16.変化
王宮へ戻ったローランドは帰宅後すぐに国王であるキーランドへ視察報告をしていたのだった。
「ローランド、孤児院視察ご苦労だったな。」
キーランドがローランドへと言った。
「はい…父上。」
ローランドが応えた。
「それで…孤児院の視察はどうだったのだ?」
キーランドがローランドへ尋ねた。
「はい。孤児院自体、想像していたよりも酷い有り様でした。外観の壁などは一度も外壁の劣化などの修理などを行っていないように見受けました。あのままの状態だといつ崩れてもおかしくないかと思います。」
「そうか…。私が顔を出さない間にそんなにも酷い状態になっていたとは…。オマーン公爵に孤児院の管理を任せた私の責任でもあるな…。」
「オマーン公爵は本当に我々の顔に泥を塗ってくれましたね…。」
キーランドに聞かれたローランドは孤児院の見た印象をキーランドへと伝えた。
キーランドはローランドの話を聞き表情を歪めながら言うとローランドは少し呆れた様な不機嫌そうな表情で言った。
「そういえば…昨日シャーロットが孤児院で倒れたと聞いたが…シャーロット不在で孤児院の中は視察できたのか?」
キーランドが思い出した様な表情を浮かべながらローランドへ尋ねた。
「いえ…それが、シャーロットは孤児院へと顔を出していたので孤児院の中も見せて貰いました。」
「何?!シャーロットが孤児院へ来ていただと?!昨日倒れたのではなかったのか?!」
「アミルの話によりますと昨日倒れたのですが意識は戻り怪我は問題ないからとグランバード公爵やアミル達が行くのを止めても断固としてシャーロット譲らず最終的に夫人の一声で孤児院へ行くことを仕方なく許可した様でした。」
「何と…。シャーロットが…。」
ローランドはキーランドへ言うとキーランドはとても驚いた表情を浮かべながら言った。
そんなキーランドにローランドはアミルから聞いた話を伝えた。
話を聞いたキーランドは更に驚きを隠せない表情を浮かべながら言った。
「それで…孤児院のシャーロットの様子はどうだったのだ?!」
「シャーロットの様子…ですか…。」
「あぁ。孤児院ではどの様に過ごしていたのだ?」
「子供達や孤児院で働いている女性とは上手くやっている様でした。孤児院の子供達はオマーン公爵の件もあったのでもっとこう…暗い表情の子供達ばかりだと思っていましたが子供達は皆、楽しそうにシャーロットと過ごしていた様に感じました。」
「ほぅ…シャーロットが子供達と楽しそうにな…。」
「はい。それに…。」
「それに…なんだ?!」
「……。私とアミルは孤児院を少し離れた場所から見ていたのですが内観も見ておいた方がいいと誰か居ないか裏庭の方を覗いた時に子供の一人が我々に気づいたのです。」
「ほぅ…それで?」
「すると他の子供達も我々に気づき子供達が我々の元へと駆け寄ってきて共に昼食を摂ろうと誘われました。しかし…視察後も予定が詰まっていたので断ったのです。」
「ほぅ…ほぅ……そしてどうなったのだ?」
「我々が断るとシャーロットはそれが気に食わなかったのか今まで見たことのない様な真剣な表情で私とアミルへと孤児院の子供達も国の国民の一人だと言われまして…。国民の声を予定があるからと無視するのかと。国民の声を聞くのも王太子である私の仕事の一つではないのかと言われました。」
「何と!シャーロットがローランドにその様な事を?」
「はい。シャーロットの言い分は間違ってはいないと思いました。ですから私とアミルは子供達と時間を過ごす事にしたのです。」
キーランドが孤児院でのシャーロットの様子をローランドに尋ねるとローランドは孤児院で起こった出来事を説明した。
説明をされるうちにキーランドは早く先が聞きたいという様な表情を浮かべながら聞いていた。
そんなキーランドにローランドは更に説明をしたのだった。
ローランドから話を聞けば聞くほどキーランドは驚きを隠せなかった。
(父上が驚くのも無理はないだろう…。私も含めてだが兄のアミルですら妹の我儘を認めているのだからそのシャーロットがあの様な行動や言動をするなど信じられないだろうからな。現に私も未だに信じられないでいるからな…。)
ローランドはキーランドの驚いた表情を見ながらそんな事を考えていた。
「子供達と過ごしてどの様に感じたのだ?」
