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4.偵察

シャーロットはオマーン公爵家が管理するルーベル孤児院へと到着した。


シャーロットは孤児院を見てとても驚いていた。


(ちょっと…これは何なの…。本当にここは孤児院なの?外から見てもわかる程に全くもって手入れが行き届いていないじゃないの…)


シャーロットは表情を歪ませながら孤児院の外観を見て思っていた。


(確か…この孤児院は国からの援助支援金も貰っているはずだから十分に外観の手入れも出来るはずだわ…。なのに…この今にも崩れそうな外観って…。ここ数年は陛下も王妃様もお忙しくされているからきっとここへは顔を出されていないのね…。それをいい事にこんなにも酷い有様を放置している訳ね…。本当に信じられないわ…。)


シャーロットは更に表情を歪め怒りを覚えながらそんな事を思っていた。


(一時でもオマーン公爵なんかに孤児院を任せられないわ!早くオマーン公爵の悪事の証拠を押さえないといけないわね…。)


シャーロットは表情を歪めたまま思っていた。


(確か…この時代にもカメラはあったわよね。ただ…カメラで写真を撮ることが出来たのは限られた人しかいなかったはず。それに王族や貴族達が特別な日に記念撮影をする時ぐらいにしか写真を撮影しない時代…。日本の様に手軽に写真を撮れないから証拠写真を残すにはなかなか大変そうね…。)


シャーロットは証拠を形として残すにはどうしたら良いかを考えていた。


(ん〜そういえばオマーン公爵の悪事は当時密告があった事で明るみになったのよね?あの時の密告は一体誰がしたのかしら…。あの頃の私はそんな事など気にもしなかったからな…。ん〜その密告した人物がわかればその人物に会いに行って話が出来るけど誰だか分からないんじゃ駄目よね…。)


シャーロットは前世でオマーン公爵の悪事が明るみになった際の事を思い出しながら考えていた。


(一先ず…オマーン公爵の悪事の証拠を見つける前に孤児院の中がどうなっているのか気になって仕方ないからどうにかして入り込めないかしら…。外観がこれだけ酷いのならば恐らく…内観は更に酷い有様な気がしてならないのよね…。中の子供達は大丈夫なのかしら…。ちゃんと食べたり飲んだりしているのかな…。)


シャーロットは孤児院を見たときから中の様子が気になって仕方なかった。

チラチラとどうにか内観に入れないかとかとキョロキョロと見ながら考えていた。


シャーロットは表から入るのは難しそうと理解したので裏口へと人に見つからない様に回った。


そして、裏口についたシャーロットはそーっと裏口にあった窓から中を覗いた。


(ちょっ…ちょっと…これは一体どういう事なのよ…。)


シャーロットは中を覗いて衝撃を受けてそんな事を思っていた。


シャーロットが覗いた孤児院の中では数人の子供が力なく横たわっていたのだった。


(大変だわ!きっとあの子たちは体力が衰えて力なく横たわっているんだわ。早く助けなきゃ!)


シャーロットは中にいた痛々しい子供達の姿を見て焦った表情を浮かべなら思った。


キー……

キィ……


そして、シャーロットがどうやって中に入ろうかと思った時裏口の扉がゆっくりと開いた。

シャーロットは急いで物陰に隠れた。

裏口から出てきたのは中年の女性だった。

その女性は少しフラつきながら外へと出てきたのだった。


(あれは…この孤児院で働いている人かしら…。でも…フラついてるわ。)


シャーロットは物陰からその女性の事を見ながら思った。


(……。よし!一か八かよ!あの女性に話をして中へ入れてもらおう!)


