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37.複雑な胸の内

小説内に出てくる料理を再現した再現お料理シリーズをTwitterへ投稿してみましたので良ければご覧下さい★

TwitterのURLはトップページに掲載しています★


創立記念式典から三日後…


シャーロットは王宮へ訪れていた。


式典パーティー後に国王であるキーランドから話があると言われシャーロットはキーランドの元を訪れていた。


「国王陛下にご挨拶申し上げます。」


シャーロットがキーランドへ挨拶をした。


「ふむ…。シャーロット…早くから呼び出してすまなかったな…。」


キーランドは申し訳なさそうにシャーロットへ言った。


「とんでもございません…。」


シャーロットは慌てて応えた。


「今日…シャーロットを呼んだのは他でもない…。ローランドとの婚約の件だ。」


キーランドがシャーロットへ言った。


「………。はい。」


シャーロットはキーランドの言われて複雑な表情で少し間を空けて応えた。


「シャーロットの意見を聞いてみたいと思ったのだよ。」


キーランドはシャーロットの表情を見て一呼吸おいて言った。


「シャーロットはもう一度ローランドと婚約するという事についてどう思っているのだ?」


キーランドがシャーロットへ尋ねた。


「…それは…。」


シャーロットは複雑な表情で言った。


(やはり…シャーロットはあまり乗り気ではない様だな…。だが…ローランドとの婚約破棄を提案してきたのはシャーロットの方なのだからそう思っていても不思議ではないのだがな。)


キーランドはシャーロットの複雑そうな表情を見て考えていた。


「正直に申してもよろしいでしょうか?」


シャーロットがキーランドへ言った。


「あぁ。構わん…言ってみなさい。」


キーランドは頷きながら応えた。


「はい…。ありがとうございます。……正直に申しますと…殿下のお言葉には戸惑っています…。」


シャーロットは考えながらキーランドへ言った。


(未だに…殿下が私ともう一度婚約したいと思っている事が信じられないのだから…。)


シャーロットはそんな事を考えていた。


「それは…そうだろうな…。一度は婚約破棄を受け入れた上に…これまでのローランドのシャーロットへの態度を考えてみればローランドにその様な事を言われても信じられないだろうし…戸惑うのは当然のことだ。」


キーランドがシャーロットの言葉に寄り添いつつ言った。


(我が息子ながらローランドのシャーロットに対する態度は誉めれたものではなかったからな…。シャーロットもそれなりに酷かったが…ローランドも偉そうな事は言えない態度だったのは間違いないからな…。)


キーランドはそんな事を考えていた。


「………私は殿下との婚約破棄をお願いした上に孤児院で働きたいと申し出ました。そして今は陛下のご厚意もあり孤児院の責任者を任されています。殿下と婚約するという事はいずれ結婚をして王太子妃になるという事です。そうなると王太子妃としてやらなければならない事があります。そうなると孤児院での責任者の仕事が出来なくなるということです。私は孤児院での仕事を途中で放棄するという事はしたくありません。ですので…その事もあり殿下からの申し出については戸惑っているのです。」


シャーロットはキーランドを真っ直ぐ見て真剣に言った。


(私は…本当にどうしたらいいのか分からない…。)


シャーロットはそんな事を考えていた。


(シャーロットの孤児院へ対する思いは本物だろう…。ローランドとの婚約破棄を申し出た事がそれを何よりも証明しているからな…。シャーロットは本気で孤児院の責任者としての仕事も考えているからこそあれほどまでに悩んでいるのだろう…。んん…どうしたものか…。)


キーランドはシャーロットの言葉を聞きそんな事を考えていた。


「シャーロットの考えは分かった…。私がこの様な事を言うのはおかしいかもしれないが…もう少しだけローランドの申し出に対して考えてみてはくれないだろうか?シャーロットが孤児院の仕事を続けたいというのも重々承知の上だが…。私もシャーロットが王太子妃になってくれる事は大歓迎だ。どうだろう?考えてみてくれるか?」


キーランドがシャーロットへ言った。


(私が大歓迎するという少し卑怯な言い方になったが…。)


