18.困惑
翌日、シャーロットは昼には孤児院を引き上げて王室属領にある王室から許可を与えられた貴族のみが入ることを許されている図書館へと訪れていた。
シャーロットは一度も出向いた事がなかっ為に司書官をしている次兄のエイルに話を聞いて訪れた。エイル曰く…絵本、文庫から参考書などさまざまな種類の本が置いてある図書館だった。
シャーロットは図書館に着くなり調べ物に使う本を何冊か選び手に取り仕切りのある席へと運んだ。
シャーロットは椅子に腰掛けると持参したメモする為のペンと数枚の紙を取り出した。
そして、シャーロットは早速本を手に取り読み始めた。
(孤児院での食事をもう少し改善したいのよね…。前世の日本では食材は本当に優れていたものが多かったから食事の栄養管理はとてもやりやすかったのよね…。)
シャーロットは本を読みながらそんな事を考えていた。
(孤児院の子供達はオマーン元公爵がろくに食事を与えていなかったせいで皆…年齢の割に痩せて小柄だからもう少し栄養管理をした食事をさせてあげたいのよね…。私が孤児院へ通い始めた頃よりは皆肉がついてはきたけどやっぱり体の成長に必要な栄養素は食事に取り入れたいものね…。)
シャーロットは更に頭を悩ませながらそんな事を考えていた。
(特に、ジョナスとフーパーは本来ならば背はもっと高く筋肉ももっとついている年齢だから特に食事メニューを改善しなきゃね…。今からでも改善はできるものね。ジョナスは騎士団に入りたいという夢を持っているからもっと体を鍛える為にも筋肉をつける為にタンパク質も沢山摂れる様なメニューにした方が良さそうね。もちろん他の子供達にもだけどね。)
シャーロットはページをめくって本を読み進めながら考えていた。
(ん〜この国でタンパク質が多く摂れる食材はと……。)
シャーロットは食に関する参考書を見つめながら考えていた。
(前世でのシャーロット…私は食事が出てきて当たり前と思っていたからこの国にどんな食材があってどの様に食材を調達するかなんて考えた事もなかったからそこから調べる必要があるわね…。特に街の人達と貴族の生活スタイルは違うからそこも考えて行動しないといけないわね。)
シャーロットは前世のシャーロットの自分の事を思い出しながらそんな事を考えていた。
(えっと…栄養管理の為にもバランスの良い食事を作るとなると今よりも更に肉と魚は交互にメニューに取り入れて野菜も沢山摂れる様に工夫しておかず作りをするのがいいわよね。孤児院の畑の野菜が沢山採れる様になるにはまだ先だから当分は今みたいに市場でメニューを考えてからの調達でいいわね。)
シャーロットはバランスの良い食事を作るにはどうすればいいかを頭を悩ませながら考えていた。
(この国の料理も美味しいんだけれど日本で作っていた料理も美味しいものが沢山だから作って食べさせてあげたいけど…。どうにか日本の料理をこの国でも再現出来ないかしらね…。)
シャーロットは前世の日本での食事をどうにか再現出来ないかと考えていた。
(日本の料理で子供達が好みそうな料理といえば……無難どころで言えばカレーにハンバーグかしら。唐揚げとかは作るのは難しいかしら。日本とは調味料が違うからそこも考えておかなきゃだめよね…。この国の主食は小麦だからパスタもいいけどうどん的なものも作れるなら作るのも良さそうね。小麦を使って子供達の誕生日にはケーキも作ってあげたいわね。)
シャーロットは想像が膨らむとワクワクした表情を浮かべながら考えていた。
(まずはハンバーグを作ろうかしら。本を読む限りこの国に挽き肉は売っていないみたいだけど挽き肉なら安めの肉を購入して細かくすれば挽き肉になるしね。ハンバーグなら子供達も楽しみながら料理出来そうだし子供も喜びそうな料理だもんね。よし!ハンバーグを焼いて…付け合わせには人参…じゃがいも…葉もの野菜をと…。)
シャーロットは作るのを決めると考えながら紙に必要事項をメモした。
その後もシャーロットは本を読みながら書いてある内容で参考になるものは次々に紙に書き留めていった。
選び持ってきた本はぶ厚めのものを五冊持ってきていたがシャーロットは集中して読んでは必要事項を書き留めての繰り返しをしていたらあっという間に数時間が経っていた。
外はすっかり日が落ちかけて薄暗くなっていたがシャーロットはそんな事に気づかない程集中していたのだった。
(あっ…カレーを作るのはいいけれどこの国にお米は存在しないわよね…。となるとカレーライスを作るのは難しいわね。小麦でナンを作ってカレーをつけて食べるのも美味しいからカレーのルゥは作ってみるのもいいわね。小さい子用と上の子用でスパイスを調整して作るのがいいわね。カレーに入れる肉は鶏か豚にしましょ。あぁ作るのが楽しみになってきたわ。早く子供達に食べさせてあげたいわ。)
