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28.自分の愚かさ

この日…

シャーロットは王宮へ訪れていた。


シャーロットは国王・キーランドと王妃・ルチアの元を訪れていた。


シャーロット、キーランド、ルチアの三人は中庭にあるバラ園でお茶を飲みながら話をしていた。


「シャーロット…この度は大変だったな…。体調の方はもういいのか?」


キーランドがシャーロットへ尋ねた。


「はい…。陛下…。お陰様で体調の方は回復致しました。腕の傷の方も順調に回復しております。」


シャーロットが応えた。


「そうか…。それは良かった。ボブからシャーロットの状況を聞いていたので私もルチアも心配していたのだ…。」


キーランドが言った。


「ご心配ありがとうございます。体調の方も回復しましたので明日からは孤児院の方にも顔を出す予定です。」


シャーロットが応えた。


「そうか…。ローランドとシャーロットの乗った馬車を襲った盗賊の行方は判明しないままだが捜索は引き続き行うこととしたのだ。」


キーランドはホッとした表情で言うと真剣な表情になりシャーロットへ言った。


「そうなのですね…。盗賊となると見つけるのは困難になりそうですね…。あ…そういえば殿下の体調も回復されたと父から聞きました。殿下が回復されて何よりです…。」


シャーロットがキーランドとルチアへと言った。


「あぁ…。ローランドが命に別状がなかったのも…シャーロット…君のお陰だ。ありがとう…。この国の国王として…そして父として心から感謝する。」


キーランドはシャーロットへ頭を下げてお礼を言った。


「えぇ。キーランドの言うとおりよ…。私もこの国の王妃として…ローランドの母としてシャーロット…あなたに心から感謝するわ…。」


ルチアも頭を下げてシャーロットへお礼を言った。


「へ…陛下!王妃様!頭をお上げ下さい…。私はあの場のあの状況で当たり前の事をしただけでございます。」


シャーロットは頭を下げてお礼を言う二人に戸惑い慌てて言った。


「…当たり前の事というが…あの状況で的確な判断をするのはそう簡単なことではないぞ。令嬢なら尚更のことだ。にも関わらずシャーロットはその判断をしてくれたのだ。シャーロットが的確に判断をしてくれたお陰でローランドは助かった様なものだのだ。」


キーランドは慌てるシャーロットを見て真剣な表情で言った。


「私の判断が的確だったのであればそれは…本当に良かったです…。殿下に万が一の事があれば国に関わる問題にもなってきますので…。」


シャーロットはキーランドの言葉を聞き応えた。


「あぁ…。本当に助かった…。」


キーランドが言った。


「はい…。」


シャーロットは応えた。


「しかし…ローランドから今回の視察へシャーロットを同行させると聞いた時は驚いたな…。」


「えぇ…。本当に…。」


キーランドが口ひげをさわりながら

言うとルチアも驚いた表情で頷きながら言った。


「私も殿下のお話を聞いた時は驚きました…。婚約していた時でしまらまだしも…既に婚約解消をしたこの期に何故なのかと…。」


シャーロットもそこは未だに疑問だといわんばかりの表情で言った。


「シャーロットがそう捉えるのも無理もないだろう…。実際、王太子の国の国境を越えての公務への同行は婚約していたら婚約者である王太子妃が付き添うのが一般的だからな…。」


キーランドはシャーロットの言い分に賛同する様に言った。


「はい…。ですので殿下のお話には戸惑いましたが結果的には視察同行をした事でポート王国がどの様な国なのかを知ることが出来たのは良かったかと思っています。」


シャーロットがキーランドとルチアへ言った。


「そうか…。ポート王国を見てみてどのように感じたのだ?」


キーランドがシャーロットへ尋ねた。


「はい。ポート王国は我が国よりも物の流通がとても盛んでした。他国では手に入らない物なども沢山ありました。山も多く自然も溢れている様に感じましたし街にもとても活気があり国民の方々も皆さん元気がよいと感じました。王都の街で暮らされている方々の極端な貧富の差も見たところそれほどないのではないかと感じました。見習わないといけないと思うほどとても素敵な国でした。」


