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24/43

24.初めて

シャーロットが孤児院にいた同じ頃…


王宮ではローランドとアミルがローランドの予定を確認していた。


「殿下、本日のご報告の通りです。」


「あぁ。分かった。」


アミルが予定表を見ながら言うとローランドが頷きながら応えた。


「二週間後の近隣国へと視察ですが視察先の変更がございます。」


「変更?どこへ変更になるのだ?」


「はい。ポート王国です。」


「ポート王国か…。私がポート王国へ視察へ行くのは初めての場所だな。」


「はい。ポート王国は小さな国ではありますが商人の出入りが多い国として知られており他の国では手に入らない品物も手に入れる事が出来ると言われている国でございます。」


アミルはローランドの視察先が変更になった事を伝えた。

変更になった国はローランドにとっては初めての場所だった。

そんなローランドへアミルは軽くポート王国の事を説明した。


「ポート王国…商人の出入りが多い国か…。」


ローランドはアミルの話を聞いて何か考える様に言った。


(商人の出入りが多く他では手に入らない物を手に入れる事ができるか…。)


ローランドは話しながらそんな事を考えていた。


「ポート王国では我が国では使われていない物でも手に入ったりするのか?」


ローランドがアミルへ聞いた。


「そうですね…。ポート王国では我々が知らない物なども手に入るという程に色々な物があると聞くので我が国で使われていない物でも手に入れるのではいでしょうか。殿下は何か手に入れたい物でもおありなのですか?」


アミルが応えた。


「いや…私ではなく…。」


ローランドが呟いた。


「殿下ではないのですか?では…どなたが…。」


アミルはローランドの呟きを聞くと不思議そう顔で言った。


「いや…何でもない。気にするな。」


ローランドが言った。


「??はい。分かりました。」


アミルはローランドの言葉を聞いて不思議に思い首を傾げながら言った。


(シャーロットが以前図書館にてこの国では手に入らない物が違う国では手に入ると言っていたものがあったな…。それはポート王国でも手に入るのだろうか…。次に図書館へ行った時にシャーロットが読んでいた本を見てみるとするか…。)


ローランドは一人そんな事を考えていたのだった。




それから1週間が経った日だった。


ローランドはいつもの様に一人で図書館へ図書館の閉館時間を狙い訪れていた。


ローランドが図書館の中へ入ると…

また…シャーロットが閉館時間も忘れ集中して本を読んでいた。


(また…なのか?完全に自分の世界に入っているではないか…。)


ローランドはシャーロットの後ろ姿を見ながらフッと口元を緩めながら思っていた。


ローランドはそんなシャーロットへゆっくり近づいた。


「閉館時間はとっくに過ぎているぞ…。」


ローランドはシャーロットに近づくとシャーロットへ後ろから声をかけた。


「え…?」


シャーロットはローランドに声ををかけられるとハッとして顔を上げて呟いた。


そして…後ろを振り向くとローランドがいたのでとても驚いた表情を浮かべて口をパクパクさせていた。


「フッ…。何だその顔は…。」


ローランドがそんなシャーロットの表情を見て思わず笑みを溢して言った。


「え…?」


シャーロットはローランドがほんの一瞬でも笑みを浮かべた事に驚き言った。


(え?殿下って笑うの?正確に言えば…私の前でほんの少しでも笑った事なんてあった?ミレイ様の前ではいつも優しくミレイ様に微笑みかけていたのはよく覚えているけど…。前世であんな殿下の優しい微笑みなんて私の前では見せてくれた事なんてなかったからそんな笑顔を見せてもらえてるミレイ様に嫉妬と憎悪がこみ上げて来たんだから…。そんな殿下が今一瞬私の前で笑みを浮かべたわよね…。う〜ん…でも一瞬だったし私の見間違い?今はいつも通りの表情だし…。)


