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22.意識②

シャーロットはジョナスの名前を叫ぶと急ぎジョナスの元へ走り駆け寄った。


「ジョナス大丈夫?!」


シャーロットはとても心配そうな表情を浮かべてジョナスへと声をかけた。


「あぁ。大丈夫だよ…。」


ローランドの木刀の先が頬をかすったと同時にその場へ尻もちをついていたジョナスは立ち上がりながら心配そうにしているシャーロットへと言った。


「でも…頬が切れてるわ…。」


「これくらい大丈夫さ。ただのかすり傷だがら。」


シャーロットは心配そうにジョナスの頬を見ながら言った。

そんなシャーロットへジョナスがシャーロットを心配させない様に笑みを浮かべながら言った。


「ただのって…。ちょっと待ってて!救急箱持ってきて手当するから。」


シャーロットは真剣な表情で言った。


「手当なんていらねぇよ…。」


「ダメよ!いいから待ってて!」


ジョナスは苦笑いを浮かべながら言ったがシャーロットは真剣な表情で言い返した。


シャーロットは救急箱を孤児院の中へ取りに行く前にローランドの方を見てキっと軽く睨みつけたのだった。


(何で急にあんな打ち込みをするの?!まだ経験が浅いジョナスが受け止められる訳ないなんて分かるでしょう?!本当に信じられないわ。)


シャーロットはローランドを睨みつけながらそんな事を考えていた。


無言で睨みつけた上でシャーロットは孤児院へと救急箱を取りに行った。


そんなシャーロットの後ろ姿をジョナスは自分でも気づかない様な優しい表情を浮かべて見つめていたのだった。


そんなジョナスを見てローランドはモヤモヤとしていた。


(何なのだその表情は…。それに先程のシャーロットは何なのだ?!何故私を睨みつけた?!ジョナスへ怪我をさせてしまった事は申し訳ないがあそこまで私を睨みつける必要はあったのか?!ジョナスの事は心配して私の事は睨むのだな…。)


ローランドはシャーロットの行動に対して苛ついた様な苦しそうな表情を浮かべながらそんな事を考えていたのだった。


そこへシャーロットが救急箱を持って急いで戻ってきた。

そしてシャーロットはジョナスを手当てする為に木陰の場所へ移動したのだった。


「殿下…。どうされたのですか?先程のジョナスに対する行動は殿下らしくないですよ?」


アミルが心配そうな表情を浮かべてローランドへと言った。


「あぁ…。そうだな…。私らしくない行動だな。王太子らしからぬ行動をとってしまったな。ジョナスには悪い事をしてしまったな。後で謝らなければな。」


ローランドはアミルに言われるとジョナスの方を見ながら応えた。


「ジョナスが何か殿下の気に障る事でもしてしまいましたか?」


「いや…ジョナスは何も悪くない。悪いのは私だ…。」


アミルは少し困った表情でローランドへと尋ねるとローランドは首を振りながら応えた。


(ジョナスは何も悪くない…。真剣に打ち込みをしていただけだ。ただ…私がシャーロットのジョナスに対する態度を見て…ジョナスの表情見て…それを意識してしまった私のせいだ。このところシャーロットの事になると自分でも驚く程感情の抑えがきかなくなっているな…。)