キーランドはそんな事を考えていた。


「……分かりました。私なりにもう一度考えてみたいと思います…。」


シャーロットは浮かない表情でキーランドへ言った。


「ありがとう…。感謝する。」


キーランドは頷きながら言った。





シャーロットはキーランドとの話が終わると孤児院へ向かう為に馬車へと向かった。


「シャーロット!!」


シャーロットが廊下を歩いているとローランドが急ぎ足でシャーロットの方に向かいながら名前を呼んた。


「殿下…?」


シャーロットが言った。


「ハァ…ハァ…。つい先程シャーロットが王宮へ来ていると聞いてな…。」


ローランドはシャーロットの元へと来ると息を切らしながら言った。


「はい。陛下からの呼び出しを受けましたので。ちょうど陛下との話が終わったところです。」


シャーロットがローランドへ言った。


「そうか…。父上は私には内緒でシャーロットを呼び出した様でな。もう帰るのか?」


ローランドがシャーロットへ言った。


「はい。当分孤児院へ行けてませんでしたから今から孤児院へ行こうと思ってます。」


シャーロットが言った。


「そうか…。では…馬車の所まで送るとしよう…。」


ローランドは少し残念そうに言った。


「……。ありがとうございます。では…お願いします。」


シャーロットは少し迷ったが送ってもらうことにしてローランドへ言った。


「あぁ。」


ローランドはシャーロットの言葉を聞いて嬉しそうに微笑みながら言った。


そんなローランドの笑顔を見てシャーロットは胸がキューッとなった。


(殿下は…本当に私の前でよく笑われる様になったわ。前世ではミレイ様に向けられていた笑顔が私に向けられていることを嬉しいって思ってしまう…。)


シャーロットはそんな事を考えていた。


「父上の話とは…私との婚約の件か?」


ローランドがシャーロットへ尋ねた。


「…はい。」


シャーロットは頷きながら言った。


「やはり…そうか。」


ローランドは複雑そうな表情で言った。


「……陛下にも言いましたが…正直…婚約の件については戸惑っています。ですが…もう少しその件については自分なりに真剣に考えてみたいと思います。」


シャーロットは優しく微笑みながら言った。


「…そ…そうか…。ありがとう…。」


ローランドはシャーロットの言葉に安堵した様に少し笑みを溢して言った。


「シャーロットが私との婚約の事について不満や不安…などあれば遠慮なく私に相談してくれ。私で叶えてやれる事なら叶えてやりたいと思っているから…。」


ローランドは優しく少し照れた様にシャーロットへ言った。


「…っ…はい。分かりました。お心遣い感謝致します。」


シャーロットは胸がキュッとなりながら言った。


「それと…前にも言ったが今後も二人の時間を作ってくれると嬉しいのだが…。その…シャーロットとはもっと色々な話もしたいと思っているから…。いつでも都合がつけれるのであれば手紙をよこしてくれてもいいからな…。」


ローランドはまた少し照れた様にシャーロットへ言った。


「はい…。分かりました。」


シャーロットは優しく言った。


話しながら歩いているとあっという間に馬車が停めてある場所へ到着した。


「殿下…お見送りありがとうございます。」


シャーロットは笑みを浮かべて言った。


「あぁ…。気をつけるのだぞ。」


ローランドは優しく言った。


「はい…。では…失礼致します…。」


シャーロットが言った。


「あぁ。」


ローランドが言った。


そしてシャーロットが馬車へ乗り込むと馬車は出発した。


(数秒前まで一緒にいたのに…もうシャーロットに会いたいと思ってしまうな。)


ローランドは馬車を見ながら思っていた。


(また…すぐに殿下に会いたいなんて思ってしまう私はだめね…。)


