31.踏み出す勇気
ローランドは執務室へ戻るなりアミルをチラチラと見ながら考えていた。
(アミルはシャーロットの兄でもあるし私のシャーロットへの気持ちを話しておいた方がいいのだろうか…。)
ローランドはそんな事を考えていた。
「殿下…私の顔に何かついてますか?先程から私の顔をチラチラと見ていますけど…。」
アミルは困った表情でローランドへ言った。
「いや…。そうではないんだ。ただ…。」
ローランドは体をビクッとさせながら気まずそうに言った。
「それならば何なのですか?」
アミルは??という表情でローランドへ言った。
「……。執務を休憩してお茶でも飲みながら少し話さないか?」
ローランドは少し考えてからアミルへ言った。
「??わかりました…。」
アミルは不思議そうに言った。
そして…
ローランドとアミルは椅子に座りお茶を飲み始めた。
「それで話というのは?」
アミルがお茶を飲みながらローランドへ尋ねた。
「……実は…私はシャーロットに恋をしてしまったのだ…。」
ローランドはアミルに聞かれると少し間をあけてから決意した表情でアミルへ言った。
「グブハッ!ゴホゴホッ!!」
アミルがローランドの言葉を聞き驚きのあまり飲みかけのお茶で咽てしまった。
「おい、大丈夫?」
ローランドが咳き込むアミルへ言った。
「ゲホッ…申し訳ありません…。大丈夫です…。それより…先程の言葉は…。私には殿下がロッティに恋をしていると聞こえたのですが…。ロッティが殿下に恋をしているの間違いでは?」
アミルは咳を落ち着かせながら言うと信じられないという表情でローランドへ言った。
「いや…間違いではない。私がシャーロットに恋をしたのだ。」
ローランドは冷静に応えた。
「………殿下は今まで散々に兄である私の前でも気にすることなくロッティに対して酷い扱いに物言いにとされていましたが…そんな殿下がロッティに恋…ですか?私をからかっておられるのですか?」
アミルは急に表情を強張らせて低めの声でローランドへ言った。
(アミルが怒るのも無理はないか…。アミルの言う通り私はシャーロットと婚約が決まる前も決まってからもあからさまにシャーロットを毛嫌いしてきたからな…。今更この様な事を言われても兄としてはそうなるな…。)
ローランドはアミルの態度を見てそんな事を考えていた。
「いや…からかってなどいない。本当の事だ。」
ローランドは真剣な表情でアミルへ言った。
「……今までの殿下のロッティに対する態度と行動を見てきた私にその言葉を信じろと?」
アミルは表情を歪ませながらローランドへ言った。
「……確かに今までの私のシャーロットへの対応を見てきたアミルが信じられないのは当然だ。私が逆の立場でもアミルの様に思うだろう…。だが…この気持ちに嘘はない…。だから…これからの私のシャーロットに対する姿勢で本当に私がシャーロットに想いを寄せ大切にしたいと思っている事を見極めてくれるといい…。」
ローランドはアミルの目をじっと見て真剣な表情で言った。
「はぁ〜……。一体何がどうなってそうなったのですか?」
アミルはあまりにも真剣な表情のローランドは見て折れた様にため息混じりに言った。
「……それは私にも分からないのだ。婚約破棄後いつの間にかシャーロットと過ごす時間の中で自分の気持ちに気づいたのだ…。」
ローランドは婚約破棄してからシャーロットと過ごした日々を思い出すように言った。
「もしかして…孤児院へ最初の視察の時以降訪れたのもポート王国へロッティを同行させたのもロッティとの時間を過ごすためだったのですか?」
アミルはふと気になった事をローランドへ尋ねた。
「孤児院でのシャーロットはとても生き生きしていてその姿を見ていたいと思ったし…ポート王国にはシャーロットが欲しがっていた物が手に入るかもしれないと思い声をかけたのだ…。」
ローランドは少し気まずそうに応えた。
「これまでの殿下からは想像も出来ない行動ですね…。」
アミルは苦笑いを浮べて言った。
