32.告白と前世の呪縛と心の奥にしまった気持ち
「え…っと……殿下…今のはどういう…。」
シャーロットはあまりにも驚き戸惑いの表情を浮かべてローランドへ言った。
(私を…王太子妃にって言ったわよね…?)
シャーロットは驚きの表情のまま考えていた。
「……その…だからそのままの意味だ…。私はもう一度…シャーロットと婚約をし…結婚をして…王太子妃として私の隣に立って欲しいと思っているのだ。」
ローランドはモゴモゴしながら気まずそうに言うもグッと拳を握りシャーロットの顔をしっかりと見て決意した表情でシャーロットへはっきりと言った。
ローランドの言葉にシャーロットはとても驚いた表情をしていた。
「……今度は…私からシャーロットとの婚約をお願いしたいと思っている…。」
ローランドは驚くシャーロットに更に言った。
(殿下は何を…言っているの…?私ともう一度…婚約したい?私を王太子妃に…ですって…?)
シャーロットはローランドの言葉を聞き驚きを隠せないまま考えていた。
そしてシャーロットは表情を強張らせた…。
(どうして急に殿下はそんな事を言うの…?)
シャーロットは更に表情を強張らせながら考えていた。
(あと…数ヶ月後には殿下はミレイ様と出会うというのに…。何故今なの…?殿下は前世でも現世でもずっと興味も示さず冷たくしていたのに…。)
シャーロットは前世の事も含めローランドの自分に対しての態度を思い出しつつどこか苦しそうな辛そうな表情を浮かべて考えていた。
(シャーロットは何故…あんなにも表情を強張らせて苦しそうな辛そうな表情をして黙っているのだ…?そんな表情をする程…私と婚約するのは嫌なのか…?私にはもうチャンスがないのか?)
ローランドはシャーロットの表情を見て不安が押し寄せてくるのを感じながら考えていた。
「……殿下…は…何を思い急にその様な事を仰るのですか?私には殿下が何故そんな事を仰るのか理解に苦しみます…。」
シャーロットは重い口を開きながらローランドへ尋ねた。
「……シャーロットがそう思うのも仕方のない事だとも理解している…。これまでの私のシャーロットに対する態度を見れば私がこの様な事を言うのは不信感しかないだろう…。」
ローランドは戸惑いながらも言葉を選びながらシャーロットへ言った。
「だが…シャーロットに婚約解消を申し込まれてから今日までシャーロットを見て共に時間を過ごすうちにいつの間にか…シャーロットを目で追う様になり…シャーロットと話をしたい…一緒にいたいと思い…シャーロットの意識が戻らないと聞いたときは生きた心地がしなかった…。それ程までに本当にいつの間にかシャーロットのばかり考える様になっていたのだ…。」
ローランドは表情を柔らかくしながら少し口角を上げる様に優しく言った。
ドキッ…
そんなローランドの見て言葉を聞いたシャーロットは思わずドキっとした。
そして…
ローランドはグッと拳を握り何か覚悟を決めた様な表情を浮かべた。
「私は…初めて孤児院へ訪れた際につくろうことなく心の底から笑っていたシャーロットを見た時に…きっとシャーロットへ恋に落ちていたのかもしれないな…。」
ローランドはそう言うと表情をクシャッとしてとても優しい笑みを浮べて少し照れた様にシャーロットへ言ったのだった。
ドキドキ…
ドキドキ…
そんなローランドの屈託のない笑みを浮かべたのを見たシャーロットは思わず心臓が飛び跳ねるのを感じた。
(殿下が…私に恋をしてるですって……?)