シャーロットは思い出す様に少し笑みを浮かべながらキーランドとルチアへと言った。


「そうか。シャーロットはポート王国へ行きその様に感じたのだな。」


キーランドは笑みを溢しながら話すシャーロットを見てフッと口角をあげて言った。


「はい。実を言いますと…我が国にはない珍しい物や安価な物を見て思わず孤児院や家族へ沢山のお土産を買って帰ったのです。」


シャーロットは少し照れくさそうな笑みを浮かべて言った。


「ほぅ…。そんなに沢山の物を購入したのか。」


キーランドは笑顔でシャーロットへ言った。


「はい。そうなのです。」


シャーロットは笑顔で頷きながら応えた。


「そうか。それは…ポート王国への視察に同行した甲斐があったのだな。」


キーランドが笑いながら言った。


「あ…はい。国の公務の一つの視察ですのに…申し訳ありません…。」


シャーロットは少し気まずそうに笑みを浮かべて言った。


「良いのだ…。気にすることはない。そのように珍しいものがあったのなら公務で行ったとて私も購入しているだろうからな。」


キーランドは気まずそうな表情のシャーロットを見てクスリと笑みを溢しながら言った。


「はい……。」


シャーロットはそんなキーランドへ気まずそうに応えた。


「そうだ…。今日はシャーロットの体調の心配とローランドの事へのお礼…それに孤児院での事を聞いてみたいと思っていたのだ。」


キーランドがそうだ!というような表情になりシャーロットへ言った。


「私も是非…孤児院での話を聞きたいわ。」


ルチアは笑みを浮かべてシャーロットへ言った。


「はい…」


シャーロットが孤児院の事を話そうとしたその時だった。


「父上!母上!」


シャーロット達三人がいたその場所にローランドがやって来て言った。


「ローランド?どうしたのだ?!何かあったのか?!」


ローランドがやって来た事に驚いたキーランドがローランドへ言った。


「…いえ。特に何かあったという訳ではありません。近くを通りかかったら父上と母上のお姿が見えたので何をされているのかと思い来てみたのでございます。」


ローランドがキーランドへ応えた。


「……そうだったのか…。」


キーランドはローランドの話を聞き少し間を空けて何かを考える様な表情を浮かべて言った。


「シャーロット…来ていたのか?」


ローランドがシャーロットの方を向いて言った。


「はい…。殿下…。殿下にご挨拶申し上げます。体調が回復された様で何よりでございます。」


シャーロットはローランドにカーテシーで挨拶をしながら言った。


(…良かったわ…。殿下はすっかりお元気そうね。)


シャーロットはローランドに挨拶をしつつローランドを見て考えていた。


「あぁ…。」


ローランドが応えた。


(シャーロット…少し痩せたのか?アミルから体調の方は回復したと聞いたが。体調の回復はしても意識がない日が続いたからまだあまり食べ物を食べれていないのだろうか…。しかし…目を覚まして…回復してくれて本当に良かった…。)


ローランドはシャーロットへ応えながらシャーロットを見てそんな事を考えていた。


キーランドが何か考える様な表情でシャーロットとローランドを見ていた。


「ローランド…今ルチアとシャーロットと三人でお茶をしていたのだが…お前も一緒にどうだ?あぁ…執務が残っているならまたの機会で構わんが…。」


キーランドがローランドへ言った。


「…執務の方は問題ありませんのでご一緒させて頂きます…。」


ローランドはキーランドの言葉に少し驚くもどこか嬉しそうな表情で応えた。


(本当は…アミルからシャーロットが王宮へ来ていると聞きアミルにはトイレに行くと言って執務の途中で抜け出して様子を見に来たが……シャーロットとの時間が過ごせるのであれば執務は後で一気に済ませるとしよう…。)


