もしかして「添い寝」ですかーッ!?
結論から言うと、パーティーは大成功だった。
食事の後に皆でやった王様ゲームもツイスターも盛り上がったし、
カーテンを閉め、ろうそくの明かりだけをつけて行った俺の怪談も
予想以上に怖かったそうだ。
結局京香と梨奈も仲良くすることは無かったが、後半につれ冷めた関係というよりは
ケンカ友達のようになっていたので、そこは進展したかなと思う。
俺は皆に恩を返せたうれしさに包まれながら、京香と一緒に
部屋の飾りの片付けをしていた。
時刻は午後八時。
皆で盛り上がっていたら、いつのまにかこんな時間になっていた。
不思議なものだ。つい前まではお互い初対面同士の奴もいたのに、ここまで仲良くなるなんて。
帰るときに、梨奈と玲菜は楽しかったと言ってくれた。
京香もなんだかんだパーティをとても楽しんでくれたみたいで、
シールをペリペリとはがしながら、嬉しそうなな顔で「今日はにぎやかでよかった」と言ってきた。
「ああ、まったくその通りだな」
「普段私たち二人だけで寂しいもんね」
「今日は皆笑いが絶えなかったよな」
「そうそう。特にツイスターでお兄ちゃんが絶叫した所とか!」
「あれは本当に痛かったんだって!」
関節が変な方向に曲がった痛みを思い出し、切実に訴える俺に
京香は思い出し笑いをこらえて、にやけながら「ふふ」と時折声を漏らしている。
その横顔が可愛すぎて、俺はほっこりしてしまった。
「どうしたの、お兄ちゃん。私の顔じっと見て。まさか惚れちゃった?」
「まあ、そんなところだ」
俺がそう返すと、「えっ」と途端に耳から真っ赤になる京香。
いじるのは得意だけど、本気で「好きだ」と伝えられるのには弱いんだよな。
かわいい妹め。
「お、お兄ちゃんからかわないでよ」
「だってからかうと可愛い顔になるから」
「も、もう!怒るよ!」
「だって本当のことだろ?」
「――っ!」
ほんっと、京香を見てると楽しいなあ。
いや、遊んでるわけじゃなくて、京香の反応があまりに愛らしいのが原因だぞ。
あえてこっちから目線をそらし、動揺を隠そうと、シールはがしに集中してるふり。
断言しよう、諸君。妹はいいぞ。
*
時刻は飛んで、夜の十二時。
片付けをようやく終えた俺は、やりきった心地よい疲労感を感じながら
あたたかい布団の中でうとうとしていた。
真夜中の自室はひたすら静かで、つい何時間か前のにぎやかさが嘘のようだ。
俺は一つ大きなあくびをして、目を閉じ眠りにつく――
はずだったのだが。
「お兄ちゃん、一緒に寝よ?」
突然自室のドアが開き、眠たそうに目をこするパジャマ姿の京香が
俺のベッドにもぞもぞと入り込んできたのだ。
「お邪魔しま~す。お兄ちゃん、ちょっと甘えてもいい?」
ゆったりとした、眠そうな猫なで声で俺にささやく京香。
正直聞いているだけで癒される。
「まあ、いいぞ」
「やったあ~」
何をするのだろうと俺が思っていたら、京香は後ろから突然俺に抱き着いてきた。
肌に触れる京香の体温が、こっちに伝わってくる。
「なんだ。どうして抱き着くんだ」
「えへへ~、お兄ちゃんぎゅっとしてると落ち着くんだよ~」
「人間抱き枕かよ」
「そうだよ~?」
そうなのかよ。
突っ込みたいが、抱きつかれている事によって癒され、体の力がどんどん抜けていく。
やばい。こいつ、人をだめにする妹だ。
しかも話すたびに耳にかかる、京香の吐息がくすぐったい。
なんか京香の胸も背中にあたってて気になるし。
その事がちょっと後ろめたい。
でも、後ろから腕を回されて抱きつかれているのであったかいし、安心感もあった。
自分を全肯定してくれるような、そんな安心感。
もしかしたら、相手が妹だからかもしれない。
「お兄ちゃん、一日中本当にお疲れさま。リラックスして寝てね」
人肌の温もりと、俺を思いやってくれる温かい言葉に癒され、俺はどんどん眠くなっていく。
ふわっと漂うせっけんのいい香りも、京香のものだろう。
こんなに甘えてくれるのは久しぶりだ。
「お兄ちゃん、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ……」
その言葉を最後に、俺は深く心地いい眠りへと落ちていった……
次回から新章に突入します!