「だが…ポート王国へいった際はシャーロットにはとても迷惑をかけてしまったし怪我も負わせてしまった…。自分が誘ったまでにその様な目にあわせてしまったのは本当に申し訳なく思っている…。だが…その時に自分がシャーロットに恋をしているのだと気づいたのだ…。」
ローランドは申し訳なさそうな表情で言った。
「………。あの時は色々と肝が冷えましたが結果的に殿下もロッティも無事でしたし体調も回復しましたから…。それよりも殿下はこれからの事をどうお考えなのですか?殿下がロッティへの気持ちに気づかれた様ですが既に二人は婚約関係にはありません。それもロッティの方から婚約解消の願いを申し出ていますし…。」
アミルは困った表情でローランドへ言った。
「あぁ…。既にシャーロットとの婚約は解消され王族や貴族達の耳にもその話は入っている状況だ。だが…。」
ローランドは真剣な表情でアミルへ言った。
そしてローランドは少し悩んだ末にキーランドと約束したシャーロットとの婚約の件についてアミルへ説明した。
「まさか…殿下がその様な話まで陛下にされていたとは…。しかし…ご存知の通りロッティはもうすぐ十六を迎えます。一年後までにロッティからの婚約の承諾を貰うとなるとなかなか大変でしょうね。あれ程殿下に夢中だったロッティが孤児院の責任者になりたいからと自分の意志で婚約解消を申し出たのに加えてそれと同時に今までの事が嘘の様にピタリと殿下への気持ちまでなくしたようですしね。それ程の覚悟を簡単に手放すとは思えませんが…。」
アミルは悩ましい表情でローランドへ言った。
「そうだな…。シャーロットと再度婚約関係を結ぶことは簡単な事ではないだろう…。私に夢中だった頃のシャーロットの事を恨めしく思っていたというのにいざ自分に対して夢中ではなくなった事がこれほど辛くなるとはな。自分のシャーロットに対する態度をこれ程までに後悔するとはな…。」
ローランドはとても切なくやるせない表情でアミルへ言った。
(殿下のロッティに対する気持ちは本気なのだろうな…。)
アミルはローランドの表情を見て言葉を聞いてそんな事を考えていた。
「分かりました…。私が協力出来るところは協力しましょう…。ですが…ロッティの嫌がる事や困る事には協力は出来ませんからね。殿下の側近である前に私はロッティの兄ですから。」
アミルはやれやれという表情でローランドに協力する事を伝えた。
「アミルすまないな…。ありがとう
。」
ローランドは本当に感謝しているという表情でアミルへお礼を言った。
「あ…殿下はご存知ないかもしれませんが…ロッティが殿下と婚約解消をされた事を知った貴族たちが自分の息子たちとロッティを婚約させようと手紙を送ってくる者たちが増えています。ロッティには一つも伝えていませんがロッティの今の活躍を聞いて更に申し出が増えてきていますのでその事を頭に入れておいて下さい。」
アミルは思い出した様にローランドに言った。
「……分かった。頭に入れておく。」
ローランドは頷きながら言った。
(シャーロットに縁談の申し出がそれ程までにきているとは…。)
ローランドはアミルの話を聞き複雑そうな表情でそんな事を考えていた。
「それでなんだが…シャーロットが喜びそうな物や場所などはないのか?シャーロットはいつも私を見ると表情が曇るんだ。だから…少しでもシャーロットを喜ばしてやりたいんだが…。」
ローランドは気を取り直してアミルへ尋ねた。
「そうですね…。少し前ならば宝石やドレスを渡せば喜んでいたでしょうが……。」
アミルが考えながら言った。
「ん〜………あっ!そういえば少し前にロッティがオマーン元公爵の事件で陛下がグランバード公爵家に贈与して下さった新しいグランバード公爵家の領地へ行ってみたいと言っていました。元は王族が管理されていた土地ですのでその場所でしたら殿下がロッティを案内出来るのではありませんか?」
アミルはハッと以前シャーロットか話していた事を思い出してローランドへ提案した。