シャーロットは馬車の中でそんな事を考えていた。




シャーロットが孤児院へ到着した。


「こんにちは!しばらく来れなくてごめなさいね。」


シャーロットは孤児院の中へ入ると言った。


「あっ……。」


シャーロットは孤児院の中にいた人物を見て驚き言った。


「ミレイ…様?」


シャーロットの視線の先にはフーパーと一緒にいるミレイがいてシャーロットが驚いた表情のまま言った。


「あ…シャーロット様…こんにちは。」


ミレイは慌てて立ち上がりシャーロットへ言った。


「こんにちは…。どうしてミレイ様がここへ?」


シャーロットがミレイへ尋ねた。


「あ…それはですね…。」


ミレイがシャーロットに言うとチラリとフーパーのことを見た。


その後…ミレイがことの事情をシャーロットへ話した。


記念式典の日の夜にミレイが男爵夫婦へやはり自分は養女にはなれない事…

自分は自分を救ってくれた両親…そして家族と暮らしたいという事…を話した様だった。

ミレイの話を聞き最初はどうにか娘になってほしいと食い下がった男爵夫人も男爵の説得もありミレイの申し入れを承諾したとのこと。


そして…ミレイが家族の元へ戻ってきた翌日であるこの日にフーパーに会い話をする為に孤児院へ訪れたとのこと。

ミレイは急にフーパーの元を去った経緯を話し謝罪したとのこと。

そんなミレイの謝罪をフーパーが受け入れてくれたとのこと。


そして…私と王宮で出会った話をフーパーにしたとのこと。


以上の事をミレイが細かくシャーロットへ説明したのだった。


「そうだったのですね…。」


シャーロットはミレイの話を聞き言った。


「はい…。シャーロット様にもお礼が言いたくて孤児院へ訪れたのもあるんです。」


ミレイが言った。


「私にお礼ですか?」


シャーロットは不思議そうな表情で言った。


「はい。王宮で私の事を助けて下さった上に…シャーロット様が言われた言葉を聞き私は自分がどれだけ身勝手な行動をしたかを思い知りました。シャーロット様の言葉を聞かなければ私は今頃間違った選択をして一生後悔していたかもしれませんから…。」


ミレイがシャーロットへ言った。


(私がミレイ様を助けたのは…前世で私がミレイ様にしていた酷いことの罪滅ぼしを少しでも出来たらと思っただけだというのに…。)


シャーロットはミレイの言葉を聞きそんな事を考えていた。


「私はその様に言われるほど大した事は言っていませんが…。ミレイ様は今こうした状況に後悔はしていないのですか?」


シャーロットが真剣な表情でミレイへ言った。


「はい。一つも後悔なんてしていません。」


ミレイは一つの迷いもなく笑顔で言った。


「そうですか…。」


シャーロットはどこかホッとした表情で言った。


(私は大した事はしていないけど…今のミレイ様の笑顔に嘘はないみたいだし少しは前世でしたことの罪滅ぼしになったのかしら。)


シャーロットはミレイの表情を見てそんな事を考えていた。


「それで…何なのですが…これからも孤児院へ遊びに来てもいいですか?」


ミレイはソワソワしながらシャーロットへ言った。


「はい。構いませんよ。ミレイ様の好きな時にいらして下さい。フーパーもきっと喜びますから。」


シャーロットは優しく言った。


「ありがとうございます。」


ミレイは嬉しそうに言った。


そしてミレイはフーパーを見て嬉しそうに照れくさそうに笑った。

フーパーも同じように笑っていた。


(フーパー…良かったわね。本当に二人はお互いを好き合っているのね。あんなに幸せそうに笑い合って…。)


シャーロットはフーパーとミレイを見てふっと笑みを浮かべて考えていた。


「あぁ…そうだわ。ミレイ様…これからは私のことはロッティとお呼び下さい。私もミレイさんとお呼びするので。それに…堅苦しいので敬語も必要ありません。」


シャーロットがミレイへ言った。


「え?でも…。」


ミレイはシャーロットに言われて戸惑いながら言った。


「孤児院の子供達も皆そうしていますので。」


シャーロットは優しくミレイへ言った。


「はい…。わか…うん。分かった。これからよろしくね!ロッティ!」


ミレイは戸惑いながら言うも意を決して笑顔でシャーロットへ言った。


「えぇ。よろしくね。ミレイさん。」


シャーロットは微笑みながら言った。


(まさか…ミレイ様とこんな風に話をする日が来るとはね…。何だか信じられないわ。)


