表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の箱入り紀行録  作者: raira421
第3章 初めての事件!?
28/39

3-12 白髪の王子様・side-B

~ショコラside~



 クソッ、してやられた。

 ボクは、大男の攻撃を防ぐことは出来なかった。

 武器を取り返して、油断していた……否、そもそもコイツが素早すぎるのだ。

 ボクのサーベルは空を切り、ボクは吹き飛ばされた。

 

 腹部にじくじくとした痛みを感じる。上手く呼吸ができない。

 鳩尾を狙って来た。コイツは相手の急所がわかっているのだ。戦い慣れているから。

 サブレも今度こそタダじゃ済まなそうだ。

 

 あの大男が狙うなら……顔か。

 サブレの綺麗で可愛らしい顔を潰す気だ。

 

 仮にサブレがブサイクでも、ヤツは顔を狙うだろう。

 顔には目、鼻など精密な作りの部位がかたまってる。オマケに脳みそも近い。

 鼻を潰せば、1発で致命傷。喰らった側は上手く行動出来なくなる。目を潰せば、相手は一生暗闇の中で生きていくはめになる。脳を揺らせば、気絶させるのも一瞬だ。

 賞金稼ぎ(バウンティハンター)になったばかりの頃、先輩賞金稼ぎ(バウンティハンター)が教えてくれたのを覚えてる。

 そんな理屈的なことはさておき。

 

 サブレのあの笑顔が二度と拝めなくなるのは嫌だな。

 ……でも、ボクはまともに動けない。何も出来ない。そんな自分が悔しくて、もどかしくて、仕方がない。

 ボクは下唇を噛んだ。

 

 ああっ、大男が腕を振り上げる……

 その瞬間だった。

 

 音も立てずに窓ガラスが割れた。そして、次の瞬間サブレと大男の間に、あの男が立っていたのだ。

 名前は確か……シナモンだっけ?

 

 バリン、と音がした。

 そこで初めて気がついた。

 ガラスの割れる音が鳴らなかったのでは無い。その音よりもシナモンの方が早かったのだ。

 

 大男の顔を見る。それは、既に、生きている人間のする顔ではなかった。真っ青な顔色、開ききった瞳孔、微かに空いた口……。

 こんなものを見るのは初めてではない。

 初めてではないはずなのに、ボクはシナモンを見て……恐怖した。

 それも当然なのかもしれない。

 彼はほんの一瞬で、大男の胸を矢で一突きにしていたのだ。

 矢は深く深く突き刺さっている。心臓を狙ったのだろう。そして心臓は貫かれていた。

 あの屈強な男の、胸筋を突き破ったのか?

 しかもただの矢で。剣でも槍でもなく……矢でだ。

 あのヒョロリとした体に、一体どんな怪力を秘めているというのだろう。

 動きも、とても人間にできるような速さではなかった。

 しかし、そんなことよりボクが恐怖したのは、『一瞬で人を殺した』という事実、ただそれだけだっだ。あんなに素早く、一瞬で。

 ……なんの躊躇もなかった。

 真っ白な髪が、陽の光で赤く染っている。その警戒色にボクの心臓は早鐘を打った。額に脂汗が流れる感覚がする。

 彼の青い瞳には光が灯っていない。全く輝いていなかった。無表情なのに、怒りや殺意が、確かに伝わってくる。

 彼の薄い唇や、荒れのない肌が、ボクには人間のものには見えなかった。

 

 その姿はまさしく、死神だ……。

 

 ボクは昔、死神を見たことがある。お母さんを連れていった死神。

 彼はそれに近しいものがあった。

 

 そして、ボク達は助かった。

 

 死神が発した言葉に、思わず反論したのは、彼女を死神から守りたかったのか、それとも……。

 ただ、サブレの優しさに敬意を示したかった。その優しさを無くして欲しくなかった。

 きっと、それだけ。

 そう思うことにした。

 ボクにはもう……きっと、サブレと一緒にいる資格なんて無いから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