「あぁ…。あの土地か…。そうだな。あの場所ならば私は何度か訪れた事のある土地だから案内してやれるな。」
ローランドはアミルの話を聞き頷きながら少し表情を明るくして言った。
「では、ロッティとその領地へ一緒に行くで決まりですね。」
アミルはにこりと笑みを浮べてローランドへ言った。
「あぁ。そうするよ。早速シャーロットへ誘いの手紙を書くとしよう。いいアイディアをくれてありがとう。」
ローランドは嬉しそうな表情を浮べてアミルへ言った。
「どういたしまして。」
アミルはにこりと応えた。
「だが…断れてしまったらどうしたらいいのだ?」
「誘う前からそんな事言っても仕方ないでしょう?断られたら断られたで次を考えたらいいでしょう?」
「……。分かった。そうしよう。」
「はい。」
ローランドは急に不安になり言うとアミルは少し呆れた表情で言った。
ローランドはアミルに言われて不安が残るまま言った。
その後…ローランドはシャーロットへグランバード公爵家の新しい領地へ行く誘いの手紙を書いた。
そしてその手紙をアミルへ預けてシャーロットへ渡すようにお願いしたのだった。
(シャーロット…どうか断らないでくれ…。)
ローランドはアミルへ手紙を預けてそんな事を思っていたのだった。
※
その日の夜…
アミルはシャーロットへローランドから預かった手紙を手渡した。
「殿下からロッティへの手紙だよ。」
「?!殿下から…?」
「あぁ。手紙読んで返事を書いたら私へ預けてくれ。私から殿下にお渡しするから。」
「わかったわ…。ありがとう。」
アミルがシャーロットへ手紙を渡しながら言った。
シャーロットは少し表情を曇らせながら言うとその表情を見たアミルは複雑そうな表情でシャーロットへ言った。
シャーロットは浮かない表情で応えのだった。
(殿下からの手紙か…。)
シャーロットは手紙を見つめたままベッドへと座りそんな事を思っていた。
そしてシャーロットは手紙の封を切り中身を取り出して読み始めた。
…………………
そしてシャーロットが手紙を読み終えた。
「うちの新しい領地へ案内してくれるお誘いか…。」
手紙を読み終えたシャーロットは呟いた。
(殿下から手紙を貰うなんて初めてね…。前世ではいつも私ばかりが殿下へ手紙を書いてたわよね…。返事なんて一度も帰ってきた事なんてないけど…。)
シャーロットはベッドにドサッと横たわりそんな事を切ない表情で考えていた。
(今世では前世でしてもらえなかった事ばかりされてるなんておかしな話よね…。)
シャーロットはそんな事を考えていた。
(新しい領地には行ってみたいと思ってたけど…このタイミングで殿下からお誘いを受けるなんてね…。どうするべきかしら…。この間殿下に思い切り八つ当たりした事もあるし断るべき?でも…せっかく誘ってくれたのに断ってもいいのやら…。はぁ…どうしたものか…。)
シャーロットは悩みながら考えていた。
そして…
シャーロットの出した答えは今回の誘いは断らないという判断だった。
たとえ自分とローランド二人の未来はないとしても目の前の事から逃げず踏み出す事も大切だと考えたからだった。
それに新しい領地に行けることは素直に喜ばしいことだったからだ。
シャーロットは返事を書いた手紙をアミルへ預けた際にアミルからどう返事したのかを聞かれ“行くことにした“と伝えるとアミルはホッとした表情を浮かべていた。
その表情を見てシャーロットは不思議に思ったが特に気にはしなかったのだった。
※
シャーロットとローランドが領地へ行く当日が訪れた。
ローランドがグランバード公爵邸まで馬車で迎えに来てくれた。
ボブ達家族は前回のポート王国を訪問した際の事もあり領地へ出かけるのを心配していたがシャーロットは大丈夫だと伝えて家族を安心させてから出発したのだった。
そしてシャーロット達を乗せた馬車は領地へと向かったのだった。
「今日は…誘いに応じてくれて感謝する。」