ローランドはキーランドに応えながらそんな事を考えていた。


「そうか…。シャーロット…ローランドも一緒して構わないか?」


キーランドがシャーロットの方を見て尋ねた。


「……はい。殿下がそれでよろいのでしたら私は構いません…。」


シャーロットがキーランドへ応えた。


(はぁ…本当はここから立ち去りたい気持ちなのだけど…。馬車での一件以降殿下とまともに顔を合わすのが初めてだから何だか…複雑だわ。あの一件以降…殿下の微笑みを思い出してしまいがちだし…もう…捨てたと思った気持ちを抱いてしまいそうだから…出来るならば時間を少し置くまで顔をあまり合わせたくなかったわね…。)


シャーロットはキーランドに応えながらも心の中ではそんな事を思っていた。


「そうか…。ありがとう。ではローランド座りなさい。」


キーランドがシャーロットの言葉を聞くとローランドへ言った。


「はい。父上。」


ローランドはそう言うと椅子へと座った。


「話の途中だったが…シャーロット。孤児院の話を改めて聞かせてくれ。」


キーランドがお茶を一口飲むとシャーロットへ言った。


「はい。責任者を努めさせて頂いて数ヶ月が経ちましたが数ヶ月前に比べて随分と本来の孤児院の姿を取り戻しています。子供達も初めはオマーン元公爵から酷い扱いを受けていた事もあり貴族というもの自体に嫌悪と憎悪を抱いていましたがはじめに私を貴族の令嬢であるという事は気にしないで接して欲しいと言ったことも相まって今ではすっかり良い関係を築けています。」


シャーロットは嬉しそうに笑みを浮かべてキーランドとルチアへ話した。


「そうか…。それはとても良い傾向だな。」


キーランドは嬉しそうな表情を浮かべて話すシャーロットを見てふっと笑みを浮かべて言った。


「はい。本来…孤児院という場所は理由があり親と暮らせなくなった子供達を保護して育てる場です。今まで辛く大変な思いをしてきた分…これからは子供達に毎日が楽しく幸せだと思う様な生活をしていって欲しいと思っています。今まではろくに食事を摂らせてもらってなかったせいで孤児院の子供達は皆…年齢よりも細く小柄でした。しかし…数ヶ月経った今すっかり皆肉付きがよくなり背も伸びてきて歳相応の体つきになりました。私よりも年上の二人は初めて会った頃は私と同じくらいの背丈だったのが今では二人とも見上げる程までに背が伸びました。体つきもすっかり男性の体つきなのです。」


シャーロットは更に嬉しそうににこにこしながら続けて話した。


「シャーロットは…孤児院の話をする時は本当に楽しそうに嬉しそうに話すのね。」


ルチアは笑みを浮かべてシャーロットへ言った。


「そうだな。こちらまでシャーロットの喜びが伝わってくる様だ。」


キーランドも笑みを浮かべて言った。


「はい…。本当に孤児院の子供達の成長と笑顔を見る事が孤児院で働く上で何よりも嬉しいことなのです。これからも子供達が少しでも過ごしやすく楽しく幸せにいられる様に精進していくつもりです。責任者にる許可を頂いた陛下には心から感謝しております。」


シャーロットは笑顔で話すとキーランドへ頭を下げながらお礼を言った。


「最初にシャーロットから孤児院の話を聞いたときは…正直気まぐれか我儘だと思っていたのだ…。しかし…蓋を開けてみたらシャーロットが本気だということがわかった。最初は困っていた環境大臣でもあるグランバード公爵も今では我が娘を誇りに思っている様だしな。シャーロットが孤児院の責任者になってからは以前よりも王都の街に活気が溢れているという報告も受けている。シャーロットに孤児院の責任者を任せた事は間違っていなかった様だ。」


