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私の箱入り紀行録  作者: raira421
第4章 新たな力で
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4-7 夜襲

~ショコラside~


 夜。ボクはなんだか寝つきが悪かった。新しい土地で体がなれてないのが原因か?


 どんな劣悪な環境でも眠れる体だと自負していたのに……。


 そんなことを考えながら、テントを出る。

 夜露がボクの水色の髪を濡らした。

 眠くなるまで森を散歩でもしよう。


 ざく、ざく、ざく。

 一歩踏み出すごとに、足元の草が音を立てる。こんな静かな場所だと細やかな音にも意識が向けられて心地いいなぁ。都会の喧騒の中じゃ、足音になんて気を使ってられなかったから。


 ふと、違和感を覚えた。

 ほんのかすかな気配のような。都会の渦で危険な事にも飛び込み続けてきた、僕なら知っている。この感じを。これは、視線。しかもなかなかに悪意のある視線だ。環境によって寝れなくなろうと、この勘は鈍っちゃいないみたいだな。

「誰だ!」

 ボクはさっと、立ち上がりながら問うた。森の茂みの奥のほう、そこから視線を感じる。

臨戦態勢に入り、そちらに目を向ける。

 服は寝間着代わりのタンクトップだったが、腰にサーベルを携えておいたのが救いだった。

 ボクは、じりじりと茂みに近づきつつ、サーベルに手をあてがった。じりじり、じりじりと距離を詰める。あえて眉間にしわを寄せ、厳しい表情を見せながら。

 

 そちらが攻撃してくる気なら、ボクはお前を斬るぞ!

 

 と、目で唱えた。


 静寂。


 暫くして、茂みの奥から、ガサゴソって音が聞こえた。敵はこちらに迫って来るのではなく、一目散に逃げて行った。


 また逃げられるのかよ!


「まて!」

 追おうとしたが、止めた。

 サブレが道中の雑談のさなか、何度も言っていたことを思い出す。

『夜の森は危ないわ。暗くて、すぐに迷うから』

 シナモンが、国境前で言っていた言葉も。

『夜に外出するなら、テントに目が届く範囲にしてくださいね』

 不本意ではあるが、ここで道に迷っては本末転倒だ。ボクは、テントに戻ることにした。



 その晩は、眠くなるまでサーベルを研いで過ごした。


 翌朝。まだサブレはテントになかで寝息を立てている。

 ボクは、近くの泉で魚の一本釣りを披露している(といっても、その場にいるのは彼一人だけだが)シナモンに声をかけた。

「おはようございます。今朝はずいぶん早いですね」

 お決まりのように笑うシナモン。


 その張り付いたような顔をやめろ!


 と思ったが、我慢する。今回言いたいのはそんな事じゃない。


 ボクはシナモンに近づくと聞こえる程度の小声で言った。

「今晩から、交代でテント周りの夜警をしたほうがいい」

「どうしてですか? ここらの道は危険な魔物もそうそういませんが」

 シナモンってば、サブレが危なくないように敢えて安全な道を選択しているらしい。ちょっと感心した。

 って、そういう話じゃなくて

「危険なのは魔物じゃない、人だよ。アンタも知ってるだろ?」

 ボクはさらに声を潜めた。

「昨日、怪しい人影を見た。それも、ボクらを監視してるみたいだったんだよ」

「なんと……」


 ボクはシナモンから一歩足を引くと、片手を差し出した。

「サブレを守りたいんだろ? ……ボクも同じだ、協力しよう」

 ボクの手に、黒いグローブが触れる感触がした。

「もちろん」

 交渉成立。ボクはその手をぎゅっと握り返した。


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