シャーロットは外に漏れてしまいそうな程の心臓の音を感じながら考えていた。
(前世では…どれだけ私が殿下を好きでも殿下は見向きもしてくれなかったというのに…。)
シャーロットはドキドキを隠せないまま考えていた。
"その魂までもが一つ残らず散り去ったとて私は…一生お前を許さない…。"
その時だった…
シャーロットの頭の中に前世でとても冷たい目をしてシャーロットを見下ろしながら言ったローランドの言葉とローランドの冷たい表情が浮かんだ。
(……そうよ…。私と殿下の未来はもう決まってるのよ…。)
シャーロットは前世の記憶が頭を過ぎるとグッと唇を噛み締めて何とも言えない辛く悲しい表情を浮べて考えていた。
「……殿下…。きっと殿下には私などよりもずっと遥かに王太子妃として殿下の隣に立っても恥ずかしくない方が現れると思います…。きっと…今の殿下は恋ではなく一時的な感情で…私が急に殿下と婚約を解消したり…孤児院の責任者になったりと今までと違った行動とっているから気になっただけではないかと思います…。」
シャーロットはグッと唇を噛み締めながらとても悲しそうな辛そうな笑みを浮かべながらローランドへ伝えた。
(きっと私が変わったから興味が出ただけで…私に恋…私を愛している訳ではないのよ…。だってもうすぐ殿下はミレイ様という運命の相手に出会うのだから…。きっと…今胸が痛むのを感じるのは気のせいよ…。)
シャーロットは胸がチクリと痛むのを感じながら自分に言い聞かせる様に考えていた。
「何?!この気持ちが恋ではなく一時的な感情だと?!それに…私にはシャーロットではなく別の王太子妃に望む者が現れるだと?!どうしてそうなるのだ?!少し前からどうして…シャーロットはまるで何かを察する様に頑なにそう言うのだ?!」
ローランドはシャーロットの言葉を聞いて思わず声を上げて少し怒った様なもどかしい様な表情で言った。
「…………。」
(察してるんじゃなく知っているからよ…。殿下がミレイ様を愛しミレイ様を王太子妃にしたいと思うことを…。)
シャーロットは今にも感情に押しつぶされそうな今にも泣いてしまいそうな程の辛い表情を浮べて拳をギュッと握りながら考えていた。
(シャーロット…君はどうしてそんな悲しく辛そうな表情をしてるのだ?何を考えているのだ?何故…頑なに私の気持ちを拒絶する様な事を言うのだ?何故なのだ?!私の気持ちを伝えてもどうして伝わらないんだ…。)
ローランドはシャーロットの表情を見て何ともいえない気持ちになりながら考えていた。
「……。シャーロット…君が何を考えているのかはわからないが…私の気持ちが信じられないのか?」
ローランドは何かを考える様な表情を浮べてからシャーロットへ言った。
「…………。」
シャーロットは黙っていた。
(信じるもなにも…。前世の呪縛からは逃れる事はできないんだもん…。)
シャーロットは切ない表情で考えていた。
「では…私の想いが伝わる様に…私の想いを信じてもらえる様に行動で示したらシャーロットはわかってくるか?」
ローランドはシャーロットの表情を見て何かを考えた後にシャーロットへ言った。
「え…?」
シャーロットはローランドが予想外の言葉を言ったことに驚き言った。
「シャーロットは今までは散々な態度をとってきた私が急に君に恋をしたなどと言ったから私の気持ちを信じる事ができないのだろ?それならばこれからシャーロットに私の気持ちは嘘ではない事を行動で示そうと思うのだ。」
ローランドがシャーロットへ真剣に言った。
(私に今できるのは行動しかないからな…。)
ローランドはシャーロットに話しつつ考えていた。
「えっと……。」
シャーロットは戸惑いながら言った。
(殿下はどうしてそこまでして…。)
シャーロットは戸惑いながら考えていた。
「コホンッ…そういう事だから…その…今後は時間が許す時は私と共に過ごして欲しいのだがいいだろうか…?」
ローランドは急に自分の言ったことが恥ずかしくなったのか照れたのを誤魔化す様にシャーロットへ言った。
(殿下と時間を過ごすですって…?!)