集中していたシャーロットはふと思いつき頭を悩ませながら考えていた。
(あっ!でも…問題はスパイスすね。この本によるとカレー作りに必要なスパイスがこの国で手に入れる事が出来ないものがあるのよね。そのスパイスがないとカレーを作るのは難しそうね…。でも…そのスパイスは少し離れた近隣国でなければ手に入れられそうもないしな…。どうしたら手に入るかしら…。)
シャーロットはカレーが作れる楽しみが増えたと嬉しく思い思わず笑みを浮かべたがふと問題がある事に気づきまた悩む表情を浮かべながら考えた。
シャーロットが集中していると図書館へ誰かが入ってきた。
コツ…コツ…コツ…コツ…
そして…シャーロットの元へと足音が近づいてきてシャーロットの後ろで足音が止まった。
「シャーロット…か?」
シャーロットの後ろに立った人物は集中しているシャーロットへと声をかけた。
しかし、集中しているシャーロットは反応しなかった。
「おい!聞いているのか?!」
その人物はシャーロットの反応がない事に少し苛立ち気味にシャーロットへ再度声をかけた。
「え?はい?」
シャーロットはようやく声に反応してハッとなり言うと後ろを振り返った。
後ろを振り返ったシャーロットは目の前にいる人物を見てとても驚いた表情を浮かべて固まった。
(え…?で…殿下?!)
シャーロットに声をかけてきたのはローランドだった。
ローランドを目の前にしてシャーロットは驚きながらそんな事を思っていた。
「あ…で…殿下。殿下にご挨拶申し上げます。」
シャーロットは再びハッとなり慌てて椅子から立ちローランドへと挨拶をした。
「……。あぁ。」
ローランドが応えた。
(何でこんなところに殿下が?というより何でこのタイミングで殿下と遭遇するわけ?孤児院での事もあるし何となく気まずいわ。)
シャーロットはローランドを前に立ち気まずそうな表情を浮かべながらそんな事を考えていた。
「こんな時間になるまでここで何をしていたのだ?」
ローランドはシャーロットへと尋ねた。
「え?あぁ…少し調べたいことがあり調べ物をしていました…。」
シャーロットはローランドに話を振られた事に驚き慌てて応えた。
(殿下と二人の時に私に何かを尋ねてくるなんて…初めてじゃない…?急にどうしたのかしら…。)
シャーロットはローランドへ応えながら驚きを隠せずそんな事を思っていた。
「調べたいこと?今までここへ来たこともないのにか?」
ローランドは眉を少し動かして言った。
「はい…。」
シャーロットは気まずそうな表情で応えた。
「何を調べていたのだ?」
ローランドはシャーロットへ尋ねた。
「え?あぁ…。えーと…ですね…。」
シャーロットは更に尋ねてくるローランドに慌てて言った。
「話せない様な事を調べていたのか?」
「あっ…いえ…そういう訳ではありません…。」
「では、何を調べていたんだ?」
慌てて応えるシャーロットへローランドは少しムッとした表情を浮かべながらシャーロットへ言うとシャーロットは気まずそうに言った。
「……。孤児院での食事を改善したいと思いまして…参考書を見て調べ物をしていたのです。」
「孤児院の食事だと?」
「はい…。孤児院の子供達はオマーン元公爵がきちんとした食事を与えていなかったので皆年齢より小柄なのです。ですから、栄養バランスを考え食事改善をしたいと思いました。」
シャーロットは黙っていても仕方がないと思い観念した表情を浮かべながらローランドへ説明した。
シャーロットの話を聞いたローランドは首を少し傾げながら言うとシャーロットは更に説明した。
「それで…参考書を見ながら紙に書き留めていたのか?」
ローランドはシャーロットの後ろに見えた机の上のぎっしりと字が書かれている紙をチラッと見ながら言った。
「はい。そうでございます。」
シャーロットは頷きながら言った。
「見せてみろ。」
「え?いや…その殿下にお見せする程のものではありませんので…。」
ローランドはシャーロットへ言うとシャーロットは慌てて応えた。
(もぉ…何なの?!何故、殿下は色々と聞いてくるの?ちょっと…あまりにも驚く事ばかりされるから困惑するわ。前世では…いえ…現世でも少し前まで私の事なんて無視してたじゃないの。なのに何故急に?本当に困るわ…。どうにかしてこの場を引き上げたいわ。)
シャーロットはローランドの行動に困惑しながらそんな事を考えていた。
「私に見せるのが嫌なのか?」
「いえ…嫌という訳ではありませんが…。」
「では…何故その様にあからさまな嫌そうな顔をしているのだ?!」
「え?そんな…嫌そうだなんて…。」
