25.一夜
「下ーーー!殿下ーー!!シャーロット様ーー!!」
シャーロットが微かに聞こえる声に気づきゆっくり目を開けた。
「っ…痛っ……。」
シャーロットは目を開けてゆっくり起き上がろうとしたが頭や体が痛く思わず言った。
(あ…そうだったわ…。馬車が盗賊に襲われたと思ったら勢いあまって馬車が崖から落ちたんだったわ…。あれ…でも…頭も体も痛いけれど…どうして無事なのかしら…。)
シャーロットは痛みを感じながら馬車が襲われた事を思い出して考えていた。
「あ…殿下は?!」
シャーロットはハッとなりローランドの事を思い出し呟いた。
そしてシャーロット呟いたと同時に手に温かさを感じた。
シャーロットは自分の手元を見て驚いた。
そこには気を失い腕からは血を流しているローランドがいたのだ。
「で…殿下!!」
シャーロットは思わず大きな声を出してローランドへ呼びかけた。
だが、ローランドは反応しなかった。
「息は…。」
シャーロットはそう言うとローランドに顔を近づけローランドが息をしているかを確認した。
「あぁ…。良かった。息はしてるわ…。気を失ってるだけのようね…。」
シャーロットはローランドが息をしているのを確認するとホッとした表情を浮かべて言った。
「殿下ーーー!シャーロット様ーーー!!」
再びどこからか声がした。
シャーロットはその声を聞きゆっくりと扉を開けようとした。
しかし、馬車が転落した際に扉が変形してしまったせいか扉が開かなかった。
「まずいわ…扉が開かないわ…。」
シャーロットは愕然とした表情で言った。
しかし…
すぐに何かを考え決意した表情を浮かべて何かを自分に言い聞かす様に小さく頷いた。
そして、靴を脱ぎ大きく深呼吸をしてゆっくり息をはいた。
そして…
シャーロットは思い切り扉を蹴り始めた。
ドン!ドン!
ドン!ドン!
シャーロットは力いっぱい扉の持ち手辺りを蹴り続けた。
「はぁ…はぁ…。思ったより扉が変形してるみたいね…。」
シャーロットは息を切らせながら扉を見つめて言った。
(恐らく私達を呼んでいるのは護衛の方だろうから早く扉を開けて状況を伝えないと…。殿下は怪我もしてるし気を失ってるから早く救出してもらわなきゃ…。……蹴りがダメなら…。)
シャーロットは扉を見つめた後にローランドをチラリと見ながらそんな事を考えていた。
そして…
シャーロットが今度は扉に向かって思い切り体当たりをした。
ドン!ドン!
ドン!バン!!
シャーロットは力を緩める事なく無我夢中で扉へ体当たりを続けた。
そして…
バーーーン!!
シャーロットが更に力を入れて体当たりをすると扉がようやく開いた。
扉が開いたと同時にシャーロットは勢いあまって扉が開いた目の前の崖壁へと体をぶつけた。
壁には出っぱった大きめの形の悪い石が埋まっていてシャーロットはその石の一つに左腕を思い切りぶつけてしまった。
(痛……。)
シャーロットは左腕を押さえながら思った。
「シャーロット様ーー!!大丈夫ですか?!」
崖の上から崖下の様子を伺っていた護衛の一人がシャーロットの行動を見て上からシャーロットへ叫び言った。
「はい!大丈夫です。殿下もご無事です!ですが、頭を打たれたのか気を失っている状況です。腕に怪我もされている様です。ここからでは私達はどうする事も出来ません。なので急ぎ国へ戻り陛下に報告して頂き救援をお願いします!!それまではどうにかここで時間をしのぎますので!!」
シャーロットは崖上にいる護衛におおきな声で状況を伝えた。
そして護衛に救援の件も伝えた。
「承知しました!すぐに国へ急ぎ戻りますのでお待ち下さい!!」
護衛はシャーロットとローランドの無事を確認するとホッとした表情を浮かべた。
そして、状況を把握した護衛はすぐに救援を呼ぶとシャーロットへ伝えた。
「お願いします!!」
シャーロットが護衛に伝えると護衛は急ぎ国へ戻ったのだった。
(一先ずは…これでいいわね。国へ戻りこの状況を護衛の方が伝えてくれたらすぐに救援隊が来るはずだから…。)
シャーロットは護衛に状況を伝えれた事に一先ずホッとした。
「…痛っ…。」
シャーロットは左腕と右足に痛み感じて思わず声を漏らした。
そしてシャーロットは自分の右足と左腕を見た。
(右足…赤く腫れてるわね。力を思い切り入れて硬い場所を蹴ったから軽い捻挫の様になってるわね…。)
シャーロットは自分の右足を見ながら考えていた。