シャーロットはローランドの言葉を聞き驚き考えていた。
「シャーロット…だめだろうか…?」
ローランドがシャーロットへ尋ねた。
「えっ…?あぁ…えっと…。」
シャーロットはハッとなり戸惑いながら言った。
(今日…殿下の誘いを断らなかったのは目の前の事から逃げない為にも踏み出さないといけないと思ったからだけど…今後も殿下と二人きりで会うとなると考えどころだわ。でも…目の前の殿下の事を思うと断るには申し訳なく思ってしまう自分がいる…。一体どうしたらいいの…。)
シャーロットは頭を悩ませながら考えていた。
シャーロットは更に頭を悩ませながら考えた末に結論を出した。
「……分かりました。殿下の申し出お受け致します…。」
シャーロットは思い悩んだ末にローランドへ言った。
「ほ…本当か?!」
ローランドはシャーロットの言葉を聞き思わず声を張り言った。
「…!!はい…。私の予定は前もって殿下に手紙でお伝えするかアミルお兄様にお伝えしますのでその予定を見て殿下のご都合と合う時にお会いしましょう…。」
シャーロットは声を張ったローランドに少し驚きながら言った。
「本当なのだな…。ありがとう…。感謝する。では…シャーロットの予定を確認次第こちらから連絡をするとしよう。」
ローランドはホッとした様な表情で言った。
「はい。宜しくお願い致します…。」
シャーロットが応えた。
(本当は殿下と二人で過ごす事を避けた方が良かったんだろうけど…現世は何事にも後悔したくないって決めてたから殿下の申し出も断ったら何だか後悔してしまうんじゃないかと思ったのよね…。)
シャーロットはそんな事を考えていた。
(それに…これは完全に自分勝手な考えになってしまうけど…殿下は…数カ月後には今の私への気持ちが恋ではなくただの関心だと気づくはず…。でも…殿下の申し出を受け入れる事で前世で私が殿下にしてしまった事に対して少しでも罪滅ぼしになるかもしれないと思ったから…。前世では殿下へ自分勝手な想いをいつも押し付けてばかりで最終的に殿下の愛した人を殺そうとした程の過ちを犯してしまったのだからせめて…この機会に何か殿下に対して出来ることがあるのならばしてあげたいと思った…。だって…前世とはいえ殿下は私が初めて愛した人だから…。)
シャーロットはどこか切ない表情を浮べて考えていた。
その後…
二人は領地の視察を終えて馬車に乗りグランバード公爵邸へと向かった。
帰りの場所の中では少しぎこちなさがあるもののシャーロットとローランドは話をした。
シャーロットがオルガンや歌がとても上手だった事…
グランバード公爵家の新しい領地をこれからどうしていくかなど…
そうこうしているうちにグランバード公爵邸へと到着した。
馬車から二人が降りた。
「今日は…共に時間を過ごせて良かった…。ありがとう。」
ローランドがシャーロットへ言った。
「いえ…こちらこそありがとうございました。殿下のお陰で新しい領地を視察できましたし…殿下とも色々お話ができて良かったです。」
シャーロットがローランドへ言った。
「あ…あぁ。では…また連絡する。」
ローランドは少し恥しそうにシャーロットへ言った。
「はい。」
シャーロットが応えた。
そして、ローランドは再び馬車に乗り王宮へと戻ったのだった。
シャーロットはその日の夜…
新しい領地を視察した事をボブ達家族へと話をした。
領地を視察して感じたことや思ったことをボブ達へ話したのだった。
シャーロットが自室へ戻った後ボブ達四人はシャーロットの話を聞きシャーロットがグランバード公爵家の一人として色々と考えていた事に驚いたもののシャーロットがいつの間にかどんどん立派に成長していっているのを喜ぶ反面…わがままばかり言っていた時を思うと少し寂しく思うと話をしていたのだった…
その頃シャーロットは…
(……今日は濃い1日だったわね…。果たして私の今日の殿下に対する選択がどうこの先に影響してくるか分からないけど…確かなのは殿下が心から愛する人はミレイ様だということ。そして…私はこれからも孤児院の責任者を続けること…私の家族が死ぬことはないということ…ね。)
