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私の箱入り紀行録  作者: raira421
第3章 初めての事件!?
25/39

3-9 守るため、握るナイフ

~サブレside~



「ふざけやがって!」

 ジャーキーの悪意たっぷりの独白を聞き、我慢できなくなったのだろう。

 ショコラちゃんが再び飛び上がった。そして、ジャーキー目掛けて襲い掛かろうとした。しかし、大男が間に割り込む。大男はショコラちゃんの足を掴み、ショコラちゃんを投げ飛ばした。

 どしん!

 フローリングに叩きつけられるショコラちゃん。

「ショコラちゃん!」

 私はショコラちゃんに駆け寄る。

「大丈夫?」

 受け身をとったらしく、頭は打っていなかった。だが、ひじに大きな擦り傷が出来ている。

 私の目から思わず涙がこぼれた。


 ジャーキーが口笛を吹くのが聞こえた。

「ヒュー! 流石、俺のボディーガード! やるねぇ。 2人共、無駄な抵抗はやめたほうがいいぜ? こいつは生身の女の子が敵うほどヤワじゃない」

 私は、シナモン先生が外に出るのを止めた理由が分かった。この世でなによりも怖いのは、人だったのだ。

 

「さあ、やるべきことは早くやってしまおう! ショコラを殺せ!」

 その言葉を合図に、大男がショコラちゃんに迫った!


 このままじゃ、まずい!

 

 私は、小さな頃からずっと、お父様やシナモン先生に守られてきた。おかげで危険にされされることなく生活できていたわ。

 そのことに、感謝しなきゃいけない。


 でも、いつまでもそれじゃいられないわ。旅に出たんだから、甘えてばかりはいられない。

 いえ、例え私がまだ御屋敷に居たとしても、自分の大切なものを守りたい!

 もう、守られてるだけの私じゃないのよ!


 私は、頭を高速で回転させた。

 どうにかして、ショコラちゃんを守らなければ。こうしている間にも大男はショコラちゃんに近づいていく。周囲がスローモーションになったかのように思えた。思えるほどに必死に考える。


 ……私の腕力じゃ、到底大男を止めることはできない。なら、どうする?


 私は思わず、胸の前で手を握りしめた。

 その時である。手になにか固いものが触れた。

 手探りで確かめると、身に着けていたケープの内側に、先生に買ってもらったナイフが入っていた。

 敢えて分かりにくい所に入れていたから、道具を取り上げる時に気付かなかったんだわ。


 私は、男達にばれないように、ナイフを手に取った。


 怖い。


 かすかに手が震える。


 でも、負けてられないわ。


 私は胸元からナイフを取り出した。

 ジャーキーがこちらを見た。

「な⁉ この馬鹿野郎、手荷物全部取り上げろっつただろ!」

 大男に乱暴に怒鳴りつけている。

 私はジャーキーには目もくれず、大男の太ももに、ナイフを突き立てた!

 ……か、硬い!

 人間の足ってこんなに硬いの?それともこの人の足が大きな筋肉に覆われているからかしら?

 私はナイフを持つ手に力を込めた。

 切っているのは私のはずなのに、ナイフを持つ手が痛い。つう、と血が流れ落ちた。それでも、私は手の力を緩めなかった。

 ぐり、と変な感触がして、足にナイフの刃が食い込んだ。

 大男が

「ぎょえぇ!」

 と、カエルのような声を上げた。

 それは、大男が初めて発した声だった。

 太ももから真っ赤な液体が流れ出す。

 人間の血を見たのは、昔、本で自分の指を切った時以来だった。

 部屋に鉄のようなにおいが充満して気持ち悪い。

 私、ひどいことをしているわね……。でも、そうしてでもショコラちゃんを守りたいんだもの。迷わないわ。


 遂に、大男はその場に倒れた。

「サブレ……」

 解放されたショコラちゃんがかすれた声でつぶやく。

「ぶ、武器を!」

 と、私が叫ぶと、ショコラちゃんはうなづいた。

 私は足からナイフを引き抜いた。

 大男は痛みに喘ぎながら、自分の足を抑えている。私たちに構っている余裕はなさそうだ。


「何もできないクソガキが、調子乗ってんじゃねえ!!」

 ジャーキーが雄たけびを上げながらショコラちゃんに襲い掛かった。

 ショコラちゃんはそれをひらりと避け、男の後ろに回り込んだ。ショコラちゃんのドロップキックがジャーキーの背中に命中した。

「大男に頼んないと、何にもできないのアンタにだけは、言われたくないね!」

 そういいながら、ショコラちゃんは袋を手に取った。その中に私たちの手荷物が入れられているのだ。

 蹴られたジャーキーは、痛そうに背中をさすっている。


 ショコラちゃんはサーベルを取り出し、くるくると回した。

「サブレもなかなかやるじゃん。はい、あんたの持ち物もこの中に入ってる」

「ありがとう!」


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