シャーロットはそんな事を考えていた。


「あ…そうだ!ロッティ!式典でのドレスに僕たちが作った花飾りを着けてくれたんだって?」


フーパーが思い出した様に言った。


「えぇ。もちろんよ!あんなにステキな花飾りを付けない選択なんてなかったわ!皆が丁寧に気持ちを込めて作ってくれたのがとても伝わって嬉しかったわ。本当にありがとう。後でミーシャさんや下の子たちにもお礼を言わないとね。」


シャーロットは嬉しそうにフーパーへ言った。


(あんな素敵な花飾りはどこを探したって見つからない程の価値があるもの。本当に嬉しくて心が満たされた花飾りだったわ。)


シャーロットはそんな事を考えていた。


「そんなに喜んでくれたなら作った甲斐があったよ。」


フーパーは笑顔で言った。


「えぇ。」


シャーロットは笑顔で言った。



「ふわぁぁぁ〜。何だ…ロッティ来てたのか?」


そこへ2階からあくびをしながら眠そうな顔をしたジョナスがおりてきてシャーロットへ言った。


「え?ジョナス?今日休みなの?」


シャーロットは驚いた表情で言った。


「ん?あぁ。」


ジョナスは頷きながら言った。


「何よ!それならもっと早く教えてよね!」


シャーロットは困った表情でジョナスへ言った。


「教えろったってよぉ…。それより腹減ったんだよ。」


ジョナスが頭を掻きながらシャーロットへ言った。


「まったくもぅ…。まぁいいわ!すぐに食事の準備をするから少し待ってて!特別に昼も夜もジョナスの好物を作ってあげるわ!」


シャーロットは呆れながら言うもすぐに笑みを浮かべてジョナスへ言った。


「あぁ。頼むよ。」


ジョナスはそんなシャーロットを見て優しい表情で言った。


「お兄さん…こんにちは。お久しぶりです。」


ミレイがジョナスへ言った。


「あぁ…どうも。」


ジョナスはペコッと頭を下げながらミレイへ言った。


「え?ジョナスはミレイさんと会ったことあるの?」


シャーロットは驚きジョナスへ言った。


「ん?あぁ。俺がランニングしてる時にフーパーと彼女が一緒にいた時に何度かな。」


ジョナスが応えた。


「そうなのね。」


シャーロットは頷きながら言った。


(ミレイさんに会ったことがないのは私だけだったってことね…。)


シャーロットは苦笑いを浮かべながら考えていた。


そして…その後シャーロットが急いで昼食を作った。


久しぶりのシャーロットの作るご飯にジョナスは満足そうだった。


食事が終わるとジョナスは眠たいのかもう一度部屋へと仮眠を取りに行った。


シャーロットは各自がそれぞれ時間を過ごしている隙をみて買い物へ出かけた。


収穫祭での事もあっせいか市場の人達はいつも以上にシャーロットが店に来るとにこにことしていたのだった。


そんな店の人達はを見てシャーロットは複雑な気持ちになっていた。


それでもシャーロットは気持ちを切り替えて食材を購入して回った。


(とてもいい鶏肉が手に入ったらジョナスの好きな料理が作れるわ。)


シャーロットはそんな事を嬉しそうに考えながら孤児院へ戻っていた。


その時…


ドンッ!


「きゃっ…。」


シャーロットが勢いよく人とぶつかり力負けして転げそうになった。


「あ…危なかったわ…。」 


シャーロットはかろうじて転げずに済み言った。


「ちょっと…急にぶつかったら危ないじゃないですか?」


シャーロットはぶつかった相手に言った。


しかし…ぶつかった相手はシャーロットの言葉など耳に入っていないのどころかどことなく焦点が合っていない様だった。


(この人…何だか様子が変だわ。私の存在に気づいてない…?)