シャーロットはベッドに横たわり考えていた。
(殿下と時間を過ごしたら少なくとも…現世では殿下にとって私の印象は前世よりも変わるはず…。たとえ殿下との未来はなくてもそれだけで十分だわ。)
シャーロットはどこか切ない表情で考えていた。
チクリ…
(きっと…この胸の痛みも気のせいね。そう…気のせいよ…。殿下への気持ちは前世に置いてきたのだから…。)
シャーロットはチクリと痛んだ胸に手を当てながら自分に言い聞かせていた。
そして…シャーロットはいつの間にか眠りについていたのだった…
※
シャーロットとローランドが領地の視察に行ってからの三日が経った頃シャーロット宛の手紙をアミルから預かった。
手紙はローランドのからのもので
ローランドの先二週間の間の時間を取れる日が記載されていた。
シャーロットはローランドの空きの日程と自分の日程を照らし合わせて二人の時間を作れる日取りを手紙に書いてアミルへ手紙を託けた。
それからシャーロットとローランドは時間が合う日には…
二人は…
オペラを観に行ったり…
カフェに行ったり…
食事をしたり…
お互いに行ってみたい場所へ行ったりと時間を過ごしたのだった。
そして…
二人が領地の視察へ行ってから1ヶ月半が過ぎた頃…
王都の街で収穫祭が行われるということでシャーロットとローランドは二人で収穫祭へ出かけることになった。
当初はシャーロットは孤児院の子供達を連れて行く予定だったが…
フーパーは例の恋人と行く事になったのでフーパー抜きの子供達とミーシャで行こうとしていたがミーシャが気を利かせたのか自分が子供達を連れて行くからシャーロットはローランドと二人で行ってくださいと言ってきたのがきっかけでローランドと二人で行くことになったのだった。
そして…
収穫祭当日…
シャーロットとローランドは二人で収穫祭へ訪れていた。
「すごい人だな…。」
ローランドが人の多さに驚き言った。
「そうですね…。今年は色々なものが沢山収穫できたと聞いています。ですので例年以上に賑わっている様ですね。」
シャーロットがローランドへ言った。
「そうなのか…。王都の街がこの様に活気に溢れているのは良いことだな。」
ローランドは感心した様に言った。
「はい。そうですね。やはり…こうして国民一人一人が楽しそうに笑って過ごしていられる事が一番ですね。」
シャーロットはふっと笑みを溢して言った。
(二度目の人生でのお祭りを思い出すわね。子供達はお祭りになるといつもワクワクしてたな…。)
シャーロットは収穫祭の賑わいを見ながら前世を思い出して考えていた。
「人が多いですが少し歩いて見て回られますか?」
シャーロットがローランドへ言った。
「あぁ。そうだな。」
ローランドは頷きながら応えた。
そして二人は色んな屋台を見て回った。
「シャーロット様!新鮮な果物が沢山あるので食べて行ってください!」
果物を売っている屋台の男店主がシャーロットへ声をかけた。
「あらっ…本当ですね。いつも以上に沢山果物がありますね。」
シャーロットは笑顔で驚き男店主へ言った。
「シャーロット様にはいつも沢山果物を買ってもらってるので今日はサービスさせて下さい!」
男店主は嬉しそうにシャーロットへ言うと串に刺さった果物をシャーロットへ差し出した。
「わぁ!美味しそうなマンゴーですね。私マンゴー大好きなのでとても嬉しいです。ありがとうございます。お言葉に甘えていただきますね。」
シャーロットは目を輝かせて嬉しそうに言うと果物を受け取り男店主へお礼を言った。
シャーロットにお礼を言われた男店主は少し照れながら嬉しそうに笑った。
それを見たローランドはどこか不服そうな表情をしていた。
「はいよ!お兄さんにもサービスですよ!」
男店主がローランドへ言うとローランドにも串に刺さった果物を差し出した。
「わぁ〜良かったですね!殿…あ…ローさん!」
シャーロットは果物を差し出されたローランドへ言った。
