表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の箱入り紀行録  作者: raira421
序章
1/39

プロローグ


 始まりは、1冊の本だった。

 

 うんっ、しょ!

 

 私はチョコレート色の大きなドアを両手で押し開けた。金具が錆びているのかドアを押す度にギイギイと音が鳴る。

 

 うっ、重い……。

 

 ただでさえ重厚なドアなのだ。私のような7歳の子供が開けるには骨が折れる。

 しかし、この部屋に出入りして4年目ともなるとこの重たーいドアを開けるのも慣れてきた(4年のうち3年くらいはメイドさんに開けてもらってたけど)。

 

 ドアが開いた。

 部屋に入るとツーンとしたホコリの匂いが鼻を突き抜ける。

 なかなか臭い。

 だが、私はこの臭いも嫌いじゃない。

 私の好奇心を掻き立てるのには申し分ないスパイスだ。

 

 ここは、御屋敷の図書室。

 でも、お父様は本を読むのは好きでないのか、誰も使っていない。現に、この部屋の使用者はここ5年間、ほぼ私1人だけ。

 私はこの部屋にしまわれている沢山の本を独り占めしている。

 

 さあ、今日はなんの本を読もうかしら……。

 

 背表紙をなぞりながら歩く。

 5歳の時から毎日この部屋に訪れているので読破した本も増えてきた。

 

 もう1回読み返すのもいいけど……

 あ、これ面白そう。これにしよう。

 

 私が手に取ったのは紀行文だった。

 魔獣の皮で作られた表紙に黒インクでタイトルが刻まれている。

「魔法探検録」

 それは、1人の冒険家の旅路を綴った本。

 その中には美味しいグルメ、仲間との友情、波乱のバトル……などなど面白いことが沢山書いてあった。

 

 それは、ただの本よ。

 真っ白なページに黒いインクという白黒の中身。でも、その中にある世界を私は鮮明に想像出来た。それは白黒の本からはありえないほどカラフルで、まさに極彩色だったわ!

 

 この本はフィクションなんかじゃないわ。実際に魔法使いが、この世界を見て回ったことを綴った本なの。

 本の中の世界が現実に存在するなんて、とてもワクワクする!

 

 私は時間を忘れてこの本を読んだ。しなきゃ行けないことも忘れて読みふけったので、メイドに怒られたこともあったけど、とても楽しかった。

 

 

 今思えば、この本に出会った時から私の人生は狂い始めたのだと思う。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