シャーロットはローランドが一瞬溢した笑みを見て頭を悩ませながら考えていた。


「何だ?!」


シャーロットがあまりにも悩んだ表情でいたのでそれを見たローランドが言った。


「あ…いえ…。何でもありません。」


シャーロットはハッとなり慌てて応えた。


(やっぱり…さっきの笑みは気の所為だったようね。今見ている殿下がいつもの殿下って感じだしね…。私の前で笑みなんて浮かべる訳ないものね。でも…まぁ…今の私は殿下に微笑んでもらえなくても前世の私の様なダメージは全然ないからいいんだけどね。)


シャーロットはローランドに応えながら思っていた。


「殿下…申し訳ありません。私ったらまた閉館時間を忘れて本に没頭していましたので…。すぐに片付けて帰りますのでご安心下さい…。では…。」


シャーロットはローランドにそう言うと机の上の本を持ち本棚へ返却しようとその場を去ろうとした。


ガシッ!


「待て!」


その時…ローランドが急にシャーロットの腕を掴んで言った。


「え…?」


シャーロットは急に腕を掴まれ驚き戸惑った表情で言った。


「あ…いや…。急に腕を掴みすまない。その本を返すのを待て…。」


ローランドは戸惑ったシャーロットを見て急いで腕から手を離して言った。


「あぁ…。分かりました。」


シャーロットは少し戸惑いを残しながらも応えた。


(びっくりしたわ…。急に腕を掴まれたから何事?!って思ったけど…私が読んでた本が貸してほしかったのね…。)


シャーロットはローランドへ応えながらそんな事を考えていた。


「私の持っている本をお読みになりたかったのですね…。えっ…と…どの本をお渡ししますか?それ以外の本は本棚へ返してきますので…。」


シャーロットがローランドへ本を見せながら言った。


「…別に読みたい訳ではないが…。」


ローランドが呟いた。


「はい?えっと…では…一体…。」


シャーロットはローランドの言葉を聞き再び戸惑いながら言った。


「いや…その…。以前ここでシャーロットが読んでいた本があっただろう?異国の食べ物を作ってみたいが足りたないものがあると…。その足りないものが別の国では手にはいると…。」


ローランドが戸惑うシャーロットへと言った。


「え?あぁ…。カレーの事ですかね?」


シャーロットはローランドに言われると考えながら応えた。


「あぁ。それだ。そのカレーとやらだ。」


ローランドは頷きながら言った。


「それがどうかされたのですか?」


シャーロットは首を傾げながらローランドへ言った。


「その…作るのに足りないと言っていた物が手に入るところがあるかもしれないのだ…。」


ローランドが少し考えてから言った。


「え?本当ですか?!それはどこで手に入るのですか?!」


シャーロットはローランドの話を聞いて体を少し前のめりにしながら話に食いつき言った。


(それが手に入ればカレーが作れるってことじゃないの?)


シャーロットは話に食いつきながらそんな事を考えていた。


「ポート王国という小さな国があるのだがその国には商人の出入りが盛んな様でその国では他の国では手に入れる事の出来ない品が揃ってると聞いたのだ。」


ローランドが食いつき気味のシャーロットに少し驚きながら説明した。


「ポート王国ですか…。商人の出入りが盛んで普段は手に入れる事の出来ないものが手に入る………。ん〜という事は私が欲しいスパイスも手に入るかもしれないという事よね…。ん〜ポート王国か…。ポート王国ってここからなかなかの距離がある国でなかったかしら…。でも…行ってみたいわね。お父様とお母様に相談してみる?あ〜でも…距離があるから私一人では危険だからダメと言われそうよね…。いっそのことお父様にお願いしてお父様に同行してもらう?あっ…でもお父様もお仕事があるわよね…。アミルお兄様かエイルお兄様に頼んでみるのもいいかしら…。」


シャーロットはローランドの話を聞くと目の前にローランドがいる事を忘れているかの様に一人でブツブツと言いながらも考えていた。


「何を一人で言っているのだ?」


ローランドがそんなシャーロットを見て言った。


「え…?あ…。」


シャーロットはローランドに言われて慌てて気まずそうに言った。


(やだわ…。私ったら声に出して考えた?いけない…完全に一人でいる状況の様に考えたから口に出してしまってたのね…。)


