33.2度目の誕生日
収穫祭の翌日…
シャーロットは朝から孤児院へと来ていた。
孤児院へ行くと予想通り…孤児院の皆からローランドの事を聞かれた。
シャーロットは皆にローランドが王太子だと黙っていた事を謝った。
シャーロットがローランドの事を黙っていたのには色々な理由があったことも説明した。
シャーロットの話を聞き孤児院の皆は納得してくれた。
ローランドの話しが落ち着いたところで孤児院の皆は各自の事をし始めた。
シャーロットとフーパーは畑作業をしていた。
「兄さんは元気に過ごしてるかな?」
フーパーが作業をしながらシャーロットへ言った。
「この前ジョナスから手紙が来ていたでしょう?元気にしてるって書いてなかったの?」
シャーロットがフーパーへ言った。
「いや…元気にしてるって書いてあったよ。でも…兄さんの事だから多少辛いことがあっても正直に言わないだろうからさ…。」
フーパーは少し心配した表情でシャーロットへ言った。
「確かに…。ジョナスは変なとこで頑固だからね…。でも…この間アミルお兄様が騎士団の稽古を見かけた時にジョナスを見たみたいだけど元気に頑張ってたみたいだから本当に元気にしてるんじゃないかしら?」
シャーロットはフーパーが不安にならない様にと笑顔で言った。
「そうなの?それなら…本当に元気でやってみるたいだね。良かった…。」
フーパーはホッした表情で言った。
「きっと…ジョナスの事だから周りに負けじと騎士団での仕事を頑張ってるわよ。」
シャーロットは笑顔で言った。
「そうだね。」
フーパーはシャーロットの言葉を聞き笑顔で言った。
「ロッティの方はどうなの?ローさん…あ…殿下とは婚約解消をしたのに殿下と収穫祭の時みたいに二人で過ごしたりしてるの?」
フーパーがシャーロットへ尋ねた。
「あぁ…。それはね…。少し事情があって殿下とお会いする事が最近は少しあるのよ。」
シャーロットは苦笑いを浮べてフーパーへ説明した。
「そうなの?収穫祭に二人で来てたし街の皆がロッティを王太子妃にとか言ってたからさ…。ロッティもしかしてまた…殿下と婚約するとかありえるの?」
フーパーがシャーロットへ尋ねた。
「ま…まさか!あれは街の皆が勝手に盛り上がってただけよ?って…何でフーパーがその事知ってるの?あの場にミーシャさん達はいたけどもしかしてフーパーもいたの?」
シャーロットは慌てて応えるとふと気になった事をフーパーへ尋ねた。
「え?うん。僕たちもミーシャさん達とは少し離れた場所だけどあの場に居たんだよ。」
フーパーが応えた。
「そうだったの?!例の子とだよね?フーパーの恋人ってことでいいのよね?」
シャーロットは驚きながら言うもすぐににこりと笑みを浮べてフーパーへ言った。
「え?ああ…うん…そうだね。恋人で合ってるよ…。」
フーパーはシャーロットに言われて照れくさそうに言った。
「ふふ…。そうなのね。良かったわね。お互いが同じ気持ちで通じ合う事ができて。」
シャーロットはにこりに微笑みながらフーパーへ言った。
「うん…。」
フーパーは照れながら応えた。
「早くその子を孤児院へ連れてきて紹介してよね!」
シャーロットは笑顔で言った。
「うん!近いうちに孤児院に連れてきて紹介するよ。」
フーパーは嬉しそうに言った。
「えぇ。楽しみにしてるわ!」
シャーロットは笑顔で言った。
(フーパーったらとても幸せそうね…。何だか少し羨ましいわね…。お互いの気持ちが通じ合って恋人になるだなんて…。私と殿下は…。)
シャーロットは幸せそうなフーパーを見て少しだけ切ない表情でそんな事を考えていたのだった…
※
収穫祭が終わってからというものシャーロットもローランドもお互い忙しい日々が続き予定も合わず会うことができずにいた。
シャーロットはローランドと会わない事を心のどこかで少しホッとしていた部分もあった。
ローランドと過ごす事で自分の心の奥にしまっていた気持ちが出てきてしまいそうになっていたからだった。
シャーロットはその気持ちは心の奥にしまっておいた方がいい事を十分に理解していたからだった。
※
シャーロットの十六歳の誕生日まであと三週間というある日のことだった…
その日の夜…シャーロットは家族が揃ったのを見計らって家族へと話をしたいと思い夕食後に皆へ話を切り出した。
「今年の私の誕生日の事なんですけど…。」
シャーロットが話を切り出した。