「ん?あぁ…。ありがとう。いただくよ。」
ローランドは一先ず男店主へお礼を言うと果物を口にした。
「ん?これは…旨いな…。」
ローランドが驚いた表情で言った。
「そうでしょう?ここの果物はどれも美味しいものばかりなのですよ。ローさんが食べたドラゴンフルーツは私もよく購入するんですよ。」
シャーロットはにこりと微笑みながらローランドへ言った。
「あ…あぁ…。」
ローランドが言った。
「シャーロット様は嬉しい事を言ってくださるなー!」
男店主は嬉しそうにシャーロットへ言った。
「だって本当のことですから。」
シャーロットは笑顔で男店主へ言った。
「ハハハ…あっ!そうだ!少し前にフーパーが恋人を連れて寄ってくれたんですよ!フーパーと恋人にもサービスさせてもらっておきましたよ!」
男店主がシャーロットへ言った。
「フーパーがですか?!フーパーにまでサービスして頂いてありがとうございます。」
シャーロットは笑顔で男店主へお礼を言った。
(フーパー…恋人とは上手くいってるようで良かったわ。早く孤児院へも連れてきて紹介してほしいわね。)
シャーロットはふふっと笑みを浮べて考えていた。
「いいえ!」
男店主は笑顔で言った。
そして…
その後もシャーロットとローランドは色々な屋台を見て回った。
行く先々の屋台でシャーロットは話しかけられ沢山サービスされた。
それをローランドはずっと横で見ていた。
そしてある程度屋台を見回り落ち着いたので二人はベンチを見つけて座った。
(はぁ〜さすがに人混みを歩き続けるのは疲れたわね。でも…それぞれの屋台の人たちが楽しそうで良かったわ。)
シャーロットは足元を見ながら考えていた。
「シャーロットは………人々からとても人気があるのだな…。」
ローランドがどこか不服そうな表情で呟いた。
「え?」
シャーロットは思わず言った。
「行く先々で声をかけられていただろう?それだけではなく…皆シャーロットを見るなりサービスばかりされていただろう…。」
ローランドは少しムスっとしながらシャーロットへ言った。
「そう…ですね…。それは…いつも私が買い出しに行く際に色々なお店で食材を購入している常連だからではないでしょうか。」
シャーロットは首を傾げながらローランドへ言った。
「それだけでは…ない気がするのだがな…。」
ローランドは更にムスっとしてシャーロットへ言った。
シャーロットはローランドの言葉を聞き??という表情を浮かべていた。
(殿下…心做しか機嫌が悪い…?)
シャーロットはローランドの表情を見て思った。
「男店主達は…シャーロットに好意を抱いている様に見えたが?」
ローランドがシャーロットへぼそりと言った。
「?!ふふふ…それはありませんよ。あの屋台の男店主の方々のほとんどが既婚者ですよ?」
シャーロットは思わず声に出して笑いながらローランドへ言った。
(既婚者だから何だ?!あれはどう見てもシャーロットを見てデレデレしていたのだぞ?!それを笑って流すなど!)
ローランドはそんなシャーロットを見てムッとして考えていた。
「それに…きっと皆さんが私に良くしてくださるのは私がグランバード公爵家の人間だと知られてしまった事と元オマーン公爵の件もあると思います…。元オマーン公爵のせいで王都の街の活気や景気が落ち込んでいたのは事実です。陛下の目を欺き悪事を働き王都の人々を苦しませていたのです。その悪事を暴き王都の街を少しでもいい方向にと考え動いたというのも大きいのではないかと思います。」
シャーロットはローランドへ説明した。
(元オマーン公爵の悪事は本当に酷いものだったからね…。あんな人のせいで人々が苦しめられてた事が今でも許せないのだから…。)
シャーロットはそんな事を考えていた。
(確かに…報告書を見る限り元オマーン公爵の悪事は酷いもので王都の人々がどれほど苦しんでいたかが想像できるのは間違いないからな…。王都の人々からしたらシャーロットには感謝してもしきれないのだろうな…。本来ならば父上や私が正さなければならなかった事をシャーロットがやり遂げたのだからな…。シャーロットは私の知らない間にこれほどまでに王都の人々に好かれていたのだな…。)