「え?あ…こちらこそお誘い頂きありがとうございます。新しい我が公爵家の領地に足を運んでみたいと思っていましたので…。」
ローランドが緊張気味に向かいに座っているシャーロットへ言った。
シャーロットは少し驚くも応えた。
「それと…一緒に市場へ行った際の事は…その…すまなかった…。」
「…あ…いえ…こちらこそ殿下へ失礼な事を言ってしまい申し訳ありませんでした…。改めて謝罪申し上げます…。」
ローランドは更に緊張した表情でシャーロットへ謝るとシャーロットも謝ったのだった。
(あの時は完全に私の八つ当たりだったからね…。でも…殿下も気にしてたのね…。)
シャーロットはローランドをチラッと見て考えていた。
それから少しの間沈黙が続いた。
「シャーロットは…何故新たな領地に行ってみたいと思っていたのだ?」
沈黙を破り思い切ってローランドがシャーロットへ尋ねた。
「領地がどの様な環境の場所かを自分の目で見て色々と確かめたい事があったのです。」
シャーロットが応えた。
「確かめたいこと?」
ローランドは不思議そうに尋ねた。
「はい。その土地の土などを確認して畑などを作れるかどうかや…周りの環境や治安…王都や我が領地からの距離…など新たな領地がどう役に立つかを確認しておきたいと思ったのです。そうする事で色々な発見があるでしょうし当主であり国の環境大臣であるお父様の役に立つとも思いましたので。」
シャーロットが自分の考えをローランドへ話した。
(前世では本当に家族に沢山の迷惑をかけたから些細なことでも役に立ちたいものね。)
シャーロットはローランドに話しつつそんな事を考えていた。
「そこまで考えての事だったのか…。確かに新たな発見というのはとても良いことだからな…。」
ローランドはシャーロットの話を聞いて感心した様に言った。
「はい。領地はあとどれくらいで到着しますか?」
シャーロットがローランドへ尋ねた。
「グランバード公爵へ贈与した領地までは二時間も経たないうちに到着するだろう。」
ローランドが応えた。
「そうですか。距離的には王都や我が邸からもさほど遠くはありませんね。」
シャーロットは頷きながら応えた。
「あぁ。それを分かった上で父上はその場所を選んだのだろう。」
ローランドが言った。
「さすが陛下ですね。あの短時間でそれ程までの事を考えてくださり贈与してくださるなんて。」
シャーロットはクスっと笑みを浮べて言った。
(シャーロットがこの様に国や領地の事を真剣に考えて行動しているとは…孤児院の事でも相当驚いたがさらに予想外の驚きを見せてくれるのだな…。今のシャーロットは十分に王太子妃になる資格があるだろう…。)
ローランドはクスっと笑みを浮かべたシャーロットを見てそんな事を考えていた。
「あっ…あれは町ですか…?」
シャーロットが窓の外を見てふと何かが目に入り窓の外を指差しローランドへ尋ねた。
「ん?あぁ…あそこには小さな町があるんだ。」
ローランドはシャーロットが指さした先を見て応えた。
「そうなのですね…。」
シャーロットは頷きながら言った。
(小さな町か…。少し寄ってみたいとこだけど殿下が一緒だから無理そうね…。)
シャーロットは外を見ながら残念そうにそんな事を考えていた。
「少し…寄ってみるか?」
「え…?いいのですか?」
「あぁ。領地へ行く道中にある町だから構わない。」
「本当ですか?ありがとうございます。寄ってみたいです。」
「では…少しだけ寄ってみよう。」
「はい。」
ローランドが残念そうにするシャーロットへ言うとシャーロットは目を輝かせて言った。
そんなシャーロットを見たローランドは少し動揺するも平然として応えた。
そんなローランドにシャーロットは自分でも気づかぬ程の満面の笑みでお礼いった。
そんな笑顔を見てローランドはドキッとしつつ応えたのだった。
そして…シャーロット達を乗せた馬車は町へ到着した。
シャーロットとローランドは馬車から降りると少し歩く事にした。