「誕生日がどうしたんだ?」
ボブがシャーロットへ言った。
「今年の私の誕生日はパーティーなどは開かず家族だけで過ごしたいと思っているのですが…駄目でしょうか…?」
シャーロットは思い切ってボブに言った。
「何?!家族だけでだと?!」
ボブは驚いた表情で言った。
「はい…。やはり…グランバード公爵家として私の誕生日に他の方々を招待しないとなるとやはりあまり良くはないでしょうか…。」
シャーロットは困った表情で言った。
「いや…その様な事で我が家の名誉が傷つくなどという事はないが…何故急に今年はパーティーをしないなどと?!毎年…シャーロットの誕生日は盛大なパーティーを開いていたじゃないか…。」
ボブは戸惑いながらシャーロットへ言った。
(お父様が戸惑うのも無理はないわよね…。毎年私の誕生日は派手にパーティーを開催してたしプレゼントも高級なものばかり要求していたからね…。)
シャーロットは苦笑いを浮べながら前世の自分の誕生日を思い出していた。
「そうなのですが…。今年の誕生日は家族だけでゆっくり過ごしたいと思いまして…。」
シャーロットは複雑そうな表情でボブへ言った。
(前世での十六歳の誕生日は忘れたくても忘れられない程の日だったのもあって今世では余計に盛大なのを躊躇したくなってしまうのよね…。)
シャーロットは複雑な心境で考えていた。
「父上…ロッティの誕生日ですしシャーロットがここまで望んでいるのであれば今年の公爵家での誕生日パーティーは行わず家族と過ごす誕生日にしてもよいのではないですか?」
アミルが二人の話を聞き見かねてボブへ言った。
(今年のロッティの誕生日パーティーを例年通り開催したら間違いなくロッティを自分の妻にと我先に自分の事と我が爵位に目の眩んだ無能な奴がロッティへ群がってくるだろう…。我が妹がその様な奴らの餌食にされてはたまらないからな…。そういう意味でロッティの提案はとても良いものだ…。)
アミルはボブに話すとそんな事を考えていた。
「私も…兄上意見に賛成です。」
エイルもアミルに続きチラリとアミルを見ながらボブへと言った。
(エイルも私と同じ事を考えていた様だな…。)
アミルはエイルと目が合うとフッと口角を上げながら思っていた。
「エラ…君はどう思う?」
ボブが悩む表情のままエラへと尋ねた。
「そうね…。例年より更に豪華なパーティーにしてくれと言ってるのではないんだし…今年はシャーロットの望み通りにしてあげてもいいんじゃないかしら?」
エラは考えながらチラっとシャーロットを方を見てすぐにボブを見て笑みを浮べて言った。
(ふむ……。殿下との婚約解消をしたいと言った日からシャーロットはまるで別人になったかと思うほど私的なわがままはほぼ言わなくなった。あれだけわがままばかり言っていた子が…。あの頃はシャーロットのわがままに何度も困らされてまいっていたが…いざ…そのわがままがなくなると寂しくも感じていた。久々のシャーロット自身の願いだ…。聞いてやるのも悪くないな。)
ボブはフッと笑みを溢しながら考えていた。
「分かった……。今年のシャーロットの誕生日はパーティーは開かず家族で過ごすとしよう…。」
ボブは優しく微笑みながらシャーロットへ言った。
「本当ですか?ありがとうございます…お父様…。」
シャーロットはボブの言葉を聞き困っていた表情が一気に笑顔に変わり言った。
「あぁ。」
ボブが笑顔で言った。
「良かったな…ロッティ。」
「初めての家族だけの誕生日祝い…楽しみだな。」
アミルとエイルがシャーロットに笑顔で言った。
「ありがとう…アミルお兄様。エイルお兄様。」
シャーロットは笑顔で二人へ言った。
※
シャーロットの十六歳の誕生日を家族だけで祝うと決まった翌日…
王宮の王太子執務室ではローランドとアミルが話をしていた。
「……と、いう訳でお話しした通りロッティの今年の誕生日はパーティーを開かず家族だけで祝うことになりました。」
アミルが昨夜決まった話をローランドへ伝えていた。
「そうか……。」
ローランドが言った。
「あまり驚かれないのですね?」
アミルが冷静に応えるローランドを見て言った。
「ん?あぁ…。そうだな…。少し前ならばシャーロットがパーティーを開かないなどありえないと不信感たっぷりに驚いていただろうな…。」
ローランドはフッと笑みを溢して言った。