シャーロットは拳をぎゅっと握り頷き自分に言い聞かせる様に心の中で覚悟を決めたのだった。


そして…


「あの…唐突ですいません。少し中へと入れて頂きたいんですけど…。」


シャーロットは女性の元へと駆け寄り小声で女性に声をかけた。


「なっ…あなたは…。」


女性はシャーロットを見て驚いた表情で声を出した。


「しっ…しーー!静かにして下さい。私は怪しい物ではありません。中の子供の姿を見て心配しているのです!どうか…中へ入って子供達の様子を見てはいけませんか?」


シャーロットは慌ててしーっとポーズを取りながら女性へ小声で言った。


女性は最初はシャーロットに困惑と疑いの眼差しを向けていたが真剣な表情で必死に訴えるシャーロットを見て強張らせた表情を緩めたのだった。


「ほんの少しの時間ならば…。」


女性は軽く頷きながらシャーロットへ言った。


「本当ですか?ありがとうございます。お心遣い感謝します。」


シャーロットはホッとしたした後に笑みを浮かべながら言った。


そして、女性に案内されてシャーロットは中へと入った。


中に入ったシャーロットは目の前に横たわる子供達を見て愕然とした。


そんなシャーロットを見て女性が口を開いた。


「私も…この子達は…もう…何日も食事は食事を口に出来ていないのです…。口にしているのはとても綺麗とは言えない水のみで…。」


女性は目に涙を浮かべながらとても悲しそうな表情でシャーロットへと説明した。


「ひどい…酷すぎるわ…。」


シャーロットは目の前の光景と女性の言葉を聞いて表情が怒りで溢れかえっていた。


シャーロットはそっと子供に近づき自分の鞄の中から食べ物とミルクを取り出した。

そして…

子供の一人を優しく抱き起こした。


「こんにちは…。初めまして。私の名前はシャーロットよ。」


その子がそっと目を開けて意識があらのを確認したシャーロットは優しく声をかけた。


「こっ…こんにちは…。」


その子は力なくシャーロットへと言った。


「私ね…とても美味しいパンを持ってるんだけど一人じゃ食べ切れない量のパンだから良かったら…食べるのを手伝って欲しいのだけれど…いいかしら?」


シャーロットは力ないその子を見て一瞬とても切ない表情を浮かべたがすぐに笑みを浮かべながらその子へと言った。


シャーロットの言葉を聞いたその子は少し驚き困惑した表情を浮かべながらシャーロットの後ろにいた女性をちらりと見た。

それに気づいた女性は軽く頷いた。


その子は、シャーロットが持っていたパンを食べても大丈夫なのかと不安に思い女性の反応を見たのだった。

女性が頷いた事でホッとした表情を浮かべたその子はシャーロットからパンを受け取り口にしたのだった。


「おい…しい…。」


その子はパンを口にした瞬間…少し目を見開き驚いた表情を浮かべながら呟いた。


その子の言葉が聞こえてか他の子供達もゆっくり起き上がるとシャーロットとその子のところへとやって来た。


「こんにちは。私は…シャーロットというの。あなた達も一緒にこの沢山のパンを食べるのを手伝ってくれるかしら?」


シャーロットはにこりと微笑み他の子供達へと言った。


集まってきた子供達は『うん』と頷きながらそっとシャーロットからパンを受け取ると食べ始めたのだった。


気づくと子供達はよほどお腹が空いていたのかがむしゃらにパンを頬張っていた。


シャーロットはホッとした表情で笑みを浮かべながら子供達を見ていた。


(本当に…とてもお腹が空いていたのね…。本来ならばこの子達は育ち盛りだというのに…。食べ物はおろか…きちんとした水すらも飲ませて貰えてないなんて…。)


シャーロットは心の中ではそんな事を考えていた。


「あっ…あの…。」


女性がシャーロットへと声をかけてきた。


「あっ…あなたもよければ食べて下さいね。本当に沢山あるので。」


シャーロットはハッとなり女性にも言った。


「あっ…ありがとうございます…。あの…この様にご親切にして頂きありがとうございます…。あの…あたなは一体…。」


女性はシャーロットにお礼を言うと少し戸惑いながら尋ねた。


「あっ…あの…それは…ですね…。」


シャーロットは苦笑いを浮かべながら言った。


(う〜ん…何て応えようかな…。通りすがりで〜というのも不自然だしね…。う〜ん…もうこういう時は正直に話す方がいいかもしれないわね。)