(左腕の方は…結構腫れてるわね。あぁ…赤くというよりは赤紫に皮膚が変色し始めてるわ…。きっと変形した石のところに強く打ち付けたからね。恐らく骨に異常はないと思うけど内出血の範囲も広いしこれ以上悪化しないといいけど…。)
シャーロットは自分の左腕を見て表情を歪ませながらそんな事を考えていた。
「それより…殿下ね…。」
シャーロットはローランドを見て呟いた。
「殿下!殿下!」
シャーロットはローランドへ声をかけた。
しかし…ローランドは気を失ったままだった。
(だめね…。目を覚まさないわ…。)
シャーロットは心配そうな表情でローランドを見て思った。
(きっと…状況からして…私を咄嗟に庇ってくれたのかもしれないわ…。殿下が私の下敷きの様になっていたし…。)
シャーロットはローランドを見て複雑そうな表情で考えていた。
そしてローランドの腕の傷を見た。
シャーロットはローランドの傷を見て考えた後に馬車の扉を開けて外へ出て周りを見渡した。
「幸い…あまり高い崖ではなかったのね。王族専用の馬車だから作りも頑丈だからそれも相まって助かったみたいだわ…。」
シャーロットは外を見渡しながら言った。
そしてシャーロットは馬車の荷台の方へと回った。
荷台へ回ったシャーロットは荷台に積んだ荷物を確認した。
「よし…。護衛の方がしっかりと固定してくれてたお陰で馬車ごと転落した割には荷物が崩れてないわ。」
シャーロットは荷台に積んでもらっていた荷物を見てホッとした表情を浮かべて言った。
「確か…この荷物とこの荷物の中に…。」
シャーロットは荷物を漁りながら言った。
「あったわ。よし…。」
シャーロットは探していた物を見つけて言った。
そして、シャーロットは荷物の中身を手にして馬車の中へと戻った。
馬車の中へと戻ったシャーロットは荷物の中から取ってきた物を座先へ置いた。
シャーロットが荷物から取り出してきた物は消毒液とガーゼだった。
ローランドの腕の傷の手当をする為に取り出してきたのだった。
「孤児院用に、ジョナスが剣の稽古をするとどこかしら小傷を作るからすぐに消毒液とガーゼが切れるから困ってたところにこの国へ来てとても安く売っていたから沢山買ったんだけどまさかこんなにすぐ役立つ事になるとはね…。」
シャーロットはローランドの上着を脱がしながらブツブツと言った。
「殿下…傷の部分の洋服を少し破きますがごめんなさい…。」
シャーロットは小声で気を失ってるいるローランドへ言った。
そして…
ビリ…ビリビリ…
シャーロットはローランドの洋服の一部を破いた。
「これは……。思ったより傷が深そうだわ…。」
シャーロットは洋服を破った場所から見えたローランドの腕の傷を見て困った表情を浮かべて言った。
(こういう傷は縫うのが一番なんだろうけどさすがに今ここでそんな処置は出来ないから一先ずは傷を丁寧に消毒して清潔にしてガーゼを当てての応急処置をしとくだけで違うわよね。)
シャーロットはローランドの傷を見ながらそんな事を考えていた。
シャーロットはローランドの傷にそっと消毒液をかけてガーゼで血を優しくて丁寧に拭き取った。
血を拭き取った傷口に再度消毒液をかけた。
そしてそこに優しく新しいガーゼを当てた。
ビリビリ…
ビリビリビリ…
シャーロットはローランドの傷口にガーゼを当てるといきなり自分の洋服のスカートを細長く破った。
破ったスカートの一部でガーゼがずれないようにと止血をするという意味で巻き付けた。
「よし…これで今出来る応急処置はやりきったわ。」
シャーロットは応急処置の終わったローランドの腕を見て言った。
「あとは…。」
シャーロットはそう言うと再び馬車の外の荷台に回った。
(もしかすると救助が来るまでに傷による発熱があるかもしれないから額を冷やせる物と…体を冷やさない様にできる物…それと…何か食べるもの…。)
シャーロットはそんな事を考えながら荷物を漁った。
(もうすぐ日が暮れそうだから灯りになるものも必要そうね…。)
シャーロットは空を見上げながら考えていた。
(それにしても…この国の市場に売ってるものは安いのに可愛い物や美味しそうな物に珍しい物も多いから色々と買ってしまったけどそのお陰で救助が来るまではどうにかしのげそうね。)
シャーロットはそんな事を考えながら更に荷物を漁った。
ガタンッ…
その時だった。
馬車の中から音がした。
(何?!)