シャーロットはそんな事を考えながらどことなくこれ以上関わらない方がいいと直感で感じた。


そしてシャーロットは足早にその場を離れ急いで孤児院へと戻ったのだった。


シャーロットが孤児院へ戻ると一体あの人は何だっただろうと気にしたが夕方になるにつれて慌ただしくなりいつの間にかぶつかった相手の事を考えなくなっていた。


そして…シャーロットはこの日の夕食にジョナスの好きなチキンのサワークリーム添えを追加して作り食卓に並べたのだった。

皆、とても美味しそうに食べていた。

そんな風景をシャーロットは微笑ましく見ていたのだった。



それから慌ただしく時間は過ぎていき気づけばシャーロットが帰る時間になっていた。


シャーロットが帰る前にフーパーがミレイを送りに出かけた。


ミーシャは下の子たちをお風呂へ入れていた。


ジョナスは自室に居たのでシャーロットは帰る前に一人裏庭に出てベンチへ腰掛けた。


(久しぶりの孤児院だったけどやっぱり楽しいわね。皆ご飯もとても美味しく食べてくれてたな…。)


シャーロットは空を見上げてそんな事を考えていた。


(私は…一体どうしたらいいのかしら…。)


シャーロットは更に考えていた。


「ロッティ…?そんなとこで何してんだ?」


そこへジョナスがやってきてシャーロットへ言った。


「ジョナス…。ちょっとね…。」


シャーロットは複雑そうな表情で言った。


するとシャーロットの表情を見たジョナスがシャーロットの元までやってきて横に座った。


「また…悩みごとか?」


ジョナスが空を見上げて言った。


「え…?」


シャーロットは少し驚き言った。


「今のロッティは顔に悩んでますって書いてあるぞ?」


ジョナスがシャーロットを見て言った。


「……まったく…ジョナスは変なところに鋭いわよね?」


シャーロットはクスっと笑いながら言った。


「変なところは余計だろ?それより何があったんだ?俺に話せるなら話してみろよ。悩んでる事に関係ない奴相手だと話しやすいだろう?」


ジョナスは少しムスッとして言うもすぐにぶっきら棒だが優しくシャーロットへ言った。


「………。実はね…殿下からもう一度婚約してほしいと言われたの…。」


シャーロットは少し考えてからジョナスへ言った。


「………。」


ジョナスはシャーロットの見えないところでグッと拳を握った。


(やっぱり…騎士たちが噂していた話は本当だったんだな。)


ジョナスは胸がチクリと痛むのを感じながらそんな事を考えていた。


「それで…ロッティは殿下の申し出の答えに困ってるのか?」


ジョナスが言った。


「ハハ…ジョナスは何でもお見通しね…。その通りよ…。」


シャーロットは苦笑いを浮かべて言った。


「殿下との婚約が嫌なのか?」


ジョナスが言った。


「……。嫌だとかいうよりは…戸惑ってるって感じね…。」


シャーロットが言った。


「………。でも…本当はロッティはまだ殿下の事が好きなんだろ?」


ジョナスはグッと唇を噛み締めた後に言った。


「………えぇ…。殿下と婚約破棄をした時に殿下への気持ちはきれいさっぱり洗い流したつもりだったの…。でも…これまでは考えられなかった程に殿下と過ごす機会が増えて…いつの間にか洗い流してたと思った感情が押し流され戻ってきた事に気づいたの…。」


シャーロットはどこか切なそうに言った。


(前世の事があるから絶対に殿下の事を好きにならないって決めたのに…。ミレイさんと会っても殿下がミレイさんに心奪われなかった事を本当は心の底でホッとしてた自分がいた…。)


シャーロットはそんな事を考えていた。


「殿下への気持ちを再確認したのに婚約を悩む必要あるのか?」


ジョナスは自分の感情を圧し殺す様に言った。


「私は…殿下との婚約破棄を申し出た時から私は孤児院を守り孤児院の子供達を守り立派に孤児院から見送る事を決めているの。でも…殿下と婚約して結婚し王太子妃になったら孤児院の責任者でい続けるのは難しくなるわ…。私は孤児院の皆に無責任な事はしたくないの…。」


シャーロットは自分の悩んでいる事を言った。


(ロッティらしい悩みだな…。)