「小さな町ですが空気もよく落ち着いた良いところですね。」
シャーロットは歩きながら町を見渡して言った。
(何だか二度目の人生の時に育った場所に雰囲気がよく似てて懐かしい感じがして落ち着くわね…。)
シャーロットは前世の事を思い出してそんな事を考えていた。
「あぁ。私も幼い頃に何度か母上と共に視察に訪れた事があるがその時と変わらないな…。」
ローランドは昔を思い出すかの様に言った。
「そうなのですね…。」
シャーロットは穏やかな表情で言った。
(前世では知る由もなかった殿下の事を今世では色々知ったわね。)
シャーロットはローランドの話を聞き複雑な気持ちでそんな事をを考えていた。
そして更に歩いた先に小さな噴水がある広場があった。
その広場に数人の大人と子供が集まって何かをしているようだった。
「殿下…少し失礼しますね…。」
シャーロットは集まる人達を見てローランドへ言うと集まる人達の方へと足早に近寄っていった。
「どうかしたのですか?」
シャーロットがその場にいた大人へと声をかけた。
「あ…いやね…子供達に何か弾いて欲しいと言われたんですが俺たちは弾いたことがないもんで弾けないんですよ…。」
シャーロットに声をかけられ少し驚いた表情をした住人がすぐに困った表情でそこへ置いてあるオルガンを指さして言った。
「何故ここにオルガンがあるのですか?」
シャーロットが住人へと尋ねた。
「あぁ…。これは町長がこの広場に自由にオルガンを弾いて歌ったり踊ったり町の人達が楽しめる様にと設置してくれたんですよ。」
住人が嬉しそうに応えた。
「そうなのですね。」
シャーロットは住人の話を聞き感心した様に笑みを浮べて言った。
(とてもいい事ね。こうして広場に目立つ様に設置しても安心出来る町って事だし子供も大人も楽しめるものね。)
シャーロットはオルガンを見ながら考えていた。
「あの…もしよろしければなのですが私で良ければ少し弾きましょうか?」
シャーロットが住人へ提案した。
「本当ですか?!そうして頂けると助かります。今日は嫁さんがここへ来れなく弾ける者がいなかったので。」
住人は嬉しそうに応えた。
「はい。では…少しだけになりますが…。」
シャーロットは笑顔で言った。
そしてシャーロットはローランドの元へ戻った。
「殿下…申し訳ありませんが少しだけお待ち頂いてもよろしいですか?少しだけ子供達へオルガンを弾いてあげたいので。」
シャーロットはローランドへ言った。
「オルガンを?あぁ…それは構わないが…。」
ローランドはシャーロットの言葉に少し驚いた表情を浮べて言った。
「ありがとうございます。」
シャーロットはローランドにお礼を言うとオルガンの所へ戻った。
(シャーロットはオルガンなど弾けるのだろうか…。)
ローランドは少し不安げな表情で考えていた。
しかし…
ローランドの不安はオルガンを弾きだしたシャーロットを見て一瞬で吹き飛ばされたのだった。
シャーロットは軽やかに慣れた手付きでオルガンを弾いていた。
シャーロットの弾く音色にその場にいたローランド含めた人達は完全に聞き入っていた。
(あぁ…懐かしいわ…。第二の人生の時はこうしてよくオルガンやピアノを弾いて子供達に聴かせてたな。)
シャーロットは嬉しそうに懐かしそうな表情を浮かべてオルガンを弾きながら考えていた。
そして…
シャーロットは一曲目を弾き終えると次の曲を弾き始めた。
そして曲に合わせて歌を歌い始めたのだった。
シャーロットの声はとてもきれいでとても上手かった。
シャーロットの容姿も相まってその場にいた人達はシャーロットに見入ってしまっていた。
(シャーロット…君は本当に私を驚かせてばかりだ…。君がこんなにもオルガンを弾くのが上手く…歌もとても上手いのだな…。それに…とてもきれいだ…。)
ローランドはオルガンを弾きながら歌っているシャーロットに見惚れながら考えていた。
皆が聴き入っているとシャーロットは弾くのを終えたのだった。
パチパチ!