キーランドは笑みを浮かべてシャーロットへ言った。


「陛下…嬉しいお言葉ありがとうございます。」


シャーロットは頭を下げながらキーランドへお礼を言った。


「あぁ。」


キーランドはにこりと微笑みながら応えた。


「あぁ…グランバード公爵から聞いたのが…グランバード公爵家の皆でも孤児院を訪れたそうだな。」


キーランドがシャーロットへ言った。


「はい。そうなのです。孤児院の子供達の中には将来の夢がある子たちが数人いるのです。ですのでその子達の夢の為に応援できることはないかと考えた時に思い浮かんだのが家族でした。一人は花屋になる夢をもっていました。一人は本に関わる仕事をしたいと…。そして一人は王室騎士団の一員になりたいと…。ですので、花に詳しい母、司書官の次兄、剣術が得意な長兄ならば子供達の力になってもらえるのではないかと考えたのです。ですので…私が無理を言って家族にボランティアで孤児院へと同行してもらったのです。」


シャーロットがキーランドに説明した。


「その様な経緯があったのだな。グランバード公爵は孤児院訪問がえらく楽しかった様だったな…。」


キーランドがシャーロットの話を聞き言った。


「ふふ…父が陛下にその様にお話されていたのですね。でも…本当に孤児院へ行く前は父も兄達も何だか複雑そうだったのですけど行ってみたら父も母も兄達もとても子供とそれぞれの時間を過ごしていました。」


シャーロットはクスクスと笑みを溢しながらキーランドへ話した。


「ははは…そうなのか。グランバード公爵家にとっても良い経験になった様だな。」


キーランドはシャーロットの話を聞き笑いながら言った。


「ふふ…そうかもしれませんね。」


シャーロットはキーランドの言葉に笑みを浮かべて言った。


「私も!……孤児院の子供へ剣の手合わせをしました。」


その時…ローランドが急にシャーロット達の話に入ってきて言った。


「何?!ローランドが孤児院の子供に剣の手合わせだと?!どういう事なのだ?」


ローランドの言葉を聞きキーランドが眉を動かしながら言った。


「父上の代わりに孤児院へ視察に行ったのとは別に…アミルに付き添い孤児院へ訪れたが事があるのです…。父上に報告を入れるのを忘れていましたが…。」


ローランドがキーランドへ言った。


「ほぅ…。それで…アミルに付き添い孤児院へ行って孤児院の子へ剣の手合わせをしたと?」


キーランドがローランドへ言った。


「はい。アミルからグランバード公爵家で孤児院へ訪れた際の話を聞きまして…。孤児院に王室の騎士団に入りたいという子供がいると聞きました。アミルがその子供に剣の手合わせをする事になったと聞き私もアミルに同行したのです。」


ローランドがキーランドへ説明した。


「そうだったのか…。それで…ローランドがその子と剣の手合わせをしてみてどうだったのだ?」


キーランドが更にローランドへ尋ねた。


「はい。とても…いい筋の持ち主だと思いました…。王室の騎士団は並半端な覚悟では入れないところです。しかし…孤児院の彼からは並半端さは感じませんでした。」


ローランドがキーランドへ言った。


「そうか…。ローランドがそう言うのであればきっと…その子はいい筋をしているのだろう。」


キーランドがローランドの話を聞いて言った。


(まぁ…その件に関してはアミルから報告は受けていたが…。まさか…ローランドが自分の意思で孤児院へと足を運び…孤児院の子どらに剣の手合わせをするとはな。ローランドもえらく変わったもんだな…。)


キーランドはローランドに話しながらもそんな事を考えていた。


「はい…。彼は今年行われる騎士団の試験を受けるようでした。」


ローランドがキーランドへ言った。


「シャーロット…そうなのか?」


ローランドの話を聞いたキーランドがシャーロットへ話を振った。


「はい。殿下の仰る通りでございます。その子は…ジョナスというのですがジョナスは今年の平民枠の王室騎士団の試験を受ける予定です。その為にジョナスは日々一生懸命努力を重ねています。そんなジョナスを私も…孤児院の皆も全力で応援しています。」


