4-1 お父様からの贈り物
~サブレside~
私達は、隣国、ヴァルタティーヌを目指して旅立った。
二頭の馬、バニラとキャラメルも一緒だ。
私とショコラちゃんは、2人でバニラにまたがり、シナモン先生は1人でキャラメルに乗っていた。
西へ、西へと進んで行くと、森に入った。
これまで見てきた森より、深く、大きな森だ。周囲にファリスティナの土地では見られないような動植物が咲いている。
「国境に近づいてきたいますね」
歩きながらシナモン先生が言った。
もうすぐ、外の国が見られるのね! とてもワクワクするわ!
そう思ったのは、ショコラちゃんも同じみたいで、隣で目をキラキラさせている。
私達は旅人用の停留所に泊まることにした。国境付近は旅人がよく行き来するので安い値段で寝泊りできる施設が配置されているのだ。
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停留所で宿泊していた私たちのもとに、一通の手紙と、荷物が届いた。真っ白な便箋が真っ赤なシーリングスタンプで封をされている。荷物の方は細長い包みと丸い包みがそれぞれ1つずつ。
「旦那様からですね」
シナモン先生が言った。
「旦那様って、サブレの父さんのこと?」
ショコラちゃんが言った。
「はい。このシーリングスタンプはグレーパイン家の紋章ですから」
「どうして、私たちの居場所がわかったのかしら?」
私も続いて言った。
「とりあえず、お読みになったらどうですか?」
私の質問はスルーされてしまったわ……。
「そうね」
封を開ける。かすかに懐かしい匂いが漂ってきた。
シナモン先生に、中身が見えるようにして中身を読み始めた。
『サブレへ
旅は順調か? この前渡せなかった誕生日プレゼントを渡しておくぞ。どちらも知り合いの武器職人に作らせた、世界に一本だけの、オーダーメイド品だ。
シナモンは魔法にも精通するという。勉強の一環として教えてもらうといい。
ところで…… (その後は私がいないことの寂しさが長々とつづられていたので省略)
愛をこめて パパ』
「旦那様、変わりませんね…」
と、苦笑いを浮かべる先生。
「サブレのお父さんってすげーな」
と、ショコラちゃん。
「誕生日プレゼント⁉」
一方、私は胸を躍らせていた。
大はしゃぎで長いほうの包みを開く。
そこには私の背丈ほどある長い杖が入っていた。ショッキングピンクの柄はキラキラと輝いていた。先端には、ハートをひっくり返して2つに割ったような形をした、金の装飾が付いている。そして、その先にはピンク色の、大きな、丸い鉱石が浮かんでいた。
とってもかわいらしい。
小さくて丸い方には楯が入っていた。丸くて、真っ白なボディ。中央には真っ赤な宝石が付いている。
こっちも素敵。
私はその二つの贈り物を眺めたり、軽く振ってみたりした。本物の魔法使いになったみたいな気分だわ!
そんな私を見つめながら、ショコラちゃんが呟いた。
「すげーな。売ったらいくらになるんだろ?」
その言葉に私はすぐさま返答する。
「こんなもの、一銭にもならないわ」
「え? どうしてだよ、こんなにすごいのに」
ショコラちゃんがキョトンとした表情をした。
「……だって、お金に変えられないほど、大切なものなんですもの」
私はお父様からの宝物を、胸にギュッと抱きしめた。