パチパチパチパチ!
シャーロットが弾き終わるとその場の大人も子供も皆が感動しながら拍手をした。
「お姉ちゃん!とても上手なんだね!歌もすっごく上手だった。」
「うんうん!うちのママよりも上手だった。」
「もっと弾いたり歌ってよー!」
子供達が興奮した様にシャーロットへ言った。
「皆…ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいわ。」
シャーロットは嬉しそうに笑みを浮べて子供達へ言った。
「いや…本当に素晴らしかったです。本当にありがとうございました。お陰で子供達も大喜びです。」
大人の住人も感動した様にシャーロットへお礼を言った。
「いえ…お役に立てたみたいで良かったです。」
シャーロットは笑顔で言った。
「お姉ちゃん!またオルガン弾きに来てくれる?」
子供の一人がシャーロットへ尋ねた。
「えぇ。また弾きにくるわね。あっ…もし王都へ来る事があった時は是非王都にある孤児院へ遊びに来てちょうだい。私はそこで働いているからいつでも歓迎するわ。孤児院の子供達もお友達が出来ると喜んでくれるわ。」
シャーロットは笑顔で言った。
「うん!王都へ行く事があったら絶対いくよ!」
「俺も!!」
「私も行くわ!」
子供たちは目を輝かせて嬉しそうにシャーロットへ言った。
「ええ。」
シャーロットは笑顔で言った。
そしてシャーロットは住人達に手を振って別れを言うとローランドの元へと戻った。
「殿下…お待たせしました。」
シャーロットは慌ててローランドへ言った。
そんなシャーロットをローランドはじっと見つめていた。
「あの…殿下?」
シャーロットは黙っているローランドへ言った。
「ん?あっ…あぁ。では…行こうか。」
ローランドハッとなり慌ててシャーロットへ言った。
「??はい。」
シャーロットは慌てるローランドを不思議そうに見ながら頷きながら言った。
そして二人は領地へ向かうために馬車へと戻った。
(楽しかったわ。孤児院にもオルガンを購入するのもいいわね。きっと子供達も喜ぶこと間違いないわ。さっきの町の子供達も可愛かったわね…。)
シャーロットは機嫌よくそんな事を考えていた。
(シャーロットの新たな姿を見てどんどんシャーロットに魅了されていくのが自分でも分かってしまい困ったな…。)
ローランドは馬車の中で機嫌が良さそうなシャーロットをちらりと見て思っていたのだった……
そして…
グランバード公爵家の新たな領地へと到着した。
到着するなりシャーロットとローランドは領地を細かく見て回った。
そしてある程度領地を視察したので視察途中に見つけた大きな木の下で二人は少し休むことにした。
「殿下…今日は誘って頂きありがとうございました。実際に自分の目で見て色々と知ることが出来ましたので。」
シャーロットはローランドへお礼を言った。
「いや…。訪れた甲斐があったなら良かった。」
ローランドが応えた。
「実を言うと…今回の誘いは断わられるかと思っていたんだ…。市場での事を考えると…。」
ローランドは思い切ってシャーロットへ言った。
「……。実を言うと…私も…最初はお断りしようと思っていました…。」
シャーロットは苦笑いを浮べて言った。
(本当に最初は断る選択の方が大きかったのよね…。)
シャーロットはそんな事を考えていた。
「っ…!では…何故断らなかったのだ?」
ローランドは気まずそうな表情でシャーロットへ言った。
「……。これからの事を考えると直接この領地を見てみたかったですし…市場で殿下に失礼な態度をとってしまったので改めて謝罪したいと思いましたので…。それに…。」
シャーロットは苦笑いを浮べて言った。
「それに…?何だ?」
ローランドが言った。
「それに…いつまでも殿下に対して気まずそうにするのもよくないと思ったのです。」
シャーロットが少し困った表情で言った。
