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私の箱入り紀行録  作者: raira421
第3章 初めての事件!?
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3-10 白髪の王子様

~サブレside~



 私が袋から私物を取り出していると、男のほうから低い声が聞こえた。

「微笑みし女神よ、哀れなこの者の傷を癒し、そしていつか、優しき目覚めを与えよ。

イアシズ・クレバー!」

 そのセリフは聞き覚えがあった。ショコラちゃんを助けたとき、シナモン先生が唱えていた魔法だ。……まさか。

 先程まで呻いていた大男が静かになった。そして、彼はゆっくりと立ち上がった。

「な、なんでお前がそんな魔法を⁉」

 ショコラちゃんが問いかける。

 ジャーキーが口角を上げた

「昔、仲間に魔法使いがいてな。教わったんだ。ま、そいつも今は獄中だけどよ」

「クソ!」

 ショコラちゃんがサーベルを振り上げる。が、大男のほうが一歩速かった。

「あぐっ!」

 大男の拳が、ショコラちゃんの腹部に命中した。軽く吹き飛ばされたショコラちゃんがカビの生えたフローリングに叩きつけられる。

「……畜生」

 ショコラちゃんは腹部を抑えている。

 大男は私を見た。その目がギラリと光る。まるで獲物を見つけた肉食獣のような表情だわ。

「い、いや……」

 大男が私に近づいてきた。

 私はぎゅっと目をつむる。

「だ、だめだ、サブ……レ」

 ショコラちゃんの苦しそうな声が聞こえる。

 ぶんっ!

 何かが空気を切る音がした。

 これが当たったらただでは済まないだろう。私の全身がこわばった。


 次の瞬間、うめき声をあげたのは私ではなく……大男だった。

「?」

 恐る恐る目を開けると、シナモン先生の背中が目に入った。


 シナモン先生は、丸く真っ白な楯で男の拳を防ぎ、一本の矢で男の胸を突き刺している。

 割れた窓ガラスから差し込む、オレンジ色の光が、先生の真っ白な毛一本一本を輝かせた。先生の綺麗な青い瞳、薄い唇、艶やかな肌……。そのすべてが私を安心させた。そして、いつにも増して美しく見えた。

 その姿は、まるで絵本に出てくる白馬の王子様のようだ。


 大男が倒れた。そして、もう二度と起き上がることはなかった。

「お嬢様」

 シナモン先生は私をぎゅっと抱きしめた。シナモン先生の甘い香りに包まれる。背中に先生の力を強く感じた。

 

「助かった…」

 私は思わず、体から力が抜けた。



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