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私の箱入り紀行録  作者: raira421
第4章 新たな力で
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4-8 霧の中の道

~ショコラside~



 翌日から一行は街道沿いのルートを進むことにした。そして、できるだけ宿をとるようにした。

 しかし、ヴァルターティーヌは国土の9割が森に囲まれた国。ファリスティナよりはるかに田舎だ。街道も木々に覆われているし、宿や村もあまりない。

 ボク達は見通しの悪い森の中を探り探り進むしか無かった。

 

 サブレは目の前の珍しい動物や赤、青、緑と色とりどりの植物に目をキラキラさせている。

 彼女の顔に余裕があるのが、まだ救いだった。


 数日歩いた頃。

 ボクたちがテントから顔を出すと、雨が降っていた。

 雨と言っても小雨程度の雨だ。周囲にやや霧が立ち込めてはいるものの、まだ進めなくはない。

 

 ボク達には2つの選択肢が与えられた。


 テントの中で雨が止むのを待つか。霧雨の中先へ進むか。


 ボクたちは後者を選んだ。

 確かにテントの中で待つのは安全だ。雨に濡れる心配もないし、霧の中に突っ込まなくて済む。

 だけど、いつ攻撃されるか分からない現在。こんな所でとどまっている場合じゃなかった。ボクたちは一刻も早く王都に着かなければならない。

 サブレの事はシナモンとボクで守る。どちらにしろ危険だっていうなら、早く目的地に着ける方を選んだ。


 

 霧の中をボク達はどんどん進む。

 はぐれないように、ボクはサブレの手を取った。

 

 どんどん霧は深くなっていく。

「よく前が見えないわ」

 サブレが初めて不安を口にする。ボクは、心の中が嫌にぞわぞわするのを悟られたくなくて、サブレの手をさらに強く握った。


 霧は、晴れることなく、どんどん、どんどん深くなっていく……。


 やがて霧は完全にボク達を包み込んで、視界を塞いでしまった。

 前に進み続けるのは危険か?とも思うが、この霧では今更出発地点に戻るのも難しい。

 ここら辺は地面が木の根っこや植物のせいででこぼこしてるから、テントも立てようが無い。

 ……今だからこそ思うが、朝、あの選択をしたのは失敗だったのかもしれない。

 

 進みようが無くなり、ボク達は途方に暮れてしまった。

「こうしていても仕方ありませんね」

 シナモンが言う。

 とりあえず、ボク達は腹ごしらえをすることにした。

 普段の食卓と違ってどんよりした雰囲気だ。

 ボクとサブレは木の根っこに座ってドライフルーツを食べる。湿度が高いせいか、ベタついていた。

 シナモンは干し肉を軽くつまむと、すぐ立ち上がった。

 シナモンが軽く呪文を唱えると、手から小さな風が巻き起こる。


 悔しいけど、シナモンも魔法の腕は確かなんだよな。


「私は道を確保してきます。お2人はここでじっとしていてください」

 それだけ言うとシナモンは歩きはじめた。

「待って」

 サブレがそう言いかけたが、シナモンの手から出る風を見て、黙ってしまった。

 サブレには霧を払う方法がない。

 ……それはボクも同じだ。


 なら、ボクには何が出来る? サブレを守ること? でも、どうやって?


 ボクはそんなことを思いながらシナモンの後ろ姿を見ていた。

 シナモンが霧を払っているので、彼の背中がだんだん小さくなっていくのがよく見える。

 シナモンは迷うことなく真っ直ぐ進んでいた。

 ちらりと横を見ると、サブレがうっとりしているような、でもどこか寂しそうな目でシナモンを見ていた。

 ボクが、テントに留まる選択をしていれば……胸がチクチクする。


 しかし、シナモンの後ろ姿がすっかり見えなくなったところで、いきなりボク達の視線は再び霧に覆われてしまった。

「なに!?」

「先生!」

 ボクとサブレは同時に叫び、立ち上がった。

 確かにシナモンは霧を払っていたはずなのに、何故また霧が? しかも突然?


 ボクの頭は疑問でいっぱいなった。それはサブレも同じなのか目を白黒させている。

 

 こんな霧の現れ方、自然現象として有り得るのか?

 もし、有り得ないとすれば……。


 ボクは腰からサーベルを引き抜いた。

 サブレもつられるように、杖を構えた。

「おい! 誰かいるのか?」

 そう声をかけると、霧の中から人が現れた。1人だけでない。


 2人、5人、10人……。

 沢山の、仮面をつけて、こちらに弓を構えている、人、人、人……。


 ボク達は囲まれていた、得体もしれない奴らに。

 全て、仕組まれていたんだ!


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