(未来を知ってるが故に殿下とはなるべく接触したくないと思っていたけど…元はと言えば私が原因なんだし私が前世であんなに好き勝手に色んな人に迷惑をかけなければこんな事にならなかった訳だし当人の私が現実から逃げるのは違うと思ったのよね…。でも…そう思うと何だか逆に気持ち的にどこか楽になった気がするのよね…。)
シャーロットはローランドに言いつつそんな事を考えていた。
「私と…顔を合わせるのは気まずかったのか…?」
ローランドは少ししょげた表情でシャーロットへ言った。
「私…というのもありますけど殿下の事を考えると婚約破棄した今まで顔合わせるのは嫌だろうと思いましたので…。」
シャーロットは苦笑いを浮べて言った。
「では…別にシャーロットが私と顔を合わせるのが嫌だと思っていた訳ではないんだな…?」
ローランドは少しホッとした表情でシャーロットへ言った。
「う〜ん…嫌ではないと言ったら嘘になりますかね…。」
シャーロットは悩む様に言った。
「なんだと?!」
ローランドはシャーロットに言った。
「ふふ…申し訳ありません…。正直に言ってしまって…。」
シャーロットは思わずクスっと笑いながら言った。
「笑い事ではないだろう…。」
ローランドは思わず笑みを溢したシャーロットを見て怒るに怒れず言った。
「……。でも…何だか本当に不思議です。」
シャーロットが複雑そうな表情で言った。
「何がだ?」
ローランドが言った。
「婚約前も婚約してからも殿下とこの様にお話をする事などまったくといっていい程ありませんでした。ですが…婚約破棄した今になってこの様に普通に話をしているのが不思議だと思ったのです。」
シャーロットはどこか寂しそうな表情を浮べてローランドへ言った。
そんなシャーロットの表情を見てローランドは胸が締め付けられた。
「あの頃の…私の態度は本当に申し訳なかったと思っている…。」
ローランドは胸が締め付けられながら申し訳なさそうにシャーロットへ言った。
「もう…いいのです。気にしないで下さい。あの頃は私が悪かったのですから。きっと今こうして話をしているのは婚約破棄をしたかというのもあると思いますし。」
シャーロットがローランドへ言った。
「ですが…この先王太子妃に迎えたいと思われる方が現れた時はきちんと殿下からも歩み寄って差し上げて下さいね?きっとその方は殿下にとって生涯大切だと思える存在の方だと思いますので。」
シャーロットは切ない笑顔を浮べてローランドへ助言した。
(あと数ヶ月したら殿下の前にミレイ様が現れるから…。まぁ…私がこんな助言なんてしなくても殿下はミレイ様を大切に思って接する事は知ってるのだけどね…。)
シャーロットはローランドに助言しつつそんな事を考えていた。
「前も…そうであったが何故私にこの先にその様な者が現れると言い切れるのだ?!」
ローランドは少しムッとした表情でシャーロットへ言った。
「それは…分かるからです…。」
シャーロットは精一杯笑みを浮べて言った。
(私は未来を知っているから…。)
シャーロットはそんな事を考えていた。
(どうして君はそんな事を言うのだ?!)
ローランドは苛立ちにも似たものを感じながら考えていた。
「私は…グランバード公爵家の一員として将来殿下が国王になった際に国の為にお力になれる様に精進したいと思っていますので今後もグランバード公爵家をよろしくお願い致します。」
シャーロットがローランドへ言った。
(きっとこのままいけば家族が私のせいで死ぬことはないだろうから…。)
シャーロットはそんな事を考えていた。
「……シャーロット…君はこの先に私に王太子妃と迎えたいと思う者が現れる言い切るが…私が王太子妃に望んでいるのはシャーロットだと言ったらどうするのだ?!」
ローランドはこれ以上は耐えられないと言わんばかりに意を決した表情でシャーロットへ言った。
「えっ…………?」
シャーロットはローランドの予想外の言葉に驚き言ったのだった…………
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