ローランドはアミルへ応えながらそんな事を考えていた。


ローランドとアミルがそんな会話をしている事など知らないシャーロットはジョナスの頬の傷の手当をしていた。


「痛っ…。」


シャーロットに傷の消毒をしてもらっていたジョナスが顔を少し歪ませて言った。


「あ…しみた?大丈夫?」


シャーロットはそんなジョナスへ心配そうに言った。


「大丈夫だよ。少ししみただけだから。」


「そう?それなら消毒続けても大丈夫そう?」


「あぁ。頼む…。」


「わかったわ。」


そんなシャーロットにジョナスは大丈夫だと伝えるとシャーロットは心配そうにしながらも手当を続けていいかと尋ねた。

ジョナスは頷きながら応えた。


「傷あと残ってしまうかしら…。」


「女じゃあるまいし傷あとが残っても構わねぇよ。この傷あとも練習の勲章になるしな。」


「傷あとが残るのに男も女も関係ないでしょ?」


「ロッティ…。いいか?騎士の人達は皆生傷なんて当たり前につくんだぞ?でも…その傷あと一つ一つが国や国民を守る為についたものばかりぞ?そんな傷あとなら残ってもそれを誇りに思うさ。身体についた勲章なんだよ。だからこの傷も傷あとが残ったとしてもそれだけ真剣に稽古をしたという証でもあるし打ち込みを防御出来なかった自分の未熟さの証でもあるから傷あとが残ったっていいんだよ。」


シャーロットは手当をしながらジョナスの傷があとにならないかを心配しながら言うとジョナスはケッと笑いながら言った。

そんなジョナスにシャーロットは困った表情で言うとジョナスは自分の考えを伝えた。


(ジョナス…。)


シャーロットはジョナスの考えを聞いて思わずグっときてしまったシャーロットは心の中で言った。


「な…何よ!何だかカッコつけた事言っちゃって!」


シャーロットはグっときた事を誤魔化す様にジョナスへ言った。


「なんだよ!カッコつけたって!」


ジョナスは少しムッとした表情で言った。


「だって…熱く語っちゃって。でも…そんなカッコつけたジョナスも悪くないわね!へへへ…。」


シャーロットはニヤリとした表情で言うもすぐに満面の笑みで言った。


そんなシャーロットにジョナスはドキッとした。


「な…な…何が悪くないだよ!上から目線で言いやがって!」


ジョナスはそんなドキッとした自分を誤魔化すかの様にシャーロットへ言った。


「上から目線じゃないわよ!友達として言ったのよ!」


シャーロットは胸を張って笑顔で言った。


「何だよそりぁ…。」


そんなシャーロットにジョナスもフッと笑みを浮かべ言った。


(本当に…ここの他の子供達もそうだけど今まで辛い境遇の中で生きていたのにも関わらず心優しく立派な子供達ばかりだわ。ジョナスも普段はぶっきら棒だけど根は本当に優しくて自分の信念をしっかり持ってるのよね。ここの子供達がいつか巣立っていくと思うと今から少し寂しくもなるわね。それまでの間はしっかりと向き合って成長を見届けないとね…。)


シャーロットはジョナスと会話をしながらそんな事をしみじみと考えていたのだった。


「さ、消毒は終わったから後は薬を塗ってガーゼで保護しておけばばい菌が入らないから大丈夫よ。」


「あぁ。」


シャーロットは消毒を終えるとジョナスへと伝えた。

ジョナスは応えた。


シャーロットは消毒を箱へ収めると塗り薬を取り出し少量を指ですくった。

それをジョナスの頬の傷口に優しく塗った。


そして…

シャーロットは薬を塗った傷口へ自分の顔を近づけて傷口へ塗った薬をふーふーと優しく風をかける様に吹いた。


突然のシャーロットの行動にジョナスは一瞬固まった。


(は…?え…?何だ?!な…な…何してんだよ!)


ジョナスは心の中で自分が今おかれている状況に混乱しながら思っていた。


「お…おい…!ロッティ…何を…。」


ジョナスが混乱しながらもシャーロットへ言いかけたその時…


「シャーロット!何をしている!」


シャーロットとジョナスの所へ向かって歩いていたローランドがシャーロットの行動を見て突然強めの口調でシャーロットへ言った。


「え…?」


シャーロットはローランドに言われて一瞬ビクッとなりながら驚いた表情を浮かべてローランドの方を振り返り言った。


「何をしているのだ!」


ローランドはそんなシャーロットへ険しい表情を浮かべて言った。


「はい…?何をと言われましても…ジョナスの傷の手当をしているのですけど…。」


シャーロットはローランドに言われて困った表情で応えた。


(何?何なの?!どうして殿下が不機嫌そうなの?何してるってジョナスの傷の手当をしてるって見たら分かるでしょう…。それを急にあんな風に言うなんて。)


