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私の箱入り紀行録  作者: raira421
第2章 峠を越えて
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2-2 キャンプファイヤーを囲って


 平原を歩いていると、だんだん日が暮れてきた。

 緑色だった大地が赤く染まっている。

「そろそろ、夜の準備をしましょうか」

 シナモン先生は再び脇に逸れた。


 そこには大きな湖があった。周囲は雑木林になっているようで、木々に囲まれている。私はその木々に守られているような感覚を覚えた。

 シナモン先生は湖のすぐ近くに荷物を置くと私の方を向いた。

「お嬢様は木の枝を何本か拾ってきてください。私は野営の準備をしますので」

「はい」

 私は言われるがままに雑木林へと入っていった。

「あまり奥には行かないでくださいね」

 そんな声が背中側から聞こえた。

 

 雑木林は次第に森のようになってきった。

 とても幻想的な光景だった。

 家出した時とは景色の見え方が違う。

 木の幹から赤や青のカラフルなキノコが生えている。枯れ草の隙間からはお花が顔を出す。その花は……まるで鬼神の顔のような形をしている。

 私は森の中をキョロキョロ見渡しながらも、考えるのをやめなかった。

 外と比べて、森の中は暗くなるのが早い。あの時も、真っ暗になった森で迷ってしまった。今も急速に森が暗くなっていく。

 私は迷子にならないうちに来た道を戻り始めた。

 胸には枝だけではなく、キノコや花も一緒に抱えている。

 

 シナモン先生にどんなものなのか聞かなきゃ!

 

 ……なんてことを考えながら。

 

 湖のほとりに戻ると、シナモン先生が小魚を5、6匹ほど釣り上げていたところだった。

 

 私が拾ってきた枝を地面に並べると、

 シナモン先生が並べた木の枝に、グローブの着いた手をかざした。何かを呟く。なんて言ってるかはよく聞き取れないけど、さっきとは違う呪文だということはわかった。

 やがて、木の枝に火が灯った。キャンプファイヤーの完成だ。

 

 シナモン先生は釣り上げた魚を余った木の枝に突き刺して、炙った。

 じゅ~っと、美味しそうな音がする。

 魚が焼けている間、シナモン先生は私が持ってきた植物を物色していた。

「このキノコは食べられますね、これも火にかけましょうか」

「この花はオーガソウといって、染料にされたりするんですよ」

「このキノコは毒があります、食べちゃダメですよ。街に着いたら薬の材料としてでも売りつけましょう。」

 私は目をぱちくりしながらその話一つ一つを聞いていた。

「そろそろ、焼けますね」

 そう言いながら、シナモン先生は懐から塩を取り出す。

「お嬢様、パサンの液が入った瓶があるはずです」

 パサンとはこの辺りの地域で採れる柑橘系の果物のこと。とてもすっぱくて、苦いような甘いようなな香りがする。そのまま食べるには向いてない。

 その果汁を詰めた瓶を、シナモン先生が用意して、持たせてくれたのだ。

「瓶をください」

 言われたままシナモン先生に瓶を渡す。

 シナモン先生は瓶の中身を魚にふりかけた。

「召し上がれ」

「いただきます」

 

 ぱくん。

 ……!

 

 この魚……すっごく美味しい!!

 1口食べると、魚の身の味わいと共にパサンの香りが鼻を突き抜ける。塩が良いアクセントになっていて、飽きさせない味だ。

 

「旅をしていると、こうやって野営をする事も多いでしょう。

 ですが、調味料を自然の中で手に入れるのは難しい。だから、こうやって持ち歩くんですよ」

 なるほど。

 調味料ひとつでも持っているだけで違うのね。

 

 むぐむぐ

 

 食べていると、苦くてどこかクリーミーな味が口の中に広がった。変な味。でも、美味しい。

 

 ……といった感じで食べていたら

 魚は骨と頭以外きれいさっぱり無くなっていた。

「腸まで食べられたのですね、お嬢様」

 シナモン先生は自分の分の魚から、骨を丁寧に取り除きながら言った。

 あの苦いのは魚の腸……つまり、内蔵だったのね。

 これまで、内蔵を抜いた魚しか食べたことなかったわ……。

 

 旅って初めてのことばかりで楽しいのね!

 

 私は色んなことに驚いては目をキラキラさせてばかりいた。

 次第に、夜がやってきた……。

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