(少し前のシャーロットであれば毳々しく派手なパーティーが嫌悪するほど似合っていたかもしれないが…今のシャーロットはそんなものは一切似合わないからな…。)
ローランドはそんな事を考えていた。
「……そう…ですか…。ロッティもですが…本当に殿下も変わられましたね。」
アミルはローランドの表情を見てフッと笑みを溢して言った。
「そうかもしれないな…。」
ローランドはフッと笑いながら言った。
「ところで…殿下はロッティへの誕生日プレゼントはお決めになられてるのですか?」
アミルがローランドへ尋ねた。
「え…?プレゼント…?」
ローランドはアミルの言葉に驚き言った。
「まさか…何も渡さないつもりだったのですか?!」
アミルは呆れた表情で言った。
「い…いや…そういう訳ではないのだが………。その…何をプレゼントして良いのか分からず困っていてな…。」
ローランドは苦笑いを浮べて困った表情で言った。
「そうなのですか?!はぁ…私はてっきり何も渡さないのかと思い呆れてしまいそうでしたよ…。」
アミルはホッとした表情で言った。
「そんな訳がないだろう!ただ…本当に何を渡せばいいのか分からなかっただけだ…。」
ローランドはアミルの言葉に少しムッとしたがすぐに困った表情で言った。
「アミルはシャーロットに何をあげるのだ?」
ローランドがアミルへ尋ねた。
「私ですか?私は以前ロッティが孤児院で働くのに動きやすい洋服が欲しいと言ってましたので余計な物など付いていないシンプルな動きやすい洋服を何着かプレゼントとして渡す予定ですよ。エイルは何冊か本をプレゼントすると言っていました。」
アミルがローランドへ応えた。
「そうか…。」
ローランドが呟いた。
「プレゼントを何にするか悩んでおられるのでしたら…やはり…形に残るものがよろしいのではないですか?あ…ですが…今のロッティはあれだけ好きだったドレスや宝石にはまったく興味がないみたいですのでその様なたぐいの物はロッティは受け取らないかもしれません…。」
アミルがローランドへアドバイスをした。
「形に残るものか…。」
ローランドは悩む様な表情で言った。
「ロッティの誕生日までまだ時間がありますのでもう少し考えてみてはどうですか?それでも何も思いつかないという時はまたご相談下さい。」
アミルがローランドを見かねて言った。
「あぁ…。そうするよ。また…その時は頼んだ。」
ローランドが頷きながらアミルへ言った。
「はい。」
アミルは笑顔で応えた。
(形に残るものか…。以前…シャーロットと出かけた際に髪飾りを渡したから髪飾り以外のものか……。)
ローランドはそんな事を考えていた。
※
それから毎日は慌ただしく過ぎて行きあっという間にシャーロットの誕生日当日になった…
この日…
シャーロットはエラに誕生日なのだから孤児院の仕事は休んで一人で気晴らしに出かけておいでと言われて朝から出かけていた。
シャーロットは王都の街で一日ブラブラしていた。
ブラブラしていたら気づくと夕方になっていて慌てて馬車へ乗り込み公爵邸へと戻った。
(久々に一人で街をブラブラするのもいいわね…。考えてみたら…もう一度自分に転生したと気づいてから今日までシャーロットとして生き残る為に必死だったからな…。私の行動一つでどうなるか分からないという状況下で常に神経を尖らせていたものね…。それでも孤児院で働けている事は本当に良かったけれど…。前世と違い殿下との関係も少し違った形になったけれど…それでも…やっぱり私の為にも家族の為にも…気を引き締めないといけないところは引き締めないとよね…。)
シャーロットは馬車の外を見ながら考えていた。
(でも…まぁ…今日は誕生日だし今日くらいは心置きなく楽しい時間を過ごしたらいいよね…?前世の十六歳の誕生日は私の人生の中でもっとも幸せな瞬間ともいえる日だったけれど…今…思えばその日が全ての不幸への始りだったものね…。)
シャーロットは切ない笑みを浮べて考えていた。
(今世の十六歳の誕生日は本当に幸せな誕生日になるといいな…。)
シャーロットは目を瞑りながらそんな事を考えていた。
そうしてシャーロットの乗った馬車が公爵邸へ到着した。
シャーロットが邸へ入るといつもなら出迎えてくれる執事やメイド達の姿がなかった。
シャーロットは何故だろうと考えるも何故だか邸が静かな事に気づき急に不安な気持ちになった…
(お父様やお母様…お兄様達は…どこなの…?)