ローランドは苦笑いを浮かべながら言うシャーロットへムスッとした表情を浮かべて言うとシャーロットは更に気まずそうな表情を浮かべて応えた。
そんなシャーロットを見てローランドは更にムスッとした表情で言った。
(えぇ…。嫌です。何で殿下が苛ついているの?困ってるのは私なんだけど…。私は殿下と関わりたくないんですよ…。)
シャーロットはムスッとしているローランドを見てそんな事を考えていた。
「では見せてみろ!」
「……。はい。分かりました。どうぞ…。」
ローランドはムスッとした表情のまま言うとシャーロットはとにかく早く解放されたいという気持ちから仕方なく言うとローランドへと書き留めた紙を差し出した。
シャーロットから差しだされた紙を受け取ったローランドは紙に書いてある事に目を通していた。
(これは…シャーロットが全て書き留めたのか…?必要な事が分かりやすくまとめてあるな。以前見た提案書もそうだが一体どうなってるのだ?今までのシャーロットとは別人の様で混乱するな。)
ローランドは紙に目を通しながら驚きそんな事を考えていた。
「あの…殿下…。もうよろしいでしょうか?」
「あぁ。」
シャーロットはローランドへ声をかけた。
するとローランドは頷きながら応えると紙をシャーロットに差し出した。
紙を受け取ったシャーロットはこれで終わると思いホッとした表情を浮かべた。
「そこに書き留めてあるハンバーグ?やカレーとはなんだ?」
ローランドは自分が紙に書いてあり気になった事をシャーロットへと尋ねた。
「え?えっと…。」
シャーロットはあ然とした表情を浮かべて言った。
(ちょっと…終わりじゃないの?紙を見せたんだからいいでしょ?)
シャーロットは更に尋ねてきたローランドに驚きながら思っていた。
「聞いたことのない言葉だが。」
「……。はい。異国の食べ物でございます。………以前、私の侍女が異国の食べ物の話を聞かせてくれた事がありまして…それで孤児院の子供達へ食べさせてあげる事ができないかと思ったのです…。」
ローランドが言うとシャーロットは勘弁して欲しそうな表情を浮かべて説明した。
(何故…シャーロットは私と話をするのをこれほど嫌そうな面倒臭そうな表情を浮かべるのだ?私と一緒にいるのが嫌なのか?)
ローランドは目の前のシャーロットが笑みの一つも浮かべず複雑そうな面倒臭そうな表情を浮かべて話をしている事に納得のいかない表情を浮かべて思っていた。
「そうなのか。スパイスを手に入れるには…と書いてあったが手に入らないものが?」
「……。はい…。そのカレーというものを作る為のスパイスの一つがこの国では手に入れる事が出来ないようなのです。遠く離れた隣国でしたら手に入るみたいなのですが。」
ローランドは更に尋ねた。
そんなローランドに内心疲れを覚えつつも説明をした。
(いっそのこと隣国まで行って調達してこようかしら…。でも…お父様が許可してくれるかしら。)
シャーロットはローランドに説明しながらそんな事を考えていた。
「隣国ならば手に入るんだな?」
「え?あ…はい。本に記載してある事項によりますとその様です。」
「そうか…。」
「はい……。」
ローランドは少し何かを考えた様な表情をした後にシャーロットへと尋ねるとシャーロットは頷きながら応えた。
そんなシャーロットにローランドが言うとシャーロットは応えた。
「あの…失礼ながら殿下はお一人で…護衛の方も付けずに何故こちらへ?」
シャーロットはローランドへと尋ねた。
(よく考えたら殿下が護衛をつけずに一人で出歩くなんて危険よね。)
シャーロットはそんな事を考えていた。
「たまに…一人で調べ物をしたり本を読んだりしたいと時があるからそういう時はこうして一人で足を運ぶのだ。いつもはこの時間はもう閉館している時間だから誰も居ないのだがシャーロットが居たので声をかけたのだ。」
「え…もう閉館している時間なのですか?それは申し訳ありません…。すぐに片付けて帰りますので…。」
ローランドはシャーロットへと説明するとシャーロットはローランドの話に驚くと同時に慌てて言った。
そしてすぐに片付けに取りかかった。
(まさか…もう閉館の時間が過ぎてたなんて。集中しててまったく時間を気にしてなかったわ…。確かに…考えたら他の人がいるのに殿下がお一人で来るわけないわよね…。悪いことをしてしまったわね。)
シャーロットは片付けに取りかかりながらそんな事を考えていた。
「いや…問題な…。」
ローランドは謝り慌てて片付けをするシャーロットを見て何かを考えた後にシャーロットへ言おうとした時………。
「ロッティ!!」
「え?エイルお兄様?!」
「こんな時間まで帰って来ないから心配で見に来たんだ。」