シャーロットはローランドの行動の意味が分からず少し呆れ気味にそんな事を思っていた。


「傷の手当をするのにジョナスの顔に近づく必要があるのか?!」


ローランドは眉を動かして不機嫌そうにシャーロットへ言った。


「傷口に塗った薬を乾かそうとしていただけですけど…。風を吹きかけた方が早く乾き早くガーゼをあてることができますので。必要があるからしたまでです。それをどうしてその様な言われ方をされなければならないのですか?」


シャーロットはそんなローランドに少しムッとした表情で言った。


(本当に何なの?!その言い方は。)


シャーロットは説明しながらローランドに対してそんな事を思っていた。


「そう…だったのか…。そうとは知らず大きな声を出してしまいすまなかった。私はてっきり…。」


ローランドは少し怒っているシャーロットの表情を見て少し胸がチクリとするものを覚えつつも自分の言い方が悪かった事を謝った。


(私はてっきり…シャーロットがジョナスへ頬へキスをするのではないかと思い頭に血が上る様な感覚になり思わず勢いに任せて言ってしまった。冷静に見ればこの様な時にシャーロットがその様な事などするはずもないのにな。いつもの私なら簡単に判断出来たはずなのに…。)


ローランドはシャーロットへ謝罪しながらも胸にチクリとした痛みを感じながらそんな事を考えていた。


「え…っと…分かっていただけたなら良かったです…。」


シャーロットはローランドが謝罪してきた事が予想外すぎて拍子抜けした様な表情を浮かべて言った。


(一体何…?あんなに不機嫌そうだったのに今度は謝るの?何だか殿下なのに殿下ではないみたいで戸惑うわね…。)


シャーロットは今まで見たことのない様なローランドに困惑しながらそんな事を考えていた。


「ジョナス…怪我をさせてしまいすまなかった。」


ローランドがジョナスの方を向いてジョナスへと謝罪した。


「いえ…。大丈夫です。ただのかすり傷ですので。」


ジョナスはローランドへと言った。


「そうか…。」


ローランドが言った。


「はい。」


ジョナスは頷きながら言った。


「ジョナス、今日はもう稽古はやめておくか?」


その場に微妙な空気が漂っているのを察したアミルがジョナスへと尋ねた。


「いえ…。傷は問題ないので稽古の続きをお願いします。」


ジョナスがアミルへ大丈夫だと応えた。


「そうか?では…ここからは私が稽古をつけよう。」


「はい!よろしくお願いします!」


アミルが言うとジョナスは立ち上がり応えた。


「あ…待ってジョナス。最後にガーゼあてるから。」


シャーロットは立ち上がったジョナスに慌てて言った。


そしてシャーロットは立ち上がりジョナスの頬へとガーゼを当ててテープでしっかりと固定した。


ジョナスはシャーロットが手当をしてくれている間、先程のシャーロットの行動を思い出して思わず顔を赤らめて緊張させた。

それに加えて胸の鼓動が早くなっていた。


(ロッティが急にあんな事するからつい意識してしまうじゃないかよ…。ロッティは無意識に手当としてやってんだろうけど…本当にいつも突拍子もない事してくる奴だぜ…。)


