3-3 天使と出会った日
~ショコラside~
暗い、真っ暗だ。
あ、真っ暗なのは、ボクが目を閉じているから。
ボクは目覚めたばかりの、ぼんやりした意識の中にいた。
体をふわふわな物が包んでいる。それに、ぽかぽか暖かい。
とりあえず、川底では無いようだ。
あれからどのくらい経ったんだろう……。
甘い香りが漂ってきた。これは、花の香りだろうか。
だんだん意識がはっきりしてきた。
ボクはゆっくり目を開けた。
ミルク色の天井がボクを見下ろしている。天井には花のような装飾がされた、丸いライトが吊り下げられている。
視線を横に向ける。
そこにはピンク色の髪を頭のてっぺんで一纏めにした女の子がいた。
ボクの視線に気づいたのか、その子がこちらを振り向く。
うわぁ、驚いたな。
その女の子ってば、真っ白な肌は頬の辺りだけがほのかにピンクに染っていて、優しそうにたれた翠色の目はやけにキラキラしてる。小さな口の薄い唇はつやつや。
要するにすごく可愛い。
ああ、そうか。
キミは天使なんだね。
で、ここは天国なのか。
そうじゃなきゃボクがこんなところにいるなんて有り得ないもんな 。
「あっ、目が覚めたのね!」
女の子が口を開いた。ことりの鳴き声みたいな綺麗な声。
「死んでしまったらどうしようかと思ったわ!」
可愛い顔してる割に、言葉選びはバイオレンスだね、キミ。
……って、あれ?
ボク、死んでないの?
言われてみればボクは前と同じく呼吸をしてるし、手足の感覚もやけにはっきりしている。
ってことはまさか……いや、そうとしか思えない。
ボクはあの『幸せ者』の世界に来てしまったのだ!




