開けて中身を出し読み始めた…
"ロッティへ…
この手紙をロッティが読んでるって事は俺はもう死んでしまったという事だな…。
この手紙は騎士になった俺が万が一の事があったらという時用にフーパーに渡してた手紙だ。
きっと俺がこの世を去ったらロッティは悲しんでくれるんだろうな…。
でも…悲しいからって部屋に籠もって泣きっぱなしで孤児院へ行くのをサボったり、ご飯を食べなかったりしたら怒るぞ?!
俺の死を理由にそんなだらけた事したら化けて出てやるぞ?!
もし…そんな事をしているならすぐにしっかり食事をしてしっかり寝ていつまでもメソメソ泣かずにロッティのやるべき事をしろよな!
将来王妃になるお前がそんなんじゃ駄目だぞ!
そんなんだと殿下にも愛想つかれちまうぞ?
いいのか?
よくないだろう?
もう…ロッティの近くにも専属の騎士にも友達にもなってやれないけど…いつでも俺はロッティを見守ってるから安心しろよな。
これは…
墓場まで持っていこうと思っていた事だったけど死んでしまった今なら言えるからここで告白するよ…
面と向かって言うのは小っ恥ずかしいから言えなかったけど…
ロッティ…お前には本当に心から感謝してる。
最初は本当に気に喰わない貴族の令嬢だと思ってたのに…懲りる事なくこんな俺に向き合ってくれた上に俺の夢を笑うどころか親身になって相談にのってくれて協力してくれて…言葉では言い尽くせないくらい感謝してる…
本当にありがとう…
そして…そんなロッティをいつの間にか一人の女として心惹かれていたんだ…
からかうとムスッとした顔も…
笑った顔も…俺を心配してくれる顔も…
どれも全部愛おしくて仕方なかった…
ロッティの笑顔が大好きだった…
身分も違うし…ロッティは殿下に想いを寄せているのも知ってたけど…それでも…この気持ちを捨てる事は出来なかったんだ…
他の女は好きになるなんて事すらも考えなかった程にな…
だから…この気持ちは死ぬまで自分の心の中だけに留めて俺は俺のやり方でロッティの近くでロッティを守りロッティの幸せも守ろうと決めていたんだ…
ロッティは俺が生涯でたった一人愛した女だ…
ロッティは俺の生涯の幸福なんだ…
だから…どうかロッティ…幸せになってほしい…
だから…心配するな…。
俺がそこに居なくていつもロッティの側で見守ってる…
いつでもロッティの近くにいるから…
だから…
どうか…いつも笑っていてくれ…
俺の大好きだったロッティの笑顔で…
ジョナスより"
「ジョナス……。」
シャーロットは手紙を読みながら涙をこぼして読み終わった後には泣き崩れながら言った。
(ジョナス…ずるいわ…目の前から居なくなってこんな事を言うなんて…。)
シャーロットは泣き崩れながらそんな事を考えていた。
「ロッティ…手紙ともう一つ…これも…。」
そんなシャーロットにフーパーが大きな包みを差し出した。
「これは……?」
シャーロットは包みを見て言った。
「開けてみて…。」
フーパーはフッと笑みを浮かべて言った。
シャーロットはフーパーから包をを受け取るとゆっくり包みを開けた。
「あ…これは……。」
シャーロットは包みの中の物を見て思わず驚き言った。
包みの中には綺麗な額縁に入ったシャーロットが満面の笑みを浮かべている絵だった。
「この絵…実は兄さんがロッティの誕生日の時に渡そうとしてたんだよ。あの時すでにロッティのこの絵を描いてたんだよ。だけど急に恥ずかしくなったのか花束の絵だけ渡したんだよ。」
フーパーがその時の事を思い出して言った。
『今度は私の肖像画を描いてね!』
シャーロットが自分の誕生日の時にジョナスへ言った言葉がシャーロットの頭に浮かんだ。
「グスっ……。ジョナス……。」
ロッティはその事を思い出すと更に涙が溢れてきて絵を抱きしめながら泣き崩れたのだった…
「ジョナス…ありがとう…ありがとう…。」
シャーロットは絵を抱きしめながら言ったのだった。
そんなシャーロットの姿を見ていたフーパーの目からも涙がこぼれ落ちたのだった……
シャーロットの部屋にはシャーロットのすすり泣く声が響いていたのだった………
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悪役令嬢でもなくヒロインでもないまさかのモブキャラに転生したので大好きなハンドメイドをしながら暮らす事にしました!(※不定期更新)
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〜じゃじゃ馬令嬢は異世界でも推し活に励む〜(※不定期更新)
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