ジョナスはシャーロットをチラリと見ながらそんな事を考えていた。

だが、ジョナスはシャーロットが自分の為に一生懸命に行動してくれている事を心から嬉しいと思い表情を緩ませたのだった。


そんな二人をローランドが黙って複雑そうな表情で見ているなどシャーロットとジョナスは気づかなかった。


「よし!これで大丈夫よ!しっかりガーゼを固定したから多少激しく動いても取れたりはしないと思うから。」


「あ…あぁ。ありがとう…。」


シャーロットは笑顔でジョナスへと言うとジョナスは照れを隠す様に言った。


「でも、あまり無理はしちゃだめよ!」


「あぁ。分かってるさ。」


シャーロットは念をおすようにジョナスへ言うとジョナスが応えた。


「では…ジョナス稽古を始めるか。」


「はい!」


アミルがジョナスへ声をかけるとジョナスは頷きながら応えた。


「でん…ローさんは是非、我々の近くで稽古を見物して下さい。」


アミルがローランドへと言った。


「………。いや…私はここで稽古を見物する事にする。」


ローランドはアミルに言われて少し考えて応えた。


「え?こちらでですか?」


「あぁ。何か問題でも?」


「あ…いえ。問題などありませんが。」


アミルはローランドの言葉に驚き言うとローランドは淡々と応えた。

そんなローランドに戸惑ったアミルが言った。


『あの…殿下、こちらではロッティが座って稽古を見物していますので殿下は我々の方へいらした方がよいかと思います。ロッティと二人で居るのは殿下にとっては苦痛ではないかと思いますので…。』


アミルはローランドへ近づきローランドにしか聞こえない程の小声で気まずそうに言った。


『………。いや…問題ない。』


ローランドはアミルに言われるもそう応えた。


『え?!ですが…殿下はロッティをあれ程嫌悪しておられるのに問題ないというより問題大ありでは?』


『いや…問題ない。』


『はい?しかし…。』


『問題ないと言っている。』


『わ…分かりました。では…この場所から見物下さい。』 


『あぁ。』


ローランドの言葉に驚きと困惑を見せたアミルが言うとローランドは大丈夫の一点張りだった。

そんなローランドを不思議に思いながらもローランドがそこまで言うのでアミルは首を傾げながらも応えたのだった。


「では…ジョナス我々は稽古を始めよう。」


「はい。」


アミルがジョナスへ言うとジョナスが応えた。

そして、二人はその場から離れた広い場所へと移動したのだった。


その場にシャーロットとローランドが残った。


(えっと……これはどういう状況なわけ?何故…殿下はアミルお兄様やジョナスと一緒に行かないわけ?二人きりなんて気まずくて空気の耐えられないんだけど?というより殿下となるべく関わりたくないのにどうしてこんな事になるわけ?神様は私にもう一度に死ねと言うの?せっかく生き抜くと決意して行動しているのに?はぁ…。)


シャーロットはローランドと二人きりの状況を目の前にして頭の中が若干混乱気味になりそんな事を思っていたのだった。


「殿下…。こちらでアミルお兄様とジョナスの稽古を拝見なさるのでしたら椅子をお持ちしますので少々お待ち下さい。」


シャーロットは混乱気味なのを隠す様にローランドへと言った。


「いや…。椅子など持ってこなくとも良い。このまま座るから大丈夫だ。」


ローランドはシャーロットに言われると椅子は必要ないと応えた。


「ですが…その様な事をされますとお召し物が汚れてしまいますので…。」


シャーロットは予想外のローランドの言葉に困惑しつつ言った。


「服が汚れる事は問題ない。それに…椅子などに座るとジョナスに私が王太子だと気づかれてしまう可能性もあるしな。」


ローランドが応えた。


「ですが…。」


それでもシャーロットは困惑したまま言った。


「気にしなくても大丈夫だ。」


ローランドはそう言うと直接その場へと腰をおろしたのだった。


そんなローランドを見てシャーロットは困惑したままだった。


「……では…殿下…。私は孤児院の中に戻りますので何かあればアミルお兄様かジョナスに言って頂ければ私が対応させて頂きますので…。」


シャーロットはローランドと二人で過ごすのは御免だと思いローランドへと言った。


「何故だ?シャーロットもここで二人の稽古を見物すればいいのではないか?」


ローランドがシャーロットへと言った。


「え…?ですが…。」


シャーロットはローランドの言葉に驚いた表情で言った。


(はい?殿下…あなたは何を言っているのですか?)


