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俺の幼馴染がこんなに可愛い訳がアリアリアリアリ

諸君!

諸君と言っても誰もいないのだが、しかし俺は断じて諸君と呼びかけよう。


俺の名前は、佐藤冬樹。近所の大学に通う十九歳。恥の多い生涯を送ってきた。

自分でいうのもなんだが、ごく平凡な男子高校生である。

しかし、邪悪には人一倍敏感であった。


「冒頭を色んな作品からパクるのをやめなさい」

「あれ、また作者何かやっちゃいました?」

「消されても知らないわよ」

「すいませんでした」


俺は全世界の作品ファンに向けて平謝りした。ごめんなさい。

それを見て、玲菜はふん、と鼻を鳴らす。


昼間の喫茶店。

俺たちはそこで、ぺちゃくちゃと色々な雑談をしていた。


店内は白を基調としたかわいらしいデザインになっていて、

大学が近くにあるためか学生が多く、とても賑わっている。


実は二週間もの間、俺と玲菜は会って話すタイミングを逃していた。

お互い勉強に付き合いにと、いろいろ忙しいからな。


そんな時玲菜から、「最近妹さんとはどんな感じか、私に聞かせてよ」

と電話で連絡を受け、折角だからとこうして喫茶店で待ち合わせた次第である。


「喫茶店で友達と話す」

この一文だけ見ると、実に人生を謳歌していそうな響きだ。


だが諸君、考えてもみたまえ。

この目の前にいる女は我が妹を虎視眈々と狙っており、

俺はそのための道具にしか過ぎんのだ。


これを友と呼べるのだろうか?

答えは否。断じて否である。それはただの幼馴染の腐れ縁だ。

いや、むしろ腐敗を通り越してもはや発酵してそう。


そんな奇妙な縁でがんじがらめに結ばれた我々であるが、

意外とこうして喋っていると気が合う事がよくある。


たとえば、妹である京香についての話とか。


「京香って、家事も出来るし可愛いし最高だよな」

「それに、ちょっと人見知りっぽいのもいいわね」

「わかる」


こんな感じで気が合う。

後は玲菜がよくハマっているアニメの話とか。


「ログ・ホライズン三期来るらしいわね」

「なろうの伝説じゃん。勝ったな、録画予約するわ」


玲菜はいわゆる「オタク」という奴で、俺にもいろいろアニメの面白さについて

教えてくれることがある。

おかげで俺も、いくつか有名な作品は視聴済みだ。


こんな風に、俺たちはなんだかんだ言って信頼しあっている。

保育園の頃から一緒だったために、お互いの考えていそうな事がわかるからだ。


……まあ、高校の時にレズだって告白された時はびっくりしたけど。

それでもこいつが面白くていい奴だって事には変わりない。


何が言いたいかっていうと、こいつとの駄弁る時間は俺にとって大切だってことだな。


俺がそう物思いにふけっていると、玲菜は俺の顔を覗き込んできた。


「何ぼーっとしてるの。話聞いてる?」

「あ、すまん。何の話だっけ」

「聞いてなさいよ。京香ちゃんとはうまくやってるか、って話よ」


テーブルに肘をつき、呆れたように玲菜はため息をつく。

美人だからか、その動作の一つ一つにもなぜか華があるように思えた。


「京香とは関係良好だぞ」


俺はそう言って、砂糖をたっぷり入れたコーヒーを飲んだ。いい甘さだ。


実際、京香とはライブに行った後も上手くやれている。

いつも通り挨拶はしてくれるし、家事も分担してやってくれている。

ちょっと俺に甘えすぎなのも、まあ高校生の内に直していけばいいだろう。


「そう、それは良かった」


ホットミルクをちびちびと飲みながら、そう答える玲菜。

こいつも俺と同じで、苦いものが大の苦手なのだ。

身長も高いし、精神年齢も上だからコーヒーを飲めそうな印象は受けるのだが。


「じゃあさ」

「ん?」


カタン、と玲菜がカップを置く。


そして横においてあったかばんから、ごそごそと紙を取り出した。

紙には、観覧車とメリーゴーランドの絵が描かれている。


「これ、遊園地のチラシか?」

「そう。これを持っていくと割引してくれるんだって」


そうか、割引か……ってそうじゃなくて。


「遊園地に行きたいのか?」

「ええ。私と京香ちゃんとあんたの三人でね」


そう言うと玲菜は可愛い顔をして、ニッコリと俺に微笑んだ。

普段こんな顔しないので、なんか違和感がすごい。

手は口元に添えられている。まるでゲームに登場する美少女キャラのようである。


「お金、全部出してよお兄ちゃん!」

「は?」

「だから、遊園地で遊ぶお金全部出して!」

「……俺はお前の兄でも財布でもねえ!」


俺は心の底から叫んだ。

この女には何度もたかられてきたのだ。もう絶対払わないもんね。


すると、玲菜は涙目になって小刻みに震えだした。

何だよその目は。俺は悪くないぞ。


「お兄ちゃんの、けちぃ」


しぼりだすようなか細い声で、金をせびってくる。悪魔だ。

こいつは美少女の皮をかぶった悪魔だ。


「幼児退行してるんですか、玲菜さん」

「お兄ちゃんの馬鹿。私、お金ないもん」

「嘘を付くな嘘を」

「ほんとだもん」


顔をぷくっと膨らませ、こっちを見る玲菜に俺は強烈な気持ち悪さを覚えた。

あかん。超絶似合ってなくて見ているこっちの精神が破壊される。

これは一刻も早くやめさせなければ。やむをえん。


「ジュース一本おごるからその気持ち悪い動きをやめろ」

「ありがとう!お兄ちゃんだーいすき!」

「やめろって!!」

「え~、気に入ってたんだけど」


玲菜は不満を口にしやがった。なんでジュースおごって文句言われてんだ俺。

チクショー、今回もまんまと乗せられちまったぜ。


こうして、俺たちは遊園地に行くことになったのだった。

財布からお金がアリーヴェデルチ!(さよならだ!)

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― 新着の感想 ―
[一言] レジェンド何かあるんですか? レジェンド面白いですよね!ねーー!ねっ!ねっ! 私のコメントでの名前自信があるんですよ!
2020/02/17 17:58 取り残された独身
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