シャーロットはローランドへ応えながらそんな事を考えていた。


「………。ポート王国へ行ってみたいのか?」


ローランドは少し考える様に間を空けるとシャーロットへ言った。


「え…?あ…はい…。私が手に入れたいと思っているものが手に入るかもしれませんので行ってみたいとは思います…。」


シャーロットが応えた。


「そうか……。」


ローランドが何かを考えている様な表情で言った。


「邸に帰宅したら父にポート王国へ行っていいか聞いてみます…。あの…教えて頂き感謝致します。ありがとうございました。」


シャーロットはローランドへお礼を言った。


「……。一週間後にポート王国へ視察へ行くのだが…その…もしよければその時にシャーロットも共にポート王国へ行くか…?」


ローランドは少し悩んだ末に意を決した様にシャーロットへ言った。


「はい……?」


シャーロットはローランドの話を聞いて一瞬訳が分からないといった表情で言った。


「ポート王国へ視察に行く私についてくるか?と聞いているのだ!」


ローランドはポカンとした表情のシャーロットに再度言った。


「えぇーーーー!」


シャーロットはローランドの言葉を理解したのか思わず大きな声を出して言った。


そんなシャーロットは慌てて口を手で塞いだ。


「も…申し訳ありません…。大きな声を出して…その…少しばかり驚いてしまったので…。」


シャーロットはとても気まずそうにローランドへ言った。


「あの…殿下の視察に私が同行ですか…?」


シャーロットは改めてローランドへ聞いた。


「あぁ…。そうだ。私の同行に何か不満なのか?!」


ローランドは少しムスっとした表情で言った。


(何故…その様な複雑そうな表情をするのだ?!そんなに私と一緒に行くのが嫌なのか?!これがジョナスだと笑顔で即答したのか?!)


ローランドはシャーロットの表情を見てモヤモヤする気持ちがこみ上げてくるのを感じながらそんな事を考えていた。


「あ…いえ…不満だなんて…そんな事は……。ただ…殿下は私と同行する事が嫌ではないのかと思いまして…。」


シャーロットは苦笑いを浮かべながらローランドへ言った。


(いや…いやいやいや…。一体これどういう状況なわけ?どうして急に殿下はこんな事言い出したの?私と今こうして同じ空間にいる状況すらも嫌だと感じていそうなのにポート王国へ同行ですって?!理解に苦しむわ…。)


シャーロットはローランドに言いながらも混乱気味にそんな事を考えていた。


「嫌などとは一言も言ってはいない。シャーロットが手に入らないと言っていたのを思い出して提案したのだが?」


ローランドは微妙な表情を浮かべ言うシャーロットにモヤモヤしながら言った。


「あ…そう…ですか…。それは…申し訳ございませんでした…。」


シャーロットが言った。


(相変わらず殿下はああ言えばこう言うわね…。)


シャーロットはローランドに言いながらそんな事を考えていた。


「それで…同行するのか?しないのか?今ここで決めてくれ。」


ローランドがシャーロットへ言った。


「い…今ですか…。」


シャーロットはローランドの言葉に慌てて言った。


(今…決めろだなんて…。急に言われて困惑してるというのに…。でも…カレー作りに必要なスパイスが手に入るかもしれないのよね。スパイス以外にもいいものが見つかる可能性もあるわよね…。私個人でポート王国に行くとなればお父様とお母様に許可を得るのに手こずる可能性もある…。そうなるとポート王国へ行くことが出来ない可能性も出てくる訳よね…。でも…殿下にの同行となるとお父様もお母様も反対はしないはず…。と…いう事はポート王国にすんなり行ける選択肢は一つという事ね……。その選択肢は私にとってはあまり喜べる事ではないけどスパイスが手に入るのならば…。)


シャーロットはローランドにすぐに応えを求められ戸惑いながらそんな事を真剣に考えていた。


そして…


「殿下に…同行させて下さい…ませ…。」


シャーロットは考えに考えた結果ローランドに同行する選択肢を選び応えた。


「………。分かった。では…一週間後のポート王国への視察に同行するといい…。」


ローランドはシャーロットの決断に少し驚くもどこかホッとした様な表情で言った。


「かしこまりました。同行のご感謝致します…。」


シャーロットはローランドへと言った。


「あぁ…。」


ローランドが応えた。


こうして…ローランドの提案でローランドのポート王国への視察へシャーロットが同行する事となったのだった。




それからあっという間に一週間が経過してシャーロットとローランドがポート王国へ視察へ行く日が訪れた。



シャーロットは王宮からの迎えの馬車に乗っていた。


(それで…何故…殿下と同じ馬車に乗ってポート王国へ行く事になってる訳?!)