シャーロットがキーランドへ応えた。


「そうか…。平民枠の王室騎士団の入隊は今までほんの僅かしかいないが…シャーロットとローランドがそこまで言っているのであれば試験に合格するといいな。」


キーランドがシャーロットへ言った。


「はい。心からそう願っています。」


シャーロットは笑みを浮かべて頷きながら応えた。


「ところで…シャーロット王室騎士団の試験が終わり少しするとシャーロットの誕生日だったな。」


「えぇ。シャーロットの十六歳のお誕生日だわ。」


キーランドが思い出した様に言うとルチアも言った。


「はい…。」


シャーロットが頷きながら言った。


(そう…私の十六歳の誕生日…。前世では殿下と結婚して王太子妃になった日…忘れたくても忘れる事の出来ない日よ。)


シャーロットはキーランドとルチルに応えながらもそんな事を考えていた。


「シャーロットの…誕生日…。」


すると…ローランドがぼそりと呟いた。


「………殿下は私の誕生日はご存知なかったのですね…。」


シャーロットがぼそりと呟いたローランドの方を見て呟いた。


(そう…よね…。分かっていた事だけど…。殿下は私の誕生日も知らない…本当に私には一ミリも興味がなかったのね…。)


シャーロットは何とも言えない表情を浮かべてそんな事を考えていた。


そんなシャーロットを見てローランドは心臓を突き刺されている様な気持ちなった。


(あぁ…。私は本当に愚かだな…。これまでシャーロットの誕生日の事など気にした事もなかったのだな…。シャーロットは私の誕生日の日に毎年おめでとうと伝えてくれていたというのに…。)


ローランドはシャーロットの表情を見ながら今までの事を思い出しながら考えていた。


「何?!ローランドはシャーロットの誕生日がいつなのかを知らなかったのか?!」


キーランドはローランドの反応とシャーロットの言葉を聞き驚いた表情を浮かべてローランドへ言った。


「はい……。父上も…母上もご存知なのですね…。」


ローランドは表情を引きつらせながらキーランドへ言った。


「もちろんだ…。今は違えど一度はローランドと婚約関係を結んだ相手だ…。その様な事など知っていて当たり前の事だ。」


キーランドは少し呆れた様な表情でローランドへ言った。


「…………。」


ローランドはキーランドの言葉を聞き黙っていた。


(父上と母上ですらシャーロットの誕生日を知っているというのに…私はどうだ…。本当に…自分の愚かさが情けない…。)


ローランドは黙ったままそんな事を後悔が浮き彫りになった表情で考えていた。


「……殿下……。私の誕生日をご存知なくても何ら問題はありませんので気になさらないで下さい。陛下の仰る通り一時は殿下と婚約関係にありましたが今はそうでありませんので…。」


シャーロットが黙っているローランドを見て言った。


(そう…何の問題もないわ…。今更…私の誕生日を知ったところで何も変わらないわ。)


シャーロットはローランドに言いながらそんな事を考えていた。


「っ…!」


シャーロットに言われたローランドはグッと複雑そうなどこか寂しげな表情を浮かべて言葉を飲んだ。


「ですが……今後…王太子妃に迎えられる方の誕生日はきちんと覚えて差し上げて下さい。陛下…王妃様…殿下…そして王太子妃になれる方の誕生日は国のお祝い事でもあります。ですので…殿下がきちんと覚えておいて差し上げなくては王太子妃も戸惑われると思いますので…。」


シャーロットは笑みを浮かべるでもなく真剣な表情でローランドへ伝えた。


「……あぁ…。分かった…。忠告感謝する…。」


ローランドはシャーロットへ応えた。


「いえ…。理解して頂きありがとうございます。」


シャーロットが言った。


(今後…王太子妃に迎える者か…。その者はシャーロットではない誰か他の者なのか…。あぁ…こんな事になるのであれば父上が私とシャーロットの婚約解消を決めた際に止めておくべきだったな…。シャーロットは婚約解消を申し出た日から…今までの行動が嘘のように私に一切の興味がなくなったかの様になった…。シャーロットの存在を鬱陶しく思っていたあの頃はそれが正直助かった…。しかし…今は…こうなったことを酷く後悔している…今まで何年も私がシャーロットに対して愚かな態度とってきたつけが回ってきたかのように…。)