シャーロットは不安気にそんな事を考えながら急ぎ応接室へ向かうもそこには誰もいなかった。
シャーロットは更に不安が募るも食堂へ足早に向かった。
そして…
シャーロットが食堂へ到着すると扉を開けた。
その時だった…
パーーーーン!
パーーーーン!!
パンパーーーン!
食堂に大きな音が鳴り響いた。
シャーロットはとても驚いた表情をしていた。
「「お誕生日おめでとう!!」」
シャーロットが驚いた表情をしていると目の前にはボブ達家族…そして…使用人…そして…孤児院の皆がそこにいて笑顔でシャーロットへ言ったのだった。
「え…?」
シャーロットは目の前の光景に驚きのあまり言った。
「ロッティ…驚かせてしまってごめんよ?ロッティを驚かせようと思ったんだが驚かせすぎたようだな…。」
アミルが驚くシャーロットに頭を書いてバツが悪そうに言った。
「え…っと…どうして孤児院の皆がいるの…?」
シャーロットは状況を把握しきれず言った。
「アミルとエイルが…孤児院の皆も呼んでお祝いしたらきっとシャーロットが喜ぶだろうと提案してきてな…。シャーロットには内緒で私達と孤児院の皆とこの日の計画を立ててたんだよ…。」
ボブがシャーロットへ説明した。
「そう…だったのですね…。」
シャーロットは驚いた表情のまま状況を把握しつつ言った。
「とても…驚いたけど…孤児院の皆もいるのは本当に嬉しいわ。」
シャーロットは落ち着いた様に満面の笑みで嬉しそうに言った。
「そうか!喜んでくれたなら秘密に計画した甲斐があったよ。」
アミルが笑いながら言った。
そんなアミルの言葉にその場にいた皆は笑顔になった。
そしてシャーロットはあることに気づいた。
「ジョナス?!」
シャーロットはフーパーの後ろにジョナスがいる事に気づき驚き言った。
「久しぶりだな…ロッティ!」
ジョナスは笑顔でシャーロットへ言った。
「驚いたわ!ジョナスまで来てくれたの?!仕事は大丈夫なの?!」
シャーロットがジョナスへ言った。
「あぁ…。今日は休暇を貰ったんだよ。」
ジョナスが言った。
「そうなの?!貴重な休暇を私の為なんかに使っていいの?」
シャーロットは心配気にジョナスへ言った。
「あぁ。もちろんだよ。」
ジョナスは笑顔で言った。
「…ありがとう…ジョナス!」
シャーロットは嬉しそうに笑顔でジョナスへ言った。
「さぁ…立ち話は程々にして皆席について食事にしましょう。」
エラが笑顔で皆へ言った。
そして…
皆が席につくと食事がぞくぞくと運ばれてきた。
あっという間に机の上は料理でいっぱいになったのだった。
料理はシェフのドルがシャーロットの為にと前日から仕込みをして腕をふるってくれた料理だった。
目の前の沢山の料理に孤児院の子供達やミーシャが目を輝かせている姿を見たシャーロットは嬉しくなり自然と笑みが溢れたのだった。
皆で食事をしながら沢山話をした。
シャーロットはもちろん皆もとても楽しそうにしていた。
そして食後には大きなケーキが出てきた。
ケーキには十六本のローソクがささっていた。
ドルがローソクに火をつけた。
(どうか…ここにいる皆がこれからも楽しく幸せに過ごせます様に…。)
シャーロットはそんな事を願いながらローソクの火を消した。
その後、ケーキを食べた後に皆が用意したプレゼントを各自シャーロットへ手渡した。
ボブとエラからはオルガン。
「お父様…お母様…これは…。」
シャーロットがオルガンを見て驚き言った。
「新領地から帰ってきた日に孤児院へオルガンが置きたいと言っていただろう?だからオルガンをプレゼントしたいと思ってね…。」
「気に入ってくれたかしら?」
ボブとエラが笑顔で言った。
「お父様…お母様…ありがとうございます。」
シャーロットは笑顔で二人へ言った。