シャーロットは馬車に揺られながら内心混乱しつつそんな事を思っていた。


そう…

シャーロットが乗っている馬車はローランドが乗っている馬車だったのだ。


「馬車の乗り心地は悪くはないか?」


ローランドがシャーロットの心情とは裏腹に声をかけてきた。


「え?あ…はい。大丈夫です…。」


シャーロットはローランドが予想外に声をかけてきたので驚き慌てて応えた。


「そうか…。」


ローランドは少しホッとした表情で応えた。


(何なの?急にそんな心配されると戸惑うんだけど…。何だか…本当にここ最近の殿下は私の知っている殿下じゃないみたいで対応に困るわね…。)


シャーロットはローランドに応えながらもそんな事を思っていた。


「アミルお兄様が護衛として同行はしなかったのですね…。」


「あぁ。アミルには私が留守にしている間の王宮での事を任せているからな…。今回の護衛はアミルではなく他の者にさせているのだ。」


「そうなのですね…。」


シャーロットがローランドに尋ねるとローランドが応えた。

ローランドの言葉を聞いたシャーロットは苦笑いを浮かべて言ったのだった。


(アミルお兄様が同行するかと思って少しは安心だったけどアミルお兄様が同行しないとなるとね…。)


シャーロットはそんな事を考えていた。


(何故アミルが同行ではないと知るとその様に不安げな表情をするのだ…。アミルなしでの私への同行はそんなに嫌だというのか?!)


ローランドはシャーロットの表情を見てモヤモヤしながらそんな事を考えていた。


その後、馬車の中では沈黙が続いた。


(そういえば二人でこうして出かけるのって前世ではなかったし現世でも今までなかったわね。何気に初めて二人で出かけるのよね。前世では殿下は私の二人きりでいる事自体不満そうだったもんね…。それにしても不思議ね…。前世だとこの沈黙が耐え難くて私が必死に殿下に話しかけては殿下はほとんど無視という感じだったのに今この沈黙の状況が耐えれるのだから…。耐えれるというよりは沈黙の状況だろうが全然平気なのよね…。時が経つだけでこんなに変わるとはね…。)


シャーロットは沈黙の状況下の中で窓の外を見ながらそんな事を思っていたのだった。


(この沈黙の中でシャーロットへ何を話せばよいのかわからぬ…。)


一方でローランドはそんな事を考えていたのだった。


そうこうしているうちに時間は流れあっという間にポート王国へと到着したのだった。


(ここが…ポート王国…。聞いた通りその辺りに商人がいるわね。商人の出入りが多いからか街も賑わっているわね。)


シャーロットはポート王国の街を見渡してそんな事を思っていた。


「シャーロット…ポート王国へ着いたので早速王都の視察をする。」


「はい。かしこまりました。」


ローランドが言うとシャーロットが応えた。


そして、二人は護衛を引き連れてポート王国の王都の街に足を踏み入れて視察を開始した。


ポート王国の街には商人の出入りが多いので本当に色々な店が立ち並んでいた。


シャーロットはその光景を目を輝かせながら見渡していた。

ローランドは自分でも気づかないうちにそんなシャーロットの事を優しい表情で見ていたのだった。


シャーロットとローランドは街を見渡しながら歩いた。


しばらく歩くとシャーロットの鼻にカレーに必要なスパイスの匂いが入ってきた。


(ん?この匂いは…。)