ローランドはシャーロットの話を聞き考えていた。
「既婚者とはいえ…男は男だ…。あまり優しくするとつけあがるからな…。」
ローランドはボソボソとシャーロットへ言った。
「?!!」
シャーロットは驚いた表情を浮かべた。
ドキ…
(何なのよ…。まるで…殿下が店主さんたちに嫉妬してるみたいじゃないの…。)
シャーロットはローランドの言葉を聞いて思わずドキっとしながら考えていた。
(いや…勘違いしてはだめよね…。殿下はあくまで私のグランバード公爵家の令嬢としての立場を考えて言ったのよね…。)
シャーロットは首を軽く振って自分に言い聞かせた。
「はい…。気をつける様にしますね…。」
シャーロットは応えた。
「ところで…殿下喉が乾きませんか?秋になったとはいえまだまだ残暑が残っているので水分は摂っておいた方がいいので飲み物でも買ってきましょうか?」
シャーロットは話題を変える様にローランドへ尋ねた。
「ん?あぁ…そうだな。それならば私も一緒に買いに行こう。」
ローランドがシャーロットへ言った。
「はい。分かりました。では…買いに行きましょう。」
シャーロットが頷きながら言った。
「あぁ。」
ローランドが応えた。
そして…
二人は屋台へ飲み物を買いに行った。
「オレンジジュースを2つもらえますか?」
シャーロットが屋台の男店主へ言った。
「おっ!シャーロット様じゃないですか。オレンジジュース2つですね。すぐお作りしますね!」
男店主がシャーロットへ言った。
「ありがとうございます。お願いします。」
シャーロットが笑顔で言った。
そして男店主は急いでオレンジジュースを作った。
「はい!お待ちどうさまです!」
男店主が言うと出来たてのオレンジジュースをシャーロットへ手渡した。
「ありがとうございます。ローさんどうぞ。」
シャーロットは男店主へお礼を言うと1つをローランドへ手渡した。
「ありがとう。」
ローランドはシャーロットにお礼を言うとジュースを受け取った。
「ん…?まさか…あなた様は…王太子殿下でらっしゃいますか?!」
男店主がジュースを受け取るローランドを見て驚いた表情で言った。
「あっ……。」
ローランドは男店主の言葉に思わず気まずい表情で言った。
ローランドは王都の人々のほとんどが王太子の顔を知っているから王都へ出かける際に人々が混乱しない様にと服装もなるべく地味にして髪型なども変えていたのだった。
しかし…ジュース屋の男店主はローランドが王太子だと気づいたのだった。
「お…王太子殿下にご挨拶申し上げます…。」
男店主は表情を固くしてローランドへおどおどしながら挨拶をした。
人々のローランドのイメージは冷たく表情が変わらない王太子だったのもあり男店主はローランドに軽く怯えていたのだった。
男店主の様子を見ていた周りの人もローランドが王太子だと知りぞくぞくと腰を低くして頭を下げて挨拶をし始めた。
その場の空気が一気に凍りついた様になってしまったのだ…
(まずいわね…。前世では殿下が収穫祭に顔を出すなんてなかったものね。殿下が王太子だと気づかれた瞬間にこの空気…。どうにかしないとせっかくの収穫祭が台無しになってしまうわ…。)
シャーロットはその場の空気を感じ取り戸惑い考えていた。
ローランドもその場の空気が変わったことに気づいていた。
(私のせいで空気が悪くなってしまうとは…。私は父上とは違い人々に笑顔1つ見せたことがないから人々にこの様な態度を取られても仕方ないが…。)
ローランドは周りを見て考えていた。
「皆さん…どうぞお顔を上げて下さい。本日…殿下はお忍びで収穫祭へ来られました。それは…王都の人々の暮らしを殿下自身の目で確認して少しでも皆さんの生活が楽になるかを考えたいと思われ足を運ばれたのです。その為に私が殿下をご案内しているのです。」
シャーロットが戸惑う人々に向かって堂々と大きめの声で言った。