シャーロットは音を聞いて驚き思ってバッと馬車の方を見た。
「シャーロット……。」
馬車の中からローランドの声がした。
ローランドが目を覚ましたのだと思いシャーロットは漁り取り出した荷物を持って急いで馬車の中へと戻った。
「殿下…!目が覚めましたか?」
シャーロットは荷物を座席に置くとローランドへ慌てて声をかけた。
「……!あぁ…。一体…っ痛!」
ローランドはシャーロットの姿を見てホッとした様な表情を浮かべて言うと状況が分からず体を起こそうとして痛みを感じて言った。
「あぁ…殿下、急に動かない方がいいです。殿下は先程まで気を失っていたのに加えて腕を負傷してますから…。」
シャーロットは痛みに思わず表情を歪めたローランドへ慌てて言った。
「私は長く気を失っていたのか…?」
「はい…。私が気づいてからは一時間近以上は気を失っておられました…。」
「そうだったのか…。」
ローランドはシャーロットに言われるとゆっくり体を起こして座席へ座りながら言った。
そんなローランドにシャーロットは長く気を失っていた事を伝えた。
「腕の…傷の手当はシャーロットが…?」
「あ…はい。専属医でない私が勝手に手当するのは良くないと思いましたが思ったより傷が深そうでしたので応急処置だけさせて頂きました…。王宮に戻られましたらすぐに専属医にお診せ下さい。」
座席に座ったローランドは自分の腕を見て驚いた表情でシャーロットへ尋ねた。
するとシャーロットは気まずそうにしながらも応急処置をしたことを伝えた。
(私の応急処置は嫌かもしれませんけどね…。こんな状況なんだからそれくらいは嫌でも我慢してくださいね。)
シャーロットはローランドに話しながらもそんな事を考えていた。
「すまない…。ありがとう…。助かったよ。」
ローランドが応急処置のしてある自分の腕を見ながらシャーロットへお礼を言った。
「え…?あ…はい…。」
シャーロットは予想外のローランドの言葉に驚きながらも応えた。
(びっくりした…。まさか殿下がお礼を言ってくるなんて…。てっきり私の応急処置が嫌でガーゼを外さないか内心ヒヤヒヤしたのに…。)
シャーロットは驚いた表情のまま考えていた。
「あの…私を庇って下さったせいで殿下に傷を負わせてしまったり気を失わせてしまい申し訳ありませんでした…。」
シャーロットはとても申し訳なさそうにローランドへ言った。
「こ…この腕の傷は私が盗賊の矢を少し喰らってしまった傷だ。決してシャーロットを庇ってできたものではない。」
ローランドはシャーロットに言われると少し焦る様に言った。
「そうなの…ですか?しかし…庇って頂いた事に変わりはありませんので…。」
シャーロットはローランドの話を聞くもしょんぼりした表情で言った。
「気にするな…。それよりも現状況はどうなっている?」
ローランドはシャーロットの表情を見て何か言いそうな表情をするも言わず現在の状況を聞いた。
「盗賊に襲われた後に勢いあまり崖から馬車ごと転落した様です。ですが幸いそれほど高い崖でなかった様です。王族専用の馬車の頑丈さも相まって助かった様です。護衛の方が崖上にいらしたので既にこちらの状況は護衛の方にお伝えしました。カリブ王国に戻り陛下へ現状況を報告して救助隊を向かわせて欲しいと伝えておりますのでじきに救助隊が来るかと思います。」
シャーロットはローランドへ説明した。
「そうか…。私が気を失っせいでシャーロットに任せてしまったのだな。すまない…。」
ローランドは悔しそうな表情を浮かべてシャーロットへ言った。
「い…いえ。お気になさらずに…。一先ず救助隊が来て下さるのを待ちましょう。」
シャーロットは謝るローランドに慌てて言うと落ち着きを取り戻して言った。
「あぁ…。そうだな。」
ローランドが言った。
「あ…あの…荷台に積んだ荷物の中から救助を待つ間に使えそうな物を取り出し持ってきましたので何かいるものがありましたら言ってくだいね。」
シャーロットはローランドの表情を見てその場を空気を変えようと言いながら持ってきた荷物をローランドへ見せた。
「これは…これは全て買ったものなのか?」