アミルからは動きやすい洋服を数着…
エイルからは本を数冊プレゼントされた。
「アミルお兄様…エイルお兄様ありがとうございます。大切に使うわね。」
シャーロットは笑顔で二人へお礼を言った。
「「あぁ。」」
アミルとエイルは笑顔で言った。
そして…
ミーシャと下の子供達からは花束とシャーロットの似顔絵…メッセージカードとビーズで手作りしたブレスレットをプレゼントされた。
「ミーシャさん…あなた達…沢山ありがとう。とても嬉しい。」
シャーロットは嬉しそうにミーシャ達へ言った。
ミーシャと下の子供達はそんなシャーロットを見て満足そうに嬉しそうに笑っていた。
フーパーからはエプロンをプレゼントされた。
「フーパーありがとう。とても素敵なエプロンね。」
シャーロットは笑顔でフーパーへ言った。
「本当?気に入ってくれて良かったよ。彼女にも一緒に選んでもらったんだよ。」
フーパーが笑顔で言った。
「彼女に?それなら彼女に会った時にはお礼を言わないとね。」
シャーロットは笑顔で言った。
そして…ジョナスからは
"16th HappyBirthday Charlotte"
と書かれた下に花束が描いてある絵をプレゼントされた。
「これ…ジョナスが描いたの?」
シャーロットは驚いた表情でジョナスへ尋ねた。
「あぁ…。プレゼント買いに行く時間がなくてな…。宿舎で紙もらって道具借りて描いたんだ…。」
ジョナスは少し恥しそうに言った。
「ジョナスには絵の才能があるとは思ってたけど…この絵は本当に本物の花束の様だわ…。ありがとう。こんなに素敵な絵を貰ったのは初めてよ。」
シャーロットは感心しながら言うと満面の笑みでジョナスへお礼を言った。
「ぁぁ…。」
ジョナスはシャーロットの笑顔を見てフッと微笑みながら言った。
「でも…せっかくなら私の似顔絵も描いてくれたら良かったのに。」
シャーロットは少し不満そうに言った。
「何いってんだよ。花束だけでも十分だろ?……まぁ…機会があれば描いてやるよ。」
ジョナスは生意気そうな表情で言うも口調は生意気だが優しい表情でシャーロットへ言った。
「絶対よ?約束ね!」
シャーロットはプクッと頬を膨らませながら言うもにこりと笑みを浮べて言った。
「あぁ。」
ジョナスはニヤリとしながら言った。
「皆…本当にこんなに沢山の素敵なプレゼントありがとうございました…。」
シャーロットは改めて皆へ笑顔でお礼を言った。
(前世では毎年…誕生日は盛大に祝って貰った…高価なドレスに宝石の数々を沢山貰った…でも…どんなに高価な物でも気持ちがこもってなければただのものでしかない事を第二の人生の時に孤児院の子供達にお祝いしてもって初めて知った…。そして…今世でも…改めてプレゼントというものは気持ちがこもってこそのものだという事を感じる事が出来た…。)
シャーロットは目の前の皆の気持ちがこもったプレゼントを見ながらそんな事を考えていた。
そして…
シャーロットの目からは自然と涙が流れた。
「こんなに皆の気持ちがこもったプレゼントを貰えて本当に嬉しい…。そして…こんな素敵な誕生日を過ごせて本当に心から幸せです…。」
シャーロットは思わず嬉しくて嬉し涙を流しながらとても幸せそうか笑顔で言った。
そんなシャーロットを見て下の子たち以外は思わずうるっときたのだった……
そして…皆…満面の笑みを浮べたのだった。
その後は…
各自、孤児院の皆が孤児院へ帰るまでの時間を楽しんだ。
ミーシャや下の子たちはボブとエラと…
フーパーはエミルと本の話で盛り上がっていた。
ジョナスはアミルと話をしていた。
シャーロットはそんな皆の楽しそうな光景を見て胸がほっこりしながら見つめていた。
そして…風に当たろうと食堂のテラスへと出た。
(あぁ…本当に今日はとても幸せな日だわ…。)