シャーロットは内心そんな事を考えていた。


「なんだ?」


シャーロットのどこか気まずそうな表情を見たローランドが言った。


(この際だから言いたい事は言う?どうせはなから殿下は私の事なんて眼中にないみたいな感じだったしこれからは前世みたいに殿下の機嫌取りなんてしなくていい訳だしね。)


シャーロットはローランドに尋ねられそんな事を考えていた。


そして…


「………。あの…失礼ながら…。殿下は私と時間を過ごす事がお嫌いですよね?ですので、無理をして過ごし頂かなくても問題ありません。アミルお兄様がいるのでその様に気を使って下さっているのでしたら大丈夫です。お兄様には何か言われても私の方から伝えておきますので。」


シャーロットは意を決してはっきりとローランドへ言った。

前世のシャーロットでは考えられない発言だった。


「……嫌いだと言った覚えはないが?」


そんなシャーロットへローランドが言った。


「言われた事はないかもしれませんが殿下の態度がそう物語っておいででした。私を見るのも嫌という態度でしたから…。ですが、殿下がそう思われても仕方ない行動をとっていた私に責任がございます。ですので、今後はその様は態度はとりませんし殿下が不愉快になられる行動や言動はいたしませんのでご安心下さい。婚約の方も陛下の許可を得られ解消となりましたのでグランバード公爵家との関わり合いはあってもシャーロット個人としての関わり合いは今後はありませんのでご安心下さい。」


シャーロットは笑顔など見せる事もなくただ淡々とローランドへと伝えた。


(よし!言ってやったわ!殿下もこれで安心でしょう…。本当に元はと言えば私が殿下に一目惚れして今思えば気持ち悪い程に殿下にしつこく言い寄ったり我儘で婚約まで持ち運んだりしたんだしね。私のせいで殿下には今まで嫌な思いをさせていた事は本当に悪いと思ってるしね…。)


シャーロットはローランドに言うとそんな事を考えたいた。


「………一先ずいいからシャーロットも座れ…。」


ローランドはシャーロットの言葉を聞き何かを考える様な表情を浮かべるとシャーロットへと言った。


「はい?ですから…私は…。」


シャーロットはローランドに言われると困惑した表情で言った。


「王太子命令だ…。」


そんなシャーロットにローランドは言った。


「っ……!!」


シャーロットはそう言れると困った表情を浮かべるも仕方なくその場へと腰をおろした。


「……何故急に婚約解消など申し出たのだ?」


ローランドがシャーロットへ尋ねた。


「それは……以前にも申し上げましたがその方が国の為、殿下の為、私の為…グランバード公爵家の為だと気づいたからです。」


シャーロットが応えた。


「だからあの様に急に話を持ち出したのか?」


ローランドが言った。


「はい。その通りです。」


シャーロットは頷きながら応えた。


「………私は正直…シャーロットが婚約解消を持ち出したのもシャーロットが私の目を引きたいからだと思っていた。私が婚約解消を持ち出されそれを私に止めて欲しいという愚かな考えでもあるのだろうと…。」


ローランドは何かを考える様にシャーロットへと言った。


「……殿下がそうお思いになるのも仕方ありません。今までの私の行動と言動を思うとその様なお考えにもなりますから。」


シャーロットはローランドの言葉が納得いくという表情を浮かべて言った。


「しかし…あの婚約解消を申し出た日から時が経つにつれてその様な愚かな考えなどではなく本当に婚約解消を懇願していたのだという事に気がついたのだ…。」


ローランドがシャーロットへ言った。


「そうですか…。私の身勝手な我儘で婚約が決まり解消するのも身勝手に申し出ました。しかし…あの時に解消を申し出て良かったと思っています…。その事で陛下や王妃様…殿下にもご迷惑をかけてしまった事を…改めて謝罪致します。本当に申し訳ありませんでした。」


