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私の箱入り紀行録  作者: raira421
第4章 新たな力で
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4-9 参上!スルメ&アタリメ


 シナモンが先に道を切り開くという作戦は、一見、理にかなっているように思われた。何が待っているか分からない霧の中に、サブレを放り込む訳には行かない。ならば、先に進路を確保した方がいい。シナモンもショコラもそれで納得していた。

 しかし、シナモンは見落としていたのだ。その作戦を実行する場合、自分とサブレが離れなくてはならないことを。そして、霧の立つ森の中とは、何が起こるか分からないということを。

 シナモンが後ろを振り返った時、目に飛び込んできたのは森の木々ではなく、真っ白な霧であった。

 シナモンは唖然とした。

 (確かに霧は払ったはず、どうして……?)

 シナモンの疑問に答えるかのように、突然、上から声が降ってきた。

 

 「霧の中を進もうとするとは、なんと愚かなことよ」

 「自然の厳しさを知らぬとは、なんと愚かなことよ」

 感情を感じさせない平坦なこえである。

 

 「誰だ!?」

 シナモンはどこにいるかも分からぬ声の主に向かって叫んだ。

 

 「「クックックック……」」

 2つの声が、同時に笑う。

 

 そして、2つの影がシナモンの前に降り立った。

 片方は真っ黒な長髪をひとつにまとめた男。もう片方は真っ黒の髪を肩の辺りで切りそろえた女。そっくりな切れ長の目のすぐ下、全く同じ位置にホクロが1つ。そして口元にはマスク。

 そう、彼らこそが……

 

 「盗賊協会(ギルド)に仕えし忍、スルメ参上!」

 「盗賊協会(ギルド)に仕えし忍、アタリメ参上!」

 「「家庭教師シナモンよ、お命頂戴!!」」

 

 決まった!と言った感じでフスーっと鼻息を吐くスルメとアタリメ。

 ニコニコ笑いながら拍手をするシナモン。

 なんとも言えない空気が漂った。

 

 しかし、その空気は1本の矢によって切り裂かれた。

 ぴしゆっと音を立て、スルメとアタリメの間を通り抜けていく矢。

 見ると、次の矢を放とうとシナモンが弓を構えていた。

 

 「ほう?わざと外したか」

 抑揚の無い口調でスルメが聞く。彼の針のような切れ長の目が、さらに細められた。

 「おや? 1発で心臓を貫いた方が良かったですか?」

 シナモンもニコリと笑いながら返す。

 「家庭教師なんかに私達の心臓は狙えないわ、よっ!」

 そう言いながら、手裏剣を投げたのはアタリメである。

 シナモンは弓のハンドルでそれを弾いた。

 「貴方方の目的はなんですか? なぜ、私が家庭教師であると知っているのです?」

 弓を構え、徐々に相手から距離を取りながら、シナモンは聞いた。

 「知ったところで何になる? どうせお前はここで死ぬ」

 言いながら、スルメとアタリメもクナイを構えた。睨み合いである。

 「随分と自信がおありな様で……。言う気がないなら、早く終わらせましょうか!」

 2本の弓が同時に放たれた。

 今度はスルメとアタリメの間ではなく、彼らの胸に向かって、真っ直ぐ弓が飛んでいく。

 しかし、弓がその体を貫く直前、2人は消えた。

 言葉通りの意味である。彼らの姿、気配は一瞬のうちになくなった。まるで、最初からそこには誰もいなかったかのように。

 「何を……」

 眉間にシワを寄せるシナモン。次の瞬間。

 「貰った!」

 シナモンのすぐ上、そして、背後に一瞬にしてスルメとアタリメが現れ、その日本刀でシナモンの体を切り裂いた。

 

 これこそスルメとアタリメの能力、所謂忍法というやつである。といっても、彼らが扱ったのは魔法や特別な術などでは無い。

 彼らが持っているのは超人的な速さである。 

 スルメとアタリメは目に見えぬ程の勢いで霧の中に身を隠し、また、素早く攻撃の射程に入りこんだ。言ってしまえば、身を隠しながら全力疾走をした感じだ。

 

 シナモンは切られた場所から真っ赤な血を流し、その場に倒れ込んだ。

 

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