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私の箱入り紀行録  作者: raira421
第4章 新たな力で
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4-3 私の才能

~サブレside~


 待てども、杖を振り回しても、呪文を唱えなおしても、炎の魔法は発動しなかった。

「今度は、水の魔法を試してみましょうか」

 シナモン先生が、苦笑いを浮かべながら言った。

 そ、そうよね。諦めるのは、早いわよね。


 数分後。

 私は落胆していた。

 どれだけ踏ん張っても水を呼び出すことはできなかった。花を咲かせる魔法を試してみたけど、何をやっても地面はびくともしない。


 私、才能ないんだわ……。


 ふと、御屋敷で剣を振ってみたとき、一晩経っても上達しなかったことを思い出した。

 私は、剣術も、魔法も使えない。弓や拳で戦えるほどの力もない。

 私とシナモン先生と、新しい仲間のショコラちゃん。この3人の旅。

 以前みたいに誘拐されることはないとしても、旅には危険がつきものだ。これから、戦わなければならない時がきっと来る。

 そんな時、私は……私の存在はきっとお荷物だ。私は守られていることしかできない。

 シナモン先生は家庭教師だから付き合ってくれているけど、こんな私のお守りなんて好き好んではしないだろう。 

 ショコラちゃんだって、彼女自身の旅があったはず。それを、強引に私の旅に誘いこんだ。なのに、私はショコラちゃんの負担にしかならない。

 私は……。


「お嬢様、そう落ち込まないでください」

 シナモン先生の優しい声が聞こえてきた。

「自信をなくすと、ますます魔法が使えなくなりますよ。

 普通、人が上手に扱える魔法は1属性。多くても2属性だけなんですよ。

 まだ、風が残っています」


 私は先生の言葉通り、魔法を使ってみることにした。


 風ーー。

 私の髪をなびかせる、穏やかなそよ風。鮮やかに、大地を走り抜けるつむじ風。爽やかで、優しく、時に恐ろしい、あの風ーー。

 

 その時、私はお腹の底のあたりからビリビリとした、まるで電流が走るかの様な感覚がした。

 そのビリビリは、私のお腹から、腕へ。さらにその先、手や、爪先へと伝わっていく。ビリビリが何度も何度も私の体を駆け巡る。

 私は気づいた。そのビリビリは私の体から、私の持っている杖へと流れているのだと。

 

 体が熱くなる。何故か息が荒くなる。

 不思議な感じ。初めての感覚。

 

 その時、私の頭の中に謎の言葉が浮かんできた。

 これまで聞いたことがある訳では無い。なのに、何故か懐かしくなる、聞いていると心が軽やかになりそうな不思議な言葉。

 頭の中で1文字1文字、確かに形成されて行く。

 そして、それを唱えるべきだ、唱えたいと思った。

 

 私は口を開いた。

「吹き荒れろ! 風よ! 桜の木が靡くほど激しく、稲畑が揺らぐほど鮮やかに!

 

 テンペスト!!!」

 

 私は無意識に、カッと目を開いた。

 杖を見る。

 

 すると、凄まじい勢いの風が、杖の先のピンク色の宝石から空へと伸びていくのが見えた。

 

 そこから先のことはよく覚えていない。

 

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