シャーロットは風を感じながら空を見上げて思っていた。
(……前世の十六歳の誕生日には殿下の結婚式目前だったから人生で一番有頂天な日だったわね……。私の十六歳の誕生日を迎えたということは…国の創立記念式典が近いということ…そして…殿下とミレイ様が出逢う日がもうすぐそこだということね……。)
シャーロットは前世の事を思い出しながらとても苦しそうな辛そうな表情で考えていた。
そこへ…
「ロッティ…。」
シャーロットの後ろからジョナスが声をかけてきた。
「ジョナス?どうしたの?」
シャーロットはハッとなり驚き言った。
「……いや…せっかくの誕生日なのに何思い更けてのかなって思ってな。」
ジョナスは生意気にシャーロットへ言った。
(本当は…お前が何だかどこかに消えてしまうんじゃないかって思うほどの表情をしてたから思わず声かけたんだけどな…。)
ジョナスはそんな事を考えていた。
「し…失礼ね!ただ…嬉しさに浸ってただけよ!」
シャーロットはジョナスに言われてギクっとなり誤魔化す様に言った。
「そうか…?まぁいいけどな。」
ジョナスは眉をひそめながら言った。
「それより…騎士団の仕事はどう?少しは慣れた?」
シャーロットがジョナスへ尋ねた。
「ん?あぁ…。そうだな。ようやく騎士団の仕事も宿舎での生活にも慣れてきたとこだな。」
ジョナスが応えた。
「そっか…。それなら良かったわ。」
シャーロットはにこりと微笑みながら言った。
「あぁ。」
ジョナスが応えた。
「もしも…騎士団の中で平民だの孤児院出身だのと嫌味な人がいたらすぐ私に言ってね!私が懲らしめるから!」
シャーロットはグッと拳を握りジョナスの前に出しながら言った。
「ハハハ…そんな人は今のところは…いないさ。騎士団には俺の他にも平民出身の人は沢山いるからな。」
ジョナスはシャーロットを見て思わず笑いながら言った。
「本当に?!それならいいけど…。もし嫌な人がいたらすぐに言ってよね。」
シャーロットがジョナスへ言った。
「あぁ。頼りにしてるよ。」
ジョナスはクスっと笑いながら言った。
「もちろんよ!任せておいて!」
シャーロットは自信満々に言った。
「……ロッティ…この前…ふと耳にした話なんだけどさ…。」
ジョナスは急に表情をかたくしながら言った。
「何?」
シャーロットが不思議そうにジョナスへ言った。
その時…
「ジョナスーー!こっちに来いよー!」
アミルが部屋の中からお酒を持ってジョナスに見せながらジョナスへ言った。
「……はい!すぐ行きます!」
ジョナスがアミルへ言った。
「呼ばれたから俺は中に入るな…。」
ジョナスがシャーロットの方を見て言った。
「分かったわ。それよりさっき何て言おうとしたの?」
シャーロットが言った。
「ん〜…いや…大したことじゃないからいいわ。」
ジョナスははぐらかす様に言った。
「そう…なの?わかったわ。早くアミルお兄様の所へ行ってあげてちょうだい!」
シャーロットは不思議そうな表情をして言うもすぐにアミルの方を指さして言った。
「あぁ…。」
ジョナスは頷きながら応えると部屋の中へと入っていった。
(はぁ…ロッティ…お前はつい最近殿下と二人で出かけたのか…?街の人たちがお前を王太子妃にと言っていたのは本当か?……なんて聞けないよな…。)
ジョナスはチラリとシャーロットを見て思うもそのままアミルの元へと向かった。
ジョナスが部屋の中へ入りシャーロットはテラスでまた1人になった。
シャーロットは再び風を感じながら何かにふける様な表情で空を見上げていた。
その時…
シャーロットは何か視線を感じると思い視線の感じる先をふと見た。
シャーロットは自分が見た先を見て驚いた。
目線の先にはローランドが立っていたのだった。
(殿下…?!)