シャーロットは匂いが鼻に入るとそんな事を思い辺りを見渡した。


そして、シャーロットが求めていたスパイスを売っている店を見つけた。


「あっ……。」


シャーロットがその店を見つけて思わず目を輝かせて言った。


「求めていたものがあったのか?」


「え?あ…はい。あそこへ…。」


「では…行ってみるとしよう。」


「え…?いいのですか?」


「見つけたのなら行って購入するとよい。」


「………。はい。ありがとうございます…。」


シャーロットが目を輝かせているとローランドがシャーロットへ声をかけた。

するとシャーロットはその店を指差しながら言った。

するとローランドはその店へと行けばいいと言った。

予想外の言葉にシャーロットは驚くもローランドへお礼を言った。


そして、シャーロットとローランドはシャーロットが指差した店へと向かった。


「あの…すいません。これはターメリックとコリアンダーですか?」


「ん?あぁ。そうだよ。」


シャーロットとローランドがその店へ着くとシャーロットが店主へと尋ねた。

すると店主は笑顔で応えた。


「やった〜!では…ターメリックとコリアンダーを一キロづつ下さい。」


シャーロットは嬉しそうに言った。


「一キロも?!」


「はい。」


「わ…分かったよ。」


シャーロットが言った量に店主が驚き言うもシャーロットは笑顔で応えた。

店主は不思議な表情を浮かべるも応えた。


(ふふふ…さすがに一キロなんて量は驚くわよね。きっとカレーなんてこの国にもないだろうから一キロ単位で購入する人なんていないんでしょうね。)


シャーロットは店主の反応を見てそんな事を考えていた。



「はい。ターメリックとコリアンダーを一キロづつだよ。」


「ありがとうございます。」


「こちらこそ大量購入ありがとうな。これをおまけに入れておくから。」


「わぁ〜ありがとうございます。」


店主がスパイスを計り袋に詰めてくれるとシャーロットへ手渡した。

店主は大量購入してくれたシャーロットへおまけのスパイスを何種類か入れてくれたのだった。

そんな店主にシャーロットは笑顔でお礼を言った。


「欲しかったものは手に入ったのか?」


「え?あ…はい。お陰様で購入する事が出来ました。ありがとうございます。」


「そうか…。それならば良かった…。」


ローランドが満足気なシャーロットへ声をかけた。

シャーロットはローランドがいるのをすっかり忘れていたといわんばかりに応えてお礼を言った。

そんなシャーロットへ優しくローランドが言ったのだった。


(スパイスを手に入れる事が出来て良かったけど…殿下の視察で来たというのに私を優先して大丈夫なのかしら…。)


シャーロットはふとそんな事を思っていた。


その後、シャーロットはローランドの視察へ付き合った。

ローランドの視察に付き合ったシャーロットはポート王国という国がどの様な国か知る事が出来て勉強になっていた。


(前世の私ならこんな視察すらも興味が湧かなかったでしょうね…。こうして自分の国から一歩外に出るとこんなにも違う光景があるのね…。)


シャーロットはローランドについて回りながらそんな事を考えていたのだった。


「あの…殿下。本日は視察でポート王国まで来られたのですよね?」


「?そうだが?」


「あの…私の事は気にせず各所の視察を行って下さいませ…。」


シャーロットが気になっていた事をローランドへ尋ねた。

するとローランドは??を頭に浮かべる様に応えた。

そんなローランドにシャーロットは自分に構わず視察の仕事をして欲しいと伝えた。


「………。こうして街を歩いている事も視察の一環なので問題ない。こうして歩いていると街の様子がよく伺えこの国の人々がどの様に暮らしているのかも伺える。」


ローランドは少し考える様な間を空けて応えた。


「え…?そうなの…ですか?」


シャーロットはローランドの話を聞き少し戸惑う様に言った。


「あぁ…。だから…私は私でこうして歩きながら様子を伺っているから…シャーロットは自分が行動したい様にするといい…。」


ローランドは無表情でシャーロットへ言った。


「え…っと…。自分が行動したい様にと言われましても…。殿下の視察を邪魔になりはしないかと気が気でありませんけど…。」


シャーロットはローランドの言葉を聞き苦笑いを浮かべて言った。


(殿下…何言ってるかしら…。視察って歩いて周りを見て様子を伺うだけなの?何だか違う様な気がするんだけど…。それに、自分のしたい様にって…。私がしたい様にしたら色んなお店を物色する事になるのよ?それを分かって言ってるのかしら…。)