シャーロットは女性に尋ねられて考えていた。


「少しあちらでお話してもいいですか?」


シャーロットはパンを食べている子供達をチラリと見ながら女性へと言った。


「はい…。」


女性は頷きながら応えた。


そして、シャーロットと女性は少し離れた子供達が見える範囲の場所へと移動した。


「急にこんな事をされても驚きますよね…。改めて驚かせてしまい申し訳ありませんでした…。」


シャーロットは女性へと謝りをいれた。


「いえ…。最初は驚きましたが怪しい方ではないと判断出来ましたので…。」 


女性は慌てて言った。


「あの…あなたはこの孤児院の…。」


シャーロットが女性へと尋ねた。


「私は…この孤児院で子供達のお世話をしているミーシャといいます。」


女性は応えた。


「ミーシャさんですか。申し遅れましたが私は…シャーロットといいます。ミーシャさん以外には子供達の世話をする方は居ないのですか?」


シャーロットはミーシャへと尋ねた。


「はい…。私は一人です。ここへ住み込みで働いています。」


ミーシャはシャーロットへと応えた。


「一人でですか?!そうですか…。見たところこちらの孤児院はかなり酷い状況だと思いました。その…ここの責任者の方は何故…子供達にもあなたにもこの様に酷い扱いを?」


シャーロットは少し驚いた表情で言ったがすぐに真剣な表情になりミーシャへと尋ねた。


「それは………。」


ミーシャはシャーロットの言葉に急に言葉を詰まらせ唇を噛み締めながら何かに怯える様に少し震えていた。


(ミーシャさん…とても怯えているわね…。オマーン公爵が原因ね。本当にオマーン公爵はどこまでも許せない人だわ…。)


シャーロットはミーシャの態度を見てそんな事を思っていた。


「……。言い辛い事なのですね…。単刀直入に言いますね。私はこの孤児院を…ミーシャさん含めこの孤児院の子供達を助けたいと思いここへ偵察へ来たのです。」


シャーロットは少しでもミーシャを安心させようと自分の目的を偽りなく真剣な表情でミーシャへと伝えた。


「え…?てっ…偵察ですか…?」


ミーシャはシャーロットの言葉を聞き驚いた表情で言った。


「はい。この孤児院の責任者であるオマーン公爵の悪事を暴きこの孤児院を笑顔と幸福に満ちた孤児院にする為にです。」


シャーロットは迷いない瞳でミーシャを見て言った。


「悪事…。」


ミーシャは悪事という言葉を聞いてビクリとなり顔色が悪くなりながら呟いた。


(ミーシャさんの顔色がどんどん悪くなっていくわ…。ミーシャさんはきっとオマーン公爵が奴隷売買している事を知っているんだわ。)


シャーロットはミーシャの顔色を見て驚き思った。


「私が聞いた話によると…オマーン公爵がこの孤児院の子供達を奴隷売買の商品としていると聞きましたがそれは…本当なのですか?」


シャーロットは真剣深刻な表情でミーシャへと尋ねた。


「…?!それは…そっ…そっそっ…そんな事は…。」


ミーシャはシャーロットの言葉に明らかに知っているという表情でとても慌てて取り乱しながら言った。


(やっぱりミーシャさんは…知っているのね…。)


シャーロットはミーシャの態度を見て確信して思った。


「ミーシャさん…あなたはオマーン公爵の奴隷売買の悪事を全て知っているのですね…。」


シャーロットはミーシャへと言った。


「……。」


ミーシャはシャーロットの言葉に唇を噛み締めぎゅっと拳を固く握りながら目には涙を溜めていた。


「……。ミーシャさん…私が絶対にあなたや子供達をオマーン公爵の悪事から守ってみせます。だから…私に協力してもらえませんか?」


シャーロットはミーシャを見て胸が締め付けられる様な感覚になりながら真剣な表情でミーシャへと提案した。


「えっ…?きょ…協力ですか…?」


ミーシャはシャーロットがあまりにも予想外の発言をしたので驚いた表情で呟いた。


「はい。そうです。オマーン公爵の悪事からミーシャさんや子供達を守るにはオマーン公爵の悪事を知っているミーシャさんの協力が必要なのです。お願いします。協力してもらうにあたってミーシャさんや子供達を危険な目には絶対に遭わせないと約束するので。」


シャーロットは真剣な表情を浮かべながらミーシャへとお願いをした。


最初ミーシャはシャーロットのお願いに困惑したがあまりにも曇りの無い真剣な表情で懇願するシャーロットを見て覚悟を決めたのだった。


「わかり…ました。シャーロットさんに協力します…。」


ミーシャは頷きながら応えた。


「本当ですか?!ありがとうございます。ありがとうございます。ミーシャさんの覚悟は絶対無駄にはしません。」


シャーロットは笑みを溢してホッとした表情でミーシャへとお礼を言った。


「ですが…協力といっても具体的に何をすればいいのですか?」


ミーシャは戸惑いの表情を浮かべながらシャーロットへと尋ねた。


「それはですね…。」


シャーロットはフンッと鼻を鳴らしながら言うとミーシャへと説明を始めたのだった………。

ご覧頂きありがとうございます★


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