ローランドはシャーロットの言葉がまるで棘の様に感じながらそんな事を考えていた。


「陛下…せっかくお招き頂いたのですがそろそろ孤児院へ向かいたいと思いますのでお暇させて頂いてもよろしいでしょうか…?」


シャーロットがキーランドへと言った。


「そうか…。それは残念だが…仕方ないな。孤児院の者たちもシャーロットが訪れるのを楽しみに待っている事だろうしな…。早く皆の元へ行ってあげなさい。」


キーランドは残念そうな表情を浮かべながらもシャーロットへ言った。


「ありがとうございます…陛下。」


シャーロットは頭を下げながらキーランドへお礼を言った。


「あぁ。」


キーランドはにこりと微笑みながらシャーロットへ言った。


「また…お茶にお誘いしてもいいかしら?今度はもっとゆっくり色々と王都の街の事や孤児院の事を話したいから。」


ルチアがシャーロットへ言った。


「はい。王妃様…。嬉しいお言葉です。是非…ご一緒させて下さい。」


シャーロットはにこりと微笑みながらルチアへ言った。


「そう?ありがとう。では…楽しみにしてるわね。」


ルチアが微笑みながら言った。


「はい。私も楽しみにしております。」


シャーロットが微笑みながら応えた。


「……ローランド…シャーロットを馬車まで送ってやりなさい。」


キーランドが複雑そうな表情を浮かべているローランドへ言った。


「へ…陛下…!私は一人で馬車まで行けますので見送りは大丈夫です。」


シャーロットはキーランドの言葉を聞き慌てて言った。


「しかし…。」


キーランドが慌てたシャーロットを見て言った。


「……。承知しました。父上。シャーロットを馬車まで送ってまいります。」


ローランドがキーランドへ言った。


「そうか…。では…頼んだぞ。シャーロット…ローランドもこう言っているから送ってもらいなさい。」


キーランドは小さく頷きながらローランドに言うとシャーロットの方を向いてシャーロットへ微笑みながら言った。


「はい。父上。」


「……っ…。わかりました。陛下…。陛下のお心遣いに感謝致します。」


ローランドが応えた。

シャーロットは一瞬複雑そうな表情を浮かべるも笑みを浮かべてキーランドへ言った。


「あぁ。気をつけて帰るのだぞ。」


キーランドがシャーロットへ言った。


「はい…。では…陛下、王妃様、失礼いたします…。」


シャーロットは応えるとカーテシーをしながらキーランドとルチアへ挨拶をしたのだった。


シャーロットとローランドがその場を離れたのでキーランドとルチアは二人きりになった。


「なぁ…ルチアや…。あの二人を見て何を感じた?」


キーランドがルチアへ尋ねた。


「そうね…。立場逆転というのかしらね…。今はローランドがシャーロットに想いを寄せている…と感じたのだけれど…。」


ルチアはキーランドに言われて思った事を言った。


「やはり君にもそう見えたか…。私も君と同じ意見なのだ。どう見てもローランドがシャーロットに想いを寄せているのだろう…。逆にシャーロットはローランドに対して今までの様な気持ちはないと感じた。」


キーランドがルチアへ言った。


「えぇ…。今のシャーロットの一番は孤児院だという風に感じたわね。」


ルチアが言った。


「あぁ。そうだな…。シャーロットは今や立派な孤児院の責任者である…。孤児院の者たちもシャーロットなしではと思っているのだろう…。数ヶ月前のシャーロットでは考えられない程立派な令嬢だ…。孤児院を通して国民の事をも考えて動いてる…。まさに今のシャーロットは王太子妃に相応しい子だ…。」


キーランドが真剣な表情でルチアへ言った。


「えぇ。そうね…。婚約時のシャーロットはお世辞にも王太子妃とは呼べない程だったけれど今のシャーロットはとても優秀な王太子妃になれる程だわ。」


ルチアは頷きながら言った。


「だが…シャーロットがローランドとの婚約解消を持ちかけてきたのだ…。シャーロット自身は王太子妃よりも孤児院の責任者を選んだのだ…。」


キーランドは難しい表情で言った。


「ローランドやシャーロットには二人の婚約は解消したと伝えてあるけれど実際には解消はしてないでしょう?どうにか…またシャーロットがローランドと婚約するという形にはなれないかしらね…。」