シャーロットはローランドに応えながらもそんな事を考えていた。


「問題ない…。私の事は気にせず好きに買い物するなりすればよい。」


ローランドは淡々と言った。


(街を歩き見て回るのも視察の一環に違いないからな…。街の外れの視察もしたいが何故だか…シャーロットと共にいる時間を無駄にしたくないと思ってしまっている…。)


ローランドはシャーロットに言いながらそんな事を考えていた。


「ですが…。」


「問題ないと言っている。」


シャーロットは困った表情を浮かべて言うもローランドは真顔で応えた。


(問題ないって…。私は殿下に気を使うから問題大ありなんだけど…。う〜ん…もう…こうなったら殿下の言うとおり殿下の事は気にせず楽しく店を見て回ろうかしら。うん!そうしよう!せっかく来たんだから色々と見て回らないと損よね。)


シャーロットはローランドの言葉に戸惑いながら悩むも開き直る事にしたのだった。


「分かりました…。」


そして、シャーロットはローランドに応えた。


そして、シャーロットは街の市に並ぶ店を見て回った。

色々と売っているのでシャーロットは目をキラキラと輝かせながら目移りばかりしていた。


(あっ!この本…フーパー好きそうな本だわ。二冊程お土産に買って帰りましょ。)


(これは…お花好きのサナにぴったりの髪飾りのお土産だわ。マーヤとお揃いで買ってあげよう。)


(あ…あのエプロン…ミーシャさんに似合いそうだわ。)


(あのぬいぐるみはサボが好きそうね。寝るとき抱くぬいぐるみにもってこいの大きさね。)


(トムとシーマにはこのボールを一つづつ買ってあげよう。)


(あ…このスケッチブックと鉛筆…ジョナスに渡して絵を描いて欲しいわね。)


(あ…これもいいわね…。)


(やだ…これもいいじゃないの。)


シャーロットは開き直ったお陰がローランドの事など忘れたかの様に次々と目について良いと思った物を孤児院の皆や家族にお土産や必要な物を購入していった。


「おい…そんなに購入してどうするのだ?」


ローランドはシャーロットが買い物した量を見て言った。


「え…?あ…これは孤児院の皆と家族へのお土産にと思いまして…。我が国ではあまり見ないものが多いのでつい買いすぎてしまいました…。」


シャーロットはローランドに言われてハッとなり苦笑いを浮かべて言った。


(あ〜確かに気づいたら大量に買ってしまってたわね。)


シャーロットは自分が持っている荷物を見て苦笑いを浮かべながら考えていた。


「……。自分のものは買わなくてよいのか?」


ローランドはシャーロットの持っている荷物を見ながら言った。


「あ…。自分の物の事など考えていませんでした。でも…そうですね。私は物は買わなくても大丈夫です。一番手に入れたいと思っていた品は手に入ったので。」


シャーロットはローランドに言われて初めて自分の物を買うことなど忘れていた事に気づいて言った。


「……。そうか…。」


ローランドが応えた。


(それだけの物を買って自分の物を買うのを忘れていたとは…。少し前のシャーロットでは考えられない事だな。)


ローランドは応えながらそんな事を考えていた。


「私は街の外れを視察してくる。シャーロットはその荷物の量では移動するのも大変な様だから護衛を一人連れて馬車へ戻れ。馬車の荷台に荷物を積み馬車の中で待っていろ。馬車の中ならば座って待つことが出来るだろう。」