ジョナスはフッと口角を上げて考えていた。


「それなら…王太子妃にもなり孤児院の責任者にもなったらいいんじゃないのか?」


ジョナスはやれやれといった表情で言った。


「え?王太子妃にも責任者にも?」


シャーロットは驚き言った。


「あぁ。王室の事は俺はよくわかんねぇけど別に王太子妃だからって孤児院の責任者をしてはいけないって決まりなんてないんだろ?」


ジョナスは簡単に言った。


「それは…そうだけれど…。王太子妃には王太子妃の役割や働きがあるのよ…だから…。」


シャーロットは戸惑いながら言った。


「そんなやる前から決めて悩んだって仕方ないだろう?どうせ悩むなら本当何してもそう出来そうにないってなった時に悩めよ!ロッティらしくもない。初めてここへ来た時の威勢はどこいったんだよ。」


ジョナスはニッと笑いながら言った。


(ジョナスの言う通りだわ…。まだ自分で何も行動もしてないのに最初から無理と決めつけて悩んでただけだわ…。)


シャーロットはハッとなり考えていた。


「ふん!ジョナスの癖に偉そうに!」


シャーロットは頬を含ませながら言った。


「偉そうとはなんだよ!人がせっかくアドバイスしてやってんのに!」


ジョナスはムッとして言った。


「でも…そんな偉そうなジョナスのアドバイスは…最高だわ!ありがとう…ジョナス。」


シャーロットは満面の笑みでジョナスへ言った。


「あぁ…。」


ジョナスはふっと笑みを浮かべて言った。


(殿下…何かあれば相談してくれと言ってくれてたわよね…。殿下に相談してみてもいいかしら…。)


シャーロットはそんな事を考えていた。


「仮に殿下の申し出を受けたとして…私は…国民に認めて貰える王太子妃になれるかしら…。」


シャーロットはふと空を見上げて言そんな事を呟いた。


(前世ではお世辞でも良い王太子妃とはいえなかったからね…。正直…国民より自分自分だったものね…。)


シャーロットは苦い表情を浮かべて考えていた。


「ロッティならきっとなれるさ。今や…ロッティはこの辺じゃぁ人気者だぞ?きっと国民達はロッティが王太子妃になった暁には祝福してくれるさ。騎士団の皆もすっかりロッティの差し入れの虜だぞ?」


ジョナスはシャーロットを元気づけるかの様に言った。


「そうだといいのだけど…。」


シャーロットは浮かない表情で言った。


(前世では…私は公開処刑されたけれど…その時は私の処刑を見に来た国民達に恨みがこもった様な目で見られたり石を投げつけられたりしたのよね…。今も忘れる事のできない程の記憶だものね…。)


シャーロットは前世の事を思い出しながら考えていた。


「……ロッティが王太子妃になった暁には俺が王太子妃の専属騎士になってやるよ!そうすればいつでもロッティを守ってやれるし悩みも聞いてやれるだろ?」


ジョナスが少し考えた末にシャーロットへ言った。


「え?私の専属騎士に?!本当に?!それはいい考えだわ!ジョナスが専属騎士になってくれたらとても心強いわ!」


シャーロットはジョナスの言葉を聞き浮かない表情から一変笑顔で嬉しそうに言った。


「あぁ。そうだろう。」


ジョナスも笑みを浮かべて言った。


「何だか…ジョナスのお陰で色々と頭の中が整理されたわ!やっぱり持つべきものはちょっとぶっきら棒で口が悪いけど最高の友達ね!」


シャーロットは満面の笑みでジョナスへ言った。


ジョナスはシャーロットの言葉を聞きふっと笑った。


(友達…か……。)


ジョナスは複雑な気持ちを抱きながら思っていた。


「これからも…私の一番大切な友達でいてくれる?」


シャーロットがジョナスへ言った。


「……あぁ。もちろんだよ。」


ジョナスは優しく言った。


「ありがとう…ジョナス!」


シャーロットは嬉しそうに言った。


(フッ…。俺はやっぱりこの笑顔に弱いんだろうな…。)


