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私の箱入り紀行録  作者: raira421
第3章 初めての事件!?
30/39

3-14 新たな旅路へ(その2)

~ショコラside~



 ボクはジャーキーと大男の身柄を国に差し出した。


 あ、そうそう。嘘つきのジャーキーだったけど、国の依頼ってのは本当だったんだ。ボクの財産が欲しかったのか知らないけど、自分が指名手配されてる事件を紹介するなんて。やっぱり悪党ば馬鹿だな。


 国の依頼では身元が捕まえられれば、生きてても死んでても問題ない、との事だったので大男の死体も問題にはならなかった。


 役所ではずいぶんぞんざいな態度をとられたが、気にしない。慣れっこだし、どんな態度であれ、お金を出してくれることに違いはないんだし。


 役所の事より、ボクの頭には未来のことが浮かんでいた。

 ジャーキーに盗まれていた物も取り戻し、国から多額のお金を貰ったんだ。

 つまり……


 やったぞ! これでボクも、自由の身だ~っ!


 ボクも、ようやくこの街から解放される!

 旅に出るんだ。昔読んだ本みたいに。

 ボクは持ち物から、要らないものを売り払い、今後使えそうなものは魔法の袋に忍ばせた。ついでに銀行の口座もつくった。これで、この魔法界どこからでも金が引き出せるってわけだ。


 ボクは街を出るために、王都の門までやってきた。

 街を出る前に、サブレ達に挨拶をしようかとも思ったが、やめた。サブレが事件にあったのはボクの責任でもある。合わせる顔がない。

 もう二度と会うことはないんだろうな……。

 

 少し寂しい、と思ってしまったのを押し殺して、ボクは門へと向かった。外の世界へとつながっている門へ。

 

 門の前は街から出ていく人と街に入ろうとする人で、人だかりができていた。

 門の前の人だかりに紛れたボクは、視線の端に見覚えのある人影を見た。


 あれは……。いや、見なかったふりをしよう。


 無視していこうと思ったのに、ボクの自責の念など、向こうは気にしてくれないらしい。

「ショコラちゃ~ん!」

 弾んだ声が、向こう側から聞こえてきた。


 やっぱり、サブレは強引だな。


 サブレは人ごみをかき分けてこちらに迫ってくる。


「こんな所でまた会うなんて奇遇ね! どこかに行くの?」

 鳥の音のような軽やかな声が、耳に心地いい。

「ま、まあね。ボク、旅に出るんだ」

 なのに、なんだか顔を見るのもはばかられて、ボクは目をそらした。

「貴方も旅に出るんですか」

 そう口をのは、サブレの後ろについて立っていたシナモンだ。

 

 ボクの上機嫌は薄らいだ。

 どうにも、この男は好きになれない。人を殺す瞬間を見てしまったからか……いや、それを抜きにしても、なんとなくムカつくんだよな。


 サブレが手をぱちんとたたいた。

「そうだわ! ショコラちゃんも私たちと一緒に行きましょう!」

「え?」「はい?」

 サブレの言っている事が理解できずに、ボクとシナモンは素っ頓狂な声を出した。……不覚にも同時に。

「一人で旅をするのは危険でしょう? それに、人数は多いほうが楽しいし! ね、いいでしょう!」

 サブレは目をキラキラさせながら言った。

 顔を見合わせることしかできない、ボクとシナモン。

「ま、まあ、旅は道連れとも言いますしね……いいでしょう」

 シナモンが言った。爽やかな笑顔を浮かべているつもりみたいだけど、苦笑いになってるぞ……。


「やったぁ! じゃあ、これからよろしくね、ショコラちゃん!」

 サブレがこちらに歩み寄ってきた。そして、ボクの手をぎゅっと握った。

 サブレの顔が目の前にある。かなり近い。


 サブレは強引だな。


 ボクは赤面した。


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