ルチアは困った表情を浮かべながらキーランドへ言った。


「…本当は婚約解消していないという事実は我々とグランバード公爵夫婦しか知らない事だ…。婚約解消を望んだのはシャーロットだ…再度ローランドと婚約しようなど考えもしないだろう。」


キーランドが言った。


「今のローランドを見るときっと…シャーロットと婚約解消した事を後悔しているんじゃないかしらね…。あれだけローランド…ローランドと言っていたシャーロットがピタリとローランド…ローランドと言わなくなったのだから…。」


ルチアが言った。


「ふむ…。ルチアの言うとおりローランドは今になり後悔しているのかもしれんな…。ん〜…この状況…どうしたものかのぉ…。」


キーランドは悩む様な表情を浮かべて言った。


「そうね…。私達も今のシャーロットならば王太子妃として迎えるのは大歓迎なのだけれどね…。なかなか上手くはいかないものね…。」


ルチアは困った表情で言った。


「あぁ…。そうだな。どうにかもう一度お互いが婚約関係を結びたいと思ってくれれば事はまるくおさまるのだがな…。」


キーランドも困った表情で言った。


シャーロットとローランドの今の二人を間近で見ていた二人は頭を悩ませながらそんな事を話していたのだった。




そして…


シャーロットはローランドに馬車まで送ってもらうこととなり馬車までの道のりを二人で歩いていた。


二人は沈黙したまま歩いていた。


先に沈黙を破ったのはシャーロットだった。


「……殿下…。私が体調を崩した際に殿下が王室の専属医を連れて来てくださり治療をしていただいたとお聞きしました。殿下も体調を崩されていたにも関わらずお気遣いありがとうございます。お陰で体調が回復傾向に向かいました。」


シャーロットがその場で止まりローランドへ頭を下げながらお礼を言った。


「いや…。気にすることはない。私のせいでシャーロットに怪我を負わせてしまい…結果シャーロットが体調を崩してしまったようなものだからな…。アミルや…グランバード公爵家の皆もシャーロットが目を覚まさない事をとても心配していたしな…。」


ローランドがシャーロットへ言った。


(私も…シャーロットの意識がないと聞いたときは何とも言えない気持ちだった。目の前が真っ白になった。生まれて初めて誰かを心配した…。そして…心からシャーロットが目を覚ますことを願っていたからな…。)


ローランドはシャーロットに話しつつそんなことを考えていた。


「私が怪我を負ったのは殿下のせいではありません…。私自身の問題ですので…それは気にしないで下さい…。」


シャーロットは慌ててローランドへ言った。


(あの時は…殿下を助けないとという一心だったもの。だから…少し自分で無理をしてしまっただけなのだから…。)


シャーロットはローランドに言いつつそんな事を考えていた。


「いや…そもそも私が視察同行の話を持ちかけなければこの様な事にはならなかったしな…。」


ローランドは申し訳なさそうな表情で言った。


「いえ…。殿下の視察に同行させて頂いたお陰でポート王国という国がどのような国かを知ることも出来ましたし…沢山の良いものを買うことも出来ました。それは殿下が図書館で声をかけて下さったお陰ですので。」


シャーロットはほんの少し笑みを浮かべて言った。


「っ……。そうか…。そう言ってもらえると少し心が軽くなる。」


ローランドはシャーロットが少しの笑みを浮かべた事にドキりしながら言った。


「はい。ですので今回起きた事は殿下のせいではありませんので今後はその件について申し訳ないというお気持ちは捨てて下さい。申し訳ないと思われている方が気持ち的にもあまり良い気はしませんので…。」


シャーロットがローランドへ言った。


「そうか……。分かった。では…この話はこれまでにしよう。」


ローランドが言った。


「はい。そういたしましょう。殿下に直接お礼が言えたので良かったです。殿下は私には自分が訪れた事は黙っておいて欲しいとの事でしたが聞いてしまったからにはお礼を言わない訳にはいかないと思いましたので。」