「……。はっきり言って平民の子供…それも孤児院の子供と接するのは初めてでしたのでよく分かりませんでした。ですが、それぞれの理由で親もなくオマーン公爵にも酷い目にあわされたにも関わらずあの様に笑って過ごしている姿を見て…子供というのは大人などよりよっぽど強いものだと感じました。」
「そうか。そうだな…。孤児院の子供達はそれぞれ色々な理由で親が居ない子ばかりだ。孤児院はそんな子供達を立派な大人になる様にと手助けをする場所だ。その様に大人の顔色を伺う作り笑顔ではなく心の底から笑顔を浮かべて楽しそうにしているという事はとても素晴らしい事だ。オマーン公爵はそんな手助けをするどころか自分本位な行動で子供達を苦しめる環境に追い込んでいた。しかし…今こうして子供達が笑って過ごせているのはきっとシャーロットのお陰だろう。」
「…………。」
「私は…あのシャーロットは我儘な所しか見ていないからかそういう子という目でしか見ていなかった。ローランドとの婚約取り消しの件にしても国に関わる事を自分の我儘で…と正直なところ不満なところもあった。しかし…シャーロットがオマーン公爵の悪事を暴き自分が孤児院の責任者になりたいと言ってきた事はただの気まぐれでも我儘でもなく…心から孤児院を良い環境にする事を考えていたのだろう…。」
「…………。」
キーランドは更にローランドに尋ねるとローランドは自分の正直な考えをローランドへと伝えた。
そんなローランドの言葉にキーランドは自分のシャーロットに対する印象がとても変わりシャーロットの発言は本気だということも伝わっていると言った。
そんなキーランドの話をローランドは黙って聞いていた。
何かを考えているのか黙っているローランドを見てキーランドが一枚の封筒をローランドへと手渡した。
「これは?」
「ボブから預かったシャーロットが書いた孤児院の提案書だ。読んでみるといい。」
キーランドから渡された封筒を受け取ったローランドは封筒を見ながらキーランドへと尋ねるとローランドが応えて言った。
ローランドはキーランドに言われ封筒の中から提案書を取り出して読み始めた。
提案書を読んでいるローランドの表情が少し驚いた信じられないという様な表情に変わった。
「これは…本当にシャーロットが書いたものなのですか?」
「あぁ。間違いない。父親であるグランバード公爵ですら信じられないと驚いていたが間違いなくシャーロットの字だそうだ。」
「そんな…。私もこれをシャーロットが書いたなど信じられません。」
「私も最初に読んだ際はどれ程驚いた事か。」
「この提案書は孤児院の事だけではなく王都に住む者達の生活や収入面などの事も考えている様に解釈出来ます。」
「その通りだ。シャーロットは国からの助成金を一円も無駄にしない様に…加えて孤児院の子供達の事…王都に住む者たちの事を真剣に考えた故の提案書なのだ。」
「本当に…シャーロットがこの様な案を出すなど信じ難いです。」
「今までのシャーロットを見ているとそう思うのも仕方ない事だろう。だが…事実シャーロットが書いたのだ。もしかしたら私もルチアもシャーロットという娘に対して思い違いをしていたのかもしれないな…。」
「…………。」
提案書を読んだローランドが珍しくとても驚いた表情を浮かべてキーランドへと尋ねるとキーランドは頷きながら応えた。
ローランドは信じられないという表情のまま言うとキーランドもそれに応えた。
そしてキーランドは真剣な表情を浮かべながらシャーロットに対する話をした。
そんなキーランドの話をローランドは黙って聞いていたのだった。
「シャーロットの孤児院での様子次第でと軽い気持ちで思っていたが…私はこのままシャーロットへと孤児院の管理をお願いするという事で良いと思っているがローランドはどう思う?」
「………。父上がそうご判断されるのであれば私はそのご判断に従うまでです。」
「……。そうか。では…グランバード公爵へその様に伝えておく事にしよう。そして後日シャーロットを王宮へ呼び話を聞くとしよう。」
「承知しました。では…私は執務が残っておりますのでこれで失礼します。」
「あぁ。ご苦労だった。」
キーランドはローランドへとシャーロットの今後について自分の気持ちを伝えローランドにも尋ねる。
ローランドは先程までの驚いた表情ではなく無表情のまま応えるとキーランドは少し間をあけて言った。