ジョナスはシャーロットを見てそんな事を考えていた。



そして…シャーロットの帰る時間がやってきてシャーロットは孤児院を後にして帰っていった。


シャーロットが帰ったのでジョナスは自室へ戻ろうと部屋へ向かった。


「兄さん…少しいい?」


ジョナスが部屋に入ろうとするとフーパーがジョナスへ声をかけた。


「?あぁ。」


ジョナスは何だ?という表情で頷きながら言った。


そして二人はジョナスの部屋へと入りベットに座った。


「急にどうしたんだ?」


ジョナスがフーパーへ言った。


「……うん。その…ね…ミレイから聞いたんだけど…ロッティは殿下ともう一度婚約するの?」


フーパーは聞きづらそうに言った。


「…どうだろうな…。決まったわけではなさそうだがロッティも考えてる途中みたいだ。」


ジョナスが言った。


「そうなの?少し前の収穫祭でもロッティと殿下が一緒に居て市場の人達がロッティへ王太子妃バンザイなんて言ってたからさ…。」


フーパーは更に言いづらそうに言った。


「……それで…俺が気にして落ち込んでると思ったのか?」


ジョナスはふっと笑いながら言った。


「……うん…。」


フーパーは苦笑いを浮かべて言った。


「そうか…。弟にまで心配されるとわな…。」


ジョナスは苦笑いを浮かべて言った。


「だって…兄さんは本当にロッティの事が大切で好きなんでしょ?だから…落ち込んでるんじゃないかと思ってさ。」


フーパーは困った表情で言った。


「心配ありがとな…。でも…俺は大丈夫さ。さっきまでロッティと話してたんだけどよ…ロッティの口から殿下に想いを寄せてると聞いて正直しんどかったよ。でもな…俺は決めたんだよ。」


ジョナスが少し切なそうな表情で言った。


「決めたって何を?まさか…ロッティを奪うつもり?!」


フーパーはハッとなり言った。


「馬鹿野郎!そんなわけないだろ!」


ジョナスはムスッとして言った。


「じゃあ…何なの?」


フーパーは??という表情で言った。


「もしも…ロッティが王太子妃になった暁には俺がロッティの専属騎士になると提案したら…ロッティはとても嬉しそうに承諾してくれた…。ロッティは俺に対して友達としての気持ちしかないけど…それでもいいと思えるほどロッティが好きなんだと思ったんだ。ロッティの笑顔がたまらなく好きでロッティにはいつも笑顔でいて欲しいと心から思ったんだ…。だから…俺は俺なりにロッティの笑顔を守っていきたいと思ったんだ。」


ジョナスはとても優しい笑みを浮かべて言った。


「兄さん……。」


フーパーはそんなジョナスに言った。


「これが…俺なりのロッティに対する好きの形なんだよ。」


ジョナスは笑顔で言った。


「それで…本当に後悔しないの?」


フーパーは真剣に言った。


「あぁ。もちろんだとも。」


ジョナスは笑顔で言った。


「……そっか…。兄さんがそうやって決めたんなら僕はこれ以上心配するのはやめるよ。」


フーパーはそんなジョナスを見て笑顔で言った。


「あぁ。」


ジョナスは頷きながら言った。


「あっ、俺はそういう事でこの先結婚することはないと思うからフーパー俺の分まで子供を沢山作ってくれよ!」


ジョナスは意地悪な笑みを浮かべて言った。


「に…兄さん!こ…子供なんて…まだ早いよ!まだ結婚だってしてないのに!」


フーパーは照れながら慌てて言った。


「ハハ…今すぐなんて言ってないだろうがよ!」


ジョナスは笑いながら言った。


「わ…分かってるよ。」


フーパーは慌てて言った。


「フーパーの結婚式に呼んでもらえるのを今から楽しみにしとくからな。」


ジョナスは笑顔で言った。


「うん!兄さんは僕の結婚式に誰よりも参加して欲しい人だからね!」


フーパーは笑顔で言った。


「あぁ。」


ジョナスも笑顔で言った。



この日は…皆…それぞれ複雑な胸の内を打ち明けた事でまた新しい事に気づいたそんな日だった……


ご覧頂きありがとうございます★


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