シャーロットは少しホッとした表情でローランドへ言った。


「私も…改めて…。あの様な状況の中でも私の傷の手当や看病をしてくれてありがとう。お陰で大事に至らなくて済んだ。」


ローランドもシャーロットへ改めてお礼を言った。


「はい…。本当に回復されて何よりです。」


シャーロットがローランドへ言った。


「君もな…。」


ローランドが言った。


その後、また二人は歩き出して馬車ところへと向かった。

そして二人は馬車のところ到着した。


「殿下、お見送りありがとうございました。」


シャーロットが礼をしながらローランドへ言った。


「あぁ…。」


ローランドが応えた。


「では…失礼します。」


シャーロットがローランドに言うと馬車へ乗り込もうとした。


「シャーロット…!」


シャーロットが馬車へ乗り込もうとした時…ローランドがシャーロットの名を呼んだ。


「??はい…?」


シャーロットは馬車へ乗りかけたところで名前を呼ばれたので??という表情を浮かべて言った。


「………。その…シャーロットの誕生日を知らなかった事…申し訳ない。」


ローランドがシャーロットへ言った。


「……いえ。気にしていませんので大丈夫です。ですので殿下もお気になさらずとも大丈夫です。」


シャーロットが応えた。


「……。その…今後はシャーロットの事を…その…知りたいと思っている…。」


ローランドは少し間を空けて意を決した様な表情でシャーロットへ言った。


「え……?あの…どういう意味で…。」


シャーロットはローランドの言葉に戸惑いながら言った。


「とにかく…そういう事だ…。」


ローランドはどこか誤魔化す様に行った。


「はい…?」


シャーロットはそんなローランドに戸惑いつつ言った。


「孤児院までの道のり…気をつける様に…。」


ローランドが言った。


「え…?あ…はい…。」


シャーロットはそう応えると戸惑いながらも馬車へと乗り込んだ。


バタン…


馬車の扉が閉まった。


ローランドは馬車の中のシャーロットをじっと見つめた…


シャーロットもまた外にいるローランドを見つめた…


(殿下…一体先程の言葉はどういう意味だったのですか…?何故…急に私の事を知りたいと…?戸惑うわ…。)


シャーロットはそんな事を思いながらローランドを見ていた…


(シャーロット…これまで私は君に酷い態度をとっていた…。それを今はとても後悔している…。これからは…私がシャーロットを好きという気持ち自分なりに伝えていこうと思う…。)


ローランドはシャーロットを見つめながらそんな事を考えていた。


そして…

馬車が動きはじめシャーロットは王宮を後にしたのだった…


シャーロットを乗せた馬車をローランドは切ない表情で見つめていた。


シャーロットもまた馬車の中で複雑な表情を浮かべていた。


「数ヶ月前とはまったく違う殿下の反応に本当に戸惑うわ…。私の事知りたいだなんて…。今更そんな事を言われたって……私は…どうしたらいいのか分からない…。今から一年も経たないうちにミレイ様と出会い恋に落ちるというのに…。どうして…今更…私の気持ちを乱す様な事を言うの…?」


シャーロットは辛そうな苦しそうな表情を浮かべながら一人呟いた。


「シャーロット…三度目の人生は絶対に生き抜くと決めたのだから…自分の気持ちを揺るがしてはだめよ…。先には不幸しかないことを知っているのだから…。」


シャーロットは一人馬車の中で胸を押さえながら自分の感情を抑え込むように呟いたのだった……


ご覧頂きありがとうございます★


誤字脱字のご指摘ありがとうございます。


他にも連載中の小説がありますのでよろしければご一緒にご覧下さい★


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悪役令嬢でもなくヒロインでもないまさかのモブキャラに転生したので大好きなハンドメイドをしながら暮らす事にしました!!


私が悪役令嬢?!…ならばシナリオ無視して全力で推しを守り愛し共に幸せになる所存です!!

〜じゃじゃ馬令嬢は異世界でも推し活に励む〜



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