シャーロットは清々しい表情で婚約解消をした事に後悔はない事を伝えると改めてローランドへ身勝手な行動をした事を謝罪したのだった。


「あぁ。もうその話は解決した事だ…。……婚約解消をした事を本当に後悔していないのか?」


ローランドがシャーロットの謝罪を受け入れるとシャーロットへ尋ねた。


「謝罪を受け入れて頂きありがとうございます。」


シャーロットがローランドへ言った。


「婚約解消を申し出た事への後悔は一切ありません…。むしろこれで良かったのだと心から思っています。これで…陛下も王妃様ももっと王太子妃に相応しい方を見つける事が出来ますし殿下も愛する方と生涯を共に過ごす事が出来ますし、グランバード公爵家も今後も変わらずいられますし私も孤児院を立て直す事が出来ますから。」


シャーロットは後悔など一つも感じさせない程一点の曇りもない目でローランドへと伝えた。


そんな一切の後悔も感じないシャーロットを見てローランドは胸の奥がチクチクと痛むのを感じ複雑に思っていた。


(シャーロットが私との婚約解消をまったく後悔していないという事がどうしてこんなに胸を苦しくするのだろう…。)


ローランドは胸をおさえながらそんな事を考えていた。


「そうか…。よく分かった。しかし…私は婚約や結婚に愛など求めていないし必要だとも思っていない。」


ローランドは胸の痛みを誤魔化す様に言った。


(そうね…。殿下はそういう方だったわ…。ミレイ様が現れるまではね…。)


シャーロットはローランドの言葉を聞きそんな事を思っていた。


「……今はそう思っているかもしれませんが…この先きっと…殿下にも愛する方が現れるますわ。きっと…。だから私は殿下とその方が幸せになられる事を心から願っています…。」


シャーロットはローランドへと言った。


(殿下の幸せを願っているのは本心よ…。私のせいで一度に不幸になっているのだから今度こそは邪魔者の私がいない中でミレイ様と出会い幸せな時間を過ごして欲しいものね…。どうか…殿下が幸せになります様に…。)


シャーロットはローランドへ言った後に前世での事を思い出しつつそんな事を考え願っていたのだった。


「………そう願われても困るとこだがな…。」


ローランドは複雑そうな表情で応えた。


「確かに…そうかもしれませんね…。」


シャーロットが応えた。


「それにしても…何だか不思議ですね…。」


「何がだ?」


シャーロットが不思議そうな表情を浮かべて言った。

そんなシャーロットへローランドが尋ねた。


「殿下と初めてお会いした日から婚約解消をするまでの間でこの様に二人でまともに話をした事などなかったというのに…今こうして話をしている事が不思議だなと思いまして…。」


シャーロットは不思議そうな表情のまま言った。


「言われてみればそうだな…。」


ローランドが応えた。


「私は…殿下と初めてお会いした日から常に殿下と一緒に居たい…視界に私を入れて欲しい…私の事だけを見て欲しい…とばかり思っていて殿下の内面を見たり知りもしなかったのだという事に最近気づきました。私はあれだけ殿下に会いに行っていたのに殿下がお一人で図書館に行かれている事など知りませんでした。その時に思ったのです。私は殿下殿下と言う割には殿下の事を何も知らなかったのだと。今後はきちんと相手が誰であってもきちんと相手の事を知ろうと思う事が大切だと気づきました。」


シャーロットは前世の事も含め今までの愚かな自分の行動を悔いる様に言った。


(私とて同じだ…。シャーロットを嫌悪しているというだけでシャーロットの内面など見ようともしていなかった…。だが…今のシャーロットを見ているともっとシャーロットの事が知りたいしシャーロットとの時間を共に過ごしてみたいと思っている自分がいるのだからな…。)


ローランドはシャーロットの話を聞きそんな事を考えていた。


「今後は、婚約者ではなく王太子殿下とグランバード公爵家のシャーロットとして…もしくは孤児院の責任者としてのシャーロットとして殿下とはお会いする機会があるかもしれませんがこうして改めてお話する機会などはほとんどないと思いますのでその前にこうしてお話出来て良かったです。」


シャーロットはローランドへと伝えた。


(なるべく殿下との関わりは避けたいと思ってるけどこうして話を出来たのは良かったわ。殿下がこの様に普通に話が出来る方だという事も知ることが出来たしね。)


