表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の箱入り紀行録  作者: raira421
第1章 旅の始まり
5/39

1-4 ドレス選びは大変です


 それから、5年の月日がたった。

 今日は私の15歳の誕生日! 

 御屋敷の大きなダイニングルームは色とりどりのリボンや風船で装飾さてれいる。お祝いの準備はバッチリと言った感じだ。

 

 私は、自室でドレスの試着をしていた。

 メイドが色々なドレスを順番に持ってくる。

 まず、黄色い素地に赤い宝石がちりばめられているAラインのドレス。次に、水色のミニスカートのドレス。更にやってきた緑色のドレスにはフリルが施されている。

 まだまだドレスは出てくる。赤、青、紫、白。こ、これは、土留色……?

 と、何やかんやしているうちにドレスは山のように積み重なっていき、私は埋もれてしまった。

「お嬢様、どれになさいますか?」

「早く決めてください」

「決めて下さらないとパーティが始められません!」

 たくさんのメイドが一斉に口を開く。

 ええっと、ちょっと、まって……

 

 その時、ドアをノックする音が聞こえた。

「お嬢様、ちょっといいですか……」

 ドアの外から聞こえる声。シナモン先生のものだわ。

 私の頭にあるものが閃いた。

「そうだわ! シナモン先生にドレスを決めてもらう!」

「はい?」

 メイド達は顔を見合わせている。

「先生が、一番似合ってると思ったドレスをパーティで着る! そうするわ」

「は、はい……わかりました」

 私の熱意に押されたのか、メイド達は渋々頷いた。

「そうとなれば、まずはお召になってください」

 年配のメイドに言われるまま、私は目に付いたドレスを手に取った。

 

 まず、黄色いドレスに身を包む。

 目の前にはメイドの用意した椅子に(半ば強引に)座らされたシナモン先生がいる。

 先生に見せつけるようにくるりと一回転すると、ドレスのスカートがふわりと揺れた。

「これは、露出が多すぎるのではないですか?」

 怪訝そうな顔でコメントする先生。

 よし、次!

 私が顎をくいっとすると、メイド達がドレスを手渡してきた。

 シナモン先生は部屋を追い出される。

 今度はこの赤いドレスを着てみるわよ!

「この色はお嬢様には早いですよ! 色っぽすぎます!」

 私の姿を見るなり、シナモン先生の顔が赤くなった。

 次! 

 じゃあ、この紫はどうかしら!

「奇抜すぎませんか……?」

 と、シナモン先生。

 次!

「派手すぎですね」 

 次!

「サイズがあってないのではないですか?」

 次!

「可愛いけど、子供っぽい気が……」

 次!

 次!次!次!……


 数10分後。

 メイド達、私、シナモン先生はみんなげっそりしていた。

「これで……30着目ですよ」

 メイドが汗を拭いながら言った。

「す、すいません」

 シナモン先生が苦笑いを浮かべた。

「お父様のセンスが無いのよ」

 私は頬をプクーっとして見せる。

「そろそろ、終わりにしたいところですね」

 メイドが1着のドレスを手に取った。

 シナモン先生は、10回目頃から部屋から出るのが面倒になり、その場で私に背を向けるようになった。

 今回も同じように背を向ける先生。

 

 ……そして、再び振り向いた先生は、私にニコリと笑いかけた。

「とても、似合っています。最高です!」

 声高らかに私を褒め称える先生。

 なんだか照れくさい。

 自分の体を鏡で見る。

 可愛らしい薄ピンクのドレスが目に映った。レースの施された袖口や裾、ふんわりとした肩、プリンセスラインのスカート、胸元にある大きなリボン。シルクの素地がとても肌触りがいい。

「これにする! これに決めた! とっても可愛い、先生に見てもらって正解だったわ!」

 ぴょんぴょん跳ねる私を、先生が椅子に座らせた。

「お嬢様、後ろを向いてください」

「はい?」

 後ろを向くと、突如私の頭を柔らかい物が触れた。ブラシだ。

「お嬢様の髪は綺麗ですね」

 シナモン先生の声がする。先生に髪をといて貰ってるのね。

 私は胸がドキドキした。思わず、口角が上がる。

 先生は優しい手つきで、私の髪をハーフアップにした。髪をまとめた、ドレスと同じ色のリボンがとっても可愛らしい。

「では、パーティへと参りましょうか。」

 シナモン先生は笑顔で私に手を差し出す。

 私の心臓はさらに跳ね上がった。

 

 ああ、幸せ……。

 

 私たちはパーティ会場へと続く階段を降りるのだった。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