ローランドがシャーロットが荷物を重そうに持っているのに気づき言った。


「え?ですが…。」


シャーロットはローランドの言葉に戸惑いながら言った。


「その様に荷物を持ったまま歩かれても視察時間がおしてしまい帰宅が遅くなってしまうからな。ここから先の視察は私が護衛を一人連れて行って来る。」


ローランドはシャーロットの荷物をチラリと見ながら言った。


「あ…それは…そうですね…。」


シャーロットはローランドの言葉を聞き自分の荷物の量を見て苦笑いを浮かべて言った。


「分かりました…。では…馬車まで戻り荷物を置き待機しておきます…。」


シャーロットは気まずそうに言った。


「あぁ。」


ローランドが軽く頷き言った。


「シャーロットの荷物を持ち馬車まで連れていき荷物を荷台へ積んでやれ。私も視察を終えたらすぐに馬車へ戻る。」


ローランドは護衛の一人へ言った。


「はい!承知しました。」


護衛の一人が応えた。


そして…

シャーロットとローランドはそれぞれ一人の護衛をつけて別行動をしたのだった。


(殿下…もしかして私が荷物を沢山持ってるから気を使って言ってくれたのかしら…。相変わらず無表情だからどんな感情で言ったかは分からないけど…。)


シャーロットは馬車へ向うのに歩きながらそんな事を考えていた。


(少し前ならきっとあの殿下の言い方を嫌味の様に受け取ってたと思うけど…。今日の視察にしても少し前の殿下なら私を誘う事もしなかっただろうし…ましてや視察先で私が買い物をするすぐ後ろに殿下がいるなんて考えられなかったもんね…。)


シャーロットは更に悩む様に歩きながら考えた。


(ん〜殿下のお考えがまったくわからないわ…。私に関わる事なんて物凄く嫌だと思っているはずなのに…。何だか殿下が殿下じゃないみたいで戸惑うのよね。)


シャーロットは困った表情を浮かべて考えていた。


シャーロットが考え事をしながら歩いているとふとある店が目に入った。

するとシャーロットはその店へ足を向けた。


「へい!いらっしゃい。」


店の店主がシャーロットへ言った。


「あの…この小さなぶら下がっている人形はなんですか?」


シャーロットはある商品を指差しながら店主へ尋ねた。


「あぁこれかい?これは幸せが訪れる人形さ。」


「幸せが訪れる人形?」


「あぁ。そうだよ。この人形を渡した相手の幸せを願って渡すんだよ。」


「へぇ〜そうなのですか…。」


店主がシャーロットは応えるとシャーロットは店主の話を聞き何かを考えていた。


(幸せが訪れる人形か…。)


シャーロットは更に何かを思う様に考えていた。


「これ、一つ包んでもらえますか?」


「はいよ!」


シャーロットがぶら下がっている人形を手に取り店主へ手渡しながら言った。


そして、店主が人形を包みシャーロットへ渡したのだった。


そして、シャーロットは再び馬車に向かって歩き出した。



シャーロットが馬車へ着き荷物を荷台積んでいたその頃……


ローランドは最終視察を終えて馬車へと向かっていた。


(シャーロットは無事に馬車に到着しているだろうか…。馬車の中で少しは休めているだろうか。)


ローランドは歩きながらそんな事を考えていた。


(視察にアミル以外の者を連れていくなど少し前の私なら考えられなかった事だな…。ポート王国の話をアミルから聞いたときに真っ先ににシャーロットが手に入れたいと思っているものがあるかもしれないと思ってしまった。ついこの間まではシャーロットの顔を見るのも嫌悪していたはずなのに…本当にいつの間にか気づけばシャーロットの事を考えているな…。)


ローランドは更にそんな事を考えながら馬車の所へ歩き進めていた。


その時…

ローランドの目にある物が目に入った。

ローランドはそれが売っている店へ吸い込まれる様に足を運んだ。


「へい!いらっしゃいませ!」


店の店主が笑顔でローランドへ言った。


「……。この髪飾りを…一つ欲しいのだが…。」


ローランドは目についた髪飾りを指差し店主へ言った。


「はいよ!」


店主はそう言うとローランドが指差した髪飾りを取り包んでくれた。

そして、それをローランドへと手渡した。


「まいどあり〜!」 


店主が笑顔で言ったのだった。


(髪飾りが目に入った瞬間…思わずシャーロットに似合うのではないかと思い勢いで購入してしまった……。今までシャーロットにその様な事など思ったこともなかったが…。買ってしまったものの…シャーロットへ渡すのか?シャーロットは受け取ってくれるだろうか…。そして…喜んでくれるだろうか…。孤児院の者達へ微笑む様に私にも微笑んでくれるだろうか…。)