シャーロットはローランドに伝えるとそんな事を考えていた。


『これからも…こうして話せばいいではないか…。』


ローランドはシャーロットに言われて小声で呟いた。


「はい?何と仰いました?」


シャーロットはローランドが何を言ったのか聞こえなくて聞き返した。


「いや…何でもない。」


ローランドが応えた。


「そう…ですか…?分かりました。」


シャーロットはそんなローランドへ不思議そうな表情を浮かべながら言った。



そんなシャーロットとローランドの様子を気にしていたのがジョナスだった。


ジョナスとアミルは稽古と稽古の間の休憩をとっていた。


座り休んでいるジョナスはシャーロットとローランドの姿を見ていた。


(あの二人…。何話してんだろうな…。ロッティはロー様の事をあまり良く思っていない様な感じに見えたけど今あぁして話をしているな…。)


ジョナスはシャーロットとローランドの方を見つめながらそんな事を考えていた。


(って…俺何考えてんだ?!別にあの二人が何を話してようと俺には関係ないじゃないか!……ロッティのせいで変にロッティの事を気にしてしまうじゃないかよ。あぁ~どうしちまったんだよ俺は!)


ジョナスはハッとなり自分が気づけばシャーロットの事を気にして考えている事に気づき自分で自分に突っ込みを入れていたのだった。


(あぁー…だめだ!休憩してるとロッティの事を気にしてしまう…)


ジョナスは頭をクシャクシャっとしながら考えていた。


一方アミルもシャーロットとローランドを見て考え事をしていた。


(あの二人…何か話しているみたいだが…。まさか殿下!ロッティに余計な事など話していないよな?!自分がロッティを嫌悪している事とか…。)


アミルはハッとなり最悪な状況を想像しながら考えていた。


(いや…それはなさそうだな。ロッティの表情を見れば分かる…。いや…むしろロッティが殿下に失礼な事でも言っているのではないよな?いや…ん〜そもそも殿下とロッティはあの様にまともに話をした事など今まであっただろうか…。………ないな…。殿下はロッティの行動や言動に嫌悪しておられたからロッティとまともに話をした事などなかった…。何故急に話をしているのだろうか…。それに…今日の殿下は少しいつもと違われたな。殿下は昔からあまり感情を露わにされる事などないというのに特に今日は驚く程感情を露わにされている気がするのは気のせいだろうか…。)


アミルは表情をコロコロと変えながらシャーロットとローランドを見て考え込んでいた。


「アミル様!」


その時、ジョナスが勢いよくアミルの名を呼んだ。


「な…何?どうした?!」


アミルはジョナスの声に驚き言った。


「休憩は終わりにして稽古の続きをお願いします!」


ジョナスがアミルへと言った。


「あ…あぁ。分かった。では…稽古の続きをしよう。」


「はい!」


アミルは慌てて言うとジョナスは元気に応えたのだった。


そしてその後…昼過ぎになるまで稽古をした後ローランドとアミルは帰って行ったのだった。


ローランドとアミルが帰った後のジョナスはシャーロットを変に意識してしまうせいかそんな自分に困惑していたので喝を入れるかの様に筋トレを始めたのだった。


そんなジョナスをシャーロットは『急に筋トレなんてしてどうしたのかしら?』と言わんばかりの表情を浮かべながら見ていたのだった………



王宮へと戻ったローランドもまたシャーロットの事を考えていたのだった………。

ご覧頂きありがとうございます★


他にも連載中の小説がありますのでよろしければご一緒にご覧下さい★


↓↓↓↓


この度、男装令嬢・キャサリンは探偵助手をする事になりました!!

〜探偵様は王子様?!事件も恋も解決お任せ下さい〜


悪役令嬢でもなくヒロインでもないまさかのモブキャラに転生したので大好きなハンドメイドをしながら暮らす事にしました!!


ブックマーク&評価の方ありがとうございます★

とても励みになってます★

最後までお付き頂けると幸いです★


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