3-6 新しいお友達
~サブレside~
シナモン先生に対する苛立ちを感じながら、私は歩いていた。
なによ、お嬢様、だなんて大声出して。旅に出てからずっと、私のこと子ども扱いしてたの?
歩いているショコラちゃんの背中が見えて、私の苛立ちは消えた。
「ショコラちゃ~ん!」
明るく、声をかける。
すると、ぎょっとした様子でショコラちゃんが振り返った。
「えっと、サブレ……だっけ。どうかした?」
「まだ体調が万全じゃないのに、1人で出歩くのはよくないわ」
私が万円の笑みで続けると、ショコラちゃんは手をひらひらさせて
「その心配は無用さ」
ですって。
また歩き出そうとしたので、私は再び声をかける。
「一緒に行ってもいいかしら?」
ショコラちゃんにぴったりとくっ付いて、横を歩く。
「え、まあ、いいけど……」
ショコラちゃんは私の目をじっと見てから答えた。
「じゃあ、決まりね!」
こうして、私とショコラちゃんは更に色々な事を話した。今度は私が自分の事を教える番だった。私がお屋敷にいた時のこと、ここまで旅をしてきたこと、私の夢のこと、シナモン先生のこと。
「幸せ者の中にも、いい奴っているんだな……」
ショコラちゃんがぽつりと呟いた。
「え? そういうこと?」
「あっ! 何でもないよ」
ショコラちゃんは慌てて返す。
聞こえないように言ったつもりだったみたい。
詮索するのはよくないと思い、これ以上聞くのは辞めておいた。
同じくらいの背丈で横に並ぶ。ショコラちゃんの気配をすぐ隣に感じる。シナモン先生が隣にいる時の気持ちとは違うけど、幸せを感じた。この感じは何て言うのかしら。
胸をソワソワさせながら、私は口を開いた。
「ねえ、ショコラちゃん。私、貴方のお友達になっても、いいかしら?」
ショコラちゃんは、目を今までにないほど大きく見開いて、私を見た。
「と、ともだち?」
なんだかくすぐったい。でも、続けた。
「……うん。私、同年代のお友達がいないの。だから、ショコラちゃんが初めてのお友達……。だめ?」
すると、ショコラちゃんの顔がぽっと赤くなった。照れくさいのは、私だけじゃないのね。
「も、勿論。ボクも、年の近い友達いないから……よろしく」
すっと差し出された手を私は力強く握り返した。
「よろしくね!」
「う、うん……」