「あ…はい。そうなんです。安いのにいい物が沢山あったのでつい孤児院と家族にと色々と買ってしまったんです…。まぁ…それがこんなところで役に立つとは思いませんでしたが…。」
ローランドがシャーロットの見せてきた物を見て少し驚いた表情で言った。
ローランドに言われたシャーロットは苦笑いを浮かべて応えた。
「少しですが非常食に使える食べ物もありますのでお腹が空いたら言ってくださいね。」
シャーロットは食べ物を見せつつローランドへ言った。
「あ…あぁ。ありがとう…。」
ローランドは少し戸惑いながら応えた。
「ん…?そのスカートどうしたのだ?!破けてしまったのか?!」
ローランドはふとシャーロットのスカートがビリビリに破れているのを見て焦った表情で言った。
「え…?あぁ…これは…自分で破いたんです…。」
「自分でだと?!」
「はい。殿下の腕の手当に使ったので…。」
「私の手当に?!」
シャーロットは焦るローランドに苦笑いを浮かべ応えた。
そんなシャーロットの言葉にローランドが驚くもシャーロットは冷静に応えた。
そしてローランドは自分の腕を見た。
(本当だ…。よく見たらガーゼをスカートの布で固定してあるな…。)
ローランドは腕を見ながら何とも言えない感情になりつつそんな事を考えていた。
「あっ!!」
シャーロットが突然声をあげた。
「どうした?!」
ローランドは突然声をあげたシャーロットに驚き言った。
「あの…殿下。実は…傷の手当をする際に殿下の洋服を少しばかり破いてしまいまして…。」
シャーロットは気まずそうに恐る恐る言った。
「なんだ…そんな事か…。それは別に構わない。傷の手当をするのに仕方なかったことなのだろう?」
「え?あ…はい。」
ローランドがシャーロットの話を聞いてそんな事か…という表情で言った。
そんなローランドの言葉にシャーロットは驚き言った。
(怒られると思ったけど…。)
シャーロットは驚いた表情のまま思っていた。
そんなローランドにシャーロットは何故か今だ!と思い持ってきた荷物の中からガサガサとある物を取り出した。
「あの…殿下…。」
「ん?次はなんだ…?他にもあるのか?」
シャーロットがローランドへ言うとローランドはなんだ?という表情で言った。
「あの…これを…。」
シャーロットは意を決して荷物から出した物をローランドの前へ差し出した。
「これは…?」
ローランドは目の前に差しだされた包み紙を見て首を傾げながらシャーロットへ聞いた。
「……。市場に売っていたものなんですけど…。殿下に今日のお礼に思いしまして購入した物です…。」
シャーロットは少し気まずそうに説明した。
「これを…私に…?開けてもいいか…?」
ローランドはシャーロットの予想外の言葉に驚き言った。
「はい…。どうぞお開け下さい。」
シャーロットが頷きながら応えた。
ローランドは包み紙の中から人形を取り出して人形を見つめた。
「幸せが訪れる人形だそうです…。見た目はちょっとあれなんですけど…。」
シャーロットは苦笑いを浮かべてローランドへ言った。
(さすがに一国の王太子殿下に人形って…なかったかしら…。でも…あの人形を見た時に何かつい惹かれてしまったのよね。ちょっと見た目は不細工な感じな表情が逆に愛らしくて…何よりも幸せが訪れるって言葉が良かったというか…。一度目の人生では私のせいで殿下を不幸にしてしまった様なものだから…三度目の現世では心から殿下の幸せを願っているって思いも込めてこの人形を殿下に渡そうって思ったのよね…。)
シャーロットは人形を無言で見つめるローランドを見てそんな事を考えていた。
「がとう……。」
ローランドが何かを呟いた。
「はい…?」
シャーロットはローランドの言葉を聞き取れず言った。
「ありがとう…。」
ローランドはそう言うとシャーロットへとても嬉しそうな笑みを浮かべた。
ドキッ…
シャーロットは思わずローランドの笑顔を見て心臓がドキッとした。
(え…?何…?何が起こったの…?殿下が私があげた人形に対してお礼を言ったのに加えて私へ微笑んだ…?え…?この私に?)