シャーロットの言葉を聞き人々は恐る恐る顔を上げた。
「皆さん…ご安心下さい。殿下は常日頃から皆さんの事を考えておられます。今日も皆さんのリアルな声が聞けたらいいと仰っておられました。ですので…よろしければ皆さんのリアルな声を殿下に教えて頂けないでしょうか?」
シャーロットは人々の不安を和らげる様ににこりと微笑みながら人々へ言った。
だか…人々はどこか戸惑いを隠せない様だった。
「皆さんは殿下がいつも無表情だから怖いとお思いですか?ですが…実は…殿下の無表情には理由があるのです。殿下が無表情なのは極度の人見知りなのです。実は私も…殿下の無表情を怖いと思っていたのですが実際にお話してみると怖いと思うことがなくなりました。ですので…よろしければ皆さんが殿下の人見知りを直して下さいませんか?」
シャーロットは頭を悩ませた末に人々に言った。
シャーロットの予想外の言葉を聞き人々も当のローランドも豆鉄砲をくらった様な表情をしていた。
(あ…何か殿下と人々が少しでも打ち解けれる様にと考えて言ってみたけど…無理があったかしら…。)
シャーロットは苦笑いを浮かべて考えていた。
「プハッ…」
その時…ローランドが思わず吹き出したのだった。
「え?で…殿下?」
シャーロットは急な事に驚きローランドへ言った。
「ハハハ…極度の人見知りか…。」
ローランドが思わず笑みを溢して言った。
ローランドが笑っている事にその場にいた人々がとても驚いていた。
そして…
「今…グランバード公爵令嬢が言った通りだ。突然…収穫祭へ顔を出して皆を驚かせてしまったことをまず謝罪する…。申し訳なかった。だが…先程令嬢が言った通り私は皆の生活が少しでも潤い生活しやすい環境になる事を願い考えている。皆の声を聞き全てをその通りにするのはなかなか難しい事かもしれないが少しでも多くの皆の願いを聞き入れたいと思っている。だから…どうだろう…私に皆の声を聞かせてはくれないだろうか…?」
ローランドは堂々とした態度でその場にいた人々へ言った。
『殿下が笑っておられたぞ……』
『本当に…俺たちの話を聞いてくれるのか…。』
『あれは殿下の本心なのか…?』
ローランドが話し終わるとコソコソと人々が話をしているのが聞こえてきた。
そんな時…
「殿下は本当に私達街の人の事を考えてくれてると思うよ!」
突然、たまたまその場にいた孤児院のマーヤが笑顔で言った。
「うん!殿下は孤児院へ何度も来てくれたんだよ!」
横にいたトムが言った。
「ねぇ?ミーシャさん。」
サナが笑顔でミーシャへ言った。
「え?あ…えぇ。殿下はお忍びで何度か孤児院へ足を運ばれていました。孤児院の子供達の相手もしてくださいました。殿下は身分を隠してわざわざ孤児院へ足を運んで下さってました…。」
ミーシャは少し気まずい表情で言った。
(あぁ…ミーシャさんにあの子達…まさかこのタイミングでこの場にいたなんて…。ローさんが殿下だって知ってしまったわね。ミーシャさんはあきらかに気まずそうだわ…。ハハハ…後でちゃんと説明しないといけないわね…。)
シャーロットは孤児院の人達がいた事に驚きながら考えていた。
「あの…本当に我々の話を聞いてくださるのですか?」
その場にいた男性の一人が恐る恐るローランドへ尋ねた。
「…あぁ…もちろんだ。」
ローランドはそう言うと軽く笑みを浮べた。
そのローランドの言葉を聞き笑みを見た人々はいつの間にかローランドに対する怯えが消えていたのだった…
そして…
その後…
ローランドとシャーロットの周りには人々が集まり人々はローランドに緊張しながらも自分達の考えや思いを話した。
ローランドは人々の話を時々笑みを浮かべつつも真剣に聞いていた。
話を聞いていたらあっという間に二時間ほど経っていた。
二時間の間でローランドもシャーロットも沢山の人々の話を聞いた。
「皆…今日は色々と話をしてくれて感謝する。今日聞いた話については王宮へ帰り陛下にも話をしたいと思っている。」
ローランドは人々へ堂々と言った。
