3-13 新たな旅路へ
~サブレside~
数日後。私達はファリスティナ王国を旅立とうとしていた。
身支度を済ませたところで、シナモン先生が口を開いた。
「お嬢様の旅の目的は何ですか?」
「目的? 勿論、この広い世界を見て回ることよ。私の目でね」
私は、腕を大きく開いて見せた。クルリと一回転すると、ミニスカートがふわりと揺れる。
「だから、色んな物が見てみたいし、経験したいわ! 本を読むだけじゃわからないような事が知りたいの!」
シナモン先生が私のそばに来て、言った。
「では、目的地を決めましょう!」
「目的地?」
「ええ。闇雲に進むだけではつまらないでしょう? どこでもいいんです、お嬢様の行きたいところへ!」
「そうね……」
私は、昔お屋敷で読んだ数々の本を思い出した。
「他の国に行ってみたいわ! 近場をうろついていても、どうしようもないもの」
「他の国、ですか……」
シナモン先生は荷物の中から、羊皮紙でできた世界地図を取り出すと、床に広げた。私もその地図をのぞき込む。
この魔法界は、16の国によって出来ている。
国によって、土地柄も住んでいる種族も様々だ。
そして、私達のいる『ファリスティナ王国』は世界の中心に位置するとされていて、地図上でも、真ん中の大陸の、さらに真ん中に描かれていた。
この大陸には他に、西側に森とエルフの国『ヴァルターティーヌ王国』、東側に砂漠と獣人の国『シャムスワーレ帝国』がある。
「では、先ずはヴァルタティーヌの王都を目指すのはどうでしょうか?」
シナモン先生は地図を指で示しながら言った。
シャムスワーレの砂漠には危険生物もたくさん住んでいるという。先生の選択は妥当だった。
更に、ヴァルタティーヌには私の叔父様も住んでいるし。
「いいわね! 最初の目的地ね!」
私は胸のウキウキを抑えきれずに、その場でピョンピョン飛び跳ねた。
その様子を見て、シナモン先生は静かにほほ笑んだ。
「そうと決まれば出発しましょう。バニラ達も待っています」
そう言われ、私は馬のバニラとキャラメルの事を思い浮かべた。
この街に滞在する間、公的な馬小屋に預けておいていたのだった。
「そうね! 出発進行よ!」