シャーロットは初めて見るローランドの笑みに衝撃と胸のドキドキを感じながら戸惑いつつ考えていた。
「え…あ…は…はい…。」
シャーロットは戸惑いを隠せない表情で言った。
ドキドキ…
ドキドキ…
(心臓の音がうるさいわ…。あまりにも突然の出来事で混乱するわ…。)
シャーロットはローランドに応えながらも心臓のドキドキを感じながらそんな事を考えていた。
「そうだ…。私も…その…君に渡したい物があったのだ。」
ローランドはハッと思い出した様な表情をすると少し言いづらそうにシャーロットへ言った。
「え?私に…ですか?何でしょう…?」
シャーロットはローランドに言われると自分の胸のドキドキを隠す様に応えた。
(私に渡したいもの…?何だろう…。)
シャーロットはローランドの言葉を聞いて不思議に思いそんな事を考えていた。
ガサガサ…
ローランドが洋服の内ポケットから包み紙の様な物を取り出した。
(あぁ…良かった。馬車の転落時に壊れてしまったかもと思ったが壊れてはいなかった様だ…。シャーロットは受け取ってくれるだろうか…。私は今までシャーロットに贈り物などした事がなかったからな…。)
ローランドは取り出した包み紙の中をそっと見るホッとした表情で考えていた。
そして…
「これだ…。」
ローランドは意を決してシャーロットに言うと包み紙に入った髪飾りをシャーロットの前へと差し出した。
「??あの…これは…?」
シャーロットが自分へ差しだされた包み紙を見て首を傾げながら言った。
「先程…視察を終えて馬車へ向かう途中に目に入り購入したのだ…。君に似合うと思ってな…。シャーロットは…市場で自分の物は全然購入してなっただろう…?」
ローランドは不思議そうな顔をしているシャーロットへ戸惑う様な表情で言った。
「私に…ですか…?あの…開けてもよろしいですか……?」
シャーロットはローランドの言葉を聞き再び戸惑った。
しかし…戸惑いながらもローランドへ尋ねた。
「あぁ…。」
ローランドが頷きながら応えた。
ローランドが応えるとシャーロットは包み紙を開けて中の物をそっと取り出した。
「わぁ…きれい…。」
シャーロットは包み紙から取り出した髪飾りを手にとり見ると思わず言った。
ローランドがシャーロットへ贈った髪飾りは淡い水色の淡い黄色の花の飴細工の髪飾りだった。
シャーロットのプラチナブロンドの髪色にとても似合う色合いの髪飾りだった。
「その…気に入ってくれただろうか…。」
ローランドが髪飾りを見るシャーロットへ恐る恐る言った。
「はい…。とても綺麗です…。とっても気に入りました…。殿下…ありがとうございます。大切に致します…。」
シャーロットはローランドに聞かれると満面の笑みを浮かべながらローランドへお礼を言った。
この時のシャーロットの笑顔は本人も気づかない程とても自然な笑みだった。
シャーロットはもう一度シャーロットとして転生したと気づいた日からローランドに対して笑みという笑みを見せたことがなかった。
そんなシャーロットに対してローランドは自分も孤児院の子供達に向ける様なシャーロットの笑顔を見たいと思っていた。
そんなシャーロットの笑顔を自分に向けられたローランドはその瞬間にここ最近の自分が感じていた事の答えが出たのだった…
(あぁ…そうか…。私はシャーロットに恋をしてしまったのか…。何故自分がシャーロットの事を気にしたり思い出したり…自分に対していつも微妙な表情を浮かべるシャーロットにムッとなったり…シャーロットがジョナスと仲良さそうにしている姿を見るとモヤついていたりしたのか…。それは…きっとシャーロットの事が気になり始めた時からシャーロットに恋をしてしまったからだ…。)
ローランドはシャーロットの満面の笑みを見た瞬間に自分に気持ちの原因が腑に落ちた様に考えていた。
「そうか…。それならば良かった。」
シャーロットへの恋心に気づいたローランドはシャーロットへフッと口角を上げて言った。
ドキッ…
(どうしてそんな表情をするの……?それに…私の為に髪飾りを選んでくれたの…?今までそんな事一度もしてくれた事なんてなかったのに…?殿下がミレイ様に花や宝石の贈り物をしている事を知った時に私は悔しくて悲しくて辛くて羨ましくて……。なのに…今こんな風に贈り物を……?)