シャーロットはそう思うと急いで外へ出てローランドの元へと向かった。
※
「殿下…?何故…その様なところへいらっしゃるのでしょうか…?」
シャーロットがローランドのいる場所へ着くとローランドへ尋ねた。
「……いや…あの…そのだな…。」
ローランドは戸惑いの表情を浮べて言った。
そんなローランドを見てシャーロットは??という表情を浮べていた。
「……その…これをシャーロットに渡したくて来たんだ…。」
ローランドは意を決した様に持っていた花束をシャーロットの目の前へと差し出しながら言った。
「え…?これは…。」
シャーロットは目の前に差し出された花束を見て驚きながら言った。
「…その…十六歳の誕生日おめでとう…シャーロット…。」
ローランドは少しよそよそしそうに緊張した面持ちでシャーロットへ言った。
「え……。」
シャーロットはローランドの言葉に思わず呆気にとられた表情で声を漏らした。
「本当は…次に会う時に渡そうと思っていたのだが…やはり渡すなら誕生日当日の方がいい気がしてな…。急に…しかも何の連絡もなく勝手に来てしまいすまなかった…。」
ローランドは困った表情を浮べてシャーロットへ言った。
(あの…殿下が…私の誕生日の為に…わざわざ花束を持ってきてくれたの…?)
シャーロットは呆気にとられたままそんな事を思っていた。
「いえ…それは構いませんが…お声をかけて下されば良かったのに…。」
シャーロットは戸惑いながら言った。
「いや…その邸のチャイムを鳴らそうと思ったのだが…その…テラスにシャーロットとジョナスが楽しそうに話しているのが見えてな…。その…邪魔しては悪いと思っていたらチャイムを押せなかったのだ…。」
ローランドはかなり気まずそうな表情でシャーロットへ言った。
(まさかジョナスがグランバード公爵邸に訪れているとは知らなかったが…あんなにシャーロットと楽しそうに話しているのを見たら変に悔しさと焦りが込み上げてきてその場を動けなくなったんだがな…。)
ローランドはそんな事を考えていた。
「その様な事気になさらなくても大丈夫でしたのに…。今からでも中に入って下さい…。」
シャーロットは慌てて言った。
「いや…よい…。大丈夫だ。これを渡そうと思っていただけだしな…。」
ローランドは首を横に振って言った。
「……本当に受け取ってもよろしいのですか?」
シャーロットがローランドが差し出していた花束を見て言った。
「あぁ…その為に用意したのだから…。」
ローランドは少しホッとした表情で言った。
(本当に…私の為に…。)
シャーロットはそんな事を思っていた。
そして…
「ありがとう…ございます…。」
シャーロットはそう言うとローランドから花束を受け取った。
(黄色いスイセンの花束…スイセンの花言葉は…"もう一度愛してほしい…"。)
シャーロットは花束の花を見ながら考えていた。
(フッ…きっと殿下は花言葉の意味は知らないんでしょうね…。)
シャーロットはそんな事を考えながら花束を見つめていた。
「それと…これも…。」
ローランドは花束を見つめるシャーロットを見ながらリボンがついた箱をシャーロットへ差し出した。
「これは…なんですか??」
シャーロットが差し出された箱を見てローランドへ言った。
「私からの誕生日プレゼントだ…。」
ローランドが恥しそうに言った。
「え…?誕生日プレゼントですか…?殿下が私に……?」
シャーロットは花束でも相当驚いたがローランドが自分へプレゼントを用意していた事に更に驚き言った。
「あぁ…。」
ローランドは気まずそうな表情で言った。