「あ…ごめんなさい。つい集中していたらこんな時間になってしまっていて…。」
「はぁ…。まぁ…何かあったのではないから安心したよ。さぁ帰ろう…っ!!で…殿下?!」
図書館に慌てた表情を浮かべたエイルがやって来てシャーロットへと声をかけた。
突然エイルがやって来た事に驚いたシャーロットは言うとエイルは少しホッとした表情で言った。
その時、エイルの目にローランドの姿が入り驚いた表情で言った。
「あぁ。」
「殿下にご挨拶申し上げます。殿下がいると気づかず大きな声を出してしまい申し訳ありませんでした。」
「いや…構わない。それより早く帰らなくてもいいのか?家の者も心配しているのだろう?」
「はい…。」
「そうだろう。私の事は気にせず早く帰れ。私はここにもう少しだけ残り本を読んでから帰ろうと思うので。」
「はい。畏まりました。ありがとうございます。」
エイルに言われたローランドは返事をした。
そんなローランドへエイルは慌てて謝り言うとローランドはエイルへと伝えた。
そんなローランドにエイルは頭を下げながら言った。
「ではロッティ行こうか?」
「ええ。」
エイルがシャーロットへ言うとシャーロットは頷きながら応えた。
「では…殿下お先に失礼致します。」
「あぁ。」
「殿下…失礼致します…。」
「………。あぁ。」
エイルはローランドへ挨拶をするとシャーロットもローランドの方を向いてローランドへと挨拶をした。
そんなシャーロットを見てローランドは少し間を溜めて応えたのだった。
そして、シャーロットとエイルは迎えの馬車に残りこみ帰って行った。
(はぁ…やっと解放されたわ。何だかドッと疲れた気がするわ。でも調べ物は十分出来たし良かったわ。それにしても…殿下には少し悪い事をしてしまったわね。殿下にもああして一人になりたい時間があるよね…。殿下が一人で図書館へ行っていたなんて。前世でも現世でも…私は殿下の事を何も知らないのね。殿下は私に何も見せてくれなかったのね。それほど私に興味がないもしくは…嫌いだったのね。そう考えるとこの婚約は取り消しにして正解だったわ。)
シャーロットは馬車の中でローランドに対してそんな事を思っていたのだった。
一方…
シャーロット達が帰り一人図書館にいたローランドは本を広げて読んていた。
(しかし…何故私は絶対に邪魔されたくないこの空間に閉館時間に気づいていないとしてもシャーロットがいる事に腹を立てなかったのだ?今までだったらシャーロットが王宮へ来ること自体も嫌悪していたのに…。シャーロットが居ることよりもシャーロットが私に対して笑顔一つ見せず終始微妙な表情をしていた事に腹が立った。いや…今までの様にいかにもという笑顔を向けられるのは嫌悪しかないが…。孤児院で笑っているシャーロットの笑顔は今まで嫌悪を感じていた笑顔ではなかった。)
ローランドは本を広げ読みながらも読むことに集中出来ずそんな事を考えていた。
(それに提案書の件も今日の書き留めの件にしても…今までのシャーロットからは想像もつかない行動ばかりだ…。我儘ばかり言っているシャーロットとはえらい違いだ。私はそんなシャーロットに嫌悪して拒絶していたがそのせいで本来のシャーロットの姿を見逃していたのか?私との婚約取り消しの件も父上が了承した事に心からのホッとしていた。あれだけ我儘をいい私との婚約が決まった程だというのに…。今までとはまったく別人の様なシャーロットを目にするとどうもシャーロットの事が気になってしまうのはなぜだ?本当に混乱してしまうな。)
ローランドは更にシャーロットの事について考えていた。
この日のローランドは本を読むことにまったく集中することが出来ず帰るまでの時間は一人でシャーロットの事を考えていたのだった………
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誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
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他にも連載中の小説がありますのでよろしければご一緒にご覧下さい★
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この度、男装令嬢・キャサリンは探偵助手をする事になりました!!
〜探偵様は王子様?!事件も恋も解決お任せ下さい〜
悪役令嬢でもなくヒロインでもないまさかのモブキャラに転生したので大好きなハンドメイドをしながら暮らす事にしました!!
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