ローランドは話が終わったの自分は執務に戻ることを伝えた。
キーランドは頷きながらローランドに言った。
「では…失礼します。」
ローランドはキーランドに言うと部屋から出るために扉へと向かった。
「あぁ…そうだ。シャーロットとの婚約取り消しの件だが了承する事にしたのでそれで良いか?」
「はい。構いません。私は父上のお決めになった相手でしたら誰でも構いませんので。父上にお任せ致します。」
「………そうか…。分かった。」
「はい。では…失礼します。」
「あぁ。」
ローランドが部屋を出ようとした時にキーランドは言い忘れていた事をローランドに伝えた。
するとローランドは無表情で応えた。
そんなローランドを見てキーランドは何かを思うような表情を浮かべたがそのまま言うとローランドは部屋から出ていったのだった。
(ローランドの性格もどうしたものか…。冷静さや寡黙さも悪くはないがもう少し感情というものを出せば良いのにな…。あのローランドがこの先感情豊かになる日など来るのだろうか…。将来国王となる身なのだからもう少し感情を出さねば周りの者も困るであろうな…。親というものはいつまでも悩みが尽きぬものだな…。)
キーランドはローランドが部屋から出ていくと困った表情を浮かべながらそんな事を考えていた。
※
ローランドは王太子執務室へと入ると椅子に腰掛け早速執務を進め始めたのだった。
執務を進めていたローランドの頭にふと孤児院でのシャーロットの笑顔が過ぎった。
(シャーロットはあの様に笑う者だっただろうか…。今日のシャーロットは心からの楽しく笑っている嘘のない笑顔だった…。私の知っているシャーロットはいつも上目遣いに明らかにわざとらしい機嫌をとるかの様な笑みだったが…。)
ローランドはふと頭に浮かんだ孤児院でのシャーロットの事をそんな風に考えていた。
次に頭に過ぎったのは…シャーロット
がどこか不満そうな嫌そうな表情を浮かべながらアミルにローランドも孤児院の内観を見るのかと尋ねた時の表情だった。
(何故、シャーロットは私が孤児院内を見ると知るとあの様な表情をしたのだ?!いつも私には機嫌を取ってくる様な事ばかりしてきたというの…。それに…あの私との婚約を取り消してくれと言った日もそうだ。私との婚約を取り消してもらえそうだと分かった時のあの心からの安心した様な表情も今思えば何故か気に食わないな。)
ローランドは頭に過ぎったシャーロットの表情を思い出して少し不機嫌そうな表情を浮かべながら考えていた。
次に頭に過ぎったのはシャーロットの描いた絵だった。
(ふっ…あの絵は衝撃だったな。あまりの下手さに思わず言葉を失った程だったな…。シャーロットにも不得意な物があるんだな。)
ローランドはシャーロットが描いた絵を思い出すと思わず口元が緩み笑みを溢しながら思っていた。
「?!私は…何を考えているのだ?!何故シャーロットの事など?!」
ローランドは思わず自分の口元が緩んでいる事に気づきハッとなり自分がシャーロットの事を考えている事に驚き言った。
(はぁ…シャーロットが予想外な事ばかりするから気になるのか?ありえない事だな。シャーロットの事を気にするなど…。どうかしているな…今日の私は…。)
ローランドはため息をつきながら自分らしくもなとそんな事を考えていたのだった。
この日…
あまりにもシャーロットのいつもと違う顔を見たことでローランドは普段ならばありえない様な事を考えたり思ったりしていたのだった……
ご覧頂きありがとうございます★
2022.2.21
異世界転生/転移
日間恋愛 BEST300
228位ランクイン
読んでくださる皆様のお陰です!
ありがとうございます★
他にも連載中の小説がありますのでよろしければご一緒にご覧下さい★
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この度、男装令嬢・キャサリンは探偵助手をする事になりました!!
〜探偵様は王子様?!事件も恋も解決お任せ下さい〜
悪役令嬢でもなくヒロインでもないまさかのモブキャラに転生したので大好きなハンドメイドをしながら暮らす事にしました!!
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