ローランドは購入した髪飾りの包を見つめながらそんな事を考えていた。


そして、それからしばらく歩いてローランドと護衛は馬車が停めてある場所まで到着した。


馬車の所まで到着するとシャーロットは馬車の外へと居て護衛と楽しそうに話をしていた。


その二人の姿を見たローランドは胸の辺りがモヤモヤするのを感じた。

そして、自然と表情が強張ったのだった。


護衛がローランドに気づくと慌てて姿勢を正して礼をした。


シャーロットもローランドに気づき慌てて礼をした。


「殿下…お疲れ様でした…。」


シャーロットは礼をしたままローランドへ言った。


「……あぁ。」


ローランドは少しムスッとした表情で応えた。


そしてローランドはそのまま馬車の中へと乗り込んだ。

ローランドに続いてシャーロットも馬車の中へと乗り込んだ。


馬車の中は沈黙状態だった。


(殿下…何だか機嫌が悪そうだけれど…視察をしていて何かあったのかしら…。)


シャーロットはチラリとローランドを見て思っていた。


その後も沈黙が続いた。


(はぁ〜帰るまでこの空気なのかしら…。どうして殿下の機嫌が悪いかも分からないから変に聞くのもあれだしね…。)


シャーロットは内心ため息をつきながらそんな事を考えていた。


「…先程は護衛と……。」


シャーロットがそんな事を考えていたらローランドがボソリとシャーロットへ声をかけてきた。


「え?なんですか?」


シャーロットはローランドの声を上手く聞き取れず慌てて言った。



その時だった……


「何者だ?!」


外から護衛の怒鳴る声が聞こえた。


「うわっ……!!」


それと同時にもう一人の護衛の声が聞こえた。



護衛達の声を聞き馬車の中のシャーロットとローランドは驚いた。


ローランドはすぐに馬車の扉を開けて前にいる護衛の様子を見た。


ローランドが扉を開けて前を見た瞬間ローランドめがけて矢が飛んできた。


ローランドは瞬時に矢を避けた。


「シャーロット!奥へ座り頭を伏せておけ!!」


ローランドがシャーロットへ言った。


「な…何事ですか?!今…矢が飛んできていた様な…。」


シャーロットはローランドに言われると慌てて言った。


「襲撃だ!盗賊か何かだろう…。」


ローランドが表情を歪め耳を外へ傾けた様子を伺いながら言った。


「え?!盗賊ですか?!」


シャーロットはローランドの言葉に衝撃を受けて言った。


ヒヒィ〜〜ンン…ヒヒィ〜!


その時だった。


馬の鳴き声が響いた。


それと同時に馬が突然猛スピードで走り出したのか馬車が大きく揺れてシャーロットとローランドはその勢いで馬車の中でバランスを崩した。


シャーロットとローランドは外の状況がまったくわからない状況だった。


そして、スピードを出したまま曲がり角らしき場所を通過する瞬間…

馬と馬車が繋がれている紐が切れてしまったのか荷台をつけたまま馬車ごと崖から落ちたのだった。


ローランドは咄嗟に激しく揺れて落ちる馬車の中でシャーロットへ覆いかぶさりシャーロットの体を守ろうとした。


そして、馬車は崖下で落ち止まったのだった………


ご覧頂きありがとうございます★


※誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

助かっています。


他にも連載中の小説がありますのでよろしければご一緒にご覧下さい★


↓↓↓↓


この度、男装令嬢・キャサリンは探偵助手をする事になりました!!

〜探偵様は王子様?!事件も恋も解決お任せ下さい〜


悪役令嬢でもなくヒロインでもないまさかのモブキャラに転生したので大好きなハンドメイドをしながら暮らす事にしました!!


男色皇太子…異世界転移少女に愛を乞う!


ブックマーク&評価の方ありがとうございます★

とても励みになってます★

最後までお付き頂けると幸いです★

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