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私の箱入り紀行録  作者: raira421
第1章 旅の始まり
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1-3 初恋


 シナモン先生とのお稽古はとても楽しかった。

 先生はお裁縫やそろばんだけでなく、植物の見分け方や、世界中にいる魔物、魔法についてとても詳しく、様々な文献を持っていた。

 その本を私に見せながら面白いことを教えてくれる。私はすぐにシナモン先生が大好きになった。

 間もなくして、シナモン先生は屋敷に住み込みで働くことになった。

 私は嬉しかった。これでお稽古の時間以外もシナモン先生と話せるし、もっと色んなことを教えて貰える。

 

 私はよくシナモン先生の部屋に忍び込んでは色々な話をした。

 シナモン先生は前住んでいた村からこの御屋敷まで旅しながらやってきたらしい。そんな先生の昔の話を聞かせてもらえるのが、楽しくて仕方がなかった。

 

 

 そんなある日、シナモン先生に聞かれたの。

「お嬢様には将来の夢がありますか?」

 

 ドキリとした。

 

 昔、将来ことを話しても誰も真面目に聞いてくれなかった。

 

 シナモン先生にまで、「無理だ」って言われるんじゃないかって、笑われるんじゃないかって、怖かったの。

 

 でも、自分の夢に嘘はつけないわ。

 

「私ね……旅に出るのが夢なの。広い世界を見てみたい、この目で」

 私はか細い声で言った。

 顔が赤くなるのを感じる。

 どんな反応されるかしら……。

 

 シナモン先生は何も言わず、私をじっと見つめていた。

 

 どうか、否定しないで!

 

 私は心の中で叫んだ。

 

「素敵な夢ですね」

 彼の口から出たその言葉に私は衝撃を受けた。

 私の夢を、素敵ですって? 

 

「お嬢様ならきっと叶えられます。応援してますよ」

 シナモン先生は続けてそう言った。

 彼は真面目な表情を浮かべて、真っ直ぐに私を見つめてる。

 その顔を見て理解した。これは冗談でも話を合わせてるだけでもなく、本気で言ってるのだ。

 みんな私の夢を本気で受け止めてくれない。聞いてくれない。でも、この人だけは違った。

 夢を尊重して、本気で応援してくれる。

 そんな存在を初めて知った。

 

 私はただ、彼の深い青色をした瞳をじっと見つめていた。

 これまで何度も見つめてきた目。

 なのに、今までとは比べ物にならないほど綺麗に見える。

 深い、深い海に吸い込まれる様な感覚。

 海の底にいるはずなのに、とてもポカポカ暖かくて。息ができない訳でもないのに、なんだか胸が苦しくなる。不思議な感じ。

 

 これが、恋であることに気づいたのは数週間後のことだった。

 

 夢を応援してくれる、それだけで私の心は救われたの。

 そして、救ってくれた貴方に恋をした。生まれて初めての、恋を。

 

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