(前世では…十六歳の誕生日には殿下からは花束もプレゼントもなかった…。唯一貰ったものは結婚指輪だった。それも愛も感情も何もこもっていないただ…形だけのもの…。あの時はそれでも嬉しいと思っていた…。今…考えると虚しくなるくらいの物だけれど…。でも…今…目の前にいる殿下は殿下自らの意思で私へプレゼントを渡してくれている…。)
シャーロットは差し出されたプレゼントを見て思っていた。
「あ…ありがとうございます…。あの…開けてみてもいいですか?」
シャーロットがまだ信じられないという様に手を震わせながらローランドからプレゼントを受け取るとローランドへ言った。
「あぁ。」
ローランドはホッとした表情で頷きながら言った。
シャーロットはローランドが応えると箱のリボンと包み紙を丁寧に外して箱の中を見た。
「これは……。」
シャーロットは箱の中身を見てとても驚いた表情で言った。
「オルゴールだ…。」
ローランドは優しく微笑みながら言った。
「こ…れは…少し前に…私が街で見ていたオルゴール…。」
シャーロットは驚いたまま呟いた。
「実は…シャーロットへのプレゼントを何にしようか悩んでいたんだ…。何か良いものはないかと先日街へ足を運んだのだが…その時にたまたま街へ買い物に出ていたシャーロットを見かけてな…。シャーロットがオルゴールの店の前でこのオルゴールを見つめて音を聴き入ってるのを見たんだ…。それで…プレゼントをこのオルゴールに決めたのだ。」
ローランドはシャーロットへ言った。
「気に入って…もらえただろうか…?」
ローランドは緊張気味にシャーロットへ尋ねた。
(あぁ…殿下はこんなにも私の事を考えて悩んでこのプレゼントを選んでくれたのね…。もう…だめだわ…もう…誤魔化せない…。前世の呪縛から逃れる事ができないから…もう一度シャーロットとして生きるなら絶対に同じ事は繰り返さないと決めて心の奥底の気持ちの扉を閉めていた…。でも…どんなに扉を閉めても…やっぱり殿下への気持ちまでは誤魔化せないという事ね…。)
シャーロットはオルゴールを見つめながらそんな事を考えていた。
(やっぱり…私は殿下を好きなままだったのね…。)
シャーロットはフッと微笑みながら思っていた。
そして…
「はい…。とても気に入りました…。ありがとうございます…。一生…大切にしますね…。本当に今日は今までの人生の中で一番幸せな誕生日です…。」
シャーロットは嬉し涙を溢しながら心の底から嬉しいと思うような幸せそうな笑みを浮べてローランドへ言った。
(この恋は…決して実ることない恋だけど…今日の事は決して忘れないし幸せな思い出としてこれからも心に置いておくわ…。)
シャーロットはローランドに言いながらそんな事を思っていた。
そんなシャーロットの表情を見たローランドは思わずシャーロットを抱き寄せ抱きしめた。
(えっ…?)
シャーロットは突然起きた状況に戸惑った。
「殿下…?」
シャーロットがローランドへ言った。
「すまない…。勝手な事をして…。だが…その…今…この時だけはこうする事を許してはくれないだろうか…。私も…今…この上なく幸せな気持ちなのだ…。それに…シャーロット…君の事が愛おしくてたまらないのだ…。これは夢ではないということをこうして温かさを感じて実感したいのだ…。」
ローランドはシャーロットを抱きしめながら言った。
「………。わかりました……。今だけは…許して差し上げます…。」
シャーロットは戸惑っていたがローランドの体温を感じると優しい表情を浮べてローランドへ言った。
「ありがとう……。」
ローランドはシャーロットへ言った。
この時の二人はとても幸せそうな表情を浮べていたのだった………
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