それを聞いた人々は嬉しそうに笑顔を浮かべていた。
そして一人が…
「王太子殿下…バンザーイ!!」
と笑顔で手を挙げ言った。
すると…
「王太子殿下バンザーイ!!」
「王太子殿下バンザーイ!」
と次々に一人が笑顔で手を挙げローランドへ言ったのだった。
(ふふ…良かったわ。どうなることかと思ったけど街の人々にとっても殿下にとってもこの時間はとても大切な時間になったみたいだわ…)
シャーロットはそんな人々を見て笑みを浮かべて考えていた。
(前世では…街の人々の事なんてまったく考えてなかったけど現世ではこうして人々を見れて自分もそれに携われて良かったわ…。)
シャーロットはそんな事を考えていた。
「シャーロット…これも君のおかげだ…。あの時君が声をあげてくれなければ空気が悪いままになり人々の我々王族に対する信頼も地に落ちかけていたかもしれないからな。この様な時間を作れたのもシャーロットのお陰だ。本当にありがとう。」
ローランドは優しい笑みを浮べてシャーロットへ言った。
ドキッ…
「い…いえ…。とんでもございません。私は私の出来る事をしたまでですので…。」
シャーロットはローランドの笑みを見て思わずドキっとして少し戸惑い気味にローランドへ言った。
ドキドキ…
ドキドキ…
(殿下の力になれて嬉しいって思ったし…殿下があんなに優しい笑みを向けて嬉くてドキドキしてしまってる…。)
シャーロットは胸に手をあてて戸惑いながら考えていた。
(どうしよう…前世に置いてきた…心の奥にしまった思いが出てきてしまいそうになる…。ダメだとわかっているのに…。)
シャーロットはグッと更に胸を抑えて考えていた。
「…シャーロットと共にこの場に来れた事に感謝しなければならないな。」
ローランドがシャーロットへ言った。
「…………。」
シャーロットはまともにローランドの顔を見ることができずにいた。
「お二人が共に収穫祭へ足を運ばれたのは…もしや…シャーロット様が王太子妃になられるのですか?!」
その場にいた男がローランドへ思い切って尋ねた。
「おい!言葉を慎めよ!」
横にいたもうもう一人が焦り言った。
「でもよ…。」
男はしょぼんとして言った。
すると…
「そうだな……。令嬢さえ良ければ私は令嬢が王太子妃なってくれるのは大歓迎だ!」
ローランドは笑顔で言った。
「?!で…殿下!!」
シャーロットはローランドの言葉に思わず言った。
「やっぱりですか?!街の皆もシャーロット様が王太子妃になってくれたら、と話をしているんですよ!」
男はローランドの言葉を聞き目を輝かせて言った。
「シャーロット様が王太子妃になって下さるならこんなに嬉しい事はないですよ!」
更に一人が言った。
「そうだ!そうだ!国にとってもこんなめでたいことはないぞ!」
更に一人が言った。
ローランドはそんな人々の言葉を満足気に聞いていたのだった。
だが…シャーロットはその言葉を聞き浮かない表情を浮べていたのだった…
ローランドはそんなシャーロットの表情を見逃さなかった。
その後…
シャーロットとローランドは日が暮れ頃まで収穫祭を楽しんだ。
そして…日が暮れローランドがシャーロットを公爵邸まで送り届けた。
「殿下…今日はありがとうございました。」
シャーロットがローランドへ言った。
「いや…お礼を言うのは私の方だ。今日は色々とありがとう。」
ローランドがシャーロットへ言った。
「いえ…。」
シャーロットがローランドへ言った。
「では…殿下お気をつけてお帰り下さい…。」
シャーロットがローランドへ言った。
「……っ!あぁ…。」
ローランドは何か言おうとしたが言わず返事だけすると馬車へ乗り込りこんだ。
そして…馬車は王宮へ向けて出発したのだった。
(私…このままこうして殿下と二人で過ごすと良くない方向に進んでしまいそうで不安だわ…。)
シャーロットは去りゆく馬車を見ながら切ない表情で考えていたのだった………
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