シャーロットは再び自分の胸の鼓動が高鳴った事に気づきながらそんな事を考えていた。
フラッ……
シャーロットがそんな事を考えていた時だった。
ローランドが急に目眩がしたのか体の力が抜ける様に座席の壁に寄りかかった。
「て…殿下!大丈夫ですか?」
シャーロットはそんなローランドを見て慌ててローランドへ言った。
「あ…あぁ。大丈夫だ…。心配ない…。」
ローランドはしんどそうな表情を浮かべて言った。
「とにかく…楽な体勢になってください。」
シャーロットはそう言うとローランドを座先の端に座らせて馬車の壁に持たれかけさせた。
「すまない…。」
「いえ…。気にしないで下さい。少し目を瞑っていて下さい。」
「あ…あぁ。」
ローランドが申し訳なさそうにシャーロットに言うとシャーロットは首を振りながら言った。
するとローランドは応えながらそっと目を閉じたのだった。
目を閉じたローランドはすぐにスーっと眠りについた。
シャーロットはそんなローランドの額にそっと手を当てた。
(熱っ…熱があるわ。きっと腕の傷のせいね…。とにかく額を冷やさないと…。)
シャーロットはローランドに熱がある事に気づくとそんな事を考えた。
そして、シャーロットは荷物から購入したタオルとひざ掛けを取りに馬車から出て荷台へ回った。
辺りはすっかり暗くなり夜になっていた。
タオルとひざ掛けを持ってきたシャーロットはタオルを濡らしてローランドの額にのせた。
そして二枚のひざ掛けでローランドの体が冷えない様にと覆った。
(一先ずこれで様子を見るしかなさそうね…。救助はいつ頃になるかしら…。きっと陛下に話が伝わるとお父様やアミルお兄様にも事情が伝わるはずだから救助の手配はスムーズにいくと思うけれど…。ここからカリブ王国までは距離があるから早くても夜明け前になるかしら…。)
シャーロットはローランドを見ながらそんな事を考えていた。
「っ痛…。」
シャーロットが右足と左腕に痛み感じで思わず声を漏らした。
シャーロットは右足と左腕をそっと確認した。
(足も腕も腫れが悪化してるわね…。腕の方は骨に異常はないとしても少しまずいかもしれないわね…。思ったよりも強く打ったみたいだわ。皮膚の色がさっきよりも変色してるわ…。私も下手したら熱が出てしまうかもしれない…。でも…せめて救助がくるまでは持ちこたえてほしいわね。)
シャーロットは右足と左腕を見ながら表情を少し歪めてそんな事を考えていた。
そしてシャーロットはローランドを見た。
(殿下…あなたは一体何を考えているのですか…?前世では私の事など一切気にかけてくれる事もなかった…。現世だってつい数ヶ月前までは私の事など気にもとめなかったというのに…。その事がどれだけ辛く悲しかったか…。それなに何故今になって笑顔を見せたり贈り物などするのですか…?)
シャーロットはローランドを見ながら何とも言えない表情で思っていた。
(あまりにも突然の事だらけで戸惑ったにも関わらずドキドキしてしまったし心の奥で嬉しいとも思ってしまった…。)
シャーロットはやりきれない表情で思った。
(もう一度シャーロットとして転生して生き抜くと決めてから殿下に対してこんな風に思う気持ちなんてまったくなかったのに…。今更こんな風に思っても仕方ないのに…。一年もしたらその笑顔も気遣いもミレイ様のものになるのに…。)
シャーロットはローランドの顔を見つめながら思った。
(こんな気持ちをもっていたら婚約破棄したって私はまたミレイ様に嫉妬してしまい二年もしないうちに処刑される…。私だけじゃない…。家族も皆処刑される…。だから…生き抜く為にも嬉しいとかドキドキする様な事は思っちゃだめなのよ…。)
シャーロットは胸をおさえながらやりきれない表情で自分に言い聞かせる様に思っていたのだった。
シャーロットがそんな事を一人考えている間に夜は更けていったのだった……。
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